日本薬理学雑誌
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156 巻, 1 号
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特集:ユビキチンプロテアソーム創薬の新展開
  • 西村 有平, 内藤 幹彦
    2021 年156 巻1 号 p. 3
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/01/01
    ジャーナル フリー
  • 西村 有平, 稲垣 昌樹
    2021 年156 巻1 号 p. 4-8
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/01/01
    ジャーナル フリー

    ユビキチン修飾系は様々な細胞機能の制御に重要な役割を果たしている.多様な疾患がユビキチン修飾系の異常と関連しており,ユビキチン修飾系の機能を調節する薬物は,これらの疾患に対する新たな治療薬として期待されている.また,ユビキチンプロテアソーム系によるタンパク質分解機構を利用して,疾患の原因となる任意のタンパク質を選択的に分解する治療薬の開発も進められている.一方,ユビキチン修飾系は,細胞のアンテナ状構造物である一次線毛を構成するタンパク質のユビキチン化と脱ユビキチン化を介して,一次線毛の動態を制御している.一次線毛は細胞外のシグナルを感知し,細胞内にシグナルを伝達するハブとして機能しており,その動態により細胞の増殖や分化が制御されている.本稿では,ユビキチン修飾系の一次線毛動態制御における役割と,この制御異常と関連するがんや線毛病について概説し,ユビキチン修飾系による一次線毛動態制御を介した疾患治療の可能性について考察する.

  • 内藤 幹彦, 小松 弘嗣
    2021 年156 巻1 号 p. 9-12
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/01/01
    ジャーナル フリー

    低分子化合物の創薬標的として注目度が高まっているubiquitin-proteasome system(UPS)の最近の研究開発動向等について概説すると共に,特定の創薬標的タンパク質の分解を選択的に誘導するキメラ型化合物(SNIPER/PROTAC)の応用例等を紹介する.UPSは基質となるタンパク質に目印(ポリユビキチン鎖)をつけ,プロテアソームで分解するという特性を有しており,プロテインノックダウン技術は細胞が持っているこの分解機構を利用している.現行の技術は化合物を介して人為的に標的タンパク質にポリユビキチン鎖を付加し分解を誘導するアプローチである.そのアプローチは化合物のタイプによって大きく2つに分類され,一つはサリドマイドに代表されるE3モジュレーター,もう一つはPROTAC/SNIPERに代表されるキメラ型化合物である.また,E3及びE3結合タンパク質に結合する低分子化合物の同定を目的とした新たな技術も実用化されている.これらの種々のアプローチにより,効率的にユビキチン・プロテアソーム創薬が進められることが期待されている.

特集:中枢神経におけるGSH産生促進を介する神経保護機構
  • 青山 晃治
    2021 年156 巻1 号 p. 13
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/01/01
    ジャーナル フリー
  • 浅沼 幹人, 宮崎 育子
    2021 年156 巻1 号 p. 14-20
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/01/01
    ジャーナル フリー

    近年,アストロサイトの機能不全がいくつかの神経疾患における神経細胞の脆弱性に関与していることが報告されている.グルタチオン(GSH)は中枢神経系で最も豊富な内在性抗酸化分子であり,その基質であるシステインは容易に酸化二量体シスチンになる.神経細胞はシスチンの輸送システムをもたないため,神経細胞のGSH合成は,周囲にあるアストロサイトでのシスチン/グルタミン酸交換トランスポーター(xCT)を介したシスチンの取り込み,GSH合成および放出に依存している.また,強力な抗酸化分子で亜鉛結合タンパク質のメタロチオネイン(MT)の発現・放出がドパミン神経障害時にアストロサイトにおいて亢進し,神経保護にはたらく.そして転写因子Nrf2はMT-1およびGSH関連分子の発現を誘導する.我々はこれまでに,いくつかの抗てんかん薬,セロトニン5-HT1Aレセプターアゴニスト活性をもつ薬剤,植物由来化学物質(フィトケミカル)などが,アストロサイトにおけるxCT発現,Nrf2活性化,GSHあるいはMTの増加と放出を介して,パーキンソン病モデルでドパミン神経変性に対して神経保護効果を発揮することを明らかにした.一連のアストロサイトの抗酸化防御機構を介した神経保護の研究の結果,神経保護のためのアストロサイトの3つの標的分子系として,①xCT-GSH生成系,②Nrf2系,③セロトニン5-HT1Aレセプター-Nrf2-MT系,5-HT1A-S100β系を見出している.本稿では,パーキンソン病でのアストロサイトのGSH, MTなど抗酸化分子を標的とした神経保護の可能性について概説する.

  • 東 洋一郎, 新武 享朗, 清水 翔吾, 清水 孝洋, 齊藤 源顕
    2021 年156 巻1 号 p. 21-25
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/01/01
    ジャーナル フリー

    虚血性脳卒中は患者数の多い脳疾患の一つであり,治療後も長期間にわたって後遺症に悩まされることが少なくない.特に,海馬の傷害は認知症に関与するため重大な問題である.このような海馬の神経傷害の原因としては,再灌流後の活性酸素産生の増加や神経細胞内Zn2+ホメオスタシスの破綻が考えられている.一方,グルタチオン(GSH)は,神経細胞内において抗酸化作用を示し神経保護に関与することが知られている.また,神経細胞内のZn2+ホメオスタシスの維持にも関与することから,脳虚血再灌流後の神経傷害に対する内因性神経保護因子として認識されている.GSHは,システイン,グリシン,グルタミン酸の3つのアミノ酸から構成されており,細胞内へのシステイン供給がGSH生合成の律速となっている.神経細胞において,システインの細胞内取り込みは主にexcitatory amino acid carrier type 1(EAAC1)が担っている.このEAAC1は脳内に広く分布しているが,その中でも大脳皮質や海馬などの神経細胞に高発現している.最近,EAAC1欠損マウスならびに脳虚血誘導時刻の異なる一過性脳虚血モデルマウスを用いた検討により,脳虚血再灌流後の海馬の神経傷害に対するEAAC1のGSH合成促進を介した神経保護機能が明らかになってきた.そこで,本稿では,虚血性神経細胞死に対するGSHの神経保護作用をEAAC1に着目しながら概説する.

  • 松村 暢子, 木下 千智, 青山 晃治
    2021 年156 巻1 号 p. 26-30
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/01/01
    ジャーナル フリー

    グルタチオン(GSH)は,グルタミン酸,システイン,およびグリシンからなるトリペプチドで中枢神経において重要な神経保護物質として働く.アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患においては,発症前からの脳内GSH量の減少が示唆されており,GSHの調節機能障害は神経変性疾患発現に関与すると考えられる.神経細胞におけるGSH産生は細胞内へのシステイン取り込みが律速段階となっており,この取り込みは興奮性アミノ酸トランスポーターであるexcitatory amino acid carrier 1(EAAC1)が担っている.EAAC1の機能不全は脳内GSH量を減少させ,神経変性の過程に大きな影響を及ぼすと考えられる.マイクロRNAの一つであるmiR-96-5pはEAAC1発現を抑制することから,miR-96-5pインヒビターを用いたEAAC1の発現増加は,神経細胞内のGSH産生を促進させることにより神経変性疾患の発症を抑制する,あるいは進行を遅らせる新たな治療戦略となり得る.

創薬シリーズ(8)創薬研究の新潮流(43)
  • 宮脇 出
    2021 年156 巻1 号 p. 31-36
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/01/01
    ジャーナル フリー

    近年,医薬品開発の成功確度の低下とともに,研究開発費の高騰が止まらない.また,安全性を理由とした開発中止の割合は20年前から変わらず依然として高く,創薬早期での安全性の見極めが創薬の効率化向上に重要となってきている.このような現状を受けて,低コスト・高精度・高スループットの安全性スクリーニング系の確立に各社が注力している.脊椎動物であるゼブラフィッシュはin vitroとin vivoの架け橋となる新たな実験動物として期待され,ここ15年での研究の進捗はめざましい.現在では本邦においても実験動物としてメジャーな存在になりつつある一方で,当初の期待(理想)と実際のギャップも見え始め,今一度ゼブラフィッシュの特性を理解し,その利用法について考える段階に移ったと言える.本稿ではゼブラフィッシュを用いたスクリーニングにおける留意点を纏めるとともに,実際の安全性評価への利用について紹介する.

新薬紹介総説
  • 森 政道, 日髙 和幸
    2021 年156 巻1 号 p. 37-46
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/01/01
    ジャーナル オープンアクセス

    ギルテリチニブフマル酸塩(販売名「ゾスパタ®錠40 mg」)は,FMS様チロシンキナーゼ3(FMS-like tyrosine kinase 3:FLT3)阻害作用を有する新規急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia:AML)治療薬である.「初回再発又は治療抵抗性のFLT3遺伝子変異陽性急性骨髄性白血病」を予定される効能・効果として2015年10月に先駆け審査指定制度の対象品目の指定を受け,2018年9月に「再発又は難治性のFLT3遺伝子変異陽性の急性骨髄性白血病」を効能・効果として製造販売承認された.非臨床試験で,ギルテリチニブフマル酸塩は,FLT3等のチロシンキナーゼを阻害し,変異型FLT3を発現させたBa/F3細胞の増殖を抑制した.また,変異型FLT3の1つであるFLT3の膜近傍ドメインで遺伝子内縦列重複変異を発現するヒトAML細胞株(MV4-11細胞)を皮下に移植したマウスで,腫瘍細胞の増殖を抑制又は腫瘍を退縮させ,さらに同細胞を骨髄に移植したマウスで延命作用を示した.臨床試験では,ギルテリチニブフマル酸塩は20~450 mg/日の範囲でおおむね用量比例的な薬物動態を示し,発熱性好中球減少症や貧血等の骨髄抑制関連事象の報告が認められたものの忍容性は良好であった.また,再発又は難治性のFLT3遺伝子変異陽性AML患者を対象とした複数の臨床試験で,完全寛解又は部分的血液学的回復を伴う完全寛解を達成した患者の割合,全生存期間をはじめとする複数の抗腫瘍効果を示す指標で,ギルテリチニブフマル酸塩の臨床的有用性を支持する結果が得られた.これらの結果から,ギルテリチニブフマル酸塩は,再発又は難治性のFLT3遺伝子変異陽性AML患者にとって有用な治療選択肢になると考えられる.

  • 齊藤 格, 金子 礼奈, 神尾 恭弘, 神山 恵美, 武藤 亮, 杉原 匡周
    2021 年156 巻1 号 p. 47-51
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/01/01
    ジャーナル オープンアクセス

    特異的な分子を発現するがん細胞を標的とするモノクローナル抗体に,リンカーを介して殺細胞活性を有する薬物を結合させた抗体薬物複合体(antibody-drug conjugate:ADC)は,選択的かつ効果的にがん細胞を死滅させると共に,全身毒性の軽減も期待できる次世代抗体医薬品である.しかしながら,ADC技術開発には有効性,安全性,物性面等,未だ改良の余地が多く残されており,より多くのがん種に適用でき,かつ,より強力な治療効果を示すADCの創製が期待されている.第一三共では2015年より,DNA topoisomerase I阻害薬エキサテカンの誘導体を薬物部分に適用した独自の薬物リンカー技術を有するHER2 ADCであるトラスツズマブ デルクステカン(遺伝子組換え)注(略称:T-DXd,商品名:エンハーツ®点滴静注用100 mg)の臨床開発を,世界に先駆けて本邦で開始した.T-DXdは第Ⅰ相試験の有望な結果に基づきグローバル開発を加速化し,第Ⅱ相試験にて標準的治療が存在しない三次治療以降のHER2陽性乳がん患者に対し,既存の薬剤にはない高く持続性のある抗腫瘍効果が示された.その結果,医薬品条件付き早期承認制度を活用し,乳がんで初めて第Ⅱ相単群試験結果に基づき製造販売承認を取得できた.さらに,胃がんでも先駆け審査指定制度を活用し,第Ⅱ相比較試験の結果により世界に先駆けて本邦で国内製造販売承認事項一部変更承認を取得した.また,初回適応より前の治療ラインや,これまでの抗HER2薬が適応を有していない適応(HER2低発現乳がん,非小細胞肺がん,大腸がん)にも拡大し,さらに既存の有望な薬剤と組み合わせた際の臨床効果も確認中である.今後,T-DXdの効能・効果を拡大することによって,多くの患者さんがベネフィットを享受できるよう開発をさらに加速していく予定である.

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