日本薬理学雑誌
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特集:脳神経疾患の新規治療標的を探る
  • 山田 光彦, 東 洋一郎
    2021 年 156 巻 2 号 p. 61
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル 認証あり
  • 國石 洋, 関口 正幸, 山田 光彦
    2021 年 156 巻 2 号 p. 62-65
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル 認証あり

    慢性的なストレスへの暴露は,シナプス伝達といった脳の情報処理機構に様々な影響を与える.特に,前頭前皮質と扁桃体など情動処理に関与する脳領域に対し,ストレスが与える影響やその詳細なメカニズムを理解することは,ストレス関連精神疾患に対する新しい治療標的の探索のために重要である.近年,うつ病などのストレス関連精神疾患の症状を引き起こす責任部位として,前頭葉の腹側領域である眼窩前頭皮質(orbitofrontal cortex:OFC)が注目されている.OFCは扁桃体などの辺縁系領域や,腹側被蓋野など報酬系といった情動に関与する様々な領域に神経投射を送っており,特にOFC外側領域は負の情動処理に重要な機能を持つと推測される.本稿では,OFCの機能とストレス関連疾患への寄与を示すこれまでの知見を記述しつつ,マウスの外側OFCから扁桃体基底外側核(basolateral amygdala:BLA)へ投射するシナプス伝達を光遺伝学的に単離計測し,ストレス負荷が与える影響と負情動行動への寄与を明らかにした,我々の研究について紹介する.

  • 荒木 敏之
    2021 年 156 巻 2 号 p. 66-70
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル 認証あり

    神経細胞は,他の細胞との間での情報伝達のために長い突起を有するという特徴的な形態を示し,このような突起形態の形成・維持は,神経細胞の機能に重要な役割を果たしている.軸索は,神経回路形成における中心的役割を果たし,その先端のシナプス構造とともに神経情報伝達の中核をなす構造である.軸索変性は,最も典型的には神経細胞体からの物理的断裂のあとに,損傷部位から末梢側において「ワーラー変性」というかたちで認められるが,一旦形成された軸索構造の崩壊現象は,神経変性を伴う多くの疾患,さらには発生期~発達期の神経回路形成など生理的プロセスにおいても認められるなど多くの生理的病理的現象の一部として観察され,そのメカニズムの理解は神経系の形態形成の理解~神経疾患に対する神経保護的疾患治療の実現など様々な意義において非常に重要である.本稿では,筆者らの研究を中心に,近年の軸索変性機序に関する研究の現状について述べる.

  • 武田 厚司, 玉野 春南
    2021 年 156 巻 2 号 p. 71-75
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル 認証あり

    海馬神経細胞内外のZn2+濃度はそれぞれ~100 pMと~10 nMである.細胞外Zn2+動態は認知機能とその低下の両方に関与し,細胞外グルタミン酸ならびにアルツハイマー病の原因物質と考えられているアミロイドβ1-42(Aβ1-42)により大きな影響を受ける.ヒトAβ1-42がラット海馬の細胞外で100~500 pMに達すると,Zn-Aβ1-42オリゴマーが形成され,このオリゴマーはシナプス神経活動に関係なく歯状回顆粒細胞に速やかに取り込まれる.一方,顆粒細胞内では細胞内Zn2+濃度が低いため,Zn-Aβ1-42オリゴマーからZn2+が遊離して毒性を示す.Aβ1-42誘発細胞内Zn2+毒性は加齢に伴い容易に現れる.これは細胞外Zn2+濃度が加齢に伴い上昇することと関係する.神経終末から生理的に分泌されるAβ1-42は神経細胞内Zn2+恒常性を破綻させることにより,認知機能を低下させ,神経を変性させる.細胞内Zn2+結合タンパク質であるメタロチオネイン(MT)は細胞内Zn-Aβ1-42オリゴマーから遊離するZn2+を捕捉することができるため,細胞内Zn2+恒常性維持に働く.Aβ1-42毒性はアルツハイマー病発症と密接に関係することから,この毒性を阻止することは発症の予防に繋がる.本総説では,細胞外Zn2+に依存するAβ1-42毒性と加齢に伴うAβ1-42毒性発現の変化,その防御戦略について概説する.

  • 宮崎 育子, 浅沼 幹人
    2021 年 156 巻 2 号 p. 76-80
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル 認証あり

    パーキンソン病(PD)は,黒質線条体路のドパミン神経の脱落により無動/寡動,静止時振戦,筋強剛などの運動症状を発現する進行性の神経変性疾患である.PDでは,これら運動症状を発現する数十年以前より,嗅覚異常や起立性低血圧,便秘などの非運動症状を呈する.病理学的には,α-シヌクレインを主要構成成分とする封入体Lewy小体,Lewy neuriteの出現が中枢神経系のみならず末梢神経系においても認められる.現在のところ,PDの基本治療はL-DOPA,ドパミンアゴニスト,モノアミン酸化酵素阻害薬等によるドパミン補充・補完により運動症状を改善するものであり,神経変性を抑制する神経保護薬の開発が求められている.アストロサイトは,神経環境の維持に重要な役割を果たすとともに,抗酸化分子の産生,神経栄養因子の分泌および神経毒性分子の取り込みによって神経保護効果を発揮する.我々は,酸化ストレスに曝されると,アストロサイトが抗酸化分子であるメタロチオネイン(MT)-1/2を発現・分泌し,ドパミン神経を保護することを報告した.MTはシステイン残基に富んだ金属結合タンパク質で,とくに亜鉛の調節因子として重要な働きを担う.さらに,MTは銅との結合能が高いことから銅によるα-シヌクレイン凝集促進を抑制することが報告された.本稿では,アストロサイトにおけるMT発現を標的としたPDにおける神経変性に対する新たな治療戦略の可能性について概説する.

  • 田辺 章悟, 村松 里衣子
    2021 年 156 巻 2 号 p. 81-84
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル 認証あり

    近年の研究で,脳内に存在する免疫系細胞が脳の発達や障害に関与することが明らかになってきた.しかし,どの免疫系細胞がどのような機序で脳機能に関わるのかという詳細な分子メカニズムは解明されていない.我々は,脳の発達過程における免疫系細胞の役割と脳神経疾患の病態における免疫系細胞の機能解析に取り組んだ.脳の発達過程では,髄膜や脈絡叢にB細胞が豊富に存在しており,細胞培養実験や細胞除去実験によりオリゴデンドロサイト前駆細胞の増殖を制御することで軸索のミエリン化に寄与していることを見出した.炎症性脳神経疾患である多発性硬化症のモデル動物を用いた解析では,脳内の免疫系細胞であるミクログリアがT細胞の増殖や分化を制御することで病態の進行を抑制していることを明らかにした.本稿では,脳の発達過程や脳神経疾患における脳内免疫システムの役割について最新の研究動向を自分たちの研究成果を交えて紹介する.

特集  看護に必要とされる薬理学教育とは:看護学教育モデルコアカリキュラムの策定と指定規則改正を踏まえて
  • 柳田 俊彦, 赤瀬 智子
    2021 年 156 巻 2 号 p. 85
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/01
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  • 杉田 由加里, 髙橋 良幸
    2021 年 156 巻 2 号 p. 86-91
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル 認証あり

    2020年に看護系大学は274大学に増え,今,大学の3校に1校は看護系の部局を有していることになる.文部科学省では,看護系大学の教育の質向上を意図して,2017年に看護学教育モデル・コア・カリキュラムを公表した.看護学教育モデル・コア・カリキュラムは,看護者として生涯にわたり修得を求められる資質・能力を提示し,学士課程で修得する7つの項目より構成されている.「A 看護系人材(看護職)として求められる基本的な資質・能力」,「B 社会と看護学」,薬理学を含む「C 看護の対象理解に必要な基本的知識」,「D 看護実践の基本となる専門基礎知識」,「E 多様な場における看護実践に必要な基本的知識」,「F 臨地実習」,そして「G 看護学研究」である.看護系大学は,学校教育法と保健師助産師看護師法の両方を遵守する必要があり,保健師助産師看護師学校養成所指定規則の改正を機により独創的なカリキュラムを策定することが期待されている.

  • 小見山 智恵子
    2021 年 156 巻 2 号 p. 92-96
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル 認証あり

    急性期病院において看護師がかかわる患者像は多様化しており,用いられる薬剤も多種多様である.与薬の際,看護師はまず指示内容を理解し,患者にとって安全な指示であるか自身が実施できる内容かを判断しなければならない.そして薬剤を調製する作業を経て,最終実行者として与薬する役割を担う.一連の過程を通して,正しい「患者・目的・薬剤・用量・用法(経路)・時間(タイミング)」であることを確認し,注射や点滴,経管注入等の看護技術を用いて安全に実行することが求められる.さらに,患者の反応を観察し異常があれば速やかに対応する役割を担う.看護師の行う与薬は,極めて重要で責任の重い,複雑な業務である.臨床現場では与薬による医療事故を回避するため,薬剤に関する知識向上や作業の簡素化等に取り組んでいる.しかし,看護師による薬剤インシデントは減少しておらず,重大な医療事故もなくなってはいない.現場ではどのように教育体制や労働環境を改善すればよいか模索している.安全に与薬を実施するためには,適切な判断と,確実な与薬技術が必要である.その根拠となるのは,治療の理解であり薬剤の知識である.現場から看護基礎教育に望むことは,疾病の病態生理や治療法,薬剤のもつ多様な作用とその機序について理解を深めること,そして,看護師が行う与薬に潜む危険についての学習を実践に即して深化させることである.看護継続教育においては,薬剤についての知識や与薬に関する技術習得のための教育体制の強化や,与薬の手順遵守,慣れない薬剤を使用する際のリスク認識の強化などが課題である.薬剤に関する教育が,看護基礎教育から現任教育まで継続して行われることが医療安全強化につながる.医療事故防止にとどまらず,さらに退院後の生活を見据えた患者の服薬アドヒアランス維持向上のための介入や支援の強化につなげることが,急性期病院の看護の現場のさらなる課題である.

  • 井村 真澄
    2021 年 156 巻 2 号 p. 97-102
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル 認証あり

    助産師は,個人,家族,コミュニティーにおける性と生殖に関する健康や権利,安寧に責任を持つ専門職である.特に,助産師は女性とパートナーシップを築いて,妊娠,出産,産褥の各期において必要なサポート,ケアおよび助言を行う.助産師は自身の責任において正常な出産を介助し,母乳育児を支援し,新生児および乳児のケアを提供し,女性と子どもの潜在力を最大限に引き出す.また,助産師は,予防的に対応して出産や母乳育児がより順調に進むようにかかわり,合併症を早期に発見し,救急処置を実施し,必要な場合には医療やその他の適切な支援につなげる.女性や母親と子どもに最良のケアを提供するために,助産師は,女性の健康,妊娠,出産,産褥,授乳,新生児に関する生理学的な機能や,生体内のホルモンや神経伝達物質等の機序に関する知識を修得し,正常からの逸脱や障害が起こった場合には,これらの生理機能を補完し支えるための薬物療法や,補完代替療法に関する知識を学ぶことも必要となる.同時に,助産師は,産科救急救命や新生児蘇生に対応できる知識と技能を習得する.開業助産所では,嘱託医との契約において「包括指示書」を取り交わして緊急時に薬剤を使用する場合もある.助産基礎教育においては,これらの状況に対応できるための薬理学の知識や医療処置技術の修得も促している.今回の助産師カリキュラム改正をふまえた新たな助産基礎教育とそれに続く卒後の現任教育において,女性,母親,子ども,家族,コミュニティーを支える個別的で当事者中心の薬理学教育を構築していきたい.

  • 赤瀬 智子
    2021 年 156 巻 2 号 p. 103-106
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル 認証あり

    看護学における学士課程の教育では,看護学教育モデル・コア・カリキュラムや指定規則の改正において,看護実践能力を修得するための薬理学教育の内容の充実が求められている.そこで,今回,薬物療法に強い看護師を育成するために,大学の学士課程における薬理学教育について考える.看護系大学の学生への薬に対する必要な知識の調査及び臨床の看護師の薬の問い合わせ内容の分析を行った.その結果,学生は薬の作用,副作用については看護師に必要な基本的知識としての認識があった.しかし,学生は薬物動態と実践的な内容について,必要な認識が少なく,臨床で看護師が与薬時に遭遇することの多い実践的な知識と解離していた.臨床の看護師においても患者の治療管理に薬理学の知識である薬物動態が活かせきれていない可能性が今回の調査から見えてきた.調査及び先行研究から,大学教育では,薬理学の知識を基礎から臨床へつなげて教育する必要性,学士課程から卒後への継続教育の必要性,学士課程における薬理学の十分な基礎知識と思考力の構築の必要性,薬効評価を行うための薬物動態の必要性の理解と十分な学習が必要と考える.

創薬シリーズ(8)創薬研究の新潮流(44)
  • 常本 和伸, 山田 茂, 諫田 泰成
    2021 年 156 巻 2 号 p. 107-113
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル 認証あり

    中枢性神経系の副作用は,新薬の開発中止や上市した医薬品の市場撤退につながるため,適切に予測することが重要である.これまでに主に動物を用いた方法が検討されてきたが,いまだにヒトの中枢性副作用に対する予測性は高くない.また,動物実験は多大な労力とコストを要するため,スクリーニング性の問題なども挙げられる.これらの問題を解決するため,in vitro評価法の開発が進んでおり,新しい科学技術(new approach methodology:NAM)の利用が検討されている.特に,ヒトiPS細胞はヒトのデータや情報が得られるために期待が大きく,すでに心毒性評価への応用が先行しているが,神経毒性に関しても,これまでに蓄積された基礎研究および動物データを基にして,新たな毒性予測法が開発されつつある.また,化学物質の発達期における神経毒性評価に対してもヒトiPS細胞やin silicoなどの利用が進められており,経済協力開発機構(Organisation for Economic Co-operation and Development:OECD)ではガイダンスの作成が進行中である.そこで本総説ではこれらの国際動向も踏まえて,中枢神経系の安全性評価法の潮流を概説したい.

新薬紹介総説
  • 古戎 道典, 小山 則行, 西田 舞香, 村本 賢三
    2021 年 156 巻 2 号 p. 114-119
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/01
    ジャーナル フリー

    近年,不眠症治療薬として,従来のベンゾジアゼピン系薬剤に加え,オレキシン受容体拮抗薬が上市しており,不眠症の薬物治療は大きく変革しつつある.オレキシンは視床下部外側野で産生される神経ペプチドであり,睡眠・覚醒状態を制御するキーメディエーターとしての生理的役割が示唆されている.オレキシン受容体拮抗薬は,オレキシンシグナルを介して睡眠覚醒サイクルに特異的に作用し,生理的な睡眠を誘導すると考えられている.レンボレキサントは2つのオレキシン受容体,オレキシン1受容体(OX1R)とオレキシン2受容体(OX2R)の両方に作用するデュアルアンタゴニストであり,OX2Rに対してより強い阻害作用を有する.オレキシン受容体に素早く結合・解離することから,レンボレキサントの薬理作用には血中濃度の薬物動態が強く反映されると考えられる.ラットモデルでは,レンボレキサントがレム睡眠とノンレム睡眠を同様に促進し,睡眠構造を変化させずに睡眠誘導効果を示すことが確認された.不眠症患者を対象とした第Ⅲ相試験では,レンボレキサントが入眠障害および中途覚醒を有意に改善した.本薬による副作用としては傾眠の頻度が最も高く,用量依存的な発現が認められたものの,忍容性は概ね良好であった.また,翌朝の覚醒後(投与8~9時間後)の体のふらつきや運転技能に対する影響はプラセボ群と統計学的に差がなく,翌朝への持ち越しリスクが低いことが示唆された.レンボレキサントは,併存疾患を伴う不眠症患者でも有効性や安全性に大きな違いは認められず,こうした患者に対しても有用であることが示唆される.以上の結果を受け,レンボレキサントは2020年1月に不眠症の適応で承認を取得した.不眠症患者に対する新たな治療の選択肢として期待される.

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