日本薬理学雑誌
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157 巻, 2 号
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特集:看護学教育モデル・コア・カリキュラムに準拠した看護薬理学教育の新たな構築:カリキュラム改正に向けて
  • 柳田 俊彦, 池谷 裕二
    2022 年157 巻2 号 p. 93
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー
  • 髙橋 良幸
    2022 年157 巻2 号 p. 94-99
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー

    令和3年4月,我が国の看護系大学は276校となった.昨今,人口減少社会,医療の高度化・複雑化,地域における包括的なケアの実現等に対応できる看護師が求められ,看護系大学への期待は益々大きくなっている.大学教育における質の保証が課題となっており,文部科学省では,平成29年に「看護学教育モデル・コア・カリキュラム」を策定し,共通して取り組むべきコアとなる内容を抽出し,各大学のカリキュラム編成の参考となるように学修目標を提示している.薬理学や薬物療法に関するものとして,いくつかの学修目標が示されている.また,令和2年10月に保健師助産師看護師養成学校指定規則が改正され,解剖生理や薬理学等を充実させ,臨床判断能力の基盤を強化するため,1単位増加となった.大学にとって教育課程を見なおす機会となっており,限りある年限の中で,基礎教育段階でどこまでの内容を教授すべきか大学自らが考え,魅力ある教育課程を編成することが重要である.

  • 松田 明子
    2022 年157 巻2 号 p. 100-103
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー

    医療事故の中で看護師の薬剤に関する事故は年々増加している.そのため,看護基礎教育から,薬理学を基礎としたリスク管理に伴う知識と技術の構築が重要である.そこで,看護実践能力の向上を目的とした看護学における薬理学・臨床薬理学分野の強化すべき教育内容と新カリキュラムにおける課題について,これまでのわれわれの与薬に関する研究の結果を基に検討した.薬理学・臨床薬理学分野の強化すべき教育内容は,「臨床で起こりやすい併用注意薬や重篤な薬剤による事故の分析・検証」,「患者の特性に応じた薬剤投与と観察の視点」,「薬物相互作用」,「患者の症状のリスクアセスメントと薬効評価」,「医薬品の添付文書の活用」であると考える.新カリキュラムに伴う課題は,系統的に段階的に薬理学・臨床薬理学に関する知識・技術を活用できるように組み立てる必要がある.そのためには,看護系教員が薬理学・臨床薬理学分野の視点を系統的に教授できるように,専門基礎教員と各専門分野の看護系教員間で教授方法の共有や検討が必要である.

  • 柳田 俊彦, 金岡 麻希, 木下 由美子, 武谷 立
    2022 年157 巻2 号 p. 104-109
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/01
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    「Patient-oriented Pharmacology」の概念に基づいて看護における薬理学教育を充実させることは,薬物治療の質向上,患者の満足度の向上に有効である.私たちは看護実践に必要な薬理学知識を学ぶためのアクティブラーニングとして,「医看合同薬理学ロールプレイ」と「漢方演習」を考案し実施している.薬理学ロールプレイは,事前に提示した症例を基にコミュニケーションを通じて学習することからCase & Communication based approach(C&Cアプローチ)と名付けている.この薬理学ロールプレイを,多職種連携教育の一環として,医学科生と看護学科生が混成チームを作り,合同で実施している.漢方演習では,9種類の代表的な漢方薬を看護学生が実際に味見し,さらに自分たちで予想した内服しやすくなると思われる方法を試してみる.これらのアクティブラーニングは,薬物治療の理解,患者の気持ちの理解,医療者としてのモチベーションの向上に有用である.

特集:新興ウイルス感染症の早期予防・治療を目指して~COVID-19対策から考える~
  • 西田 基宏, 諫田 泰成
    2022 年157 巻2 号 p. 110
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー
  • 奥野 恭史
    2022 年157 巻2 号 p. 111-114
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー

    世界における新型コロナウイルス感染拡大は未だ終息せず,我が国においても未だ予断を許さない状況にある.このような中,現在も,国内外において,ワクチンや医薬品など新型コロナウイルスの治療法の開発が日夜進められている.我々もその一端を担うべく,スーパーコンピュータ「富岳」の始動とともに,「富岳」を用いた新型コロナウイルスの治療薬探索等の研究を行ってきた.具体的には,「富岳」を用いて分子動力学計算を行うことで,既存の医薬品約2,000種の中から,新型コロナウイルスの増殖に関係する標的タンパク質(メインプロテアーゼ)に高い親和性を示す治療薬候補を探索・同定を行った.分子動力学計算による数千規模の薬剤スクリーニングは世界で初めての試みであり,世界ランキング1位の「富岳」だからこそチャレンジできた事例であると言える.本章では,我々の新型コロナウイルスの治療薬探索を例に,スーパーコンピュータ「富岳」の創薬に与えるインパクトについて示す.

  • 今井 由美子
    2022 年157 巻2 号 p. 115-118
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/01
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    レニンアンジオテンシン系(RAS)において,アンジオテンシン変換酵素(ACE)によって変換されたアンジオテンシンⅡ(AngII)は,AT1受容体(AT1R)を介して強い生理活性作用を発揮する.そこで,ACE-AngII-AT1R軸はRASを正に調節する.一方,アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)は,AngIIをアンジオテンシン1-7(Ang1-7)に分解することによってRASを負に調節することが知られている.我々は,肺の過剰炎症で特徴づけられる急性呼吸窮迫症候群(ARDS)において,AngII-AT1R軸はその悪化に,ACE2-AT2R軸は保護的に作用することを見出している.さらに最近,ACE2は重症急性呼吸器症候群(SARS)の原因ウイルスであるSARS-CoVならびに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の原因ウイルスであるSARS-CoV2の受容体であることが明らかとなった.そこで,ACE2とスパイクタンパク質の結合の阻害は,SARS-CoVやSARS-CoV2に対する抗ウイルス薬の創薬標的として注目されている.また,SARSやCOVID-19が重症化すると,サイトカインストームを伴うARDSが引き起こされる.われわれは,ACE2可溶性タンパク質およびACE2活性を有する微生物由来の酵素は,それぞれ,SARSおよびCOVID-19による肺の過剰炎症を抑制することを報告した.合わせて,ACE2可溶性タンパク質には,SARS-CoV2と細胞膜表面ACE2との結合を阻害することにより,感染の成立を抑制する効果のあることが報告されている.ここでは,SARS/COVID-19の病態におけるACE2の役割について,炎症抑制によるARDSへの進展の阻止ならびに細胞膜表面のACE2とスパイクタンパク質の結合の阻害によるウイルスの増殖抑制の両面から概説する.

  • 加藤 百合, 西山 和宏, 西村 明幸, 西田 基宏
    2022 年157 巻2 号 p. 119-123
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー

    新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は,2019年に中国・武漢で発症が確認されて以来,全世界で猛威を奮っている新興感染症である.有効な治療法は未だ確立されておらず,COVID-19重症化機構の解明,予防・治療法の確立が急務となっている.主な感染経路として,新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)表面にあるspikeタンパク質(Sタンパク質)が宿主細胞膜上のSARS-CoV-2ウイルスの認識受容体angiotensin converting enzyme(ACE)2タンパク質と結合し,エンドサイトーシスを介して細胞内に侵入する.COVID-19は肺への重篤な障害が報告されているが,ACE2は肺だけではなく心臓や消化器など様々な組織に発現しているため,細胞間のウイルス感染拡大,つまり感染重症化は肺だけではなく全身の組織でも起こりうる.我々は,COVID-19重症化リスクを増加させる既往症に心疾患が含まれることや,COVID-19後遺症にも心機能障害が含まれることから,心臓でのSARS-CoV-2感染・重症化の機構に着目した.その結果,心臓のACE2受容体がCOVID-19重症化リスク因子と示唆されている様々な環境ストレス曝露によって増加すること,その分子機構として,心筋リモデリングを制御する膜タンパク質複合体(TRPC3-Nox2)形成が関与することを新たに見いだした.さらに,TRPC3-Nox2タンパク質複合体形成を阻害する既承認薬の中から,Sタンパク質曝露によるACE2内在化を抑制する化合物クロミプラミン(三環系抗うつ薬)を同定した.本稿では,心臓におけるTRPC3-Nox2複合体形成を介したACE2受容体の発現制御機構,および人工組換え三量体Sタンパク質を用いたin vitroスクリーニング(偽感染モデル)とその結果について紹介する.

  • 山田 茂, 諫田 泰成
    2022 年157 巻2 号 p. 124-127
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー

    現在,世界では新型コロナウイルスSARS-CoV-2による感染症(COVID-19)が流行しており,患者および死亡者数の急激な増加が認められ,大きな社会問題となっている.さらに,様々な変異株が出現して感染状況に歯止めがかかっていない.COVID-19への早急な対策として,感染予防のためのワクチン開発や感染後の重症化を抑える治療薬の開発が挙げられる.治療薬の開発については緊急を要する案件であるため既存薬の中からCOVID-19に効果のあるものを探索する,いわゆるドラッグリポジショニングのアプローチが有用である.近年,ヒトiPS細胞由来分化細胞を用いた医薬品の有効性・安全性評価法が進展しており,SARS-CoV-2の感染モデルやCOVID-19治療薬の探索などにも広く活用されている.そこで本稿では,主にヒトiPS細胞技術を利用した観点からCOVID-19治療薬について概説したい.

実験技術
  • 日下部 宜宏
    2022 年157 巻2 号 p. 128-133
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー

    中国武漢でアウトブレイクした新型コロナウイルス(SARS-2)感染症(COVID-19)は,地球規模での感染爆発となり,現在も多くの死者を出し続けている.COVID-19に限らず,地球規模での環境変動や人的交流・物流のグローバル化により,パンデミックの危険性は増大し続けている.一方,このような未知の新興感染症に対する備えは不十分であり,ウイルス感染症への対応は,人類が直面している重要課題の一つとなっている.ワクチンによる疾病予防は,最小の費用で最大の効果が期待される理想的な疾病対策と考えられている.特に,治療薬がない,もしくは少ないウイルス病対策においては最重視されている.COVID-19対策では,新しい核酸ワクチン(mRNA型やウイルスベクター型ワクチン)が先導しているが,現在でも,ワクチンの主流は病原体であるウイルスそのものを用いる不活化ワクチンや弱毒生ワクチンである.病原体の一部の特定ウイルスタンパク質(サブユニット)を組換えタンパク質として生産してワクチン抗原対象にするワクチンも開発が進んでいるが,今回のCOVID-19のスパイクタンパク質抗原(核酸ワクチンも同じ抗原を標的にしている)のように,組換えタンパク質としての大量生産が困難な抗原については,生産開発が進んでいないもの多い.本稿では,このような難発現性のワクチン抗原,特にウイルス様粒子(VLP)の生産に優位性があるカイコ1頭1頭を昆虫工場に見立てた組換えタンパク質ワクチンの開発について紹介する.

  • 鈴木 達也, 齊藤 暁
    2022 年157 巻2 号 p. 134-138
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー

    新型コロナウイルスをはじめとして,数多くのウイルス感染症がRNAウイルスによって引き起こされている.RNAウイルス感染症の制御には,ウイルス増殖機構の包括的理解が不可欠である.また,一般にRNAウイルスは進化速度が速いため,抗ウイルス薬への耐性株や中和抗体,細胞性免疫など宿主免疫からの逃避株について,変異株のウイルスゲノムに出現した変異がどのようなメカニズムで耐性を獲得しているのかを解明することは極めて重要である.これら変異株の解析を行う上で,組換えウイルスの人工合成法(リバースジェネティクス法)は重要なツールであるが,従来の方法は特殊な技術やツールが必要で,ウイルスの回収までに長い時間を要するという課題があった.近年開発されたcircular polymerase extension reaction法(CPER法)はウイルスゲノムを複数に分割することで,それぞれのゲノム断片を大腸菌プラスミド内で比較的容易に維持可能であり,極めて迅速に変異体の作成が可能である.著者らはこれまでデングウイルス,日本脳炎ウイルス,ジカウイルスなどのフラビウイルスを中心に研究を進めてきたが,最近は同技術を新型コロナウイルス研究に応用することで,ウイルス増殖機構の解明に取り組んでいる.本総説では,同技術の特徴や応用例,今後の発展性について紹介したい.

創薬シリーズ(8)創薬研究の新潮流50
  • 小川 久美子, 石井 雄二, 豊田 武士
    2022 年157 巻2 号 p. 139-145
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー

    分子標的薬の登場によって,臨床病理の現場では病理組織標本の活用と病理診断への要求度は高まっている.特に,コンパニオン診断においては,免疫組織化学染色の結果が診断補助から確定診断,さらには治療薬選択に必須となっている.非臨床の毒性評価においても,病理組織学的検査は重要な位置を占めており,臓器特異的に毒性及びがん原性に関するデータを得るために必須とされている.現在ICH S1において,証拠の重み付け(WoE)の詳細な検討によってラット2年間がん原性試験の実施を置き換えるオプションが検討されているが,その場合,26週間反復投与毒性試験の評価がより重要になると考える.本稿では,現在我々が検討している28日間反復投与試験検体を用いたγ-H2AXを指標としたラット膀胱発がん性評価の有用性及び質量分析イメージングの応用の紹介を含め,非臨床試験の毒性・安全性評価における病理組織学的検査の役割と今後の展望について述べたい.

新薬紹介総説
  • 宮坂 恒太
    2022 年157 巻2 号 p. 146-154
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル オープンアクセス

    GLP-1受容体作動薬(GLP-1 RA)は2型糖尿病患者における良好な血糖コントロールを達成するために効果的な薬剤である.中でも,経口セマグルチドはアメリカ,ヨーロッパ,および日本で承認されている経口摂取が可能な唯一のGLP-1 RAである.この薬剤の登場により,注射によるGLP-1 RAの投与に抵抗のあった2型糖尿病患者においても,糖尿病発症のより早期でGLP-1RAの使用が可能になり,患者に経口薬の価値ある選択肢を提供することができるようになった.経口セマグルチドの有効性と安全性は9,543例(日本人1,293例)の被験者を含む第Ⅲ相臨床試験(PIONEER試験)で評価された.本臨床試験は10の試験で構成され,そのうち2試験は日本での国内臨床試験だった.全試験を通じて,経口セマグルチドによる良好な血糖コントロールと体重減少への影響が示された.承認された最高用量である経口セマグルチド14 mgは,対照群であるプラセボ,エンパグリフロジン,デュラグルチド,シタグリプチンと比較してHbA1cを有意に低下させ,リラグルチドに対しては非劣性であることが示された.経口セマグルチド14 mgは,プラセボ,シタグリプチン,リラグルチドに対しては体重減少に優越性を示し,エンパグリフロジンに対しては同等の体重減少への影響を示した.PIONEER試験において,経口セマグルチドの忍容性は良好であり,他のGLP-1RAと同様の安全性を示した.また,心血管アウトカム試験の結果から経口セマグルチドの心血管への安全性が示され,プラセボと比較して,心血管死および全死亡のハザード比が有意に減少していた.したがって,経口セマグルチドは2型糖尿病罹患の初期からのGLP-1RAsの開始という効果的な治療オプションをもたらし,2型糖尿病患者に新たに有効な選択肢を示したと考えられる.

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