日本薬理学雑誌
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77 巻, 6 号
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  • 柳浦 才三, 武田 弘志, 西村 友男, 三澤 美和
    1981 年 77 巻 6 号 p. 559-568
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    去疾薬 bromhexine の有効性およびその作用機序追求を目的として,気管杯細胞,気管腺の分泌機能に及ぼす影響およびこれら分泌細胞含有糖蛋白(GP)動態に及ぼす影響について組織学的,組織化学的面から検討を行なった.雄性雑犬の摘出気管を Hanks 液中で bromhexine(10-7~10-4M)30分間処置した.薬物処置後,固定し,光顕用組織標本を作製した.作製した気管組織標本を alcian blue(pH2.5)-pcriodic acid Schiff[AB(pH 2.5)/PAS]染色,AB(pH 1.0)/PAS 染色の2重染色を施し,150倍の顕微鏡写真にした.これを組織学的・組織化学的指標に従い解析を行なった.杯細胞および気管腺の分泌機能に及ぼす影響:染色陽性総杯細胞数の変化は認められなかった.一方,bromhexine 高濃度処置により,気管腺腺房の内径および acinar inner diameter to wall rado(AIWR)の増加,腺房の厚さの濃度に依存した減少が認められた.また, Reid index の軽度な増加傾向が認められた.杯細胞および気管腺含有 GP 動態に及ぼす影響:酸性糖蛋白(AGP)含有杯細胞数は bromhexine の濃度に依存した減少が認められ,これに伴い中性糖蛋白(NGP)含有杯細胞数の著明な増加が認められた.また,AGP の中の硫酸化糖蛋白(SGP)含有杯細胞数の濃度に依存した減少も認められた.気管腺においても,AGP およびSGP 含有気管腺腺房細胞数の減少,これに伴い NGP 含有気管腺腺房細胞数の著明な増加が認められた.インキュベーション液中の総糖質,N-acetylhexosamine および蛋白質濃度の変化: bromhexine 高濃度処置により,総糖質および蛋白質濃度の増加,N-acctylhexosamine 濃度の減少傾向が認められた.以上より,bromhexine は杯細胞の分泌機能には影響を示さず,高濃度で,気管腺の分泌機能を促進する.また,これら分泌細胞含有 AGP を溶解する作用が認められる.
  • 古城 健太郎, 斎藤 輝男, 加瀬 佳年, 等 泰三
    1981 年 77 巻 6 号 p. 569-578
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    投与した色素が気管支腺から排泄されることを利用して気管支分泌量を知ろうとする作野氏法をラットに適用し,N-acetyl-L-cysteine(NAC)および他の既知去痰薬の気道分泌に対する作用を比較検討した.次に直接気道液を定量的に採取し,液量の増減から去痰薬の効果を判定する Perry and Boyd の原法を改良した方法(Engelhorn および加瀬らの方法)を用い,正常ウサギの気道液量に対する NAC の作用を調べた.さらに,ウサギを SO2 ガスに長期間曝露し,亜急性気管支炎に罹患させ,その痰を定量的に採取し,痰の粘度ならびに痰の構成成分に対する NAC の作用を検討した.その結果下記の結論を得た.なお薬物はすべて胃内に投与した.1)正常ラットを用いた作野氏法による実験:各種去痰薬の気道分泌活性を ED35(対照値に比べ35%増加させる量)から比較すると,bromhexine・HCl 4.4mg/kg,pilocarpine・HCl 24mg/kg,potassium iodide 68mg/kg,L-methylcysteine・HCl 720mg/kg,sodiummercaptoethane sulfbnate 750mg/kg,NAC 1050mg/kg,S-carboxymethyl cysteine 1550mg/kg であった.はじめの3者は気道分泌量増加を主作用とし,後の4者は痰の粘度低下を主作用とする去痰作用機序の相違と思われる効果の差がみられた.2)正常ウサギを用いた気道液量測定実験:NAC 500mg/kg では,投薬後2時間目に気道液量が増加する傾向がみられたが有意ではなく,1000mg/kg および 1500mg/kg に増量すると,3~5時間をピークとして気道液量は有意に増加した.500mg/kg 以上の用量を投与すると,投薬後2時間目ごろから気道液の白濁がみられ,NAC が粘稠な気道液を流動化していることが推察された.3)亜硫酸ガス気管支炎ウサギを用いた実験:NAC 1000mg/kg および 1500mg/kg により,投薬後6時間分の痰の粘度は用量依存的に低下し,痰の凍結乾燥物質重量,蛋白質量および糖質量も痰の粘度に比例して減少した.以上の 成績より,NACは痰の粘度を低下させて痰の流動性を増し,さらに気道液量増加による痰の稀釈が加わって痰を出し易くするものと思われる.
  • 久保山 昇, 藤井 彰, 田村 豊幸
    1981 年 77 巻 6 号 p. 579-596
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    熊笹葉エキス(bamboo Leaf extracts,BLE)および熊笹葉リグニン(bamboo leaf lignin,BLL)の抗腫瘍作用を,in vivo で benzopyrene(BP)および4-nitroquinoline-1-oxide(4NQO)誘発腫瘍マウス,ラットを用いて検討した.またその作用機序を in vitro で,Rec-assay 法および Ames test を用いて検索した.in vivo 抗腫瘍作用は,ddY 系雄性マウス1群20~30匹,16群を使用し,実験期間は120日間とした。対照群は水,実験群には1%,10% BLE および0.1% BLL を自由飲水させた.実験開始と同時に週1回の割で,BP を5回,4NQO を3回背部皮下に投与し誘発腫瘍を作成した。ラットを用いた実験では, Wistar 系雌性ラット1群10匹,9群を用い,実験期間は150日間とした.あらかじめ1%,10% BLE を自由飲水させ,30日後に週1回の割で3回 BP を皮下投与した.抗腫瘍性はマウス,ラットの各群における腫瘍出現率,摘出腫蕩重量,発癌性指数,および腫瘍抑制率を用いて算出した.また,体重変化,一般症状も観察した.実験期間を通じて,BLE および BLL を自由摂取したマウス,ラットは体重変化,一般症状,および主要臓器の病理組織学的所見において,特に異常は認められなかった.よって,BLE および BLL の毒性はきわめて低く,長期大量投与の可能性も示唆きれる.抗腫瘍作用に関してはマウス,ラット共に1% BLE 群(0.71mg/ml)が腫瘍抑制効果が最も高いことが認められた.また弱い抗腫瘍性が10% BLE,0.1% BLL に認められた,このことから BLE の最適投与量は1%溶液であることが示唆される.in vitro の実験では,Rec-assay 法において BLE 1.4mg/disc から DNA 損傷作用が現われ,また,Ames testにおいて BLL(0.565mg/plate)のラット S-9 代謝産物に,TA98 で spontaneous mutation の約2倍の His+ の出現がみられた.このことから,BLE およびこの成分中の BLL の抗腫瘍作用は,腫瘍細胞に直接的に作用する可能性を示唆している.
  • 松永 和樹, 上田 元彦
    1981 年 77 巻 6 号 p. 597-604
    発行日: 1981年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
    3種のβ遮断薬 propranolol,pindolol および practolol を無麻酔の SHR に腹腔内投与し,薬物投与前後の血圧(MBP),心拍数(HR)および心拍出量(CO)を経時的に測定すると共に総末梢抵抗(TPR)を算出した,前日に左総頸動脈と右外頸静脈の間にarterio-venous shunt を作成し,CO は色素希釈法に基づき,MBP および HR は観血的に測定した.1)propranolol 5mg/kg,pindolol 0.1mg/kg および practolol 50mg/kg により持続性の急性抗高血圧作用が得られた.2)propranolol による抗高圧作用発現時(20~30mmHg,0.5~8時間),初期(0.5~4時間)には CO が,後期(6~8時間)には TPR が減少した.3)pindolol または practolol による抗高血圧作用発現時(30~50mmHg,0.5~8時間;30mmHg,2~8時間),ほぼ全抗高血圧作用期間を通じて CO は増加し TPR は減少した.4) HR は propranolol により減少し,pindolol によって増加したが practolol の作用は軽微であった.以上,propranolol,pindolol および practolol の無麻酔 SHR における急性抗高血圧作用には,それぞれに特徴ある血行動態変化が関連していることを明らかにした.
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