日本薬理学雑誌
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81 巻, 5 号
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  • 五味田 裕, 市丸 保幸, 森山 峰博, 小川 暢也, 上野 聖満
    1983 年 81 巻 5 号 p. 323-331
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    著者らは動物の純心理的な情動反応を種属内の情動伝播という形で設定可能なcommunication boxを用いて条件情動刺激(CES)負荷後の動物に胃粘膜欠損を認めた.今回はこのCES負荷時の胃粘膜欠損に対する新規化合物で,抗うつ作用を有する2-(4-methyl aminobutoxy)diphenylmethane HC1(MCI-2016)の抗潰瘍作用について,他の抗うつ薬imipramine,amitriptyline,抗不安薬diazepamさらには抗潰瘍剤sulpirideの作用と比較検討した,まず,12時間のCES負荷実験では物理的情動刺激(foot shock)負荷動物(senders)の95.8%に,また心理的情動刺激を受けた動物(responders)の72.4%に胃粘膜欠損が認められた.次にこのrespondersに対するMCI-2016ならびに他の薬物について調べた結果,MCI-2016 20,50,100mg/kg,p.o.(それぞれ6時間間隔で2回投与,以下の薬物も同様)で胃粘膜欠損の著明な抑制を認めた.imipramineでは10,20mg/kg,p.o.で,amitriptylineでは5,10mg/kg,p.o.で同様の抑制作用が認められ,さらにdiazepam 1,2mg/kg,p.o.の少量で,またsulpiride 100mg/kg,p.o.で同様に胃粘膜欠損の有意の抑制作用が認められた.以上の結果からCES負荷によりsender群ならびに電撃を受けないresponder群に胃粘膜の欠損が生じ,さらにこのrcsponder群に対してMCI-2016ならびにimipramine,amitriptylineさらにはdiazepam,sulpirideが胃粘膜欠損発生抑制作用を有することが示された.
  • 山崎 信彦, 門間 芳夫, 田辺 恒義
    1983 年 81 巻 5 号 p. 333-342
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    propranololとatenololの尿中電解質排泄におよぼす作用についてurethaneで麻酔したWistar系ラットで実験をおこなった.0.9% NaClで補液し左右尿管にカテーテルを挿入し左右別々に尿を採集した.1)propranololおよびatenololの頸静脈内投与では,両薬物共に著明な尿量の増加と尿中へのNa,KおよびClの排泄増加を起こし,その作用は両薬物共に用量依存的であった.また,作用強度において両薬物間に差が認められた.2)カテーテルを左頸動脈から腹部大動脈内に挿入し,その先端を左右腎動脈起始部申間点に位置させた.このカテーテルより薬物を投与し,左右尿管からの電解質排泄について比較検討した.両薬物は共に尿量と尿中電解質排泄の増加を起こした.この作用は右腎臓よりも左腎臓において強く起こり,左右腎臓間には有意な差が認められた.また,この左右腎臓間の差はatenololの場合に特に強く起こった.以上の結果からpropranololおよびatenololは何れも尿中Na,KおよびClの排泄量の増加を伴う尿量増加作用を有し,propranololはatenololよりもやや強い利尿作用を表わした.また,腹部大動脈内投与において,Na利尿が左右腎臓の間に有意な差が認められたことより,両薬物の利尿作用は腎臓直接作用によるものであり,atenololは左腎臓に対し特に著明なNa利尿を起こしたことから,この薬物の腎臓初回通過効果がpropranololより大であるものと推測される.
  • 後藤 一洋, 大菅 邦男, 芳賀 慶一郎, 津曲 立身
    1983 年 81 巻 5 号 p. 343-363
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    traxanoxは各種試験において300mg/kg,p.o.まで中枢・体性および自律神経系に対する作用を示さなかった.traxanoxはin vitroで10-6M以上からモルモット気管筋の静止筋緊張を低下させた.この作用はisoproterenolやpapaverineよりも弱いものであった。traxanoxはin vivoおよびin vitroでchemical mediatorsに対する競合的拮抗作用を示さなかった.幽門結紮ラットにおける胃液分泌および胃灌流ラットにおけるpolymyxinによる胃酸分泌に対し,traxanox(10mg/kg,s.c.または3mg/kg,i.v.)はdisodium cromoglycateと同様に抑制作用を示した.また,麻酔犬へのtraxanoxの静脈内投与により一過性の胃腸運動の低下と,小腸ではこれに続いて弱い運動充進が認められた.この運動充進はatropineの前処置で完全に抑制された.traxanox 10-4Mはモルモット回腸を直接収縮させ,この反応もatropineによって抑制された.しかし,traxanoxは経口投与でマウスの腸管輸送能,ラットの消化管粘膜,水浸拘束ラット胃潰瘍およびラットの胆汁分泌に対し,300mglkg,P・o・まで何ら作用を示さなかった.traxanoxはラットで利尿作用(30mg/kg,p.o.以上)を示し,この作用は副腎摘除で影響されず,indomethacinとの併用で消失した.traxanox 10mg/kg,i.v.はdisodium cromoglycateと同様に妊娠ラット子宮自動運動を抑制する例があった.traxanoxは300mg/kg,p.o.で血漿中corticosteroncを増加させたが,血糖および血清脂質は変化しなかった.以上の知見から,traxanoxは抗アレルギー作用を示す用量(1~5mg/kg,p.o.)で中枢・体性・自律神経系,消化器系および泌尿・生殖器系に対し,ほとんど作用を示さないものと推定される.
  • 渡辺 泰雄
    1983 年 81 巻 5 号 p. 365-383
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    dopamine(DA)あるいはserotonin(5-HT)を脳内で増量させる目的で,その前駆物質であるL-3,4-dihydroxyphcnylalanine(L-dopa)あるいは5-hydroxytryptophan(5-HTP)を投与する事は,しばしば行なわれている.この場合,本来その伝達物質を含有する細胞でこの増量が期待される.しかし,L-dopaからDAを,または,5-HTPから5-HTを生合成する酵素(aromatic L-amino acid decarboxylase,AAAD)は脳内において少なくとも4つの異なった細胞(DA,5-HTならびにnorepinephrine含有神経細胞,および毛細血管周囲細胞)に存在することが知られている。ラットに,Ldopaあるいは5-HTPを腹腔内投与後,生合成きれたDAあるいは5-HTが,脳のどの部位に存在するかを検討した.1)L-dopa投与により脳内DA量が6倍以上に増加すると5-HT量の有意な減少と5-hydroxyindoleacetic acid量の有意な増加が認められた.しかし,DA量の増加を6倍以下に抑えれば5-HT neuronに影響を与えなかった.2)神経終末分画においてL-dopa投与後DA量の増加は線条体で最大であった.一方,5-HTP投与後,5-HT量の増加は視床下部で最大であった.このことはL-dopaあるいは5-HTP投与後のDAあるいは5-HT量の増加の分布は,AAAD活牲の分布で決定されない事を示している.即ち,L-dopaあるいは5-HTPの神経細胞への取込み,または,生成されたもしくは5-HTのシナプス小胞への取込みなどの選択性も増加の分布に関与する事を支持している.3)5,7-dihydroxytryptamine(5,7-DHT)で選択的に5-HT neuronを変性きせたラットに,大量の5-HTPを投与すると,生成5-HT量の増加は線条体で最大であった.これは,神経細胞あるいはシナプス小胞への取込みの選択性に限界があることを示唆している.以上の結果から,L-dopaあるいは5-HTPを腹腔内投与後,生合成されたDAあるいは5-HTが,それらのneuronの存在する部位において増加するか否かは1)L-dopaあるいは5-HTPの投与量,ならびに2)DAあるいは5-HT neuronが変性されないで,どれだけ正常状態で存在するか,などの要因により決定される事が示唆された.
  • (第2報)鎮痛・解熱の作用部位および作用機序について
    金子 武稔, 尾崎 覚, 山津 清實
    1983 年 81 巻 5 号 p. 385-397
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    dl-2-{3-(2'-chlorophenoxy)phenyl}propionic acid(CPP)の鎮痛作用部位を知る目的で,ウサギにおけるbradykinin(BK)誘発侵害反応に対する影響を投与ルート別に検討し,morphineの作用と比較した.morphineは静注と動注とでは同一用量(0.5mg/kg)で同程度の鎮痛作用を示し,脳室内投与ではごく微量(10μg/head)で著明な鎮痛作用を発揮した.一方,CPPは動注,即ちBKの作用部位へ直接注入すると静注による有効量(1mg/kg)の1/10量で鎮痛作用を示した.このことからCPPの作用部位は末梢にあり,BKが作用する“pain receptor”を介して鎮痛作用を発揮していると考えられる.次に,ウサギBK誘発侵害反応に対するprostaglandin E1(PGE1)の増強作用について調べた.PGE1単独では0.1~1μgを動注しても侵害反応を惹起しなかったが,PGE1を予め動注しておくとBKによる侵害反応は著明に増強された.このようにPGE1により増感きれたBK侵害反応をmorphineは抑制したが,CPPとindomethacinは抑制効果を示さなかった.これらの結果からCPPはindomethacinと同様に内因性PGの合成阻害によってBK侵害反応を抑制したと考えられる.一方,腸チフスパラチフス混合ワクチンを発熱物質としてウサギに静注あるいは脳室内投与した時の発熱に対してCPPは2.5~20mg/kg,i.v.で用量依存的に解熱作用を示した.さらにCPPの脳室内投与によっても解熱作用を示したことからCPPの解熱作用部位は中枢にあり,体温調節に関与している視床下部であると推定される.また,PGE1のウサギ脳室内注入による発熱に対しては大量のCPP20mg/kg,i.v.でもほとんど解熱作用を示さなかったことからCPPのPG合成阻害作用が解熱効果に関与していると推定される.
  • 大森 健守, 石井 秀衛, 二藤 真明, 周藤 勝一, 中溝 喜博
    1983 年 81 巻 5 号 p. 399-409
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    抗アレルギー薬oxatomideの種々のchemical mediatorsに対する拮抗作用を検討し,以下の成績を得た.1)摘出モルモット回腸におけるhistamine(Hist)10-7M,serotonin(5-HT)10-5M,bradykinin(BK)3×10-9Mによる収縮反応をoxatomideは10-8Mから抑制し,それぞれに対する50%抑制濃度(IC50)は1.7×10-7M,2.3×10-7Mおよび4.6×10-7Mであった.acetylcholine(ACh)2×10-7Mによる収縮反応に対する抑制作用は弱くIC50は7.8×10-6Mであった.2)Histの累積適用による収縮反応に対して低濃度では競合的な,高濃度では非競合的な拮抗作用を示し,pA2=8.02±0.26,pD2'=6.52±0.38であった.AChの累積適用による収縮反応に対しては非競合的拮抗作用のみを示し,pD2'=6.04±0.52であった.3)感作モルモット肺切片からの遊離SRS-Aの回腸収縮反応を10-7Mから抑制し,IC50は3.7×10-7Mであった.比較対照に用いたFPL-55712のIC50は1.2×10-8Mであった.4)Histによるモルモット摘出心房の陽性変時反応にはoxatomidcは影響をおよぼきなかった.5)Histおよび5-HT投与によるモルモット気道収縮反応をoxatomideは0.1mg/kg(i.v.)から抑制したが,AChおよびarachidonic acid投与による反応には1mg/kgでも影響しなかった.6)Hist,5-HT,BK投与によるラット皮膚血管透過性亢進反応を5mg/kg(p.o.)以上で抑制し,それぞれに対するED50は14.5mg/kg,6.6mg/kgおよび21.2mg/kgであった.7)5-HT投与によるネコ瞬膜収縮反応を0.03mg/kg(i.v.)以上で抑制した.8)摘出モルモット心房標本のCa2+収縮には10-5Mで軽度の抑制作用を示すに留まったが,盲腸紐標本においてはCa2+収縮に競合的に拮抗し,pA2=6.74±0.5であった.以上の成績から,oxatomideは比較的低濃度で抗Hist,抗5-HT,抗BK,抗SRS-A作用を発現するとともに,その約10倍から非特異的な平滑筋弛緩作用を発現する薬物であることがわかった.
  • 第4報 Eptazocineの抗侵害作用に対するNaloxoneの拮抗作用について
    鍋島 俊隆, 山田 重行, 山口 和政, 松野 聖, 亀山 勉, 榊原 曩人, 松本 昌世
    1983 年 81 巻 5 号 p. 411-420
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    eptazocine(l-1,4-dimethyl-10-hydroxy-2,3,4,5,6,7-hexahydro-1,6-methano-1 H-4-benzazonine)が麻薬性鎮痛薬または麻薬拮抗性鎮痛薬のどちらに属するか,eptazocineの抗侵害作用に対するnaloxoneの拮抗およびmorphineの作用に対するeptazocineの作用を検討した.マウスでの熱板法,および圧刺激法,ラットでのtail-flick法では,eptazocineの抗侵害作用はmorphineのそれと同様にnaloxoneで完全に拮抗された.一方,マウスでの酢酸writhing法においてmorphincのED50値はnaloxone 0.5mg/kg(s.c.)前処置により,有意に上昇したが,eptazocine,pentazocineのそれは,naloxone 1.0mglkg(s.c.)を前処置しても有意な上昇が認められなかった.また,酢酸writhing法におけるnaloxoneのpA2値は,eptazocine<pentazocine<morphineであった.一方,圧刺激法でのmorphineの抗侵害作用は,eptazocineによって用量依存的に拮抗された.さらにまた,morphineの自発運動亢進作用もeptazocineによって拮抗された.以上の結果より,eptazocineはopiateagonistではなくopiateagonist-antagonistに属するものと思われる.
  • 戸部 昭広, 江川 三生, 橋本 紀子
    1983 年 81 巻 5 号 p. 421-429
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    4-(o-Benzylphenoxy)-N-methylbutylamine hydrochlorlde(MCI-2016)の抗アノキシア作用をnormobaric hypoxia,KCN-induced anoxiaおよびdecapitation-induced gasping法を用い,既存脳機能代謝改善薬,三環性抗うつ薬ならびにphysostigmineと比較検討した.上記モデルに於て生存時間あるいはgasping durationを有意に延長するMCI-2016の最小有効量はnormobaric hypoxia法;12.5mg/kg,p.o.,KCN-induced anoxia法;50mg/kg,p.o.,decapitation-induced gasping法;100mg/kg,p.o.であった.MCI-2016の抗アノキシア作用は対照として用いた既存脳機能代謝改善薬の効果に明らかに優り,さらに連続投与下でも認められた(decapitation法).一方,MCI-2016と三環性抗うつ薬のnormobaric hypoxiaに対する作用態度は明らかに異なり,後者では有意な生存時問の短縮が認められた.normobaric hypoxia法に於てatropineが生存時間を短縮し,physostigmineが著明な延長作用を発現することを考慮すると,三環性抗うつ薬によるhypoxia悪化作用発現にこれらの薬物の有する抗コリン作用が深く関与するものと推測された.MCI-2016の有するnorepine phrine uptake阻害作用が本剤の抗hypoxia作用発現にいかに関与しているかは明らかではないが,physostigmineと同様,本剤の作用がatropine処理により消失し,さらにMCI-2016がphysostigmlneと併用効果を有することから,MCI-2016の抗アノキシア作用発現機構の一部に中枢cholinergic mechanismの賦活作用が関与している可能性が示唆された.
  • 阿部 典生, 田中 啓一, 金岡 桂子, 江川 美保子, 渡辺 勲, 平井 嗣郎
    1983 年 81 巻 5 号 p. 431-440
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    piroxicamのアレルギー性炎症に対する抗炎症作用を,ラットのアレルギー性気嚢炎症および抗原惹起型関節炎で検討した.piroxicamはアレルギー性気嚢炎症において,滲出液の貯留,細胞浸潤およびlysosome酵素の遊離を1~10mg/kg,p.o.で用量依存的に抑制した.この作用はいずれもindomethacinより強く,prednisoloneと同程度であった.しかし,非アレルギー性気嚢炎症に対しては,prednisoloneのみが強い抑制作用を示し,piroxicamの作用はindomethacinと同様に弱いものであった.また,抗原惹起型関節炎においても,piroxicamは関節部の腫脹,関節機能障害,さらに,関節液中の蛋白量およびlysosome酵素の上昇を0.3mg/kg,p.o.以上の用量で著明に抑制し,この作用はindomethacinおよびprednisoloneと比較して3~4倍強力であった.非アレルギー性のcroton油誘発関節炎に対する作用は,indomethacinおよびprednisoloneと同程度の効力であった.さらに,ラットheterologous PCA反応に対して,piroxicamはindomethacinより明らかに強い抑制作用を示したが,histamineおよびbradykininによる皮内反応に対してはわずかな抑制作用を示したにとどまった,一方,piroxicamはマウスの抗体産生能や遅延型アレルギーに対してほとんど影響を及ぼさず,抗補体作用も示さなかった.以上の成績から,piroxicamはアレルギー性炎症に対して,よりすぐれた効果を有することが示唆され,その作用機序として炎症性細胞の諸機能に対する作用が考えられる.
  • 飯塚 宏美
    1983 年 81 巻 5 号 p. 441-449
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    acetylcholineおよび迷走神経刺激の心臓に対する作用をイヌ心肺標本で検討した.変力作用の指標として右房圧および心拍出量を,変時作用の指標として心拍数をそれぞれ測定した.acetylcholineは30μgより用量に比例した右房圧の上昇と心拍出量の減少を惹き起こしたが300μgまでは心拍数をほとんど減少せず,600μgで急激に減少が始まった.これらの作用はphysostigmine 100μgで著明に増強され,とくに心拍数の減少は用量依存的になった.acetylcholineの右房圧上昇および心拍出量減少作用は心拍数が変化しないようにpacingした標本でも同じようにみられた.acetylcholineの作用はpindololや6-hydroxydopamineで影響されず,atropineで遮断された.methacholineの作用はacetylcholineのそれと定性的に同じであったが,carbacholの作用はacctylcholineやmethacholineよりも強いだけでなく,右房圧の上昇や心拍出量の減少と共に心拍数の用量依存的な減少が見られた.またphysostigmineで増強きれなかった.一方,迷走神経刺激は心拍数を減少させ,同時に右房圧の上昇と心拍出量の減少とを惹き起こした.しかし,pacingした標本では迷走神経刺激による右房圧の上昇や心拍出量の減少はみられなかった.迷走神経刺激による効果はphysostigmineで増強され,atropineで遮断された.以上の結果と心房にはcholinesteraseが豊富に存在するということを考慮に入れるとacetylcholineが陰性変時作用を惹き起こしにくかったのは洞結節近辺に存在しているcholinesteraseによって分解されてしまい,洞結節に近づけなかったためと考えられる.一方,迷走神経刺激では神経終末から遊離されたacetylcholineは大部分cholinesteraseに接触することなく洞結節に作用するのであろう.なおpacingした標本での成績からacetylcholineによる陰性変力作用は心室筋のmuscarinic receptorに対する直接作用であるのに対し迷走神経刺激による陰性変力作用は心房機能抑制の間接的な結果であると考えられる.
  • 大西 治夫
    1983 年 81 巻 5 号 p. 451-458
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    ペプシンは,マクロファージの異種赤血球貫食および異種抗原提示能を増強したが,同種赤血球貧食を,逆に抑制し,同種抗原提示能を惹起しなかった.一方,マクロファージ内には,生化学的および免疫化学的に,ペプシンとは極めて類似した酵素が認められ,マクロファージの異種赤血球貧食に伴い,この活性は上昇し,この活性の細胞外への放出も認められた.しかし,同種赤血球もしくは非抗原物質貧食によっては,このような変化は見られなかった.また,ペプスタチンにより,この活性を抑制すると,異種赤血球貧食は低下した.以上の結果は,ペプシンがマクロファージ機能を修飾することを示すと同時に,マクロファージ内に存在するペプシン様酵素が,マクロファージの貧食あるいは抗原提示能発現に,重要な役割を果していることを示唆するものと思われた.
  • 鈴木 勉, 益川 善和, 吉井 利郎, 河合 貞子, 柳浦 才三
    1983 年 81 巻 5 号 p. 459-468
    発行日: 1983年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    DAF法によりmorphine(M)とmethamphetamine(MA)を併用し,Mに対するpreferenceに及ぼすMAの影響をラットを用いて検討した.選択試行1日と強制試行2日からなるsessionを6回繰り返した後,1週間毎日選択試行を行なった.M群ではM 0.5mg/g food混入飼料に対するpreference rateは漸次増加し,約70%に安定した.一方,M+MA群ではM群のようなpreference rateの上昇が認められず,MA 0.125mg/g foodの併用群ではM群に対して有意な抑制が認められた.また,MA 0.125mg/g fbod混入飼料と普通飼料をラットに選択させるとMA混入飼料を約40%摂取し,両飼料にM 0.5mg/g foodを混入しても同様の値を示したことより,Mに対するpreference rateの抑制はMA併用による味覚の変化によるものではないと考えられる.さらに,cocaineあるいはcaffeineをMと併用した場合,MA併用時のような有意なpreference rateの抑制は認められず,MA併用によるpreference rateの抑制は中枢興奮薬一般の作用によるものではないと考えられる.実験期間中のM摂取量はM群に比べMA併用群では有意に抑制きれていたが,naloxone適用後の体重減少率はM群と有意差が認められなかった.さらに他の退薬症候においてもMA併用群で著明に出現した症状があり,MA併用によりMの身体依存が増強されている可能性も考えられる.また,MおよびMAの併用効果を毒性の面からも検討したが,併用したMAの用量依存的に死亡例が増加し,また死亡が早まっていることから急性毒性の増強が示唆された.以上の結果から,MAの併用によりMに対するpreference rateは抑制され,これは味覚の変化や中枢興奮薬に共通した作用によるものではなく,MとMAの相互作用によって出現することが示唆できる.また,MとMAの併用による作用増強がpreference rate抑制に関与していることも示唆できる.
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