日本薬理学雑誌
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83 巻, 5 号
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  • 喜多 富太郎, 秦 多恵子, 原田 典子, 伊藤 栄次
    1984 年 83 巻 5 号 p. 373-382
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    1時間の拘束水浸ストレス(RWIS)を負荷したddY系雄性マウスのECGを測定すると,心拍数の著減,PQ,QTおよびQRS各間隔の著しい延長が認められた。このワゴトニア(vagotonia)型を示すと考えられる異常ECGを有するRWISマウスに,adrenaline(Adr)またはmethacholine(MCh)により不整脈を惹起させ,洞性不整脈,上室性および心室性期外収縮,第1度および第2度の房室ブロック(A-Vブロック),洞房ブロック(S-Aブロック)および洞停止を指標として,それぞれの出現頻度を悉無律に従って求め,正常マウスにおけるそれらと比較検討した.その結果MCh不整脈ではRWISマウスにおいて心室性期外収縮A-Vブロック,S-Aブロックおよび洞停止の出現が高頻度であった.一方Adr不整脈ではいずれのタイプの不整脈もRWISマウスにおいて高頻度に出現した.そこで次に,RWISマウスにおけるAdr不整脈多発に及ぼすβ遮断薬(oxprenolol,propranololおよびcarteolol)のAdr不整脈阻止効果を調べた.oxprenolol 5,10およびpropranolol 5各mg/kgの1回経口投与により心室性期外収縮ならびに第1度A-Vブロックの出現が阻止され,carteolol 5mg/kgの1回経口投与では上室性期外収縮と第1度A-Vブロックが阻止された.oxprenolol 1~10mgの3回投与によっては期外収縮ならびにA-Vブロックが阻止された.しかしその阻止効果は1回投与と同じ程度であった.以上のRWISマウスにおける成績を前報のSARTマウスにおけるMCh不整脈出現およびそれに及ぼすβ遮断薬の作用と比較検討した.その結果,oxprenololはSARTのような慢性症状には連続投与により強力な効果を発揮し,またRWISのような急性症状に対しては1回投与で不整脈に対し発作抑制的な効果を有しているといえる.
  • 樋口 昭平, 長田 祐子, 塩入 陽子, 中池 司郎, 村松 信, 田中 誠, 新井 巖, 天沼 二三雄, 小友 進, 相原 弘和, 鶴藤 ...
    1984 年 83 巻 5 号 p. 383-394
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    oxaprozinの抗炎症作用を,急性および慢性炎症モデル動物で,また,その作用機序をin vitro試験で検討した.ラットにおける酢酸誘発腹腔内血管透過性亢進,carrageenin足浮腫,綿球肉芽腫およびadjuvant関節炎に対するoxaprozinの抑制作用の強さは,いずれもaspirinと同等であった.一方,マウスにおけるcarrageenin足浮腫および酢酸誘発腹腔内血管透過性充進に対するoxaprozinの抑制作用は,sulindacやfenbufenと同等か強く,ibuprofen,phenylbutazoneおよびaspirinよりも強かった.oxaprozinのcarrageenin足浮腫抑制作用は,副腎摘出ラットにおいても認められた.ウシ精嚢腺ミクロゾーム標品によるarachidonic acidのprostaglandin E2への変換に対するoxaprozinの50%阻害濃度は,8.0×10-6Mで,ibuprofenと同等のシクロオキシゲナーゼ阻害活性が認められた.ウシ血清アルブミン熱変性およびウサギ赤血球熱溶血のいずれに対してもoxaprozinは抑制作用を示した.しかし,ラットにおけるserotonin,formalinおよびdextranによる急性足浮腫に対し,oxaprozinは抑制作用を示さなかった.以上の結果は,oxaprozinが一般的な酸性非ステロイド性抗炎症薬と同質の抗炎症活性を有することを示している.また,oxaprozinのラットにおける胃粘膜障害作用はphenyl-butazoneおよびaspirinより弱く,ibuprofenと同程度と考えられる.なお,oxaprozinの代謝速度には大ぎな動物種差があり,ラットでは他の動物種にくらべ著しく代謝速度が速いため,血中濃度の持続が得られず,ラットにおけるOxaprozinの効力が弱い理由となっている.しかし,比較的代謝速度の遅いマウスにおける効力はfenbufenやsulindacと同程度で比較的強くなっている.oxaprozinのヒトにおける血中濃度半減期は,49~69時間であり,血中濃度持続時間が長いため,ヒトにおいては比較的強い作用が長時間持続することが期待される.
  • 五藤 准, 村松 信, 細田 和昭, 小友 進, 相原 弘和
    1984 年 83 巻 5 号 p. 395-400
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    非ステロイド性抗炎症薬oxaprozinの血小板凝集ならびにprostaglandin(PG)synthetaseに対する作用を検討した.in vitroにおけるウサギ血小板のarachidonic acid(AA)凝剰こ対してoxaprozinは用量依存的な抑制作用を示した.そのIC50は124.2μMで,indomethacin,piroxicamよりは弱く,aspirin,phenylbutazoneとほぼ同等で,ibuprofenの約2倍の強さであった.ex vivoにおけるラット血小板のcollagen凝集に対するoxaprozinの抑制作用は弱く,300mg/kgで抑制作用を示した.indomethacin,aspirinおよびibuprofenは100mg/kgですでに抑制作用を示し,phbenyl-butazoneも300mg/kgで作用を示すが,その作用はoxaprozinより強かった.血小板のADP凝集に対してはウサギin vitro,ラットex vivoのいずれにおいてもoxaprozinは抑制作用を示さなかった.またマウスAA致死に対してoxaprozinは用量依存的な抑制作用を示し,そのED50は56.4mglkgであった.この作用はsulindac,piroxicamおよびibuprofenより弱く,aspirinとほぼ等しく,phenylbutazoneの約5倍の強さであった.一方,PG synthetaseに対してoxaprozinは用量依存的な阻害作用を示した.その作用はindomethacin,piroxicamより弱く,ibuprofenとほぼ同等で,phenylbutazoneおよびaspirinより強かった.以上の結果より,oxaprozinは一般的な酸性非ステロイド性抗炎症薬と同様の血小板凝集抑制作用を有し,その作用は主としてPG生合成の阻害に基づくものと考えられる.
  • 中村 和雄, 林 哲夫, 中村 圭二
    1984 年 83 巻 5 号 p. 401-412
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    中枢の神経終末部のシナプス活性の指標とされるSokoloEらの〔14C〕-2-deoxy-D-glucose(DG)法を応用し,水浸拘束ストレス下での中枢神経諸核中への3H-DG取り込みの変動と,benzodiazepine系薬物であるbromazepamの影響をWistar系雄性ラットを用いて検討した.10分間の水浸拘束ストレスは検索した42の神経核中,前頭葉,扁桃体中心核・外側核,腹内側核,黒質,外側網様核ならびに偽核と下垂体前葉,副腎で,右意(P<0.01)なグルコース利用率の増加をきたした.この変化は扁桃体中心核,偽核ならびに下垂体前葉で特に著明であり,bromazepamの非筋弛緩用量(1mg/kg,p.o.)はこれらの部位でのストレス性興奮に選択的に拮抗した.より長期にわたる55分間の水浸拘束ストレスは,検索した全神経核ならびに下垂体,副腎で著しいグルコース利用率の非特異的な上昇を示した.なお動揺性高血圧症のモデルとした高血圧自然発症ラットでは,軽度な拘束ストレス(30秒間)が末梢循環血中へのカテコールアミン(epinephrine,norepinephrine)ならびにdopamine β-hydroxylaseの遊離を促進し,同時に昇圧反応をきたしたが,いずれの反応もbromazepam(3mg/kg,p.o.)の前処置で完全に抑制された.以上の結果から,拘束ストレスは主に扁桃体,腹側扁桃体遠心路ならびに視床下部内の神経核を活性化し,下垂体一副腎系と末梢交感i神経系の興奮をもたらすと考えられ,bromazepamは扁桃体中心核に主要な作用部位を有するものと推定される.またbromazepamは動揺性の情動性高血圧症への有効性が示唆される.
  • 秦 多恵子, 喜多 富太郎, 伊藤 栄次, 原田 典子
    1984 年 83 巻 5 号 p. 413-424
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    SARTストレス動物の交感型異常心電図に及ぼすβ遮断薬,oxprenololおよびcarteololの作用をpropranololの場合と同様に検討した.その結果oxprenololはpropranololより緩和な異常抑制効果が認められた.次いでこのマウスの心臓機能をさらに詳しく調べる目的で薬物による実験的不整脈を惹起させ,その出現頻度を正常動物のそれと比較し,次いでこれに及ぼすβ遮断薬の効果を調ぺた.対照としてddY系雄性マウスにadrenaline 10μg/kgをi.v.投与し,洞性不整脈,期外収縮,房室ブロック,洞房ブロックおよび洞停止を指標として,それらの出現頻度を動物の個体数から求めた.次いでSARTマウスに同様adrenalineを投与したところ,いずれの不整脈も正常マウスより低頻度に出現した.次にmethacholine chloride 300μg/kg,i.v.により不整脈を惹起させ,出現頻度を求めたところ,SARTマウスでは期外収縮,房室ブロックおよび洞房ブロックの出現が正常マウスのそれより有意に高頻度であった,次にSARTマウスにおけるmethacholine不整脈発現に及ぼすoxprenolol,propranololおよびcarteololなどの阻止効果を調べた,薬物の1回経口投与では,5,10mg/kgで上室性期外収縮ならびに洞房ブロックの両者においてのみ出現が阻止された.またストレス負荷期間中,毎日1回経口投与すると,上室性期外収縮,洞房ブロックのほか,房室ブロックの出現も有意に抑制された.対照の正常マウスにこれらの薬物を投与しておいても,methacholine不整脈にはほとんど無影響であった.これらの実験結果よりSARTマウスは心臓においては交感型を示し,methacholine不整脈に対する緩解作用により,β遮断薬の自律神経失調症に由来する不整脈に対する抑制作用の一検定方法となり得る可能性を示唆するものである.
  • 藤木 一眞, 坂田 利家, 荒瀬 高一, 筒井 浩一郎, 福嶋 正孝
    1984 年 83 巻 5 号 p. 425-432
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    mazindol(MZD)の摂食抑制作用を調べるため,体重・摂食量および食事(meal)パターンに及ぼす影響,それに摂食に連動する体内化学物質の変動などを検討した,実験ではすべて0.03μmole MZDをラット第皿脳室内へ注入した.実験は明暗12時間周期(明期0800~2000時)の条件下でおこなった.12時間絶食後に,MZDを投与すると,摂食量は投与直後の暗期12時間で減少したが,体重減少は投与後3日間にわたって認められた.自由摂食条件下で食事パターンに及ぼす影響を調べると,その特徴は1回食事量(mealsize,MS)の減少と共に食事後食事間間隔(postprandial intermeal interval,IMI)の延長にあった.この点amphetamineやfenfluramineなどの摂食抑制作用とは,その作用様式を異にした,また,MZD投与後に飽満度(satiety ratio=IMI/MS)は上昇し,飽満状態が誘発されることがわかった.その際,MSの減少は投与直後より4時間持続したが,IMIの延長はMSの減少より遅れて出現し,投与後2時間目より4時間にわたって認められた.血中グルコース,インスリンおよび遊離脂肪酸に対しては,1130時にMZDを投与すると,インスリンの上昇を伴わない相対的高血糖と低脂血症を誘発した.以上の結果から,MZDの摂食抑制効果は食欲中枢に直接作用して発現し,しかもamphetamineやfenfluramineとは異なると考えられた.
  • (V)ラットにおけるTrypan blueの投与方法による催奇形作用の差について
    江馬 真, 加納 晴三郎
    1984 年 83 巻 5 号 p. 433-440
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    trypan blue(TB)を子宮角腔内または胚外体腔内に投与したときの催奇形作用を妊娠ラットへの投与の場合と比較し,TBの胚への直接作用の可能性について検討した.Wistarラットを用い,精子発見日を妊娠0日として妊娠20日にラットを開腹し胎仔への影響を調べ,以下の結果が得られた.1)妊娠7日の皮下または静脈内投与ではTB50mg/kg以上の投与量で奇形胎仔が発現した.しかし,経口投与ではTB250mg/kgの投与量でも胎仔への影響は認められなかった.2)妊娠6から10日までの間にTB250mg/kgを1回皮下投与した群で奇形胎仔が発現したが,妊娠11日以後の投与では胎仔への影響は認められなかった。3)尾の奇形が最も多く,その他脊椎裂,外脳,鎖肛,脊椎骨の奇形,心臓奇形,水頭,小眼または無眼などが各群に観察されたが,奇形の型には投与日による特異性は明確ではなかった.4)妊娠7日にTB50mg/kgを皮下または静脈内投与した後の血清中のTB濃度は同様の推移を示した.しかし,TB250mg/kg経口投与後の血清中にTBは検出されなかった。5)妊娠4または6日にTB250 μg/uterine hornを子宮角腔内に投与したところ,4日の投与ではTB投与群および生理食塩水投与(対照)群ともに子宮内死亡率は90%以上であった.6日のTB投与群では子宮内死亡率が対照群に比べて有意に上昇した.しかし,両TB投与群ともに奇形の発現はみられなかった.6)TBを胚外体腔内に投与したところ,妊娠10日にTB2.5μg/embryo,11日に2.5および1.0μg/embryoを投与した群で子宮内死亡率が対照群に比べて上昇する傾向がみられた.これらの群における奇形胎仔の発現頻度はそれぞれ52.8,57.1および32.1%であり,対照群との間に有意差が認められた.奇形の型は皮下投与の場合とほぼ同様であり,尾奇形が最も多かった.7)TBの胚への移行を凍結切片により調べたところ,皮下および胚外体腔内への投与ともに胚細胞内に青色ないし青緑色の穎粒が観察された.
  • 井上 修二, 江川 正人, 佐藤 忍
    1984 年 83 巻 5 号 p. 441-449
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    9週齢約200gのSprague-Dawley雌ラットを視床下部腹内側核(以下VMH)破壊群および偽VMH破壊群に分け,2週間後,さらにラットを次の4群 1)VMH破壊普通食飼育,2)VMH破壊mazindol(50mg/kg含有粉末食)投与食:飼育,3)偽VMH破壊(対照)普通食飼育および4)偽VMH破壊mazindol投与食飼育ラットに分け,mazindolを8週間投与し,VMH破壊によって発生する視床下部性肥満と,それに伴う代謝異常に対するmazindolの作用を検討した.本実験のmazindol投与:量は,VMH破壊普通食飼育ラットに認められた過剰体重,肥満,過剰摂食,過剰臓器重量(肝,傍子宮脂肪組織,肺),高脂血症(コレステロール,中性脂肪,リン脂質,遊離脂肪酸),高インスリン血症,肝機能異常(GOT,GPT),肝内脂肪含量上昇,および脂肪滴沈着による肝の異常組織像を正常化した.一方,対照ラットについては,これら指標に血中中性脂肪低下以外には有意の変化を与えなかった.VMH破壊ラットにおけるこれらの正常化は,mazindolの食欲抑制作用に対して,VMH破壊ラットが過敏反応を示し,摂食量を極端に低下させたことが主因と推測された.
  • 加地 喜代子, 宮下 正弘, 瀬山 義幸, 山下 三郎
    1984 年 83 巻 5 号 p. 451-457
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    抗高脂血症作用が報告されているヨード卵について,その有効画分が卵黄の中性脂質画分(NL)であることを前報で報告した.今回は実験的食餌性高脂血症を起こさせたラットを用い,NLを抗高脂血症薬であるclofibrate(CPIB)および普通卵卵黄の中性脂質画分(n1)と比較し,作用機序を調べる目的で血清脂質,肝コレステロール,腎コレステロール,糞中中性ステロール,糞中胆汁酸,肝3-hydroxy-3-methylglutaryl-coenzyme A reductase(HMG-CoA reductase)活性を測定した.高コレステロール飼料飼育群(ch群)に比して血清総コレステロールはNL群で66%,CPIB群で55%に低下し,Atherogenic index: (総コレステロール-HDLコレステロール)/HDLコレステロールはch群に比してNL群で44%,CPIB群で34%に低下した.血清トリグリセリド,遊離脂肪酸はch群に比してCPIB群で各々70%,78%に低下したがNL群では低下しなかった.また,n1には血清脂質低下作用が認められなかった,一方,NL群ではch群に比して単位重量当たりの肝コレステロール値が119%に増加し,全肝コレステロール値も124%に増加した.CPIB群ではch群に比して肝重量が135%に増加したため,全肝コレステロール値が136%に増加した.腎コレステロール値は単位重量当たり,また,全腎ともにch群に比してNL群,CPIB群で変化がなかった.糞中中性ステロール,糞中胆汁酸はch群に比してどの群でも絶対量は変化しなかったが,高速液体クロマトグラフィーにより糞中胆汁酸組成を調べたところ,排泄型の胆汁酸であるlithocholic acid(LCA)のdcoxycholic acid(DCA)に対する割合が面群に比してNL群,CPIB群で増加した.肝HMG-CoA reductase活性はどの群でも変化しなかった.以上から,本実験系ではNLはCPIBと異なり,血清コレステロールをトリグリセリドや遊離脂肪酸に比して顕著に低下させ,また,その作用機序は生合成阻害,吸収阻害,排泄促進ではなく,主としてリボ蛋白代謝改善による血中および末梢から肝への脂質転送であると考えられた.
  • (VI)ラットにおけるTrypanblueおよび関連化合物の催奇形作用について
    江馬 真, 川崎 浩之進, 小川 義之, 伊丹 孝文, 加納 晴三郎
    1984 年 83 巻 5 号 p. 459-465
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    trypanblue(TB)およびその関連化合物の催奇形作用を検討した.Wistarラットを用い,精子発見日を妊娠0日として妊娠20日にラットを開腹し胎仔への影響を調べた.1)市販TB(C-TB)に混入する可能性のあるο-tolidine,1-amino-8-naphthol-3,6-disulfbnic acidまたは1-nitronaphthalene-3,6-disulfonic acid 0.26m mol/kgを妊娠7日に皮下投与したところ,いずれの化合物投与群においても胎仔への影響は認められなかった.2)C-TBあるいはGTBからシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって分画したblue fraction(blue fr.)またはred仕action(red fr.)を妊娠7日に皮下投与した結果,bluefr.100および50mg/kg投与群において奇形胎仔の発現が認められた.発現頻度はそれぞれ40.2および25.1%であり,同量のC-TB投与群(31.9および12.2%)に比べて高い傾向がみられた.blue fr.投与群で観察された奇形の型はC-TB投与群と同様であり,脊椎裂,尾奇形,彎曲足および椎骨奇形などであった.しかし,red fr.投与では100mg/kgの投与量でも奇形胎仔の発現はみられず,胎仔致死作用も認められなかった.3)妊娠11日にblue fr.あるいはred fr.の2.5または1.0μg/1μl/embryoを胚外体腔内に投与した。blue fr.2.5μg投与群における奇形胎仔発現頻度は38.9%であり,対照群との間に有意差が認められた.観察された奇形の型は尾や椎骨の奇形であり,これらの奇形はC-TBまたはblue fr.を妊娠ラットに皮下投与したとき最高頻度で認められたものと同一であった.しかし,red fr.には催奇形作用は認められなかった.以上の成績より,C-TBによる奇形胎仔の発現はblue fr.の作用であると考えられる.
  • 朴 信正
    1984 年 83 巻 5 号 p. 467-478
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    本研究は,条件情動反応の種族内伝播を利用して心理的情動ストレスを負荷させることが可能なコミュニケーションボックス法をラットへ適用し,急性実験潰瘍モデルの作成を試み,その特性を検討したものである.その際に,細径ファイパースコープを用いて,従来,小動物では報告の少ない胃粘膜病変の時間的推移を内視鏡的に観察した.また,胃粘膜障害(GML)発生に対する自律神経系の関与を検討する目的で,幹迷走神経切離術の影響を調べた.その結果,ラットの場合は,マウスと異なり,コミュニケーションボックス内で12時間情動ストレスを負荷しても,物理的情動ストレス群(E群)の38%に点状GMLが,心理的情動ストレス群(NE群)では13%に点状GMLが認められたのみで,GML発生率は低かった.そこで,単独ではGMLを誘発しない用量(1mg/kg)のレセルピンを2回前処置したラットに情動ストレスを加えると,E群全例とNE群31%に線状GMLの発生が認められた.また,NE群の44%には点状GMLが発生していた.胃粘膜病変は腺胃部に限局しており,組織学的検索の結果,両群共に大部分のGMLは粘膜層の損傷にとどまっていたが,時として粘膜筋板断裂の例も認められた.直径3mmの細径ファイバースコープを用いることにより,粘膜損傷の形状を明確に識別でき,同一個体の病態像の経時的変化を追跡できた.GMLの治癒は早く,E群とNE群共に24時間後には周囲組織の隆起が認められ,36時間後には縮小傾向,60時間後には搬痕となっていた.幹迷走神経切離術を施した群では,E群とNE群共に情動ストレス負荷によるGMLの発生が完全に抑制された.幽門形成術のみを施した偽手術群では,このような抑制効果は認められなかった.実験心身症の観点から考案されたコミュニケーションボックス法と内視鏡観察を組み合わせることにより,臨床医学の立場により近いアプローチが可能と考える.
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