日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
84 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 島田 瞭, 飯塚 宏美, 川口 武, 柳田 知司
    1984 年 84 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    d-nicotineの急性毒性および薬理作用を調べ,l-nicotineのそれと比較した,1)マウスに4-およびl-nicotineを静脈内投与した時の50%痙れん誘発:量はそれぞれ4.10および0.23mg/kgであり,LD50は6.15および0.33mg/kgであった.2)無麻酔アカゲザルの大脳皮質自発脳波は64μg/kgのd-nicotineで影響されず,同量のl-nicotineでは発作波が出現した.3)ラットにおいて,1mg/kg以上のd-nicotine皮下投与は自発運動を増加させ,DRL20”スケジュール下の反応に対して,反応間時間(IRT)の分布のパラツキを増大させ,IRTの中央値は原点側へ移行した.4)麻酔ラットの血圧はd-およびl-nicotineの静脈内投与で上昇し,心拍数も増加した.血圧を50mmHg上昇させるのに必要なd-およびl-nicotineの投与量はそれぞれ1043.7および134.4μg/kgであり,心拍数を50beats/min増加させるのに必要な投与量はそれぞれ620.8および84.8μg/kgであった.5)ラットの摘出回腸標本において,10-5M濃度の誌nicotineは影響を及ぼさず,10-4M濃度で回腸を収縮させた.l-nicotineでは10-5M濃度で10-4M濃度のd-nicotineの場合と同程度の収縮がみられた.6)ラットの摘出横隔膜神経筋標本において,d-およびl-nicotineはいずれの場合も10-5M濃度では変化はみられず,10-3M濃度で神経刺激による横隔膜の収縮を選択的に抑制した.7)麻酔ラットの静脈内にくり返しd-あるいはl-nicotineを投与するといずれの場合も血圧上昇効果は減弱し,タキフィラキシーが認められた.またこの現象はd-とl-nicotineの交差適用によっても観察された.以上の成績から,d-nicotineの薬理作用は中枢および末梢作用ともにl-nicotineと質的に類似し,その効力はl-nicotineより弱いことがわかった.
  • 阿部 泰夫, 関口 治男, 都留 清志, 入倉 勉
    1984 年 84 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    14C-glucosamine(9.88μCi/animal)を種々の条件下のラットに腹腔内投与し,胃粘膜,肝臓中酸不溶性または酸可溶性分画に取込まれる放射活性に対するKU-54の影響を検討した.ラット胃粘膜の酸不溶性分画に取込まれた放射活性は投与後,次第に上昇し,5~7時間でほぼプラトーに達し長時間組織中に滞留した.一方,酸可溶性分画の放射活性は投与1時間後にピークを示し,その後,急速に減少しすみやかに組織から排出された.また,酸可溶性分画に対する酸不溶性分画の放射活性の比率は胃粘膜では肝臓のそれより著しく大きく,酸不溶性分画への14C-glucosamineの取込みが胃では行われやすいことを示した.これらに対するKU-54の影響を検討するため,ラットにKU-54 100mg/kgを1日2回,5日間連日経口投与した(ただし,5日目は1回投与).胃粘膜の酸不溶性分画に取込まれる放射活性は有意に増加した.肝臓の放射活性は影響をうけなかった.また,hydrocortisone 20mg/kg皮下投与したラットでは胃粘膜の酸不溶性分画の放射活性が正常状態より低下したが,KU-54 100mg/kg1日2回,5日間連日併用投与した場合(ただし,5日目は1回投与),放射活性の低下が有意に阻止された.しかし,肝臓では低下が阻止されなかった,このようにKU-54は胃粘膜で特有な影響を示すと考えられた.酢酸潰瘍を形成して5日目のラットでは潰瘍辺縁粘膜の酸不溶性分画の放射活性が正常胃粘膜のそれより有意に増加した.しかし,この増加はKU-54投与によって影響をうけなかった.一方,潰瘍形成10日目では潰瘍辺縁部の放射活性は正常レベルと差がなかった.しかし,KU-54 100mg/kgの連続投与によって放射活性は正常胃粘膜のそれより有意に増加した.また,ラット胃粘膜に取込まれた放射活性は24時間,48時間後では次第に減少したがその減少率はKU-54 100mg/kg投与によって酸不溶性,酸可溶性いずれの分画でも影響されなかった.
  • 鈴木 勉, 吉井 利郎, 柳浦 才三
    1984 年 84 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    マウスにおける薬物混入飼料法を用いたmorphine型薬物の身体依存性について検討した.実験にはICR系マウスを用い,morphine,codeineおよびpethidineを適用した.各薬物とも粉末飼料に1,2,3mg/g fbodの濃度に混入し,それぞれ3日間ずつ9日間適用した,薬物適用後,各群にnaloxone 5mg/kgを皮下投与した結果,morphine群およびcodeine群では著明な退薬症候が観察されたが,pethidine群では観察されなかった,これに対し,pethidine混入飼料1,2,3,4,6mg/g foodをそれぞれ4,4,4,4,12日間ずつ28日間適用した群では,naloxone投与後,退薬症候がみられた.したがって,薬物混入飼料法を用いることにより,morphineおよびcodeincの身体依存を容易に形成することができ,さらに適用条件を考慮することにより,身体依存能の弱いとされているpethidineの身体依存の形成も可能なことが示唆された.一方,morphine混入飼料を9日間適用したマウスに休薬後,morphineの皮下投与を行うと,5mg/kg以上の投与により退薬症候が完全に消失した.すなわち,このmorphine依存マウスでの,皮下注射によるmorphine依存維持量は5mg/kgであった.また,codeineを交叉皮下投与した場合は,40mg/kgの投与で最も強い退薬症候の抑制がみられた.これに対し,pethidineを交叉投与した群では,100mg/kgを投与しても不完全な退薬症候の抑制しか観察されなかった.つまり,交叉試験の結果からも,マウスにおけるpethidineの身体依存能は弱いものと考えられる.以上より,薬物混入飼料法を用いることによって,morphine型薬物の交叉身体依存性試験も容易に行えることが示された,したがって,マウスにおいても薬物混入飼料法を用いて,morphine型薬物の身体依存の有無および強弱の一次的な評価が可能であることが示唆された.
  • 山本 研一, 松下 享, 沢田 亨, 内藤 行雄, 吉村 弘二, 武居 秀夫, 内海 静雄, 川崎 和夫, 広野 悟, 越田 光, 田崎 武 ...
    1984 年 84 巻 1 号 p. 25-89
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    各種動物の行動解析と脳波を主とする電気生理学的方法により1H-1,2,4-triazoiyl benzophenone誘導体450191-Sの睡眠導入作用と運動系に対する作用を調べdiazepam,nitrazepam,estazolam,triazolamと比較を行った.450191-S 0.6~3mg/kgの経口投与によりアカゲザル,ウサギおよびラットでは睡眠潜時の短縮高振幅の徐波深睡眠(SWDS)波の増加とその安定した持続が得られ,徐波浅睡眠(SWLS)時には紡錘波が鮮明化した.一方,nitrazepamやestazolamではSWDSの出現は少なく,その持続に安定性を欠いた.アカゲザルの睡眠導入有効量は450191-S 0.6~1mg/kg,nitrazepam 3mg/kg,estazolam 1mg/kg,triazolam 0.3mg/kgである.一方,ネコでは発揚作用,海馬律動波の周波数減少などbenzodiazepines(BDZ)の特徴が現われた.ウサギの脳波覚醒反応,ネコの後部視床下部刺激による昇圧反応などから450191-Sは視床下部―大脳辺縁系に抑制作用を有することが示唆された.450191-Sのラット扁桃核kindling抑制作用はdiazepamやnitrazepamと同程度であった,ウサギに450191-S 3mg/kgまたはnitrazepam3~6mg/kgを15日間連続投与するとSWDSのわずかな減少とFWSの増加傾向が認められた.休薬後は覚醒期がいく分増加したが対照群との間に有意差はなく,FWSの反跳性増加もなかった.ラットの脊髄反射と後根電位に対して450191-S(i.v.)は対照薬と同質の作用を示したが特にラットの対側性伸展反射に対してはBDZ睡眠導入剤様の作用を示した.骨格筋弛緩作用は450191-Sが最も弱いのでアカゲザルのSWDS増加量と歩行失調強度,ネコの視床下部性昇圧反応と呼吸運動抑制作用との比をとると450191-Sは主作用と副作用の分離した安全性の高い睡眠導入剤となる可能性が示唆された.450191-Sの血漿中活性代謝物M-1,M-2,M-A,M-3,M-4と母化合物450191-Sの薬理作用を比較し,各代謝物の血中推移と睡眠導入作用,骨格筋弛緩作用,情動行動抑制作用の相互関係を比較し,代謝物に対する母化合物の有用性を明確にした.
  • 堀 正幸, 高橋 栄明, 今野 俊幸, 井上 旬二, 羽場 輝夫, 桜田 豊三, 野田 俊治, 藤本 健太郎
    1984 年 84 巻 1 号 p. 91-98
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    15~18か月齢の卵巣摘出雌性ビーグル犬に,6か月間の低Ca食飼育を行ない発症する実験的骨粗霧症に対し,elcatonin(1u/kg)を連日筋肉内投与し,その予防効果を2回骨標識法を利用した骨形態計測により検討した.卵巣摘出と低Ca食投与の病態群は対照群にくらべ,体重および血清Ca量,inorganic phosphorus量に差異はなかったが,血清alkaline phosphatase活性の上昇がみられた.骨形態計測の結果では,腸骨海綿骨で,骨量の減少と,骨吸収および骨形成の亢進がみとめられた.この病態は,高回転性骨粗鬆症の病態に類似していた.この病態に対するelcatoninの連続投与は,体重,血清Ca量,inorganic phosphorus量,血清alkaline phosphatase活性に対しては影響を与えなかった.骨形態計測の結果では,腸骨海綿骨の骨量の減少を有意に防止した.さらに,骨吸収亢進の抑制と共に骨形成面の増加と石灰化速度の増大もみられたことから,elcatoninの骨量減少予防効果には,骨吸収抑制作用に加え,骨形成促進作用が関与している可能性もあることが示唆された.
  • 鈴木 俊雄
    1984 年 84 巻 1 号 p. 99-108
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    脊髄ネコ標本の後根反射電位(DRR)を指標として,12のbenzodiazepine誘導体の作用機序を検討した.diazepam,chlordiazepoxide,bromazepam,Hurazepam,Inedazepam,nitrazepam,oxazepam,oxazolazepam,lorazepam,prazepam,estazolam,triazolamの十二指腸内投与により,DRRは著しく増大し,シナプス前抑制も著しく増強された.semicarbazide投与によるglutamic acid decarboxylase(GAD)阻害によりDRRは著しく減少し,この状態ではdiazepamのDRR増大効果やシナプス前抑制の増強効果は消失した.本消失はpyridoxineの投与により回復し,diazepamのDRR増大効果およびシナプス前抑制の増強は再び出現した.aminooxyacetic acid(AOAA)の投与によるGABA-transaminase(GABA-T)阻害後は,diazepamによるDRR増大効果とシナプス前抑制の増強効果は著しく増強された.介在ニューロンが破壊され,脊髄内GABA量の減少が示唆されている虚血性脊髄性固縮(村山型)ネコでは,diazepamの効果はみられなかった。以上の結果より,benzodiazcpine誘導体の作用機序としてGABA受容体の感受性の亢進,あるいは脊髄内介在ニューロン終末よりのGABA遊離促進等が考えられる.
  • 山本 研一, 広瀬 勝巳, 松下 享, 吉村 弘二, 沢田 亨, 永業 正美, 城山 博邦, 藤田 明広, 松原 旦明, 月野木 祐二, 畠 ...
    1984 年 84 巻 1 号 p. 109-154
    発行日: 1984年
    公開日: 2007/03/07
    ジャーナル フリー
    マウス,ラット,ネコおよびアカゲザルを用いてlH-1,2,4-triazolyl benzophenone誘導体450191-Sおよびその代謝物の作用を行動薬理学的に解析し,diazepam,nitrazepam,cstazolam,triazolamその他のbenzodiazepines(BDZ)と比較を行った。マウス,ラットの行動は450191-Sの経口投与後鎮静的で発揚症状は現われず,マウスのAnimexおよびラットのオープンフィールド試験における自発運動にも著変を来たさなかったが,rearing,preeningを対照薬と同様に抑制した.450191-Sのchlorprothixene睡眠およびthiopental-Na 麻酔増強作用はnitrazepamと同程度,diazepam,estazolamより2~6倍強かった.450191-Sのpentylenetetrazol,picrotoxin,bicucullineけいれん抑制作用はnitrazepamと同程度であったが,抗電撃けいれん作用はいずれの対照薬よりも弱かった.450191-Sのネコ,サルの威嚇行動抑制作用は対照薬と同程度,マウスの抗闘争作用はtriazolam以外の対照薬より強く,嗅球摘出ラットのmuricideおよび情動過多反応の抑制はdiazepamとほぼ同程度であった.450191-Sの抗confiict作用はestazolam以外の対照薬とほぼ同じで,Sidman回避反応,低率分化餌強化,脳内自己刺激などのオペラント行動に対してはdiazepamと同程度の作用を示した.450191-Sは2週間の連続投与によっても麻酔増強作用ないし抗pcntylenetetrazolけいれん作用に耐性を発現しなかった.450191-Sの筋弛緩を含む体性機能の異常はどの対照薬よりも著しく弱かった.マウスの懸垂,回転棒,傾斜板試験による450191-Sの協調運動抑制作用は対照薬の1/2~1/266で著しく弱く,ネコとサルの歩行失調および麻酔ネコの呼吸運動抑制作用も対照薬より明らかに弱かった。450191-Sの血漿中代謝物M-1,M-2,M-A,M-3は母化合物450191-Sとほぼ同程度の麻酔増強作用と抗不安作用を示したが,筋弛緩や運動障害作用は母化合物より著しく強かった.以上,450191-Sは催眠作用を含む中枢神経抑制作用を有する反面,筋弛緩作用および運動失調などの副作用はきわめて弱いので安全性の高い化合物と推定された.
feedback
Top