中枢神経系におけるdopamine(DA)レセプター刺激によるアドレノセプターの変化を検討した.ラットの大脳皮質粗シナプス膜を50 mM Tris-HCl緩衝液(pH7.7)浮遊液としてDA(0.1~100 μM)またはapomorphine(0.1~100 μM)存在下で37°C,30分間インキュベートすると[
3H]clonidineで標識したα
2レセプターが濃度依存的に増加した.しかしこれらのDAアゴニスト処置は[
3H]WB4101結合でみたα
1レセプターや[
3H]dihydroalprenolol結合でみたβレセプターには顕著な変化を生じなかった.DAの[
3H]clonidine結合増加作用はインキュベーションの温度と時間に依存しており,Scatchard解析すると高・低両親和性結合成分の最大結合数増加に基づいていた.大脳皮質膜標本ではpimozide,cis-flupenthixolによる拮抗からDAの作用がDAレセプター刺激,殊にD
1レセプターを介していると考えられた.しかしDA処置による[
3H]clonidine結合増加は多くの脳部位から得た膜標本で一様に認められ必ずしもD
1レセプターの分布を反映しなかった.このことからは[
3H]clonidine結合増加にはD
1レセプター刺激とともにDAの膜機構に対する他の未知の作用も関与することが考えられた.一方,Mn
2+とDAの[
3H]clonidine結合増加作用は相加的に出現するので両者の作用機序は異なるらしい.さらにDAの[
3H]clonidine結合増加作用には一部GTP結合制御タンパク質が介在する可能性が示されたがcyclic AMPの関与は認められなかった.またDAの作用とは逆に大脳皮質膜標本をpimozide,cis-flupenthixolで単独処置すると高濃度になるにつれて[
3H]clonidine結合を低下した.今回の実験結果から中枢神経系でDAレセプターのアゴニストとアンタゴニストがα
2レセプターを逆方向に変化させる調節因子となることが示唆された.
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