日本薬理学雑誌
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85 巻, 6 号
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  • 飯島 俊彦
    1985 年 85 巻 6 号 p. 415-423
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    Understanding of the electrophysiological properties of the calcium channel in cardiac cell membranes has been hampered because of the difficulties in interpreting voltage-clamp data. Recently, new techniques for isolation of adult heart cells, internal dialyzation of the cell and analysis of the single ion channel current have been established. Some of the previous results and concepts obtained in intact cardiac tissues have been confirmed and new understanding of the nature of the calcium channels has been gained by the techniques. In this article, the author reviews the electrophysiological and electropharmacological properties of the calcium ion channels in cardiac cell membranes. Especially, emphasis is placed on new information gleaned from the new techniques.
  • 久保 孝夫
    1985 年 85 巻 6 号 p. 425-433
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    The nicotinic acetylcholine receptors present in the mammalian brain have received less attention than those in other areas of the nervous system. However, recent studies have reported the pharmacological character and regional distribution of a high-affinity binding of [3H]acetylcholine or[3H]nicotine. In this review, the pharmacological characters and physiological functions of the brain nicotinic receptors were discussed with special reference to central cardiovascular regulation.
  • 工藤 善隆, 市川 吉光, 杉浦 浩幸, 西納 啓吾, 入倉 勉
    1985 年 85 巻 6 号 p. 435-441
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    ラットの左内頸動脈内にアラキドン酸を注入して作成した脳梗塞は,脳代謝障害と脳浮腫を伴った.3-isobutyry1-2-isopropylpyrazolo[1,5-α]pyridine(KC-404)のこれらの脳障害に対する治療効果,および脳局所血流量に対する影響を検討した.1) 脳代謝:脳梗塞発症後7日目に,特に左大脳半球において有意なATPの減少とグルコースの増加が認められた.正常ラット脳と比べて乳酸およびピルビン酸は有意な変化を示さなかった.KC-404(10 mg/kg, p.o.)を発症後7日目に1回又は6日目と7日目に2回投与すると,ATPの有意な増加と,乳酸の有意な減少を生じた.さらに,グルコースが正常値に近づく傾向が認められた.正常ラットへのKC-404(10 mg/kg, p.o.)の投与は,脳内ATP,グルコースおよびピルピン酸の軽度ではあるが有意な増加を生じた.2) 脳浮腫:脳梗塞発症後4日目に,左大脳半球の水分とNa+含量およびNa+/K+比の増加,およびK+含量の減少が認められた.KC-404(10 mg/kg, p.o.)を発症の24時間後から3日間投与すると,水分含量の増加が有意に抑制され,電解質の変動が正常化する傾向を示した.3) 脳局所血流量:KC-404(0.05 mg/kg/分, i.v.)の15分間注入は,水素クリアランス法で測定した障害側の大脳皮質局所血流量を正常ラットよりも強く増加させた.以上,KC-404はラットにおいてアラキドン酸誘発脳梗塞の回復期の脳代謝障害および脳浮腫に対して治療効果を示した.さらに,作用機序として障害側の脳局所血流量の増加が示唆された.
  • 原 信行, 岡部 進
    1985 年 85 巻 6 号 p. 443-446
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    gefarnateの急性胃粘膜損傷に対する作用をHCl-ethanol,HCl-taurocholateおよびaspirinによって惹起されるラットの胃粘膜損傷モデルを用いて検討した.1) gefarnateは100,300および1,000 mg/kgの経口投与でHCl-ethanolによる胃粘膜損傷を有意に抑制した.2) gefarnateは300および1,000 mg/kgの経口投与でHCl-taurocholateによる胃粘膜損傷を有意に抑制した.3) gefarnateは300および1,000 mg/kgの十二指腸内投与でaspirinによる胃粘膜損傷を有意に抑制した.4) 対照薬として使用したcimetidineはHCl-taurocholate惹起胃粘膜損傷に対しては抑制傾向を示したにすぎず,HCl-ethanol惹起胃粘膜損傷に対しては100 mg/kgの経口投与で,aspirin惹起胃粘膜損傷に対しては30,100 mg/kgの十二指腸内投与でそれぞれ有意な抑制効果を示した.以上の結果より,gefarnateはcimetidineと同様にさまざまな原因で発生するヒトの急性胃粘膜病変(急性胃炎,急性潰瘍)に対する薬剤として期待できるものと考えられる.
  • 内田 康美, 杉本 恒明
    1985 年 85 巻 6 号 p. 447-451
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    新しく見い出された,SGB1534の循環動態に対する影響とその作用機序について,麻酔ビーグル犬を用い検討した.SGB1534(0.01 μg/kg, i.v.)により,平均血圧は8%減少し,心拍数は一過性に増加後,減少に転じた.末梢血管抵抗は減少したがVpmと時定数“T”はほとんど不変であった.phenylephrineによる昇圧反応はSGB1534によりほぼ完全に抑制された.propranololとprazosin前投与下での,norepinephrineによる昇圧反応はyohimbineで抑制されたがSGB1534では抑制されなかった.prazosinとyohimbine前投与下でのisoproterenolによる心拍数の増加作用はSGB1534で影響を受けなかった.これらの結果はSGBl534が選択的なα1-受容体遮断作用を有していることを示す.
  • 井口 賀之, 尾崎 昌宣, 岸岡 史郎, 田村 定子, 山本 博之
    1985 年 85 巻 6 号 p. 453-465
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    針鎮痛発現における下垂体β-endorphin(β-End)の関与について検討するために,通電針刺激による痛覚閾値の上昇,血漿corticosterone(Cort)値の上昇および血漿ACTH値の上昇を,下垂体摘出,dexamethasone(Dex)処置ならびに副腎摘出SD系雄性ラットを用いて比較した.対照群およびDex処置群の通電針刺激ならびに非刺激時(静止時)において,血漿ACTH値は血漿Cort値と正の相関を示し,対照群において,通電針刺激による痛覚閾値の上昇および血漿Cort値上昇の発現と消失の経時変化は相似した.下垂体摘出によって,針鎮痛は著明に減弱し,通電針刺激による血漿Cort値上昇も惹起されなかった.Dex単回大量投与によって,針鎮痛は減弱傾向を示し,通電針刺激による血漿Cort値およびACTH値の上昇は有意に抑制された.Dex連続4日間投与による下垂体機能のさらに強い抑制によって,Dex単回大量投与時よりも,針鎮痛と通電針刺激による血漿Cort値およびACTH値の上昇はより著明に抑制された.後肢加圧法による痛覚閾値の測定操作のみによっても血漿Cort値およびACTH値は著明に上昇し,この時には痛覚閾値の上昇は認められなかった.副腎摘出群の針鎮痛は対照群のそれの50%に減弱したが,通電針刺激後,副腎摘出群のACTH値は対照群のそれの5倍の高値を示した.副腎摘出群静止時のACTH値は,対照群静止時のそれの16倍に上昇し,通電針刺激によってさらに2倍に上昇した.平均値では,下垂体機能の抑制が強い程針鎮痛効果も減弱したDex処置群でも,その個々例においては,針鎮痛強度と血漿ACTH値の間に相関性は認められなかった.また静止時の血漿ACTH値は,下垂体摘出群では低値が予想され,Dex処置群では低値を示し,副腎摘出群では高値を示したが,いずれの群においてもコントロール痛覚閾値に有意な変化は惹起されなかった.これらの結果から,針鎮痛の発現機序が下垂体β-Endのみでは説明されないことが示唆された.
  • 岸岡 史郎, 井口 賀之, 尾崎 昌宣, 山本 博之
    1985 年 85 巻 6 号 p. 467-480
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    延髄巨大細胞網様核(NRGC)破壊ラットにおけるmorphine(Mor)耐性および依存形成を,初期形成過程を含めて詳細に検討し,Mor耐性および依存形成におけるNRGC関与の有無について明らかにした.両側のNRGCを,DC,0.5 mA,40秒間通電によって破壊した.耐性形成はtail flick法による鎮痛作用を,依存形成はnaloxone(NLX)誘発禁断による一般行動,体重,副腎重量および血漿corticosterone(Pcs)値の変化を指標として検討した.NRGCdestructedrat(破壊群)のMor鎮痛(4~10 mg/kg)およびsham operated rat(対照群)のそれ(2~5 mg/kg)の用量作用曲線には直線性が認められ,両者は平行であった.破壊群と対照群の等鎮痛用量比は1.95であり,NRGC破壊によりMor鎮痛は約50%減弱した.1,3,4および8日間のMor連投により,対照群の用量作用曲線は右方に平行移動し,Mor連投各時期における等鎮痛用量は,Mor連投前のそれのそれぞれ2.0,2.7,3.8および21.8倍であり,経時的な耐性形成過程が明らかであった.破壊群でも耐性が形成され,Mor連投各時期における破壊群と対照群の等鎮痛用量比は,ほぼ一定値を示し,破壊群の耐性形成は,経時的にも,その強さにおいても,対照群のそれと同程度であった.1,2,3,5および6日間のMor連投後,N正X投与によって,NLX投与量およびMor連投期間に依存傾向のある体重減少とPcs値の上昇が認められ,経時的な依存形成過程が明らかであった.また,NLXによって,NLX投与量とMor連投期間には依存しないが,明らかな一般行動変化が惹起された.この様な禁断症状は,対照,破壊両群において同様に認められ,両群のそれらに有意差は認められなかった.Mor耐性および依存形成は,経時的にも,その強さにおいても,NRGC破壊によって何の影響も受けなかった.今回の成績から,Mor鎮痛の発現と耐性および依存形成は,異なった機序によるものであることが示唆された.
  • 安藤 隆一郎, 米沢 章彦, 藤井 佶, 桜田 忍, 桜田 司, 木皿 憲佐
    1985 年 85 巻 6 号 p. 481-486
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    モルモット哺声反応を指標として,各種発痛物質誘発喘声反応に対するvanillyl n-nonoylamide(VNA)連続皮下投与の影響について検討したところ次の結果が得られた.1) bradykinin(1 μg, 3 μg)およびacetylcholine(100 μg, 300 μg)を大腿動脈内に逆行性に投与すると対照群(vehicle処理群)では強い哺声反応が誘発された.VNAの4日間連続処理(50 mg/kg, 100 mg/kg, 200 mg/kg, 400 mg/kg, s.c.)を行った群は若干抑制傾向が観察されたが,vocalization count(VC)の値を対照群と比較すると有意な差は認められなかった.2) capsaicin,dihydrocapsaidnおよびVNA(1 μg, 3 μg)を動脈内に投与すると,bradykininと比較して潜時,持続時間の短いacetylcholine様の喘声反応が誘発されたが,VNA連続処理により,各々1 μgの投与量では完全に抑制され,3 μgでも微弱な暗声反応しか示さなかった.以上,モルモットへのVNA連続皮下投与はcapsaicinoids誘発暗声反応を抑制する強いdesensitization作用を引き起こし,同時に化学刺激に対する選択的仮性疹痛反応抑制作用が観察された.
  • 江川 三生, 橋本 紀子, 戸部 昭広
    1985 年 85 巻 6 号 p. 487-492
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/03/02
    ジャーナル フリー
    雄性スナネズミの両側頸動脈結紮による脳虚血モデルでのMCI-2016(bifemelane hydrochloride)の脳保護作用を検討すると共に,併せて生存時間に対する動物の週齢差を検討した.6~40週齢の動物のうち最も若い6~7週齢のものが生存時間は最も長く(3.6±1.9時間),10~40週齢では比較的安定した生存時間(1.9~2.4時間)を示すものの30~40週齢では漸減傾向にあった.以下10~15週齢の雄性スナネズミを用いて本モデルでの薬物効果を検討した.対照群では平均生存時間は2.3~2.4時間であった.MCI-2016 25 mg/kg, i.p. および100 mg/kg, p.o. の単回投与により,平均生存時間はそれぞれ8.1,6.4時間と有意に延長された.また,対照群では観察されなかった結紮後12時間以上生存する例もあった.MCI-2016 25 mg/kg, i.p. 投与による本モデルでの神経症状は対照群に比し改善傾向にあり,特に結紮後初期に差が大きかった.一方,Ca-hopantenate 100 mg/kg, i.p. は生存時間を延長する傾向を示したが,ifenprodil 1,12.5 mg/kg, i.p. では無効であった.また,MCI-2016 25,50 mg/kg, p.o. の5日間連続投与により生存時間は,各々の単回投与の場合に比し延長される傾向を示した.以上より,MCI-2016はスナネズミの両側頸動脈結紮虚血モデルにおいて脳保護作用を有し,単回投与より連投により効果を増すことが明らかとなった.
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