日本薬理学雑誌
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89 巻, 1 号
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  • 佐々木 康夫, 長井 紀子, 沖村 勉, 山本 格
    1987 年 89 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    シアニン系感光色素であるlumin(4,4'-{3-[2(1-ethyl-4-(1-H)quinolidene)ethylidene]}propenylene[bis(1-ethyl quinolinium iodide)])を用いて,種々のアレルギー反応に及ぼす影響を検討し,以下の成績を得た.1)luminはIgE抗体産生を軽度に抑制したが,IgMおよびIgG抗体産生には何ら影響を及ぼさなかった.2)luminはラットの481時間homologous PCAを軽度に抑制し,in vitroの抗原抗体反応によるhistamine(His)遊離に対しても若干の抑制作用を示した.3)luminは遅延型過敏(DTH)反応においてcyclophosphamide(CY)によるDTH反応の亢進を有意に抑制した.以上の結果より,luminは免疫薬理作用を介することにより抗アレルギー作用を示すことが示唆された.
  • 佐々木 康夫, 長井 紀子, 沖村 勉
    1987 年 89 巻 1 号 p. 9-13
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    ヒトの自己免疫疾患である全身性エリテマトーデス(SLE)のモデル動物であるNZB/W F1マウスに,lumin 0.1~100μg/kgを2ヶ月齢から7ヶ月齢まで5ヶ月間連続投与した.その結果,抗一胸腺自己抗体のレベルの上昇を,1~100μg/kg投与により有意に抑制した.また,concanavalin A による suppressor T 細胞の誘導を100μg/kg投与において有意に促進した.更に抗―緬羊赤血球溶血斑形成細胞(PEC)応答および抗―トリニトロフェニル―リポ多糖PFC応答の低下に対し,前者においては100μg/kg投与において,後者では0.1~100μg/kg投与において有意な回復作用が認められた.以上の結果より,luminは免疫疾患マウスにおいて免疫調節作用を示すことが判明した.
  • 中村 秀雄, 元吉 悟, 石井 勝美, 世戸 康弘, 下田 敦子, 門河 敏明
    1987 年 89 巻 1 号 p. 15-24
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    flufenamic acidのdiethylene glycolエステルである外用非ステロイド性抗炎症薬etofenamateの抗炎症作用機序を明らかにする目的で作用機序に関連した諸種in vitro作用を検討した.etofenamate(3μM)はリン酸緩衝液中ラット腹腔マクロファージとの30および60分間のインキュベートでそれぞれ39.5%および57.0%がflufenamic acidに加水分解された.このマクロファージによるPGE2産生(MEM培養液中)に対してetofenamateは,flufenamic acidと同様に,1~30μMで濃度依存的な抑制作用を示した.このときのflufenamic acidへの加水分解率は15%以下であったことから,etofenamate自体のPGE2産生阻害作用が推察された.モルモット腹腔多型核白血球由来5-リポキシゲナーゼに対してetofenamateは濃度依存的阻害活性(IC50=53μM)を示し,その効力はcaffeic acidよりも勝れていた.flufenamic acidは100μMで無効であった.ラット赤血球の加温低張誘発溶血およびウシ血清アルブミンの熱変性に対してetofenamateはflufenamic acidの3分の1またはそれ以下の抑制作用を示した.以上の結果から,塗布適用されたetofenamateは,炎症巣で加水分解を受けて生成されるflufenamic acidによるprostaglandin合成の阻害,etofenamate自体によるリポキシゲナーゼの阻害ならびにマクロファージでのprostaglandin合成の阻害などの作用に基づいて抗炎症作用を発揮することが推察された.
  • 宮川 季士, 安藤 隆一郎, 桜田 忍, 桜田 司, 木皿 憲佐, 大沢 啓助
    1987 年 89 巻 1 号 p. 25-31
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    ネコを用い,扁桃核単一ニューロン活動に対するcapsaicinの作用を検討したところ次の結果が得られた.1)扁桃核から侵害刺激(ツメ付き鉗子による皮膚へのpinch)に反応するニューロン,非侵害刺激(hair bending,tapping)に反応するニューロンおよびこれら体性感覚刺激に全く反応しないニューロンが得られた.2)これら記録したすべてのニューロンについてcapsaicin(3~5μg,i.a.)の作用を検討したところ,侵害刺激に反応するニューロンはcapsaicinにも反応したが,非侵害刺激のみに反応するニューロンおよび体性感覚刺激に全く反応しないニューロンは,capsaicinにも反応しなかった.3)capsaicinの反応潜時はbradykinin(3μg,i.a.)のそれより著しく短かく,作用持続時間の平均はcapsaicinの方が長かった,4)capsaicinによる反応はmorphine(1mg/kg,i.v.)により消失し,naloxone(0.2mg/kg,i.v.)で回復した.5)capsaicinの連続投与により反応が一時的に消失するタキフィラキシー現象が認められた.
  • 桑原 明彦, 久保田 新, 八景 正乃, 中村 圭二
    1987 年 89 巻 1 号 p. 33-46
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    2-pyrrolidinone系誘導体である脳機能改善薬アニラセタムは,比較的大量投与しても運動機能および自律神経系に影響を及ぼさず,比較的少量の投与により抗健忘作用,学習機能改善作用を有する薬物である.アニラセタムの胃内経路における薬物依存性について,雄性カニクイザルを用い,まず急性中枢作用を検討し,続いて留置カテーテルを経由する投与経路により,精神依存性試験として自己摂取開始能試験ならびに身体依存性形成能試験を実施し検討した.自己摂取開始能試験における各薬物の初回単位用量について,被験薬物であるアニラセタムは,臨床用量の約2倍,すなわちカニクイザルを用いた遅延見本合わせ試験の有効量に当たる25mg/kg/injectionを,また対照薬物であるd-メタンフェタミンおよびコカインについては,中枢神経作用を示す最小用量の1/3用量であるそれぞれ0.03および3mg/kg/injectionとし,それぞれの初回単位用量について2週間試験し,以後用量を逐次増加し自己摂取開始能の有無について検討した.一方,身体依存性形成能試験における被験用量について,アニラセタムは臨床用量の約4倍の50mg/kg/injection,ペントバルビタールについては,中程度の中枢神経抑制作用を示す25mg/kg/injectionとし,それぞれ1日2回31日間強制胃内投与し,続く1週間の休薬期間における禁断症状を観察した.自己摂取開始能試験において,アニラセタム(25~50mg/kg/injection)群では,4例全例に著しい自己摂取能は認められなかった.なお,25mg/kg/injectionにおいて試験開始初期,4例中1例に有意だが低いレバー押し反応が認められたが,以後反応数は減少し用量を50,75mg/kg/injectionに増加しても反応数は低く,用量依存性もなかった.d-メタンフェタミン(0.03~0.3mg/kg/injection)群では,0.03mg/kg/injection群の4例全例に自己摂取行動はみられず,0.1mg/kg/injection群の4例中1例に軽度だが安定した自己摂取が認められ,続く休薬期間において休薬直後より1週間にわたりレバー押し反応数の著しい増加がみられた.コカイン(3,10mg/kg/injection)群では,3mg/kg/injection群の5例全例に自己摂取行動はみられず,10mg/kg/injectionにおいて5例中3例(2例に著しく)に自己摂取行動が認められたが,その後3例全例が死亡した.身体依存性形成能試験において,薬物連投(31日間)後の休薬期間(1週間)における禁断症状の有無を観察したところアニラセタム(100mg/kg/day,i.g.)群では,1週間の休薬期間において何ら禁断症状は観察されず,餌摂取量および体重にも変化は認められなかった.ペントバルビタール(50mg/kg/day,i.g.)群の6例全例に,落ち着きなさ,発揚あるいは四肢振顫等の禁断症状,ならびに身体依存形成を示す餌摂取量の減少傾向および有意な体重減少が観察された.以上の結果から,アニラセタムに自己摂取開始能および身体依存性形成能は無いと考えられる.
  • 蘇木 宏之, 内田 康美, 舛尾 正俊, 東丸 貴信, 加藤 彰一, 杉本 恒明
    1987 年 89 巻 1 号 p. 47-53
    発行日: 1987年
    公開日: 2007/02/23
    ジャーナル フリー
    我々の開発したイヌうっ血性心不全モデルを用い,α-human atrial natriuretic Polypeptide (α-hANP)の心不全に対する作用を検討した.心不全モデルは麻酔開胸イヌの左心室前壁にプロテアーゼを注入し,左心室前壁の心筋を破壊せしめ,ついでデキストラン点滴による容量負荷とメソキサミン点滴による末梢血管抵抗の増大により,体血圧を対照時のそれに近く維持することにより作成した・このモデルにα-hANPの0.50μg/kgを静脈内に投与したところ,左房圧が18.9から14.0mmHgへと減少し,体血圧は114.4から105.1mmHg,総末梢血管抵抗は21603から15602dyne sec/cm5,左室拡張終期圧は22.2から17.6mmHgとそれぞれ減少し,大動脈血流量は0.46から0.54l/minと増加した・この際,VmaxとTにはほとんど変化が認められなかった.これらの結果から,α-hANPは,イヌうっ血性心不全を改善し,それは主にα-hANPの血管拡張作用によってもたらされると考えられた.
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