成熟雌ラット(11~23週齢)で膀胱内圧に対する自律神経系を中心とした薬物の作用を検討し,さらに老齢ラット(2年齢)を用いて加齢の影響についても検討を加えた.acetylcholine(ACh),seroto-nin(5-HT),prostaglandin F
2α(PGF
2α)およびATPの静注は用量依存的な膀胱内圧上昇を示したが,histamineでは変化を示さなかった.AChによる内圧上昇はpirenzepineに比ぺてatropineにより,より強く抑制され,主にM
2受容体を介することが示唆された.またAChの内圧上昇はhexamethonium,guanethidine,diphenhydramine,cyproheptadineの前処置により一部抑制された.adrenaline(Adr)静注は低用量で内圧低下,高用量で内圧上昇を示し,noradrenalineおよびphenylephrine静注でも内圧の上昇がみられたがclonidine静注では全く作用を示さなかった.これらの内圧上昇反応は主にα
1受容体を介することが示唆された.isoproterenol(IPr),salbutamo1およびclenbuterol静注は用量依存的で同程度の内圧低下を示し,IPrの内圧低下作用はatenolo1よりもpropranololにより,より強く抑制されたことより,主にβ2受容体を介することが示唆された.ATP静注は内圧を上昇させたがadenosineでは全く作用を示さなかったことより,P
2受容体を介することが示唆された.老齢ラットでは成熟ラットに比べてAChの最大反応が著明に低下しAdrの低用量による内圧低下がみられなかった.以上の結果は,成熟ラットでの内圧上昇作用はコリン作動性M
2受容体が優位で,これに5-HT,アドレナリン作動性α
1およびプリン作動性P
2受容体なども関与し,アドレナリン作動性薬物による内圧低下は主にβ
2受容体を介することを示唆する.また,老齢化によりAChの反応性の著明な低下とβ受容体反応性の若干の低下が示唆された.
抄録全体を表示