日本薬理学雑誌
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早期公開論文
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  • 伊藤 祐実, 福島 卓, 秋山 哲志
    論文ID: 25025
    発行日: 2025年
    [早期公開] 公開日: 2025/07/10
    ジャーナル オープンアクセス 早期公開

    遺伝性血管性浮腫(hereditary angioedema:HAE)は,皮下組織や粘膜組織の再発性の浮腫を特徴とする,致死的リスクを伴う希少疾患である.本稿では,HAEの急性発作の発症抑制を目的とした新規作用機序を持つガラダシマブ(ヒト抗活性化第XII因子[FXIIa]モノクローナル抗体)の薬理学的特徴と臨床試験成績を概説する.HAEでは,血管透過性亢進を引き起こす炎症性メディエーターであるブラジキニンの過剰産生により浮腫を生じるが,ブラジキニン産生の開始点となるのが第XII因子の活性化である.ガラダシマブはFXIIaを阻害することで,ブラジキニン産生を抑制する.HAE発作には致死的な喉頭浮腫が含まれるが,その発現は予測不能であり,疾患重症度はHAE患者間で大きく異なるため,発作を取り除くまたは発作頻度と重症度を軽減する治療に対するアンメット・メディカル・ニーズが存在する.また,長期予防では患者の治療負担軽減のため,より簡便で投与間隔の長い治療薬が望まれている.健康被験者に対する安全性と薬物動態を検討した第Ⅰ相試験,HAE患者を対象に複数の用量の有効性と安全性を検討した第Ⅱ相試験の結果を受け,第Ⅲ相試験ではHAE患者64名(ITT集団:ガラダシマブ群39名,プラセボ群25名)に対するガラダシマブ200 mg月1回皮下投与の有効性と安全性がプラセボ群と比較検証された.主要評価項目である月間HAE発作回数は,ガラダシマブ群がプラセボ群よりも有意に低く(0.27 vs. 2.01,P‍<‍0.001,検証的解析結果),相対減少率は87%であった.ガラダシマブ200 mgの月1回皮下投与は良好な安全性プロファイルを示した.さらに,6ヵ月間の治療期に無発作であった患者割合は,ガラダシマブ群62%,プラセボ群0%であり,初回投与後に認められた治療効果は試験期間を通して維持された.また,ガラダシマブは月1回のオートインジェクターによる皮下投与であることから,患者の治療負担軽減も期待できる.

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