顎口腔系機能障害と咬合異常の関連性をより明確にする目的で, 顎関節を解剖学的に観察し, 顎関節の形態変化に影響を与えると考えられる年齢, 咬合状態と下顎頭, 関節円板の形態変化について検討した。
試料は, 男性献体103例の左右側206顎関節の下顎頭と関節円板を用いた。形態変化の評価は, 下顎頭, 関節円板の構造変化の程度をGrade 0, 1, 2の3段階で示した。咬合状態は, 上下顎の咬合関係を4型に 分類した。A型は上下顎の前歯, 左右側臼歯ともに咬合しているもの, B型は上下顎の一部, つまり前歯のみ, または臼歯のみで咬合しているもの, C型は上下顎の咬合接触のない, つまりすれちがい咬合, あるいは残根のみのもの, D型は無歯顎のものとした。その結果, 下顎頭の形態変化と年齢の関係は, C型を除き, A型, B型, D型では有意な相関関係は認められなかった。関節円板の形態変化と年齢の関係は, すべての咬合型で有意な相関関係は認められなかった。下顎頭の形態変化と咬合型の関係では, A型とD型, B型とD型, C型とD型において有意な差が認められた。関節円板の形態変化と咬合型の関係では, A型とC型, A型とD型, B型とD型において有意な差が認められた。以上より, 下顎頭の形態変化は加齢による影響よりも歯および歯根の存在に影響を受けること, また, 関節円板の形態変化は, 加齢による影響は少なく, 咬合状態の変化に伴い変化することが示唆された。
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