日本顎関節学会雑誌
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10 巻, 2 号
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  • MRIによる顎関節病態の評価
    中本 康道, 萩田 洋児, 小澤 奏, 野々山 大介, 末井 良和, 田口 明, 谷本 啓二, 丹根 一夫
    1998 年 10 巻 2 号 p. 335-347
    発行日: 1998/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    成人学生集団における顎関節疾患, とりわけ顎関節内障の発現様相を明らかにするために, 本学歯学部附属歯科技工士学校の学生のうち, スプリント療法の既往を有する者1名, 歯科矯正治療中の者1名, 歯科矯正治療の既往のある者1名を除く38名 (男性13名, 女性25名, 平均年齢22歳2カ月) を対象に磁気共鳴映像法 (MRI) による顎関節の検診を行った。
    すべての被検者の75関節 (画像不良の1関節を除く) について, MR画像における円板の転位度, 円板変形, 下顎頭の骨変形を評価するとともに, Wilkes/Schellhasの基準に従って顎関節内障の病態を6型に分類した。
    その結果, 以下の所見が明らかとなった。
    1. 38名中16名 (42%), 75関節中26関節 (35%) に顎関節異常が認められた。
    2. 円板転位は38名中15名 (39%) の23関節 (31%) に認められた。このうち片側性転位は7名, 両側性は8名であった。また, 円板転位を示した23関節中復位性は15関節 (65%), 非復位は8関節 (35%) であった。
    3. 円板変形は, 復位性を示した15関節中7関節 (47%), 非復位性の8関節中7関節 (88%) に認められた。
    4. 病期分類では, Stage 0: 49関節, Stage I: 7関節, Stage II: 6関節, Stage IV: 9関節, その他: 4関節 (円板転位のない骨変形) であった。
    以上の結果より, 顎関節症状を自覚していない成人学生の39%に, さまざまな病態の顎関節内障が存在していることが明らかとなった。このことから, 歯科医療を遂行する上で良好な治療成績を得るためには, 潜在している顎関節病態に十分配慮することが重要と考えられる。
  • 木野 孔司, 渋谷 智明, 渋谷 寿久, 佐藤 文明, 和気 裕之, 大村 欣章, 小林 明子, 岡本 俊宏, 佐々木 英一郎, 小宮山 高 ...
    1998 年 10 巻 2 号 p. 348-362
    発行日: 1998/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    咬合要因が顎関節症の治療効果に影響するか否かを明らかにする目的で, 片側顎関節症患者382例を対象に, 咬合要因の回避, 改善をはかった咬合治療群 (193例) とそのような意図を持たずに治療した非咬合治療群 (189例) との2群間で後ろ向き研究で検討した。検討要因としては性, 年齢, 病悩期間, 初診時重症度スコア, 保有する関連要因 (アングル分類II, III級の有無, 5mm以上のオーバーバイトとオーバージェットの有無, 大臼歯部咬合支持喪失の有無, 咬合高径低下の有無, 早期接触の有無, 非作業側接触の有無, 前歯部ガイド不正の有無, 下顎に対する外傷既往の有無, 歯列矯正治療経験の有無, 就眠時ブラキシズムの有無), 治療法 (経過観察, スタビリゼーションスプリント, 咬合調整, 投薬, 関節可動化訓練, 筋伸展, 負荷筋訓練, リポジショニングスプリント, ピボッティングスプリント, ナイトガード, 関節円板復位マニピュレーション, ガム咀嚼訓練, カウンセリング, 鍼治療) 実施の有無, 治療効果判定結果を選択し, 比較検討した。合わせて不変悪化例にどのような因子が存在するのかを明らかにするために, エンドポイントを不変悪化とし, 独立変数に上記変数を割り当てたロジスティック回帰分析を実施した。
    その結果, 上記咬合要因の回避ないし改善が必ずしも症状の改善に貢献しているとの結果は得られなかった。またロジスティック回帰分析から今回取り上げたもの以外の要因が症状の維持継続に関与している可能性が示唆された。
  • 第1報 顎関節の高速スキャンMR画像
    廣畠 広実, 鬼澤 浩司郎, 吉田 廣, 新津 守
    1998 年 10 巻 2 号 p. 363-376
    発行日: 1998/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    本研究は, 顎関節症患者の円板動態を評価する目的で, 開閉口時の高速スキャン法によるMR画像を, 閉口位, 最大開口位のspin echo (SE) 法によるMR画像と比較して画像の特徴を検討した。
    対象は顎関節症と診断された8症例 (男性2例, 女性6例) で, 年齢は19-35歳平均年齢25.9歳, 片側性顎関節患者症7例, 両側性顎関節症患者1例であった。使用した装置は1.5 Tesla超伝導MR装置 (SIGNA, GE社製) で直径3インチの顎関節用両側表面コイルを用いて撮像した。高速スキャン法は, コントラストを増加させるため, gradient recalled acquisition at steady state (GRASS法) に, magnetization transfer contrast (MTC法) を併用 (MTC-GRASS) した。一連の撮影には開口器を用いて開閉口させ撮像した。
    MTC-GRASS法は, SE法と比較し関節円板, 下顎頭にやや不明瞭となる例が認められたが, 連続画像化することにより, 関節円板, 下顎頭, 円板後方組織そして筋組織が鮮明となった。円板前方転位例において開口に伴い2方向の円板変形がみられた。
  • 宮本 諭, 細田 裕, 小川 匠, 高瀬 英世, 荒木 次朗, 亀井 秀, 伊藤 孝介, 山中 悟史, 上原 有貴, 福島 俊士, 今中 正 ...
    1998 年 10 巻 2 号 p. 377-390
    発行日: 1998/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    MR画像検査により確定診断された顎関節内障患者168名を対象に顎運動検査を施行した。画像所見から両側顎関節を含めた病態分類を行い, 各病態における運動制限所見の特徴とその出現頻度について検討した。また, 本研究対象から顎関節内障における病態の移行過程について考察した. その結果, 以下の結論を得た。
    (1) 片側症例と両側症例との間では, 運動制限所見の出現頻度に差を認めなかった。
    (2) 片側の復位性関節円板前方転位例と非復位性関節円板前方転位例との間では, 運動制限所見の出現頻度は明らかに異なっていた。この傾向は復位性の病態群と非復位性の病態群に拡大しても同様に認められた。
    (3) 関節円板側方転位の運動制限所見は復位性関節円板前方転位とは異なり, 非復位性関節円板前方転位に類似していた。
    (4) 限界運動路における運動制限の出現側, 最大開口位の不安定所見および開閉口路のW型所見は, 顎関節内障の病態を把握する上で有用な指標であった。
    (5) 復位性関節円板前方転位および関節円板側方転位の62例中4例 (6%) が非復位性関節円板前方転位へ移行した。
  • 皮膚線量の測定
    岩井 一男, 本田 和也, 澤田 久仁彦, 鈴木 ひとみ, 江島 堅一郎, 橋本 光二, 篠田 宏司
    1998 年 10 巻 2 号 p. 391-397
    発行日: 1998/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    顎関節検査時のX線被曝について, 造影透視, 単純透視さらに同時に施行した造影断層時, および単純断層の皮膚線量を, 熱蛍光線量計素子 (TLD) を用いて測定した。
    X線装置として, 透視装置である東芝社製X線テレビシステムSXT-60, および断層撮影装置としてPhilips社製多軌道断層装置Polytome-Uを使用した。被検者は臨床的に顎関節症のIII型とIV型が疑われ, 当科に診断を依頼された37名 (男性10名, 女性27名) の50関節 (造影透視17関節, 単純透視19関節, 造影断層9関節, 単純断層5関節) である。線量の測定部位は両側の顎関節部, 両側の眼窩下部および甲状腺部とした。その結果は, 下記に示すとおりである。
    1) 造影透視時, 1検査あたりの透視時間は, 1.6-4.1分の間であった。また, その際の被曝線量は, 対象側の顎関節部の皮膚線量で0.58-2.88mGyであった。単純透視のみの場合は透視時間は1.0-1.5分であり, 同じく皮膚線量は0.15-0.24mGyであった。
    2) X線透視時の入射部位における皮膚線量は, phantomによる実験から1分間あたり6.43mGyであった。
    3) 造影断層時の入射側に位置付けた対象側の顎関節部の皮膚線量は15.6mGyであった。造影透視における被曝については, 入射側の顎関節部は照射野内に入る場合と入らない場合があり大きく異なる値を示した。
    4) 単純断層撮影については, X線入射側の顎関節部の皮膚線量は, 13.6mGyであった。
  • 荻本 多津生, 小川 隆広, 梅本 丈二, 住吉 圭太, 相沢 茂, 古谷野 潔
    1998 年 10 巻 2 号 p. 398-409
    発行日: 1998/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 習慣性咀嚼側の意義, そしてのその判定法の有用性を明らかにすることであり, 次の二つの項目について検討を行った。1. 通常の問診による習慣性咀嚼側の判定法 (通常問診) と咀嚼様運動を行わせた後での問診による判定法 (咀嚼後問診) による判定結果を比較すること。2. 1による判定結果とその他の臨床診査結果との関連性を検討すること。被験者は歯学部学生, 職員の中から連続的に抽出した20歳代の102名とした。その結果, 通常問診と比較して, 咀嚼後問診では習慣性咀嚼側の自覚率が有意に増加した。習慣性咀嚼側を自覚する被験者の中で, 偏咀嚼の程度は平均で習慣側: 非習慣側にして約7:3であった。咀嚼後問診での結果は咀嚼運動を反射的に開始しようとする側 (ロールワッテテスト) と高い確率で一致した。問診による習慣性咀嚼側判定結果と下顎の基本運動との問に特徴的な関係は認められなかった。これらにより, 咀嚼後問診は, 通常用いられてきた問診法よりも高い検出率を得る判定法として期待される。しかしながら, その結果がゴールドスタンダードとしての習慣性咀嚼側を意味するか否かについてはさらに検討を要する。
  • 小川 隆広, 住吉 圭太, 梅本 丈二, 古谷野 潔
    1998 年 10 巻 2 号 p. 410-422
    発行日: 1998/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    本研究の目的はスタビライゼーションスプリントの装着が咬頭嵌合位における咬合接触様式に与える影響を明らかにすることである。本学学生1, 2年生の中から10人の被験者を抽出し, 無作為にコントロール群 (5人) とスプリント群 (5人) に分けた。上顎全歯列接触型のスタビライゼーションスプリントを作製し, スプリント群の被験者に夜間装着するよう指示した。両群において, 咬頭嵌合位における接触部位と咬合感覚を, スプリント撤去後から2時間の間, 診査した。咬合接触部位の診査にはMylar shim stockを, 咬合感覚の診査にはVisual Analog Scaleを用い, 各診査は互いにブラインドである別の術者が行った。スプリント群において, 咬合接触部位および咬合感覚はスプリント撤去後有意に変化した。しかしながら, 時間の経過とともに回復し, 被験者全員において, 咬合接触部位は1時間後に, 咬合感覚は2時間後にもとの状態にもどった。本結果より, スタビライゼーションスプリントの装着は一時的な咬合の変化をもたらすことが示唆された。しかしながら, 短期的しかも間欠的な装着であれば, それは不可逆的な咬合の変化にはつながらないと考える。臨床的に, スプリントの装着時間に対する配慮, 咬合変化の解釈に対する考慮の重要性が再認識された。
  • 依田 哲也, 塚原 宏泰, 阿部 正人, 森田 伸, 坂本 一郎, 三井 妹美, 杉崎 正志, 柴田 考典, 榎本 昭二
    1998 年 10 巻 2 号 p. 423-437
    発行日: 1998/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    無痛性顎関節雑音の診断および治療に関する意識調査を行うため, 日本顎関節学会に所属する123の歯科臨床施設 (科) にアンケートを送付し, 97施設から回答を得られた。
    関節雑音を治療する際, 分類して治療しているとした施設が70.1%であった。分類項目は様々で共通性はみられなかった。疼痛のない復位性円板前方転位雑音の全てを治療対象とするとしたは9.3%で, 条件により治療する施設が86.6%, 全く治療対象としない施設は4.1%にすぎなかった。治療対象の条件としては, 関節雑音に関して非常にわずらわしい状態が85.7%, 間歇性クローズドロックのある場合が83.3%, 顎運動時に引っかかり感が有る場合が64.3%であった。治療対象としない理由として最も多かったのは, 治療成績が悪く, 再発の可能性も高いからというものであった。そして復位性円板前方転位雑音のみでは病的な状態でないとするものが41.2%あった。
  • 滑走量と回転量による病態問の比較
    府馬 敦, 永田 和裕, 大貫 桂輔
    1998 年 10 巻 2 号 p. 438-451
    発行日: 1998/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    TMD患者における顎運動障害の発生には, 顎関節や咀嚼筋の異常が密接に関係すると推察されるが, これらの異常と顎運動障害との関連は十分に調査されておらず, 運動障害の特徴や発生メカニズムは現在でも明らかにされていない。
    したがって, 本研究では, 顎関節や咀嚼筋の異常と顎運動障害との関連を明らかにする目的で, TMD患者の顎運動の定量的な評価を行った。
    被験対象としてTMD関節94関節を選択し, また対照として健常関節9関節を選択した。
    顎運動の記録には, 永田らの開発した装置を用い, 下顎頭の最大滑走量と最大回転量を計測した。TMD患者は, 咀嚼筋と顎関節の障害に基づいて, 6つのグループに分類し, 各グループごとの最大運動量を求めるとともに, 判別解析を用いて各群問の統計学的な比較を行った。
    結論は以下のとおりである。
    ・明確な運動制限は顎運動障害群のみで認められた。
    ・円板転位復位型の77%, 円板転位非復位型の16%, 変形性関節症の50%は運動量が正常であり, 顎関節異常を有する関節でも, 運動制限を認めないものが存在することが確認された。
    ・円板転位復位型では, 健常群よりも運動範囲が増大あるいは減少する傾向を認めなかった。
    ・円板転位非復位型では, 健常者よりも滑走運動と回転運動が減少する傾向を認めた。
    ・PDと過剰運動との関連は確認されなかった。
    以上の結果より, 運動制限には顎関節異常が関与することが示唆され, 顎関節異常に応じて, 運動制限の特徴が異なることが示された。
  • 米津 博文, 野沢 健司, 須賀 賢一郎, 木住野 義信, 今中 正浩, 小林 馨
    1998 年 10 巻 2 号 p. 452-458
    発行日: 1998/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    エックス線テレビシステムを用いる顎関節腔造影検査において, 復位を伴わない円板前方転位と診断された患者36名における関節円板穿孔の有無と, それら患者の三次元顎運動所見および臨床所見との関連性について統計学的手法を用いて調査した。その結果, 関節円板穿孔の有無と顎運動所見との間には明らかな関連性は認められなかった。一方, 下顎頭外形異常は関節円板穿孔の関連因子であり, そのオッズ比は9.0であった。
    以上のことから関節円板穿孔の診断には未だ造影検査は必須であると考えられた。
  • 浅田 洸一, 渡辺 亮夫, 豊田 長隆, 荒井 智彦, 徳富 威彦, 石橋 克禮, 宮本 諭
    1998 年 10 巻 2 号 p. 459-467
    発行日: 1998/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    関節突起骨折の非観血的療法後の関節円板の修復と変形・変位を認める下顎頭との関係について, MRIにより検討した。対象は片側性9例, 両側性6例の関節突起骨折15例で, 年齢は11-81歳, 平均43.5歳であった。21関節の骨折の種類は頭部14, 頚部5, 基底部2関節であった。治療は早期より開口練習, ゴム牽引, 顎間固定と咬合の回復を行った。下顎頭の形態変化を20関節に認めたが, 1例を除き, 全例疼痛を有しない40mm以上の開口域が得られた。開口時, 変形治癒した下顎頭は下顎窩内または関節結節下方に位置し, 関節円板は1関節を除きすべて下顎頭上に位置した。開口時, 関節円板はすべて下顎頭に協調した動きを認めた。
    脱臼や転位・偏位により生じた下顎枝の短縮は, 治癒後下顎頭が関節結節下方に位置することにより補償され, 関節円板は下顎窩との関係が失われても, 開閉口時下顎頭と協調した動きを示すことが, 非観血的療法の満足すべき機能回復につながると思われた。
  • 今中 正浩, 小林 馨, 五十嵐 千浪, 湯浅 雅夫, 木村 由美, 米津 博文, 山本 昭
    1998 年 10 巻 2 号 p. 468-476
    発行日: 1998/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    関節円板および後部組織穿孔例のMR画像上での特徴的所見について再分析を行い, この所見を基に円板穿孔を推定した場合のMR画像での穿孔の診断能について検討を行った。
    対象はMR画像検査後に顎関節腔二重造影断層X線検査を施行し, 復位を伴わない関節円板前方転位症例で関節円板および後部組織穿孔例50例50関節と非穿孔例50例50関節の合計100症例100関節のMR画像とした。
    その結果, 円板穿孔例のMR画像上での特徴的所見は, 下顎頭部の骨変化ではmarginal proliferation, 下顎窩から関節隆起部ではirregular surface, 円板形態ではbiconvexとなった。
    上記の所見を円板穿孔例の特徴的所見とし, MR画像における穿孔を推定した際の診断精度を, 復位を伴わない関節円板前方転位症例で穿孔例10症例と非穿孔例10症例を対象に求めたところ, 単独の所見では75-80%の正確度となった。また, 複数の所見を組み合わせた場合では85%の正確度となった。
    関節円板および後部組織穿孔の確定のためには, 関節腔造影検査や関節鏡検査等の侵襲的検査法の施行は必須と考えられる。しかし, これら検査の施行が不可能な場合にはMR画像は顎関節円板および後部組織穿孔の推定に有用である。
  • 中島 健, 有本 博英, 篠原 範行, 野田 真, 川本 達雄, 覚道 健治
    1998 年 10 巻 2 号 p. 477-486
    発行日: 1998/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    本研究では, 最大開口時の下顎の位置変化を下顎切歯, 下顎頭, 両者の移動距離を用いて評価し, 顎顔面形態との関連を調べることを目的とした。
    本大学附属病院矯正歯科の初診患者で, 顎関節部に機能異常が認められない125名 (男性42名・女性83名, 平均年齢15.4歳) を対象とし, 各患者において咬頭嵌合時および自由頭位における最大開口時の側貌頭部X線規格写真を撮影した。
    通常の矯正学的計測項目に加えて, 咬頭嵌合時と最大開口時における切歯移動量・移動角度, 下顎頭移動量・移動角度を計測した。
    下顎移動量の計測値を因子分析し, 抽出された因子と顎顔面形態の計測値との相関分析を行った。
    因子分析の結果, 下顎の位置的変化を十分に説明することのできる3因子を抽出した。第1因子が寄与率51.1%で切歯移動角, 第2因子が30.9%で下顎頭移動量, 第3因子が12.4%で切歯移動量を表現していた。
    また, 最大開口時の下顎の位置変化には顎顔面形態の多くの項目が関連していた。とくに, オーバージェット量が大きく, 下顎下縁平面角が大きい傾向で, SEが大きいものは下顎の位置変化も大きいことがわかった。
    以上の結果から, 最大開口量を考えるとき, 臨床上計測する切歯の垂直的な開口量だけでなく切歯の移
    動方向, 下顎頭の移動方向および顎顔面形態を考慮に入れる必要があることが示唆された。
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