成人学生集団における顎関節疾患, とりわけ顎関節内障の発現様相を明らかにするために, 本学歯学部附属歯科技工士学校の学生のうち, スプリント療法の既往を有する者1名, 歯科矯正治療中の者1名, 歯科矯正治療の既往のある者1名を除く38名 (男性13名, 女性25名, 平均年齢22歳2カ月) を対象に磁気共鳴映像法 (MRI) による顎関節の検診を行った。
すべての被検者の75関節 (画像不良の1関節を除く) について, MR画像における円板の転位度, 円板変形, 下顎頭の骨変形を評価するとともに, Wilkes/Schellhasの基準に従って顎関節内障の病態を6型に分類した。
その結果, 以下の所見が明らかとなった。
1. 38名中16名 (42%), 75関節中26関節 (35%) に顎関節異常が認められた。
2. 円板転位は38名中15名 (39%) の23関節 (31%) に認められた。このうち片側性転位は7名, 両側性は8名であった。また, 円板転位を示した23関節中復位性は15関節 (65%), 非復位は8関節 (35%) であった。
3. 円板変形は, 復位性を示した15関節中7関節 (47%), 非復位性の8関節中7関節 (88%) に認められた。
4. 病期分類では, Stage 0: 49関節, Stage I: 7関節, Stage II: 6関節, Stage IV: 9関節, その他: 4関節 (円板転位のない骨変形) であった。
以上の結果より, 顎関節症状を自覚していない成人学生の39%に, さまざまな病態の顎関節内障が存在していることが明らかとなった。このことから, 歯科医療を遂行する上で良好な治療成績を得るためには, 潜在している顎関節病態に十分配慮することが重要と考えられる。
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