日本顎関節学会雑誌
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11 巻, 2 号
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  • 植木 伸隆, 内田 隆, 田中 栄二, 丹根 一夫
    1999 年 11 巻 2 号 p. 119-127
    発行日: 1999/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    本研究では, PGP 9.5およびCGRPをマーカーとした免疫組織化学法を用い, ラット顎関節におけるPGP 9.5およびCGRP免疫陽性神経線維の生後発育による分布変化について検討した。
    Wistar系ラット28匹 (生後0-40日) を潅流固定し, 顎関節を含むブロックを摘出, 脱灰した。その後, 矢状断および前頭断連続凍結切片を作製し, labeled-streptavidin-biotin法を用いて免疫組織化学的に染色した。
    ラット顎関節では生下時には, ごく少数ながら神経線維が関節円板中央部付近に侵入していたが, 生後発育とともに周辺部に限局することが認められた。これに伴い周辺部においては, 神経線維の増加が認められた。また, 自由神経終末と思われるvaricosityを有する神経線維は, 生後発育とともに増加することが確認されたが, 特殊神経終末は実験期間を通じてまったく観察されなかった。関節円板における神経線維の発育は, 咀嚼機能および顎関節形態の発達に関連した変化であることが示唆された。
  • 藤澤 政紀, 塩山 司, 高嶋 勉, 深川 聖彦, 鈴木 卓哉, 金村 清孝, 石橋 寛二
    1999 年 11 巻 2 号 p. 128-131
    発行日: 1999/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    慢性関節リウマチ (RA) に罹患し, 開咬を呈する59歳女性の下顎運動を6自由度顎運動測定装置により測定した。下顎限界運動軌跡が最も収束する後方解析点は顎関節部に存在せず, 平均的穎頭点から20mm下方に位置していた。下顎限界運動時に前方解析点では正常者とあまり変わらない軌跡を描いたものの, 後方解析点では側方運動時に作業側が4mm後方に移動した。顎関節部の3D-CT所見から, RAが顎関節に波及し両側下顎頭が融解していることが判明した。このような形態的, 運動学的特徴をふまえた上で, 顎関節の負担を軽減するためにクラウンによる補綴処置を行い, 咬合支持を増やした。補綴処置に際して臼歯部咬合面を平坦な形態とし側方運動時の干渉を避ける咬合様式を設定した。齲蝕歯をクラウン処置したことにより, 口腔内清掃が満足に行えない患者にとってはメインテナンスの点でも利点があり, 良好な経過をたどっている。
  • 小松 孝雪, 山口 泰彦, 会田 英紀, 大畑 昇
    1999 年 11 巻 2 号 p. 132-135
    発行日: 1999/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    習慣性顎関節脱臼に対する治療法については, 確実な効果を得るためには観血的療法が選択される場合もあるが, 顎関節およびその周囲への外科的侵襲を伴うため, 必ずしもすべての症例に応用できるものではなく, より有効な非観血的療法が必要と考えられる。今回, 片側習慣性顎関節脱臼を有する一症例に対し, 下顎の運動訓練を行った結果, 脱臼の改善が認められたので報告する。
    患者は, 大開口時の右側顎関節の脱臼を主訴とした21歳の女性である。左側顎関節に非復位性関節円板が認められ, 下顎頭の運動障害があることから, 大開口時に代償的に反対側下顎頭の過剰運動が生じて脱臼したと考えられた。治療法として, 左側下顎頭授動を目的に, LTデバイスを用いた右側方運動とストレートに開口する下顎の運動訓練を行った結果, 左右下顎頭の運動量の協調, 開口経路のストレート化が認められて脱臼の改善をみた。片側性顎関節脱臼症例の中には, 非脱臼側下顎頭の運動制限が脱臼発症の病因の一つとして存在し, 非脱臼側顎関節への積極的な運動訓練が脱臼の改善に有効である場合が少なくないと考えられた。
  • 顎関節関連症状のアンケート調査について
    田中 彰, 又賀 泉
    1999 年 11 巻 2 号 p. 136-142
    発行日: 1999/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    長期血液透析症例による合併症の一つとして, 骨代謝異常が問題となっている。当科ではこれまでに, 画像診断上両側下顎頭に骨変形所見を伴い, 透析性骨症との関連が示唆された2症例を経験し報告した。そこで今回は, 透析患者における顎関節の異常に関する実態を把握することを目的にアンケート調査を施行し検討を行った。対象は新潟市信楽園病院において血液透析療法中の患者のうち, 書き取り方式によるアンケート調査に協力できた263例である。内訳は男性188例女性75例で, 年齢は23歳から86歳までの55.05±11.36 (平均±標準偏差) 歳, 透析年数は1年未満から30年で平均11.09±8.46年であった。顎関節部に何らかの異常 (開口障害, 顎関節部の疼痛, 咀嚼筋症状, 顎関節雑音, 咬合時の異常感・咬合変化) を自覚しているものは79例 (30.0%) で, 内訳は男性62例, 女性17例, 平均年齢は54.06±12.52歳, 透析年数は1年未満から29年で平均13.22±9.04年であった。
  • 関節洗浄パンピングマニピュレーション療法の治療効果による検討
    澤 裕一郎, 竹本 隆, 宮本 日出, 川野 大, 小板橋 勉, 鈴木 喜一朗, 高木 宣雄, 宮城島 俊雄
    1999 年 11 巻 2 号 p. 143-148
    発行日: 1999/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    これまで上関節腔の癒着はクローズドロックにおける開口障害や開口時痛に深く関係するとされ, 外科的に除去されてきた。関節洗浄パンピングマニピュレーション療法は簡単で小侵襲な治療法で, クローズドロック治療において高い成功率である。今回40症例のクローズドロックに対し関節洗浄パンピングマニピュレーション療法を行うと同時に顎関節二重造影ヘリカル-CT任意断層面再構成画像 (以下MPR) にて関節腔および関節円板を診断し, クローズドロックと癒着の関係を関節洗浄パンピングマニピュレーション療法の結果より検討した。その結果, 開口量の増加が得られたのは32例, 疼痛消失したのは35例であった。MPR診断では上関節腔の癒着を28例に認めたが多くは治療効果が良好な症例であった。関節洗浄パンピングマニピュレーション療法にはfibrirationの除去や軽度の癒着剥離などの効果があるとされているが, 実際に通常の水圧でこれらの効果が完全に得られるとは考えにくい。よってこれらの所見は関節洗浄パンピングマニピュレーション療法の癒着に対する治療の可能性が示されたのではなく, 癒着はクローズドロックの治療効果に対し影響は少ないのではないかと考えられた。
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