日本顎関節学会雑誌
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12 巻, 3 号
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  • 菅沼 岳史, 佐々木 洋, 新谷 明幸, 船登 雅彦, 古屋 良一, 川和 忠治, 柴崎 好伸, 鐘ヶ江 晴秀
    2000 年 12 巻 3 号 p. 321-326
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    咬合異常が誘発因子として考えられる顎関節症患者にスタビリゼーション型スプリントを装着し, 症状の軽減がみられた場合, 咬合治療を行うことになる。咬合治療としては, 咬合調整, 補綴処置による咬合再構成があるが, これらにより咬合異常を改善できないときには矯正治療が必要になることもある。このような場合の矯正治療は, 他の処置に比べ時間を要することや, 矯正治療で用いるメカニクスが, 咀嚼筋や顎関節に及ぼす影響などを考慮して行う必要がある。今回, 矯正治療により咬合を再構成した2症例について報告を行った。
    両症例とも, まずスプリントにより症状軽減及び顎位を決定して矯正治療を行い, 動的処置終了後, 症状を安定化させるために, 筋機能療法を併用した結果, 現在予後良好に経過している。
  • 山下 秀一郎, 小澤 武史, 桐原 孝尚, 五十嵐 順正
    2000 年 12 巻 3 号 p. 327-331
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    関節円板前方転位にともなう間欠的クローズド・ロックの症例に対して, 通常の前方整位型スプリントにさらに側方ランプを付与したスプリントを使用した結果, 良好な予後が認められたので報告する。
    患者は28歳の女性で, 開口障害を主訴として来院した。初診時の診査では最大開口量は36mmであったが, 患者自身が左側顎関節部を拇指にて圧迫することで開口障害を解除することが可能であり, 左側顎関節における関節円板前方転位にともなう間欠的クローズド・ロックと診断した。患者には側方位でのクレンチング癖があったため, 通常の前方整位型スプリントでは十分な治療効果が得られなかった。そこで, このスプリントに側方ランプを付与した結果, 常時関節円板が復位した状態を保つことが可能となり, 症状の顕著な改善が認められた。症状消失時に左側臼歯部にわずかな間隙が生じたため, 同部位を硬質レジン製のアンレーにて咬合の再構成を行い, 現在良好な予後を得ている。本症例を通じて, スプリント選択の際には, パラファンクションなどの悪習癖を考慮しつつ, 患者に対応することの重要性が示唆された。
  • 石丸 純一, 水井 工, 宮本 謙, 立松 憲親
    2000 年 12 巻 3 号 p. 332-338
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    顎関節症患者に対しScanora®を用いた上関節腔二重造影断層撮影法による顎関節のX線検査を行った。対象は県立岐阜病院歯科口腔外科にて臨床的に顎関節症と診断された患者を対象とし, 日本顎関節学会の分類で臨床的にI型, その他のものは対象外とした。検査対象となった患者数は20名で, 男性5名, 女性15名で, 平均年齢は35歳であった。上関節腔二重造影断層撮影において, 全ての症例において明瞭なX線画像が得られ, 側頭骨, 関節円板, 下顎頭の形態, 関節円板の変化や位置関係が診断できた。その結果, 関節円板前方転位が7例, その内復位を伴うものが4例, 伴わないものが3例, 上関節腔線維性癒着が6例, クローズドロックが3例, レシプロカルクリックが1例, 正常像を呈したものが6例に認められた。症型分類ではII型が7例, III型が13例, その内IIIaが4例, IIIbが3例であった。また一人あたりに要した検査時間は約20分程度であった。これらのことからScanora®による上関節腔二重造影断層撮影法による顎関節症患者の画像診断法は簡便かつ有用であることが示唆された。
  • 栗田 浩, 大塚 明子, 上原 忍, 倉科 憲治
    2000 年 12 巻 3 号 p. 339-343
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 片側性クローズドロック症例における慢性の開口障害に対するピボット型スプリントの効果を検討することである。臨床的に関節痛が日常生活に支障のないレベルに改善後も, 慢性の開口障害を有する片側性クローズドロック患者23症例がピボット型スプリントによる治療を受け, 臨床的およびX線学的に評価された。結果, 23例中18例 (78.3%) で治療12週間以内に良好な開口量の回復が得られた。効果の得られなかった患者は, 下顎頭の骨変形を認めたものや, 年齢の高い症例であった。これらの結果から, 疼痛のない開口障害患者では12週間のピボット型スプリントの治療は開口量の回復に効果がある可能性が示された。しかし, 骨変化の出現する顎内障の進行例では効果は低いと考えられた。
  • 植野 高章, 川本 知明, 福永 城司, 水川 展吉, 菅原 利夫
    2000 年 12 巻 3 号 p. 344-348
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    アミロイドーシスは, 全身組織に蛋白とコンドロイチン硫酸の複合体が沈着する疾患で, 歯科領域における報告は多発性骨髄腫や腎透析などに続発するアミロイドーシスが多く, 慢性関節リウマチに続発した関節組織へのアミロイド沈着の報告は見られない。
    今回, われわれは68歳男性の慢性関節リウマチ患者に人工顎関節総置換術を施行した際に摘出された顎関節組織を組織学的に観察したところ高度なアミロイド沈着を認めた。さらに免疫組織学的観察でCD68陽性細胞を軟骨下骨髄内に認めた。このことから関節アミロイドーシスペのマクロファージの関与が示唆された。慢性関節リウマチの組織学的な報告は少なく, 今後の検討が必要と思われた。
  • 本田 和也, 新井 嘉則, 加島 正浩, 澤田 久仁彦, 江島 堅一郎, 米津 博文, 杉崎 正志, 篠田 宏司
    2000 年 12 巻 3 号 p. 349-353
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    我々は開口障害の顎関節症患者について, 顎関節造影検査をX線テレビシステムと断層撮影装置を使用して行ってきた。しかし, 上関節腔穿刺時における中頭蓋窩損傷などが問題であった。最近画像支援による外科処置が医科領域で報告され, その有効性が述べられている。しかし, 歯科領域では少ない。当教室で開発した歯科用小照射野CT (以下Ortho-CT) は, X線透視とX線CTの両者の撮影が可能な小型のコーンビーム型X線Computed Tomography (CT) で, 顎顔面領域の小範囲の精査に有効である。我々は, Ortho-CTを利用し顎関節造影検査を行った結果, 良好であったのでその検査法について報告する。
    本検査法では, 上関節腔に穿刺する場合の安全角度と安全距離を計測した。さらに3次元画像を参照しながら安全性を考慮して造影検査を行った。対象症例は開口障害を伴う顎関節症であり, 検査は安全に行え, 円板の位置と形態の, 造影像はMRIと同じ所見を示した。
    今後, Ortho-CTを応用したこの検査法は顎関節造影検査に有効であると考えられた。
  • 由良 晋也, 井上 農夫男, 尾田 充孝, 山口 博雄, 西方 聡, 戸塚 靖則
    2000 年 12 巻 3 号 p. 354-360
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    下顎枝垂直骨切り術 (IVRO) を施行した顎変形症例の顎関節症状および顎関節MRI所見について報告する。顎変形症患者11名13側にIVROを行い, IVRO前後の顎関節症状および顎関節MRI所見を比較した。
    関節音は術前9関節に, 開口時関節痛は2関節にみられたが, 術後ではそれぞれ2関節と0関節に減少した。開口度は, 術前平均49.5mmで術後では48.5mmであった。MRIにおける閉口時の下顎頭の位置では, 13関節中6関節に術後3カ月後の時点で下方ないし前下方への移動がみられた。関節円板の位置や動態については, 術前に転位がなかった2関節では術後にも転位はみられなかった。術前に復位性前方転位を呈した6関節中, 整位したものは2関節, 術後も復位性前方転位であったものは4関節であった。術前に非復位性前方転位を呈した5関節では, 4関節で術後も非復位性前方転位のままであったが, 1関節では復位性前方転位へと改善した。
    IVROは顎関節症状を有した顎変形症例に対し, 顎変形と関節症状を改善させるうえで効果的な手術法と思われた。また, 関節円板の変形がなく転位量が少ないものでは, 下顎窩に対する関節円板や下顎頭の位置関係を改善させうるものと考えられた。
  • 鈴木 卓哉, 藤澤 政紀, 金村 清孝, 長尾 亜希子, 石橋 寛二, 青村 知幸, 工藤 啓吾
    2000 年 12 巻 3 号 p. 361-367
    発行日: 2000/12/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    開口障害を有する非復位性関節円板前方転位症例12名に対し, 関節洗浄マニピュレーションを施行し, 治療前後における6自由度下顎運動解析装置による顆頭運動解析を行った。その結果, 習慣性開閉口運動における最大開口量, 最大顆頭移動量, 側方滑走運動における切歯移動量, 非作業側顆頭移動量, 前方滑走運動における切歯移動量において処置前後の間で危険率1%未満で有意差が認められた (p<0.01, paired t-test)。臨床上診断し難い顆頭運動範囲の増加が確認できたことにより, 関節洗浄マニピュレーションの有効性を定量的に評価することができた。また, 本研究の被験者は初診時には片側のみに症状があるかあるいは片側のみの非復位性前方転位であったにも関わらず, 無症状であった反対側の顆頭運動範囲も症状側とほぼ同じ運動量にとどまっていた。しかし, 症状側に関節洗浄マニピュレーションを施行し, 顆頭の運動範囲が増加したことにより, 処置を施していない無症状側の顆頭も症状側の改善につれて運動範囲が拡大した。このことは9複合関節としての顎関節の機能的な運動機序を明らかにする一助となるものと思われる。
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