私達はMR画像検査で変形性顎関節症と診断された復位を伴わない円板前方転位例の臨床症状と画像所見を各年齢群別に分けて比較検討した。
対象は, MR画像検査で, 復位を伴わない円板前方転位例と診断され, 下顎頭の海綿骨にまで及んだ骨破壊, 著しい骨増生, 下顎窩から関節結節にいたる骨不整の認められた変形性顎関節症242関節である。臨床症状としては顎関節部痛, 開口制限 (最大開口量40mm未満), そして関節音 (crepitus音) について検討した。MR画像上での観察項目は咬頭嵌合位での関節円板形態と円板転位程度, 下顎頭の下顎窩内での位置とした。
顎関節部痙痛は123関節 (51%), 開口制限は132関節 (55%), crepitus音は69関節 (29%) に認められた。年齢群別検討では臨床症状の発現頻度に年齢による差はなかった。円板形態は変形のないbiconcaveは26関節 (11%) で全年齢群で円板変形の頻度は高いが, 30歳以上の年齢群では, 30歳未満の年齢群よりも高頻度に円板変形が認められた。転位程度については, 高度な転位を示したものが162関節 (67%), 76関節 (31%) が中等度, 4関節 (2%) が軽度であった。年齢群による特徴はなかった。下顎頭の位置は, 下顎窩の中央に位置するものが96関節 (40%), 74関節 (31%) が前方, 72関節 (30%) が後方に位置していた。
変形性関節症は, 臨床症状の発現頻度には特徴はみられなかったが, MR画像所見では年齢による特徴が認められた。
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