日本顎関節学会雑誌
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12 巻, 2 号
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  • 林 孝文, 伊藤 寿介, 小山 純市, 小林 富貴子
    2000 年 12 巻 2 号 p. 223-226
    発行日: 2000/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    目的: 顎関節に開口痛を有する非復位性関節円板前方転位症例の開口位の矢状断MRIを検討し, 開口痛と関連するMRI所見を明らかにする。
    対象と方法: 1998年8月より1999年9月までの間に顎関節部MRI検査を施行し, 左右いずれか片側に非復位性関節円板前方転位を認めた50症例の50関節。開口痛は検査前後に開口時の顎関節部の痛みの有無を問診した。プロトン密度強調画像による開口位矢状断MRI上, 肥厚した円板後部結合組織が, 骨変化を来し辺縁が不整化した下顎頭により, あたかも突き刺されるように圧縮される状況が開口痛の原因と推測し, これを画像“thrusting sign”として評価した。
    結果: “thrusting sign”を認める20関節すべてに開口痛を認め, “thrusting sign”を認める関節で開口痛を認めないものは無かった。“thrusting sign”を認めない30関節では, 開口痛を認めるのは7関節で認めないのは23関節であった。開口痛の有無と“thrusting sign”の有無との間に, 統計学的に有意な関係を認めた。
    結論: 非復位性関節円板前方転位症例では, 開口位矢状断MRI上での“thrusting sign”は開口痛の特徴的な所見と考えられた。
  • 内田 貴之, 宇田川 秀幸, 岡本 康裕, 佐藤 繁, 大関 一弥, 森 正宏, 石井 広志, 斉藤 孝親, 笹原 廣重
    2000 年 12 巻 2 号 p. 227-233
    発行日: 2000/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    片側性顎関節症患者における画像検査で非症状側においても円板の異常を認めることが報告されている。顎関節は両側に関節構造を有していることから, 片側の下顎頭運動の機能不全が他方の下顎頭の運動にも影響を及ぼす可能性があり, 片側に顎関節症症状を訴えた患者においても, 症状側および非症状側における関節円板の状態を把握することは重要と考えられる。そこで片側に顎関節症症状を訴えて来院した顎関節症患者206名 (男性38名, 女性168名) の症状側および非症状側における関節円板の状態の把握を目的としてMR画像の検討を行い, 以下の知見を得た。
    1) 円板の前方転位は症状側で有意に多く認めた。
    2) 円板形態はbiconcaveをもっとも多く認めたが, 変形した形態は症状側で有意に多く認めた。
    3) 復位性関節円板前方転位は症状側と非症状側に有意差を認めなかったが, 非復位性関節円板前方転位は症状側で有意に多く認めた。
    4) 円板転位, 円板形態および非復位性関節円板前方転位いずれも, 症状側のみに変化を認め非症状側には変化を認めない場合と, 症状側および非症状側の変化が同様である場合を多く認めた。
  • 山口 泰彦, 山本 智史, 小松 孝雪, 箕輪 和行, 井上 農夫男, 戸塚 靖則
    2000 年 12 巻 2 号 p. 234-239
    発行日: 2000/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    われわれは, 関節隙の浮腫性拡大により一過性に片側性の臼歯部開咬 (posterior open bite, 以下POBと略す) を来した顎関節症症例を経験したので報告する。患者は, 急性の左側POBおよび左側顎関節の自発痛, 運動痛を有する26歳の女性で, POB発現の2日後に来院した。外傷の既往や開口障害はなく, 腫張, 熱感など顕著な炎症症状もなかったが, MRI所見では両側復位性円板前方転位で, 左側にjoint effusion像を伴う関節隙の拡大がみられた。左側顎関節の安静と消炎鎮痛剤による薬物療法を行ったところ, 治療開始翌日から疼痛, POBとも徐々に軽減し, 15日後には日常生活上の疼痛は消失した。POBに関しては, 自覚的には10日後, バイトチェッカー®やデンタルプレスケール®を用いた客観的評価では25日後にほぼ左右均等の咬合接触状態に戻った。この症例から, 臨床的に明らかな炎症所見を示さなくても関節隙が拡大し, POBを生じ得ることが示された。
  • 太田 和俊, 杉 和洋, 鶴田 博文, 野田 信夫, 牧 正啓, 篠原 正徳
    2000 年 12 巻 2 号 p. 240-245
    発行日: 2000/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    ライター症候群 (RS) は関節炎, 尿道炎, 結膜炎の三徴と膿漏性角化症, 連環状亀頭炎などの臨床症状に代表される稀な症候群であり, 顎関節症状を併発したという報告は非常に少ない。今回われわれは開口障害を生じたRSの1例を経験したので報告する。症例は33歳男性で多発性関節痛, 連環状亀頭炎, 膿漏性角化症を認め, 淋菌性尿道炎および虹彩炎の既往を有し, HLA-B27陽性, リウマトイド因子陰性よりRSと診断され薬物治療を施行された。しかし, 全身症状の改善は得られたが開口時の疼痛と開口障害が残存したため, 上関節腔にパンピング後, 洗浄を行いステロイド剤を注入した。本療法にて疼痛は軽減し開口距離の増加が得られたが, 運動制限がやや残存したため, さらに開口訓練を行い改善を得た。この結果, RSの顎関節障害には積極的に局所的な治療を行うことが有効な手段の一つであることが示唆された。
  • 臨床所見とMR画像所見
    五十嵐 千浪, 小林 馨, 今中 正浩, 湯浅 雅夫, 山本 昭
    2000 年 12 巻 2 号 p. 246-252
    発行日: 2000/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    私達はMR画像検査で変形性顎関節症と診断された復位を伴わない円板前方転位例の臨床症状と画像所見を各年齢群別に分けて比較検討した。
    対象は, MR画像検査で, 復位を伴わない円板前方転位例と診断され, 下顎頭の海綿骨にまで及んだ骨破壊, 著しい骨増生, 下顎窩から関節結節にいたる骨不整の認められた変形性顎関節症242関節である。臨床症状としては顎関節部痛, 開口制限 (最大開口量40mm未満), そして関節音 (crepitus音) について検討した。MR画像上での観察項目は咬頭嵌合位での関節円板形態と円板転位程度, 下顎頭の下顎窩内での位置とした。
    顎関節部痙痛は123関節 (51%), 開口制限は132関節 (55%), crepitus音は69関節 (29%) に認められた。年齢群別検討では臨床症状の発現頻度に年齢による差はなかった。円板形態は変形のないbiconcaveは26関節 (11%) で全年齢群で円板変形の頻度は高いが, 30歳以上の年齢群では, 30歳未満の年齢群よりも高頻度に円板変形が認められた。転位程度については, 高度な転位を示したものが162関節 (67%), 76関節 (31%) が中等度, 4関節 (2%) が軽度であった。年齢群による特徴はなかった。下顎頭の位置は, 下顎窩の中央に位置するものが96関節 (40%), 74関節 (31%) が前方, 72関節 (30%) が後方に位置していた。
    変形性関節症は, 臨床症状の発現頻度には特徴はみられなかったが, MR画像所見では年齢による特徴が認められた。
  • 波多野 泰夫, 水島 洋, 藤井 和重, 島田 勝之, 中島 尚, 酒井 利幸, 田外 貴弘, 丸茂 義二, 半田 功, 渡辺 嘉一
    2000 年 12 巻 2 号 p. 253-258
    発行日: 2000/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    今回我々は, 頭蓋下顎障害患者における手指による圧痛検査の圧痛値を従来の2ないし4段階よりもさらに細かくした場合の効果について検討を加えたので報告する。168名の患者の生活指導療法を主体とした治療の前と終診時の圧痛を6段階に測定したデータをもとに, 2段階, 4段階, 6段階の各場合について分析したところ, 経時的な変化を示す変化率には統計学的な有意差が認められ, 段階を細かくするにつれて変化率が大きく表現されることが明らかとなった。また, 各患者で同一時に測定された各分類段階間の圧痛総和には強い相関を認めた。しかし, 治療前と治療終期における各条件間の圧痛総和の単回帰による相関係数は0.527-0.600で, 段階を細かくしても相関係数に差は認められなかった。これらから, 段階に分けることは変化を観察するには有効であるが, 治療前の圧痛から治療終期の圧痛を推定するには単回帰分析では無効であることが示唆された。
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