日本顎関節学会雑誌
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14 巻, 2 号
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  • 原田 洋, 長谷川 信乃, 山田 賢, 西 英光, 田村 康夫
    2002 年 14 巻 2 号 p. 179-183
    発行日: 2002/08/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    幼稚園児から高校生までの5, 996名を対象として, 若年者における顎関節症の発生頻度についての疫学調査を行った。その結果,
    1. 若年者における顎関節症の発生頻度は, 幼稚園児5.1%, 小学校低学年7.9%, 高学年14.6%, 中学生20.8%, 高校生26.9%と増齢的な増加を示した。
    2. 性差は, 幼稚園から中学生までは認められなかったが, 高校生においては女子34.9%, 男子21.4%に認められ, 女子が男子よりも有意に高い発生頻度を示した。
    3. 顎関節症状は, 顎関節雑音のみが顎関節症の認められた者の90%を占め, 最も多く認められた。
  • 神農 悦輝, 砂川 元, 花城 国英, 羽地 都映, 下地 森夫, 比嘉 努
    2002 年 14 巻 2 号 p. 184-187
    発行日: 2002/08/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    筋突起過形成に伴う開口障害がみられた患者に対して, 筋突起切離術を行った後に下顎の前方偏位をきたした症例を報告した。症例は27歳の女性で, 7歳頃より開口障害を自覚していたが放置していた。21歳時顎関節症と診断され, 筋突起過形成と正しく診断されるまでの6年間不適切な治療を受けていた。断層X線, オトガイ下頭頂方向撮影, 3D-CT所見にて両側性筋突起過形成が認められたため, 全身麻酔下にて口内法による両側筋突起切離術を施行した。術中50mmの開口量を得た。術後開口訓練を行うことにより, 下顎が前方へ偏位し, 復位不能となった。そこで後方誘導型スプリントを装着させて, 閉口時に下顎を後方へ動かす顎運動訓練を指導した。その後2か月で下顎の前方偏位は改善した。術後1年経過した現在, 開口量は40mmで, 下顎の前方偏位は認められていない。筋突起切離後, 下顎の前方偏位をきたした症例に対し, 後方誘導型スプリントによる顎運動訓練は, 従来行われてきた治療法に比べ簡便かつ有用な治療法であると考えられた。
  • 本田 公亮, 夏見 淑子, 奥井 森, 前田 常成, 坂田 みどり, 高橋 由美子, 浦出 雅裕
    2002 年 14 巻 2 号 p. 188-192
    発行日: 2002/08/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    非復位性の関節円板前方転位症例に対し, 円板の復位を目的にパンピングマニピュレーション (以下PMと略す) を試み, 後続してスプリント療法を行うことが多い。本研究ではPM施行後にスプリント療法を行った場合と行わなかった場合とを比較し, スプリント療法がPMの治療効果にどの程度寄与しているかについて検討した。2000年9月から2001年3月までの6か月間に兵庫医科大学病院歯科口腔外科に来院した顎関節内障患者のうち, 片側性非復位性関節円板前転位と診断された43名 (男性7名, 女性36名, 平均年齢37.9歳) を対象とした。2%リドカインおよび生理食塩水にてパンピング操作を加え, マニピュレーションを行った。PMにより臨床的にアンロックが得られた27例中, クリックやロックに対する明確な治療的下顎位が得られた16例にアンテリアリポジショニングスプリント (以下ARSと略す) を, 治療的下顎位が不安定, およびPMによりアンロックが得られなかった16例中8例にスタビライゼーションスプリント (以下SSと略す) を装着した。一方, 歯冠修復治療や矯正治療の途中のためにスプリントの作製が困難な19例を対照群とし, 1か月間の経過観察を行った。アンロック後に再ロックしなかった症例は, アンロックが得られなかった, または再ロック例に比べPM後の経過予後が良好であったが, その治療効果を維持するためにはPM後のスプリント療法 (ARS) が有用であった。一方, アンロックが得られなかった症例群におけるスプリント療法 (SS) は, 治療効果に非装着群と差がみられなかった。
  • 谷本 幸太郎, 丹根 一夫
    2002 年 14 巻 2 号 p. 193-199
    発行日: 2002/08/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    復位性円板前方転位を有する患者の治療には, 円板整位を目的としたスプリント療法と咬合再構築をめざした歯科矯正治療の有効性が示されている。本論文では, このような治療体系の有用性の検証を目的として, 顎関節症を伴う過蓋咬合患者に対する歯科矯正治療例を報告する。第1症例は, 初診時年齢34歳の女性で, 上顎中切歯の舌側傾斜と過蓋咬合ならびに右側顎関節部疼痛と開口障害を主訴に来院した。前方整位型スプリント療法および22か月の歯科矯正治療の結果, 良好な咬合関係が獲得され, すべての顎関節症状の改善と円板整位が達成された。第2症例は, 初診時年齢14歳の女性で, 前歯部被蓋の改善ならびに右側顎関節部疼痛と開口障害を主訴に来院した。前方整位型スプリント療法および29か月の歯科矯正治療を行った結果, 良好な咬合関係が獲得され, 顎関節症状の改善を認めたが, 円板整位は達成されなかった。
  • 由良 晋也, 戸塚 靖則, 大井 一浩, 馬渕 亜希子, 由川 哲也, 出山 文子, 大廣 洋一, 後藤田 章人, 松樹 隆光, 岡田 和樹 ...
    2002 年 14 巻 2 号 p. 200-204
    発行日: 2002/08/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    咬合力と関節内圧との相関関係を明らかにする目的で, クローズド・ロック症例と顎関節症状のないボランティアの咬合力と関節内圧を同時に測定したので報告する。
    対象は, クローズド・ロック症例4名4関節と顎関節症状のないボランティア4名4関節である。プレスケール50HタイプRを用いて咬合力を測定し, 動脈圧モニタリング用のトランスデューサーを用いて関節内圧を測定した。
    咬合力と関節内圧との間の相関係数は, クローズド・ロック症例とボランティアのいずれも0.7以上 (0.710~0.954), 決定係数は0.5以上 (0.504~0.910) であった。これらの結果から, 咬合力と関節内圧との関係は, 直線的な正の相関関係であることが示された。回帰係数は, 被験者により差のあることが示された (15.3~270.9)。
    関節内圧は咬合力の増加に伴って上昇することから, 強い噛みしめが顎関節に負荷を加える因子の一つであることが明らかとなった。
  • 千葉 雅俊, 福井 功政, 越後 成志, 友寄 泰樹, 千葉 和彦
    2002 年 14 巻 2 号 p. 205-209
    発行日: 2002/08/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    パンピングマニピュレーションはクローズドロックに対して有効な治療法であるだけでなく, 合併症の少ない安全な治療法である。本論文は, 11か月前に他病院でパンピングマニピュレーションとヒアルロン酸ナトリウムの関節注入を受けた後に, 進行性の非可逆的な咬合変化を生じたまれな症例について報告した。55歳女性が右側顎関節の疼痛と咀嚼障害があり, 紹介来院した。有痛性の開口障害 (34mm), 右側の顎関節と咬筋に圧痛および右側第二大臼歯以外は開咬状態であった。右側顎関節のMRIでは, 骨変化を伴う復位不能な関節円板前方転位, 下顎頭の下方への偏位およびT2強調像で肥厚した円板後部組織が高信号を呈した。本病変は, 右側顎関節の変形性関節症と円板後部組織炎による開咬と診断した。円板後部組織にステロイドの注射を行い, その後スプリント療法と薬物療法を施行した。疼痛と開口量は改善したが, 開咬と咀嚼障害は変わらなかったので補綴的に咬合を再構成した。症状の再燃もなく, 治療後の経過は良好であった。治療後のMRIとMPR-CTで, 関節窩側からの骨形成によって下顎頭の位置は相対的に改善し, 円板後部組織炎は消退していた。
  • 志賀 貴之, 石橋 克禮, 豊田 長隆, 野上 喜史, 石井 宏知, 大嶽 基, 浅田 洸一
    2002 年 14 巻 2 号 p. 210-216
    発行日: 2002/08/20
    公開日: 2011/02/23
    ジャーナル フリー
    成熟ウサギ (日本白色家兎) に1日3時間30mmの強制開口を施し, 顎関節に組織の接着を惹起し, それについて光学顕微鏡, 共焦点レーザー走査顕微鏡を用い処置後60日後まで経時的に観察し, 以下の結果が得られた。
    1. 15羽中10羽, 30関節中17関節に組織の接着が認められた。
    2. 10羽中上関節腔に組織の接着を生じたものが5羽, 下関節腔に組織の接着を生じたものが5羽だった。
    3. 上関節腔では下関節腔に比較し, 広範囲に組織の接着を呈したものが多かった。
    4. 接着組織は経時的に線維性結合組織を多く含む組織へと変化していった。
    以上の結果から, 1日の強制開口負荷により関節腔内に組織の接着が生じ, 線維化していくことから, この実験モデルは今後の線維性癒着の研究に有用と思われた。
  • 第2報多断面における骨形態観察
    澤田 久仁彦, 本田 和也, 新井 嘉則, 高野 裕美, 加島 正浩, 岩井 一男, 橋本 光二, 篠田 宏司
    2002 年 14 巻 2 号 p. 217-221
    発行日: 2002/08/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    この研究の目的は, 顎関節の多断面 (外側部, 中央部, 内側部) の骨形態変化を単純断層とOrthocubic super high resolution CT (以下Ortho-CTと略す) で比較し, その検出能を調べることである。
    症例は単純断層X線検査とOrtho-CT検査を施行した30例60関節である。内訳は女性26例52関節, 男性4例8関節, 平均年齢30.8歳である。
    資料は単純断層X線写真における下顎頭の中央に相当する断層X線写真を用い, これを下顎頭および下顎窩の中央断層像とした。その中央断層面から外側2層目を外側断層像, 内側2層目を内側断層像とした。それら3層の断層像と相対するOrtho-CT像を選択し, 単純断層180像とOrtho-CT180画像を比較した。検討方法は顎関節部を下顎窩と下顎頭に分類し, 骨変化ありと骨変化なしに分類した。
    下顎窩および下顎頭ともに, Ortho-CTと単純断層の一致率は高く, また外側部, 中央部, 内側部のすべてにおいてOrtho-CTのほうに「変化あり」が多く観察された。
    以上の結果より, Ortho-CTのほうが, 従来の単純断層より, 骨の形態変化の評価に優れており, 単純断層に代わり, 有用性が高いことが示唆された。
  • 藤澤 健司, 飛梅 悟, 鎌田 伸之, 長山 勝, 山之内 浩司
    2002 年 14 巻 2 号 p. 222-226
    発行日: 2002/08/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    小下顎症を伴う高度な骨性癒着をきたした顎関節強直症の1例を報告する。
    患者は43歳の男性で, 開口障害を主訴に来院した。幼少期の関節突起骨折が原因で長期間開口障害を認めていた。初診時の開口域は11mmで, 側貌にてオトガイの後退を認めた。X線検査の結果, 両側下顎頭の変形と左側顎関節の著明な骨性癒着がみられた。全身麻酔下に右側は下顎頭切除術, 左側は骨関節切除術を施行し, 左側には遊離皮膚弁を中間挿入物として使用した。さらに小下顎症の改善を目的にオトガイ形成術, 腸骨移植術を施行した。術後開口域は30mmに増加し, 顔貌も改善され患者は満足している。
  • 山城 光明, 金田 隆, 森 進太郎, 本橋 淳子, 岡野 芳枝, 葛西 一貴
    2002 年 14 巻 2 号 p. 227-232
    発行日: 2002/08/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    近年顎関節のMR検査は広く普及し, その有効性が多数報告されている。しかしながら, 顎関節は比較的小さく解剖学的にも多彩な組織で構成されているため, 良好なMR画像を得ることが困難なことがある。本研究では顎関節の画像を向上させるため, 直径4cmの新たな高分解能専用コイルを試作し, 従来型のTMJ用表面コイルとの基礎的および臨床的な比較検討を行い, 以下の結論を得た。
    1. 基礎的検討では, 4cmコイルは表層から4.2cmの深度までTMJコイルよりSNRが大きかった。
    2. 臨床的検討では, 4cmコイルはTMJコイルと比べて, 関節円板の形態の描出は同等であり, 円板後部組織と外側翼突筋の描出は優れていた。
    以上より, 4cmコイルは顎関節部の描出に有効であることが示唆された。
  • 猪田 博文, 山本 学, 田中 章夫
    2002 年 14 巻 2 号 p. 233-236
    発行日: 2002/08/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    顎関節内障のクローズドロックの症例に対して, 顎関節上関節腔洗浄マニピュレーション療法の有用性は広く認められている。この療法の臨床的効果は粘稠な滑液の排出, 微小な線維性癒着の剥離, 発痛関連物質の除去によってもたらされる。今回の調査ではクローズドロックに陥り, 開口障害と疼痛の訴えがあった17人の患者を対象として, 鎮静法下にて顎関節上関節腔洗浄マニピュレーション療法を実施して良好な改善効果を得た。また, 鎮静法の併用は処置操作の効率化, マニピュレーション時の患者の疼痛コントロールにおいて臨床的意義があると考えられた。
  • 大枝 直之, 川上 哲司, 馬場 雅渡, 小川 淳司, 都築 正史, 大河内 則昌, 桐田 忠昭
    2002 年 14 巻 2 号 p. 237-241
    発行日: 2002/08/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    今回われわれは, 顎関節円板後部組織の肥厚により, 臼歯部開咬状態が発現した閉口障害患者の1例を経験したので報告する。
    患者は, 27歳の女性で, 閉口時咬合不全を主訴に2000年11月当科来院した。個人歴は, ブラキシズムを認めた。現病歴は, 約2年前より左側顎関節脱臼様症状を繰り返していたが, 咀嚼障害を自覚しなかったため放置していた。2000年11月同症状出現し咀嚼困難となったため当科受診となった。現症としては, 左側顎関節部および咬筋浅層に圧痛を認め, 開口域は40mm, 左側臼歯部は開咬状態を呈し, 閉口時オトガイ部の健側偏位を認めた。また, 左側下顎第3大臼歯は挺出していた。X線所見で, 閉口時左側下顎頭が前方に偏位しており, MRI所見で, 左側顎関節円板後部結合組織の肥厚を認め, 顎関節鏡視検査および上関節腔洗浄療法を施行したが効果なく, 同年12月ホルミウム: ヤグレーザーを用い, 左側顎関節鏡視下手術, および両側下顎第3大臼歯抜歯を行った。術後早期に咬合不全は改善し, 術後経過良好である。
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