日本顎関節学会雑誌
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14 巻, 3 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 滝澤 光直, 阿部 伸一, 井出 吉信
    2002 年 14 巻 3 号 p. 269-275
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    外側翼突筋の機能を考察する一助として, 日本人外側翼突筋の停止部における筋線維束の付着形態と筋線維特性を肉眼的観察ならびに抗myosin heavy chain fast抗体, 抗myosin heavy chain slow抗体を用いた免疫組織化学的方法で検索した。外側翼突筋を構成する筋線維束は, 停止する部位と付着様式により, 関節円板に付着する筋線維束 (I型), 翼突筋窩に腱性付着を呈する筋線維束 (II型), 翼突筋窩に腱を介さず直接骨膜に停止する膜性付着の筋線維束 (III型) の3種類に分類された。I型は, すべて膜性の付着様式をとっていた。II型は, 翼突筋窩外側約1/5の部分に, III型は, 翼突筋窩内側部分に観察された。筋線維束を構成する筋線維特性について観察すると, 抗myosin heavy chain slow抗体で染色される遅筋線維の占める割合はI型が78.5%と最も高く, 次いでIII型であった。遅筋線維の割合が最も低かったのはII型であった。このことから, 関節円板に付着する筋線維束と翼突筋窩内方に付着する筋線維束は, 持続的な弱い力で, 顎運動の調整に役立っているのではないかと考えられた。
  • 第2報中学生・高校生について
    重田 優子, 小川 匠, 細田 裕, 安藤 栄里子, 平井 真也, 伊藤 孝介, 福島 俊士
    2002 年 14 巻 3 号 p. 276-282
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    前報でわれわれは横浜市の成人を対象とし, 顎関節症に対する認識度, 関連症状の既往および受診希望科名に関するアンケート調査を行った。その結果, 一般成人の顎関節症に対する認識度は低く, 顎関節症は一般に浸透した疾患ではないことが示唆された。
    一方, 中学生・高校生においては平成7年の学校保健法の改正に伴い顎関節の状態の項目が学校歯科健診に加えられたことが, 顎関節症に対する認識に少なからず影響していると考えられる。
    また近年, 顎関節症の症状を訴え歯科を受診する中学生・高校生が増加しているとの見解がある。
    そこで今回, 中学生・高校生の顎関節症に対する認識度および関連症状の既往の実態について検討すべく, 1, 182名の中学生・高校生を対象にアンケート調査を行った。
    その結果, 顎関節症の関連症状の既往は比較的多いものの, 顎関節症に対する認識度は成人と比較して低く, 歯科領域の疾患と認識するものはさらに少ないことがわかった。
  • 安藤 修二, 谷尾 和彦, 高橋 啓介, 坂本 博文, 田窪 千子
    2002 年 14 巻 3 号 p. 283-285
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    下顎頭の形態異常で最も知られたものには二重下顎頭がある。先天性二重下顎頭は一般に胎児期の栄養血管の障害により生じるといわれている。今回われわれは, 下顎頭が三重となった形態異常を認めた症例を経験したので報告する。
    患者は22歳女性で, 初診時, 開口量34mm, 右顎関節に開口時雑音を認める他は, 疼痛などの症状は認めなかった。パノラマX線写真を撮影したところ, 両側関節突起部が杯状を呈していた。
    CT所見では, 下顎頭の内・外側に2つの小頭を認め, さらに関節結節より前下方に突出した小頭を認めた。これらは両側に認め, 以上より小頭が3つある両側三重下顎頭と診断した。
  • 運動ニューロンの‘bistability’の検討
    倉沢 郁文, 土屋 総一郎, 甘利 光治, 柳田 史城
    2002 年 14 巻 3 号 p. 286-290
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    咀嚼筋ならびに頸筋の過緊張を伴う咀嚼筋障害患者から, 安静時の咬筋, 側頭筋, 胸鎖乳突筋ならびに顎二腹筋の筋活動を導出した。その結果, 咬筋ならびに側頭筋より持続的な自発放電活動が観察され, 本症例は, 咀嚼筋障害患者の閉口筋の筋活動は抑制されるとする「疼痛適応モデル」には適合していなかった。また, この自発放電活動は, 口腔粘膜ならびに顔面皮膚に対する感覚閾値以下の電気刺激でほぼ消失し, 刺激停止後も数十秒静止状態が続いた後, 段階的に回復した。筋活動が静止状態のとき, Ia-求心性神経をオトガイ部に振動刺激を短時間適用することで刺激すると, 筋活動は急激に上昇し, 刺激停止後も活動を持続した。これらの2つの効果は, 除脳ネコにおける実験ですでに報告されている運動ニューロンの膜の特性‘bistability’, すなわち, 短い興奮性入力で持続的に興奮性が上昇し, 短い抑制性入力でリセットされる性質と非常に類似している。さらに, ヒトの四肢筋でも, 痙攣などを誘発しやすい患者についてわれわれと同様な効果が報告されていることから, 閉口筋の自発放電活動の発生機序には, 四肢筋における結果と共通した運動ニューロンの膜の特性が関与している可能性が示唆された。
  • 2回顎関節腔洗浄療法と消炎鎮痛剤併用療法
    福田 幸太, 栗田 賢一, 小木 信美, 水野 進, 磯辺 誠, 松浦 宏昭, 中野 雅哉, 中塚 健介, 外山 正彦, 加藤 勇, 佐野 ...
    2002 年 14 巻 3 号 p. 291-299
    発行日: 2002/12/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    現在, 復位性顎関節円板転位症例に対しての治療法は保存的療法を中心に試みられているが, その中でも関節腔内部の炎症性物質を除去し, 疼痛を軽減する顎関節腔洗浄療法が注目されており, 洗浄施行回数は2回までは効果的であるとの報告がみられる。しかし, その経時的治療効果はいまだ明らかではない。そこで, 疼痛を有する復位性顎関節円板転位症例に対して2回顎関節腔洗浄療法および消炎鎮痛剤投与併用療法を施行した。
    対象は, 1999年11月からの1年間に愛知学院大学歯学部附属病院顎関節外来を受診し, MR画像にて復位性顎関節円板転位と診断された患者のうち, 顎関節症状を片側性に有する患者で, 当外来で設定している顎関節機能障害度分類で疼痛に関する項目が中等度および重度を示す17症例とした。
    顎関節腔洗浄療法は2週間の間隔で2回行い, 治療開始時から消炎鎮痛剤を連日投与した。経過観察は, 2週間ごとに12週まで行い, 各週の改善率を算出した。
    その結果, 改善率は術後2週で35%, 4週で59%, 6, 8, 10週で65%, 12週で71%と経時的に増加した。また, 改善率を各項目 (最大開口域, 安静時痛, 開閉口時痛, 咀嚼時痛, 日常生活支障度) に分けて検討したところ, 各疼痛および日常生活支障度は, 若干の増減は認めるものの12週までに10以下に減少し, 最大開口域もそれに伴って増加した。
    本治療により早期に疼痛軽減, 最大開口域増加を図ることができ, その有用性が示唆された。
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