近年, 顎関節症の診断にMRI検査が多用されているものの, 癒着や滑膜炎に対する正診率は, 鏡視検査が高いとされている。しかし, 上関節腔洗浄療法の効果は上関節腔内の癒着や滑膜炎の状態によるが, 詳細な検討は少ない。そこで, 顎関節内障クローズドロック症例における鏡視所見と上関節腔洗浄療法の効果の関連について検討を行ったので報告する。
顎関節内障クローズドロック症例のうち, 鏡視検査および上関節腔洗浄療法を同時施行した175例182関節 (男性17例17関節, 女性158例165関節, 平均年齢41.0±16.0歳) を対象とした。鏡視所見は, 上関節腔を前後・内外的に9分割し, 癒着および滑膜炎の部位および範囲を調べた。鏡視検査には細径関節鏡 (エムアンドエム社製) を用いた。上関節腔洗浄療法の効果は, 1か月後の開口域および顎関節痛のVASスコアを含むアンケートによる定量的評価を行い評価した。
鏡視所見では, 癒着は外側中央から前方, 滑膜炎は下顎窩側・関節円板側ともに, 中央から後方にかけて多く認めた。1か月時の上関節腔洗浄療法の有効率は, 無痛開口域に関して, 平均53.8%, 疼痛のVASスコアに関して, 平均64.3%であった。また, 有効であった症例の多くは, 線維性癒着および滑膜炎の範囲が限局性で軽度のものであり, それらが広範囲に及ぶ症例は, 奏効困難であった。上関節腔洗浄療法の施行時に, 鏡視検査での病態把握をすることは, 治療効果の予測に有用であるものと考えられた。
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