日本顎関節学会雑誌
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2 巻, 2 号
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  • スタビリゼーションタイプについて
    赤西 正光, 大前 泰三, 井上 俊二, 東 和生, 石垣 尚一, 丸山 剛郎
    1990 年 2 巻 2 号 p. 269-278
    発行日: 1990/11/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    バイトプレーンの作用機序についてはいまだ定かではない。本実験の目的はバイトプレーンを使用することにより生じる顎筋活動の変化を通じ顎筋に及ぼすバイトプレーンの効果を知ることにあり, タッピング運動と咀嚼運動下での顎筋に対するバイトプレーンの作用をとりあげた。
    被験者は顎口腔機能に特に問題のない6名であり, 全歯列接触型のバイトプレーンを用いた。バイトプレーンは上顎装着用と下顎装着用の2群にわけ, おのおのに対し前歯部型, 臼歯部型を作製した。各バイトプレーンを用いることによる被験運動下でのEMGと顎運動とを同時記録した。その結果バイトプレーンの別による顎筋の対応に差のあることが示された。
  • 和嶋 浩一, 中川 仁志, 鈴木 彰, 小飼 英紀, 井川 雅子, 河奈 裕正, 中村 泰規, 野本 種邦
    1990 年 2 巻 2 号 p. 279-289
    発行日: 1990/11/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    臨床的に片側性顎関節内障が疑われた40症例, 両側性顎関節内障が疑われた23症例, 計63症例に対し両側顎関節腔造影X線検査を行い, 円板転位の臨床診断の正確性および両側顎関節の円板動態について検討した。
    その結果, 59% (37例) には両側性円板転位, 33% (21例) には片側性円板転位が認められ, 8% (5例) は両側が正常であった。
    従来, 復位を伴う関節円板前方転位および復位を伴わない関節円板前方転位に特有といわれていた臨床症状が, 臨床診断の有力な根拠ではあるが, かならずしも特有なものでなく, 顎関節内障の臨床診断は従来考えられていたほどには正確でないことが判った。また, 造影検査の結果, 臨床的に無症状な関節の約半分に円板転位が認められた。これは臨床的に正常と診断したなかにfalse-negativeが含まれる危険性があることを示している。
    全対象の58.7%で両側性に円板転位が認められ, 特に臨床的に片側性顎関節内障と考えられた症例の45%で両側性に円板転位が認められた。治療に際しては臨床的に円板転位が疑われた症例の半分は両側顎関節に円板転位があると考えるべきである。
    以上より, 顎関節内障の治療に際しては正確な診断が必要となり, 無症状側も含め両側顎関節に対し顎関節腔造影X線検査その他の画像診断を行うことが必要であると考えられた。
  • 側貌顎顔面形態 (第一報)
    八巻 正樹, 毛利 環, 寺田 員人, 花田 晃治, 西 克師, 岩片 信吾, 斉藤 彰, 石岡 靖
    1990 年 2 巻 2 号 p. 290-301
    発行日: 1990/11/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    臨床的に顎機能異常の認められない成人有歯顎者29名について, 下顎任意点運動計測システムを用いて下顎運動を測定した。咬頭嵌合位から1mm, 2mm, 3mm, 4mm, 最前方位までの前方滑走運動時の矢状切歯路傾斜度, 矢状穎路傾斜度, 下顎の回転角について計測し, 側貌顎顔面形態との関連性について調べた。また, ANB角により骨格型を3群に分類し, それぞれの群間における顎運動の違いについて比較を行い, 次の結果を得た。
    1. 前方滑走運動時における矢状切歯路傾斜度, 矢状穎路傾斜度, 下顎の回転角と顎顔面形態との相関が多くの項目で認められた。
    2. 骨格別分類による顎運動の比較により, 顎顔面形態の違いが顎運動に影響を与えている可能性がある。
  • 甲斐 貞子, 甲斐 裕之, 浜崎 朝子, 白土 雄司, 田代 英雄, 田畑 修
    1990 年 2 巻 2 号 p. 302-314
    発行日: 1990/11/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    復位のない関節円板前方転位で非観血的に円板の整位が不可能であった35症例に対し, スプリントや補綴などの咬合治療による保存的治療を行いその経過を検討した。その結果,
    1. 上下中切歯間最大開口域の平均は治療前では27.6mm, 治療後では44.4mmを示し34例で40mm以上を示した。
    2. 治療前30例に認められた顎関節部癖痛は治療後27例でほぼ消失し, 3例で改善した。咀嚼筋痛は34例中25例消失した。
    3. 症状の改善とともにクレピタスが出現する頻度が高かった。
    4. 治療前のX線写真による観察では21例 (63.6%) に下顎頭の異常所見が見られた。治療後では26例 (78.8%) に所見が認められた。粗造性骨変化の一部は下顎頭の扁平化へ移行する傾向にあった。また治療後下顎頭の前方運動は大部分の症例で改善をみた。
    5. 31例に治療前の両側関節腔造影検査を施行した。症状側では復位のない関節円板前方転位所見の他, 20例で円板形態の変化が認められ, 関節腔内の線維性癒着像を示した症例においても, 開口障害は消失していた。
    6. 造影の結果, 9例において非症状側にも復位のない関節円板前方転位が認められた。
    以上より保存的療法は大多数の復位のない関節円板前方転位症例に対して有効であると思われた。円板が転位し形態変化を伴っても, 関節が状況に適応し, 症状の改善が期待されると思われた。
  • 治療経過と臨床症状の推移, 治療成績について
    藤村 和磨, 村上 賢一郎, 森家 祥行, 宮木 克明, 陳 文煕, 横山 忠明, 小林 英一郎, 瀬上 夏樹, 西田 光男, 兵 行忠, ...
    1990 年 2 巻 2 号 p. 315-325
    発行日: 1990/11/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    今回, 著者らは最近経験した顎関節症患者139例について, 治療後の臨床症状の推移について検討を加えた。
    方法は, 顎関節症患者を症型分類案 (顎関節研究会1987年) に則して分類し, 各症例ごとに治療を行い, 治療前, 治療後における自覚的評価および他覚的評価により, 症状の推移について比較検討した。
    結果, 各症型ごとの治療奏効率は, I型では64.7%, II型では84.2%, III型クリック群では77.3%, III型クローズドロック群では85.4%, III型間欠的ロック群では75.0%, そしてIV型では57.1%であった。また奏効症例における臨床症状の改善度で有意差がみられたものは, 疼痛度では, I型, II型, III型クローズドロック群で, 疼痛点数では, II型, III型クリック群およびクローズドロック群で, 顎機能障害度では, I型, II型, III型クリック群およびクローズドロック群で, また日常生活障害度では, III型クリック群とクローズドロック群であった。一方, 他覚的評価での開口度においては, III型クローズドロック群のみに有意差がみられた。
  • 第一報, Pseudowallの関節鏡視所見
    瀬上 夏樹, 村上 賢一郎, 藤村 和磨, 宮木 克明, 森家 祥行, 飯塚 忠彦
    1990 年 2 巻 2 号 p. 326-332
    発行日: 1990/11/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    顎関節内障クローズドロック36症例40関節に対して上関節腔の診断的鏡視を施行し, 線維性癒着の一種であるpseudowallの出現頻度, 程度について検討を行った。対象は, 男性2例, 女性34例で, 年齢は13歳から77歳まで平均37.4歳であった。この結果, 40関節中39関節 (97.5%) においてpseudowallの存在を認めた。pseudowallは, 前方関節腔において, 軽度6関節, 中等度21関節, 高度9関節の計36関節 (90%), 関節結節外側部において, 軽度8関節, 中等度12関節, 高度10関節の計30関節 (75%) という結果であった。
    以上の結果より, pseudowallは, クローズドロック症例において最も多く認められる線維性癒着所見であり, 本症の運動障害の原因と解釈されることから, 治療対象とすべき病態と考えられた。
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