日本顎関節学会雑誌
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20 巻, 2 号
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  • 杉崎 正志, 高野 直久, 木野 孔司, 林 勝彦, 齋藤 高, 西山 暁, 鈴木 茂
    2008 年 20 巻 2 号 p. 127-133
    発行日: 2008/08/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    著者らは顎関節症スクリーニングのための質問票を開発し, 抽出された4質問が感度0.746, 特異度0.811で最も高値であることを報告した。
    目的: この4質問票を用い, 東京都内就労者に対し2005年と2006年に顎関節症に関するスクリーニングを実施し, 就労者の顎関節症有病率とその寄与因子を検討することである。
    方法および対象: 東京都歯科医師会による2005年 (412名, 有効解析対象者396名 (96.1%)) と, 2006年 (795名, 有効解析対象者679名 (85.4%)) の2次資料を用いて解析した。
    結果: 東京都内就労者では男性の顎関節症は20歳代19.5%, 30歳代35.1%, 40歳代27.3%, 50歳代14.3%, 60歳代3.9%と30, 40歳代に多く, 女性の顎関節症は20歳代32.2%, 30歳代38.3%, 40歳代23.5%, 50歳代6.1%と20, 30歳代に多くみられた。顎関節症者と非顎関節症者でのロジスティック回帰分析の結果, 顎関節症男性では疲労持続感がオッズ比1.55で選択され, 女性では抑うつ感 (オッズ比1.37) と疲労持続感 (オッズ比1.30) が選択された。
    結論: この結果は2次資料の結果であり, 直接的な関係を示唆するとはいえないが, 今後, 勤務内容, 就労時間および睡眠と顎関節症発症との関連性を調査する必要性が示された。
  • 井澤 俊, 堀内 信也, 辻 けい子, 藤原 慎視, 大庭 康雄, 田中 栄二, 森山 啓司
    2008 年 20 巻 2 号 p. 134-138
    発行日: 2008/08/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    顔面非対称を伴う骨格性下顎前突症患者に対する顎矯正手術として, 偏位側にIVRO, 非偏位側にSSROを適用したところ, 偏位側の下顎頭形態に骨添加を伴うリモデリングを認めた症例を経験したので報告する。症例は, 反対咬合を主訴として来院した初診時年齢15歳6か月の女子で, overjet-2.5mm, overbite+4.5mm, Angle Class III, ANB-1.5°の骨格性下顎前突症と診断された。マルチブラケット法による術前矯正治療後, 右側はSSROにて9mm, 左側はIVROにて5mm下顎骨を後退させ咬合の改善を行った。術前, 術後3か月, および術後12か月の下顎頭の位置, 形態を顎関節側面断層規格X線写真を用いて評価したところ, 術直後においてIVROを適用した左側下顎頭の位置は前下方へと変化した後, 術後12か月には下顎頭後縁部に骨添加を示し, 明らかな形態変化を認めた。本症例から, 顔面非対称を伴う骨格性下顎前突症例に対する顎矯正手術として, IVROとSSROの併用は有用な方法と考えられるが, 術後に生じる下顎頭の変化に対する慎重な経過観察の必要性が示唆された。
  • 森田 匠, 藤原 琢也, 丸尾 尚伸, 根来 武史, 倉田 周幸, 栗田 賢一, 後藤 滋巳, 平場 勝成
    2008 年 20 巻 2 号 p. 139-150
    発行日: 2008/08/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    目的: 硬い固形食品を咀嚼する場合, 食品自身によって咬合が挙上され, 平衡側での上下臼歯咬合関係が消失し, 作業側を支点とした平衡側に下顎骨が回転するような不安定な咬合が出現する。このような咬合状態において, 作業側下顎骨の位置や運動を安定させるための咬筋と外側翼突筋の役割を解析した。
    方法: ウレタン麻酔下のウサギ大脳皮質咀嚼野電気刺激により咀嚼様運動を誘発し, 左咀嚼時の左右咬筋ならびに左側外側翼突筋筋電図と, 切歯点および左側 (作業側) 下顎頭の運動を同時記録した。咬合挙上は, 上顎左側臼歯部咬合面を覆う可撤式の装置を作製して行った。
    結果: 咀嚼様運動時では, 作業側下顎頭の矢状面内運動路は, 咬合相で前下方へと動いた。それに対し片側咬合挙上を行うと, 咬合相で下顎頭が後下方に動く異常運動が半数で認められた。片側咬合挙上により異常運動が出現する群としない群では, 作業側と平衡側の咬筋活動量, および作業側外側翼突筋と作業側咬筋筋活動の時間間隔に違いがみられた。
  • 特に実有痛開口域を指標として
    狩野 証夫, 柏木 剛, 山口 元史, 武者 篤, 茂木 健司
    2008 年 20 巻 2 号 p. 151-156
    発行日: 2008/08/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    実有痛開口域 (自力有痛開口域から自力無痛開口域を引いた値) を指標として顎関節クローズドロック症例の一次療法の予後を検討し, 実有痛開口域が本症例の一次療法の効果を予測する因子となりうるかを検討した。
    対象は2004年9月~2007年2月 (2年6か月間) に当科に初診となった顎関節症患者341名のうち, 顎関節クローズドロックと診断された106名中27例 (男性4名, 女性23名。平均40.3歳 (14~74歳) ) とした。対象を実有痛開口域6mm以上群 (16名17関節) と6mm未満群 (11名11関節) とし, これら2群間で, ロック期間, 一次療法期間, 一次療法前後の疼痛VAS, 最大開口域の各項目について比較検討を行った。顎関節機能障害度分類を使用し, 各群の対象症例数に対する改善症例数を改善率として評価した。
    結果: 改善率は実有痛開口域6mm以上群 (94%) が実有痛開口域6mm未満群 (36%) よりも有意に高かった (p<0.05)。
    したがって実有痛開口域は, クローズドロック症例の一次療法の効果を治療前の時点において予測するうえで重要な指標であると考えられた。
  • 杉崎 正志, 覚道 健治, 木野 孔司, 湯浅 秀道, 江里 口彰, 平田 創一郎
    2008 年 20 巻 2 号 p. 157-165
    発行日: 2008/08/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    現在の診療ガイドライン作成では「ある疾患の患者に, ある治療を行った場合, 行わない場合に比べて, どうなるのか」 (PE (I) CO: Patient, Exposure (Intervention), Comparison, Outcome) という一般臨床におけるクリニカルクエスチョン (clinical question; CQ) を用いることが求められている。
    目的: 一般開業歯科医師らに顎関節症治療に対するアンケートを実施し, 顎関節症のどの症状に対して, どのような治療方法が有効かというCQに関して収集し, 解析すること。
    対象および方法: アンケート収集は日本歯科医師会が実施し, われわれは個人情報を排した2次データを解析した。対象者は日本歯科医師会一般会員とその施設に勤務する会員および非会員とし, 原則的に系統抽出で一般会員数の1/10を, 年齢群ごとに抽出した。用語の統一は著者らの1人がSPSS社製統計ソフトのテキストマイニングを用いて類似用語をまとめた。
    結果: 送付者は5, 999名で, 回収率は23.5%, 1, 412名であった。CQは合計4, 423問で, 不適切CQ (353問) は解析から除外した。その結果, 治療法別有効解析CQ数は4, 070問であった。主たる症状 (3%以上) に対して選択されていた主たる治療法 (5%以上) は32種であった。ガイドライン作成ではこれらの組合せが必要になるであろう。
  • 浅野 明子, 田邉 憲昌, 藤澤 政紀
    2008 年 20 巻 2 号 p. 166-173
    発行日: 2008/08/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    顎関節症発症の寄与因子は, 局所的・身体的因子のほかに, 精神的因子の関与が示唆されている。そこで顎関節症発症の好発年齢である20歳前後を対象に前向きコホート調査を行い, 顎関節症発症の寄与因子を探った。
    調査対象は岩手医科大学歯学部学生207名 (男性139名, 女性68名, 平均年齢20.4歳) である。調査方法は, 初年度に4種類の心理テスト (Y-G, CMI, SDS, MAS), Life Events・Life Changes質問票 (LeLc), 顎機能に関する質問票調査を施行した。2.5年後に再度顎機能に関する質問票調査を施行し, 顎関節症発症の有無を調査した。
    2.5年間に追跡調査ができたのは171名 (男性116名, 女性55名) で, そのうち顎関節症を発症したのは25名であった。交絡因子と考えられる性別, 年齢, 関節雑音の影響を排除するためにロジスティック回帰分析を行った結果, Y-GのB, E類, MASの高度な不安とされるI群で有意差が認められた。LeLcの2群間の比較では有意差は認められなかった。各心理テストのライフスコアの平均値の比較では, Y-GのB類とMASのI群で他より有意に高い値を示した。
    以上の結果から, 情緒不安定, 不安傾向が顎関節症発症の寄与因子となることが示唆された。
  • 下顎頭の軟骨変性と骨吸収について
    佐藤 かおり, 久保山 昇, 久山 佳代, 小倉 直美, 山本 浩嗣, 近藤 壽郎
    2008 年 20 巻 2 号 p. 174-181
    発行日: 2008/08/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    変形性関節症や慢性関節リウマチのような変性性関節疾患は, 顎関節においても関節痛や機能障害の原因として発現する。現在, これら顎関節の変性性関節疾患の病因は不明であり, その病因追究のための動物モデルが必要と考えられる。本研究の目的は, 顎関節の関節変性疾患のモデルとしてII型コラーゲン誘発顎関節モデルを作製し, このモデルの組織学的所見を検討することである。
    Sprague-Dawley (S. D. ) 系雄性ラット (7週齢) にウシII型コラーゲンおよびFreund's incomplete adjuvantを背部皮内投与し, 初期感作した。二次感作の目的で同エマルジョンを顎関節腔内に週1回計5回, 直接注入し, 追加免疫を行った。以上の方法により, II型コラーゲン誘発顎関節炎を作製した (n=5)。対照は生理的食塩水を顎関節腔内に注入した動物とした (n=5)。感作終了後63日後に顎関節を摘出し, 組織学的に検討した。
    II型コラーゲンで感作した顎関節では, 下顎頭最表層にあたる線維層の厚みが増加し, その下層にあたる増殖層の厚みは減少していた。増殖層の下層である肥大層は不明瞭化または消失し, 下顎頭の軟骨性被覆の全体の厚みは対照群に比べ減少していた。また実験群の下顎頭の骨構造は, 対照群に比べ矮小化していた。
    以上よりわれわれが作製したII型コラーゲン誘発顎関節炎は, 下顎頭軟骨構造の変性過程および骨構造の吸収過程などを検討できる動物モデルとなりうることを示した。
  • 中筋 幾子, 宮澤 健, 田渕 雅子, 福岡 逸人, 後藤 滋巳
    2008 年 20 巻 2 号 p. 182-183
    発行日: 2008/08/20
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
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