目的:顎関節症患者において,歯ぎしりの自覚が睡眠時ブラキシズムの臨床的判定に有効であるかどうかの妥当性を既知グループ技法により検証した。
方法:被験者として当科を受診した顎関節症患者148名を選択した。初診時に患者質問票およびSymptom Checklist-90-Revised(SCL-90-R)日本語版に回答させ,自覚的な頭頸部の疼痛の程度はVisual Analogue Scaleを用いて記録した。筋触診を含む臨床検査は,あらかじめ信頼性を確認した2名の検者が行った。問診による過去6か月間のブラキシズムの自覚の有無により,歯ぎしり自覚群74名と非自覚群74名の2群に分類した。
結果:年齢,性別および顎関節症の症型分布については2群間に有意差を認めなかった。自覚的な疼痛の程度(自発痛,運動時痛,頭痛),筋触診スコアおよび口腔内所見(咬耗および舌・頬粘膜の圧痕の頻度)には2群間に有意差を認めなかった。SCL-90-Rの5つの下位尺度に性別,年齢を加えてロジスティック回帰分析を行った結果,女性(オッズ比:3.15,
P=.028)と不安(オッズ比:1.06,
P=.003)が有意な変数であることが示された。
結論:女性の,また不安傾向の強い顎関節症患者と睡眠時ブラキシズムの自覚には関連があることが示され,歯ぎしりの自覚の有無をもって睡眠時ブラキシズムの臨床的診断基準とすることの妥当性は低いと考えられた。
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