日本顎関節学会雑誌
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21 巻, 2 号
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  • 榎本 明史, 岡本 怜子, 妹尾 日登美, 草山 守生, 濱田 傑, 古郷 幹彦
    2009 年 21 巻 2 号 p. 99-104
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/03/29
    ジャーナル フリー
    三叉神経中脳路核ニューロンは三叉神経系の一次知覚ニューロンであり,リズミカルな顎運動を誘発させるために非常に重要な働きをしていることが知られている。三叉神経系において,NMDA(N-methyl-D-aspartate)誘発性の顎運動様神経活動が知られているが,三叉神経中脳路核ニューロンのNMDAに対する電気生理学的特性はいまだ報告がない。
    今回われわれは,NMDA投与により三叉神経中脳路核ニューロンの神経活動がどう影響を受けるかを検討し,またナトリウム電流(特に閾値レベルにて非常に重要な働きをなすpersistent sodium currentとresurgent sodium current)がどのように影響を受けるかを検討した。
    NMDA投与にて,三叉神経中脳路核ニューロンの神経活動は抑制され,またナトリウム電流の細胞内への流入も減少することが認められた。
  • 瀧口 悟, 前川 賢治, 小野 剛, 窪木 拓男
    2009 年 21 巻 2 号 p. 105-109
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/03/29
    ジャーナル フリー
    慢性筋痛の病態に筋組織内血流動態の失調が関与している可能性が報告されていることから,組織血流の改善効果があるとされる直線偏光近赤外線照射後の咬筋組織内血流動態を,健常被験者を対象として検討した。被験者は本学職員,学生のうち,全身的に健康で,慢性筋痛を認めない男性10名(25.6±1.8歳)である。血流動態の測定にはレーザー組織血液酸素モニター(オメガモニターBOM-L1 TRW, オメガウェーブ社:東京)を用いた。本装置センサーを右側咬筋中央相当部皮膚に貼付し,組織酸素化血液量,組織脱酸素化血液量,組織全血液量,組織血液酸素飽和度を測定した。実際の測定は,測定装置装着後に一定期間の安静を指示した後,ベースラインとして3分間連続記録し,直線偏光近赤外線(スーパーライザー,東京医研:東京)を10分間右側咬筋に照射(出力80%,4秒照射・1秒休止サイクル),終了後に再度3分間連続測定した。また,同様のタイムコースで照射を行わない擬似条件を照射条件に先駆けて記録した。その結果,照射前ベースラインの平均値は,両条件において差はみられなかったが,照射後の平均組織酸素化血液量,平均組織血液酸素飽和度は擬似照射後と比較して有意に増加した(p<0.05)。以上より,咬筋組織に対する直線偏光近赤外線照射は,組織内動脈血量ならびに酸素飽和度を増大させることが明らかとなった。
  • 勝又 明敏, 飯田 幸弘, 藤下 昌己, 泉 雅浩, 有地 淑子, 小木 信美, 五十嵐 千浪, 小佐野 貴識, 小林 馨, 石井 裕之, ...
    2009 年 21 巻 2 号 p. 110-115
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/03/29
    ジャーナル フリー
    WAO-1(Waseda Asahi Oral-rehabilitation robot No. 1)は,顎顔面領域のマッサージ治療を行う目的で開発されたロボットである。WAO-1は,6自由度をもつ2本のアームと,顔表面を擦るプランジャにより構成され,プランジャの力と位置を制御することにより精密なマッサージを行う。臨床応用試験の一部として,咀嚼筋へのマッサージを試みた。健常人に施行した結果,ロボットマッサージが安全かつ快適であることがわかったので,顎関節症患者37名にマッサージを行った。その結果,3回以上マッサージを受けた患者の73%で疼痛の減少が,50%で開口度の改善が認められた。ロボットによる咀嚼筋のマッサージは,顎関節症における疼痛軽減と開口障害の改善に有効なことが示唆された。
  • 永田 和裕, 菅原 佳広, 後藤 基誉, 渥美 陽二郎, 白野 美和, 堺 基至, 外山 三智雄
    2009 年 21 巻 2 号 p. 116-123
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/03/29
    ジャーナル フリー
    WinJaw®システムは,超音波を使用した軽量で非接触式の下顎運動解析装置である.機能時の顆頭運動は通常1mm以下の小さな運動量で発現するため,顆頭運動解析装置は,微小な運動を解析する性能が必要とされる.本研究の目的は,WinJaw®EPA の精度を確認するとともに,3Maker+3Microphone(3MK)と新たに開発された4Maker+4Microphone(4MK)の2種類のセンサーの比較を行うことである.
    本研究では,顆頭運動を再現するシミュレーターを製作し,測定精度と分解能を求めるとともに,2種類のセンサーの比較を行った.また,分解能を改善する信号処理についても検討した.結果は次のとおりである.
    平均分解能は3MKが51.9~53.9μm,4MKが44.9~45.6μmであった.平均誤差は3MKが-0.45~5.31%,4MKが0.46~4.27%であった.空間精度は3MKが98.9μm,4MKが90.9μmであった.3MK-4MKセンサー間の比較では,平均分解能と誤差で有意差は認めないが,測定方向間の差は4MKが少なかった.計測後6ポイントの移動平均を適用することで最終的な空間精度は3MK=68.6μm,4MK=71.0μmに改善した.これらの値は顆頭運動の評価には十分であり,Win jaw® EPAは診療室での顆頭位の客観的な評価に適していると判断された.
  • 内田 貴之, 酒井 淳, 岡本 康裕, 多田 充裕, 大関 一弥, 若見 昌信
    2009 年 21 巻 2 号 p. 124-128
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/03/29
    ジャーナル フリー
    陳旧性関節突起骨折の1症例に対し,左右側下顎頭運動について検討を行ったので報告する。患者は48歳の女性で,1986年頃,顔面部を強打した。その後,開口障害の消長を繰り返し,2007年12月1日,開口障害を主訴に来院。左側下顎頭部に陳旧性骨折を認めたが,関節円板の位置は正常なため,右側顎関節症IIIb型と診断し,保存的療法で対処した。症状軽減後,下顎頭運動の測定を行った。その結果,骨折側下顎頭の前方移動量が少なく,両側下顎頭とも側方運動時の後方偏位が大きく,開口末期の左右側下顎頭運動の同調性に乱れを認めた。
  • 後藤 基誉, 永田 和裕, 堺 基至, 菅原 佳広, 渥美 陽二郎, 白野 美和, 外山 三智雄
    2009 年 21 巻 2 号 p. 129-137
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/03/29
    ジャーナル フリー
    マニピュレーションテクニック(MAT)は,非侵襲的で安価な治療法として,開口制限を有する顎関節症患者の治療に使用されているが,その有効性や最も効果的な方法は明らかではない。この研究の目的は,複数のMATを組み合わせたJog-manipulation technique(J-MAT)の効果を明らかにすることであり,J-MAT施術前後の顎運動の定量的な評価を行った。被験者として,日本歯科大学新潟病院あごの関節外来を受診し,開口量が35mm以下で,自由意志に基づいて研究への参加を承諾した17人の顎関節症患者を選択した。閉口型,側方型,開口型の3種類のMATを組み合わせたJ-MATを患者に施術し,さらに繰り返しの効果を明らかにするため,数回のJ-MATを追加した。顎運動の記録にはWinJaw®システムを使用し,切歯点と顆頭点の評価を行った。計測はMATの各ステップで行い,測定値は統計学的に比較した。施術前の平均開口距離は21.6±6.5mm,術後は33.3±6.4mmで統計的に有意に増加した(p<0.01)。顆頭運動の平均増加量は,閉口型が1.8±2.7mm,側方型が1.1±1.1mm,開口型が1.4±1.4mm,また繰り返しの効果が1.0±1.4mmであった。最終的な顆頭運動量の増加量は5.3±3.5mmであり,術前より有意に増加した(p<0.01)。しかしながら各ステップ間では有意差を認めず,特定のMATが他のステップより優れていることは確認できなかった。これらより,複数のMATを組み合わせたJ-MATを繰り返し適用することで,顎関節症患者の顎運動が改善することが示された。
  • 古川 清暁, 谷尾 和彦, 菅野 磨以子, 木谷 憲典, 田窪 千子, 大竹 史浩, 領家 和男
    2009 年 21 巻 2 号 p. 138-142
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/03/29
    ジャーナル フリー
    筋突起過形成症術後に骨形成が認められた症例を経験したので報告する。患者は13歳の男児で開口障害を主訴に来院した。最大開口量は上下切歯間距離で13mmであった。画像所見では左側筋突起の過長が頬骨弓前方上縁内側面に干渉している状態が認められた。
    左側筋突起過形成症の臨床診断の下,全身麻酔下に口内法による筋突起切除術を施行した。左側筋突起切除後も開口域は37mmで右側咬筋のつっぱりを認めたため,両側咬筋筋膜の剥離と切開を行い,開口域は43mmまで増加した。
    術後3か月に筋突起切除部に骨形成を認めた。形成された骨は形態に大きな変化はなく,また,下顎枝と連続することもなかった。術後開口訓練を行い,術後34か月現在の開口量は32mmである。
  • 高塚 茂行, 吉田 完, 窪田 善之, 表 武典, 寺井 功一, 山田 宗宏, 中川 清昌, 山本 悦秀
    2009 年 21 巻 2 号 p. 143-149
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/03/29
    ジャーナル フリー
    顎関節症患者の滑液には過剰なメカニカルストレスより発生した蛋白分解酵素が発現していることが知られており,顎関節における変形性関節症の程度を反映していると考えられる。そこで,関節鏡視下手術の適応となった27症例36関節の上関節腔より採取した滑液を生化学的に分析し,マトリックスメタロプロティナーゼ(MMP)とアグリカナーゼ(ADAMTS)の発現を調べ,MRIや関節鏡視で得られた所見との関連を評価した。術前MRIでは,18症例の下顎頭に著しい変形を認めた。関節鏡視では27症例全例に滑膜炎と線維性癒着を認め,このうち7症例に関節円板組織の穿孔を認めた。滑液の生化学的分析では,高頻度に潜在型のMMP-2(24/27),MMP-9(25/27)とADAMTS-4(26/27)の発現を認めた。この結果から,関節腔内における線維性癒着が強く,変形性顎関節症が進行した症例では高頻度にMMPやADAMTSなどの活性がみられ,組織破壊が進行していることが示唆された。
  • 片岡 竜太, 渡邊 友希, 阿部 有吾, 船登 雅彦, 佐藤 仁, 古屋 良一
    2009 年 21 巻 2 号 p. 150-155
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/03/29
    ジャーナル フリー
    TCH(Teeth Contacting Habit)や日中クレンチングの為害性とその是正法の説明および咬合の変化が目的でない単純スプリントの装着が,TCH・日中クレンチングの意識化にどのような効果があるかアンケート調査を中心に検討した。
    対象症例はTCH・日中クレンチングを行っていることが疑われた患者95名で,初診時に自覚に関するアンケートを実施した。次に単純スプリントを日中のみ2週間装着後に,その自覚の有無と自覚した場面に関するアンケートを実施した。その結果,装着前に自覚がなかった患者(24%)のうち,全員が装着後TCH・日中クレンチングを自覚した。装着前に「たまに」自覚していた患者(21%)の85%,「しばしば」(31%)の87%,「いつも」(24%)の83%が新たな場面で自覚したと回答した。気づいた場面では,「考え事をしている時」(自覚した患者の51%),「電車に乗っている時」および「パソコンをしている時」(同28%),「書き物をしている時」(同23%)などが上位であった。
    日中クレンチングの意識化と是正法の指導を含めた総合的な治療の効果を検討するために,クローズドロックと臨床的に診断された42例について,初診時から2週間ごとに自力無痛最大開口域の変化を観察し,他施設における結果と比較した。自力無痛最大開口域は初診時と2週後および2週後と4週後に有意に増加し,12週まで増加した。
    したがって,説明に加えて,スプリントを短期間日中装着することにより,TCH・日中クレンチングを意識化しやすくなったことから,是正に有効である可能性が示唆された。
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