日本顎関節学会雑誌
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25 巻, 3 号
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原著
  • 小樋 香織, 小佐野 貴識, 五十嵐 千浪, 大久保 力廣
    2013 年 25 巻 3 号 p. 163-170
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/27
    ジャーナル フリー
    変形性顎関節症(IV型)において,下顎頭の骨変化に対する客観的評価法はほとんどない。そこで,下顎頭前機能面の面積を定量化できれば,経時的な骨変化の客観的評価法として有益である。本報告では,下顎頭前機能面の面積測定の信頼性を明らかにするために,MR画像を用いて30関節の下顎頭前機能面の面積を測定した。対象として,初診時にMR画像を撮影した顎関節症患者15名,計30関節を用いた。患者の内訳は,男性2名,女性13名,平均年齢29.2歳(最低年齢10歳,最高年齢70歳,中央値19.0歳)であった。測定は,Aze Win(AZE社,東京)を用いて30関節に対し,1週以上間隔を空け,計測者3名が2回ずつ行い,下顎頭前機能面の1回目面積値と2回目面積値をSpearmanの相関係数を用いて有意水準1%,また信頼性・級内相関(ICC)は有意水準5%にて統計分析を行った。
    Spearmanの相関係数でも相関係数0.981, 0.915, 0.921, 3名ともにp<0.001であり,1回目と2回目の面積値にきわめて高い相関があった。また,計測者内・計測者間の信頼性も比較検討した結果,計測者内信頼性は,0.993, 0.968, 0.955であり,計測者間の信頼性・級内相関係数(ICC)は,0.974(1回目),0.985(2回目)であった。したがって,本測定法は,計測者内・計測者間ともに信頼性の高い方法であることが示された。
症例報告
  • 森 悠衣, 岩崎 春美, 後藤 仁志, 後藤 基宏, 窪 寛仁, 覚道 健治, 秋山 広徳, 四井 資隆, 清水谷 公成
    2013 年 25 巻 3 号 p. 171-176
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/01/27
    ジャーナル フリー
    59歳女性。2011年5月,右側顎関節痛と咬合異常を主訴に来院。既往歴は2007年9月,56歳時に関節リウマチ(以下RAと略す)を発症し,内分泌・骨・リウマチ内科にて加療中。初診時口腔内所見は開口距離32 mmで,右側下顎大臼歯部のみ咬合接触が認められた。MR画像およびCT画像では右側非復位性関節円板前方転位で,下顎頭に骨変化を認めた。左側は復位性関節円板前方転位を認めた。2010年2月頃からRAによる顎関節を含めた関節症状が出現し,リウマトレックス(以下MTXと略す)6 mg/週を開始したが,副作用で白血球減少のためMTXを減量すると,顎関節を含めた関節炎が再燃した。免疫抑制剤タクロリムスを少量併用したが十分な効果が得られなかった。副作用が落ち着いたので2011年6月にMTXを6 mg/週に戻すと症状は改善した。2011年5月に顎関節症状が再燃し,血液検査結果ではCRP:0.07 mg/dl, DAS28-ESR:4.18, RF:63 Iu/mlであった。スプリント装着後2週間経過時に咬合接触面積の増加が認められ,装着後1~2か月経過時には,関節痛より咬筋部痛があり,咬合状態は右側下顎第二大臼歯が強く咬合接触し,左側下顎第一・第二大臼歯の咬合接触が認められた。装着後3か月経過時にはさらに右側下顎第一大臼歯が咬合接触した。装着後4か月経過時には右側顎関節は軽度の違和感のみが残存し,咬合の初期接触位では離開するも深く咬むと左側下顎臼歯部の咬合接触が認められるようになった。5か月経過時には臼歯の咬合接触を認めた。装着後10か月経過時には右側顎関節痛も消失し,咬合状態も良好なため,スプリントを外して経過観察を行った.MR画像検査の結果,右側下顎頭上面に骨増生とくちばし状の骨変化を認めた。顎関節症状が消失した頃と同時期の2012年4月の血液検査結果ではCRP:0.09 mg/dl, DAS28-ESR:3.11, RF:38 Iu/mlと低下し,RAの活動性に中等度の改善および咬合状態の回復がみられた。本症例はスプリント療法を併用した包括治療により,顎関節リウマチと咬合状態の改善に効果的であった。
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