顎関節内障(internal derangement:ID)患者の顎関節滑膜では炎症所見が確認されており,TNF-
αはその病態形成に関与する因子として知られている。今回,ID患者から得た培養ヒト顎関節滑膜細胞をTNF-
αで刺激し,antibody arrayを用いてケモカインタンパク質産生を検討した。ID患者より顎関節滑膜組織を採取し,out growth法にて滑膜細胞を得た。得られたヒト顎関節滑膜細胞をTNF-
αで4時間刺激し,培養上清中のケモカインタンパク量をantibody arrayを用いて検出した。Antibody arrayの結果,TNF-
α刺激では無刺激時と比較してケモカインのスポットは全体的に濃い傾向を示した。スポットを定量後,TNF-
αによって産生上昇が認められた7種類のケモカインについて,real time-PCR法で遺伝子発現量を継時的に確認した。TNF-
αで2, 4および8時間刺激したときのケモカイン遺伝子発現量は7種類すべてにおいていずれの時間でも無刺激時より上昇した。ケモカインは白血球の遊走を誘導し,炎症に深く関与している。したがって,TNF-
αはID患者の顎関節滑膜細胞において,ケモカイン産生を上昇させることにより,関節腔内の炎症病態の形成に関与していると考えられた。
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