国際頭痛分類(International Classification of Headache Disorders:ICHD)は,専門家の合意に基づいて作成された国際頭痛学会の頭痛分類と診断基準である。1988年の初版から改訂を経て,2013年7月に第3版beta版(ICHD-3
β)が公開され,2014年10月には日本語版が発表された。beta版である理由は,2015年現在改訂中の世界保健機関(WHO)の国際疾病分類第11版(ICD-11)と整合性をもたせるためであり,ICD-11との調整後にICHD-3として最終版が発表される予定である。ICHD-3
βでは,頭痛疾患を3部(part),14のグループに分類している。第1部(グループ1~4)は,一次性頭痛,すなわち頭痛そのものが疾患であるもので,1.片頭痛,2.緊張型頭痛,3.三叉神経・自律神経性頭痛などがこのなかに含まれる。顎関節症と鑑別が必要な疾患の多くは,このグループに属している。第2部(同5~12)は二次性頭痛,すなわち,原疾患の症状として頭痛が生じる疾患群を指す。「顎関節症(TMD)による頭痛(Headache attributed to temporomandibular disorder(TMD))」は11.7に分類されているが,歯科医が専門とする顎関節症によって生じる本頭痛の診断には,国際疼痛学会(IASP)の口腔顔面痛グループ(OFP Special Interest Group)とRDC/TMDネットワーク協議会が連携して作成したDC/TMDの診断基準を使用することが推奨されている。第3部(同13,14)は,「有痛性脳神経ニューロパチー,他の顔面痛およびその他の頭痛」であり,三叉神経痛,舌咽神経痛,口腔内灼熱症候群(舌痛症),持続性特発性顔面痛(いわゆる非定型歯痛/非定型顔面痛)などがここに分類される。顎関節症を正しく診断するためには,鑑別すべき疾患について知ることが必要であるため,専門医にはICHD-3
βの知識が必須である。
抄録全体を表示