日本顎関節学会雑誌
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3 巻, 2 号
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  • 杉崎 正志, 伊介 昭弘, 藤永 公仁子, 田辺 晴康, 加藤 征
    1991 年 3 巻 2 号 p. 223-235
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    顎関節構成硬組織は咀嚼機構を反映し, 生涯を通じて咀嚼機構に対応した変化が生じる。しかしながら, 水平面における下顎頭長軸角は角度計測法自体が報告者によって異なり, 下顎頭長軸角の咀嚼機構における診断意義についても報告者によって様々であり, 結果は一致していない。さらに下顎頭長軸角の機能解剖学的検索はほとんどされていない。
    そこで下顎頭長軸角の機能解剖学的意義を検討し, 顎関節の機能異常によって下顎頭長軸角に変化が出現する可能性があるかどうかを推測する目的で, 日本人晒浄頭蓋骨を用い, 下顎頭長軸角を含めた顔面頭蓋骨の3次元角度計測を行ったので報告する。
    その結果, 下顎頭長軸角は咀嚼機構や顔面骨格形態の一部を反映しており, 特に下顎窩外側角や咬筋の付着方向と関連が認められた。また, 関節結節外側の位置の変化をきたすような状態 (加齢, 咬耗の進行や歯の喪失) 下では, 下顎頭長軸角は, それに追従して変化する可能性が示唆された。しかし, 個人における左右側あるいは健側と患側の比較は, ばらつきが大きいため困難であろうと思われた。
  • 青木 一郎, 後藤 康之, 野村 岳嗣, 水谷 英樹, 田口 望, 上田 実, 金田 敏郎, 峰野 泰久, 桑原 未代子
    1991 年 3 巻 2 号 p. 236-242
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    近年, 顎関節症患者の低年齢化が顕著であり, 当科での発症年齢が15歳以下の若年者症例を見ると, 明らかな増加傾向を認める。若年発症顎関節症は顎関節症分類III型が多く, 従って咬合および下顎運動の異常に起因する症例が多いと考えられる。そこでわれわれは1989年に受診した発症年齢15歳以下で歯冠補綴を受けていない女性の顎関節症患者25名について模型分析を行い, 同年代健常者と比較し報告した。
    対象患者は発症平均年齢13.0歳, 当科受診平均年齢14.3歳であり, 歯齢IIIC-IVAであった。模型分析は1) 上下顎正中線の不一致の有無2) over bite, over jetの量3) Spee弯曲の程度4) 咬合の不正部位5) 歯列弓周長, 歯冠近遠心幅径の総和6) 歯列弓長・幅径7) 歯槽基底長・幅径8) discrepancyの有無9) 上下顎第1大臼歯近遠心的咬合関係について検討した。その結果, 疾患群では, over biteの量, Spee弯曲の程度, 咬合の不正部位, 上顎の歯槽基底長径に関して対照群と差が認められた。
    これらの事から, 咬合完成期にあたる若年者症例における咬合の不調和は, 筋の緊張促進, 下顎の後退位, および異常な顎運動等を引き起こす事が考えられ, 顎関節症を発症する誘因となる事が疑われた。
  • 特にオトガイ-頭頂規格撮影による
    本田 和也, 川嶋 祥史, 島村 卓也, 大島 一夫, 池田 港, 丸橋 一夫, 木村 一之, 篠田 宏司, 西連寺 永康, 島田 和幸, ...
    1991 年 3 巻 2 号 p. 243-253
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    顎関節における研究は, 歯科医学領域において大変興味ある問題であり, その病態や解剖学的形態および成長について近年多くの報告がされている。従来における下顎頭成長の研究の多くは, その対象が幼小児から成人についてのものであり, 胎児期については森永, 井出, および本田の報告がみられるのみで極めて少ない。また, これらはすべて側貌像または側貌X線規格写真のみを使用した研究であり, オトガイ-頭頂方向から観察した胎児期の下顎頭の成長についての検討は殆どない。著者らは, 日本人下顎頭の成長がどのような経過を辿るか, 特に胎児期の成長の過程を明らかにすることを目的として, 胎児のオトガイ-頭頂X線規格写真を計測し若干の知見を得たので, ここに報告する。
    研究材料は, 日本大学歯学部第一解剖学教室所蔵の胎齢5ヵ月から胎齢10ヵ月までの胎児計33体を使用した。撮影法は当教室の鳥海の方法に準じ, オトガイ-頭頂X線規格写真を撮影した。計測項目は, 鳥海, 沢田の方法に準じ以下の結果を得た。
    胎児下顎頭の長径, 短径, 長径間距離, および面積は, 胎齢5ヵ月から胎齢9ヵ月において, 胎齢の増加に伴いおおむね直線的な成長がみられ, 左右差はなく, 胎齢9ヵ月以降に成長のスパートがみられた。また, 胎児下顎頭の長径問角度では, 胎齢5ヵ月から胎齢10ヵ月の胎児において約120°で, 胎齢の増加による変化は殆ど認められない。
  • IV-2 顎関節症における聴性脳幹反応について
    武田 友孝, 石上 惠一, 青野 晃, 高橋 伸尚, 星野 浩之, 高山 和比古, 宮田 正則, 月村 直樹, 佐藤 武司, 島田 淳, 早 ...
    1991 年 3 巻 2 号 p. 254-267
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    顎関節は, 蝸牛, 耳小骨などの聴生感覚器および聴覚伝導路と発生学的, 解剖学的および神経生理学的に関連が深く, 顎関節症など咀嚼系の異常が聴覚系に多大な影響を及ぼしていることが推察される。そこで, 当教室で行っている顎口腔系状態と全身状態との関連に関する研究の一つとして, 外耳への音刺激により, 早期に上行性聴覚路より誘発される活動電位で, その起源が明瞭なところから, 異常の局在診断に有用とされ, 神経学的検査などに用いられている聴性脳幹反応に注目し, 本研究に応用している。
    今回, 著者らが, 顎関節症患者と健常者の聴性脳幹反応について, 比較検討を行ったところ, 聴関節症患者では, 健常者に比ベピーク潜時の延長およびピーク潜時の左右差が認められた。従って, 顎関節症患者は, 顎口腔系のみならず, 聴覚系および脳幹などにも影響を及ぼしている可能性が大であり, 今後さらに, これらについて詳細に究明していくとともに, 顎関節症の診査, 診断および治療にあたって, これらの領域との関連にも十分な注意を払うことが必要と考えられる。また, 顎口腔系機能の障害と全身機能との関係について, 多方面から検討を加えていくことも必要であると思われる。
  • ディスクリポジショニングタイプについて
    赤西 正光, 田中 孝一, 吉川 健司, 仲谷 江美子, 大前 泰三, 井上 俊二, 石垣 尚一, 奥田 眞夫, 丸山 剛郎
    1991 年 3 巻 2 号 p. 268-277
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    咬合治療のために用いられるバイトプレーンの内, 顎関節内部障害患者にたいしては上顎に対する下顎の位置を変化させ顎関節部の異常を積極的に改善するタイプ, すなわちディスクリポジショニングバイトプレーンを用いることにより, より早期に症状の改善が見られることが多い。これまでこのタイプのバイトプレーンの効果については顎関節部に対する働きかけが主たるものであり筋に対する見解は見られなかった。そこで本研究は主として咀嚼筋に対するディスクリポジショニングバイトプレーンの影響を検討したものである。その結果, 関節円板の位置の是正を目的としたこのバイトプレーンが筋肉に対しても大きな影響があり結果として関節円板後方付着部分や下顎頭に付着する筋の安静をはかるのではないかと思われる所見を得たものである。
  • 覚道 健治, 杉村 忠敬, 木村 明祐, 白数 力也, 覚道 幸男
    1991 年 3 巻 2 号 p. 278-287
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    下顎運動に伴って現われる顎関節部下顎窩上壁の力学的反応の特性を解明する目的で, サルに下顎運動を人為的に行わせて, 下顎窩上壁を構成する側頭骨鱗部大脳面部に生ずるひずみを三軸ストレインゲージ法で測定した。
    関節結節上壁相当部 (A) においても下顎窩上壁相当部 (B) においても, 全ひずみ量は, 前突位では最大であり, ついで左方移動時, 右方移動時に小さくなり, 咬頭嵌合位では最小であった。
    ひずみの性質もA点とB点とでは同じであるが, 前突位, 前突位からの開口運動時, 蝶番軸運動時, 右方移動時および左方移動時には, 下顎窩上壁の内側には伸展ひずみが, 外側には圧縮ひずみがこれに対して後方開閉運動時に外側に伸展ひずみ, 内側に圧緒ひずみが認められた。
    主ひずみ量は, A点においてもB点においても前突位において最大であり, ついで左方移動時であった。ところが, 左方移動時以外の運動においては, 前突位からの開口運動時には (A) 点で, 右方移動時および前突位からの開口運動時には (B) 点において, とくに大きな主ひずみが認められた。
    以上のことから, 下顎運動の経路および下顎位が変わるにつれて, 顎関節部の下顎窩上壁の骨は, 複雑に変形して力学的に対応していることが分かる。したがって, 関節円板のみならず, 顎関節を構成している骨にも同部に加わる力を緩衝する働きのあることが明らかになった。
  • 窪木 拓男, 木尾 正人, 矢谷 博文, 山下 敦, Yoshizo MATSUKA, Yoichi AMANO
    1991 年 3 巻 2 号 p. 288-300
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    変形性顎関節症ならびに顎関節内障の発症には顎関節に加わる負荷が密接に関連していると考えられる。本研究は, 顎関節部負荷の中でも特に, 片側咀嚼時の左右顎関節部負荷について, 咀嚼筋筋電図と顎口腔系構成要素の3次元的な位置関係より構築した生物力学的顎関節負荷モデルを用いて解析を加えた。この際, 主要閉口筋6筋 (左右咬筋, 側頭筋, 内側翼突筋) の咀嚼筋合力を仮想し, これと咬合点ならびに左右下顎頭点を結んだ平面との交点を求め, “咀嚼筋合力の位置”と定義した。下顎骨に加わる咀嚼筋合力の位置ならびに方向から咀嚼時の顎関節部負荷の特徴について検討したところ, 咀嚼開始直後の咀嚼筋合力の位置は食品によらずほぼ正中にあるため顎関節部負荷は非咀嚼側顎関節により大きい負荷が加わるのに対し, リズミカルな片側咀嚼時には咀嚼筋合力の位置が著明に咀嚼側ヘシフトした結果, 顎関節部負荷は, 左右均等に分散される傾向があることが推察された。また, この際の筋合力の傾きは, 前頭面ならびに矢状面でみると咀嚼開始直後から咀嚼側臼歯群の長軸に一致するようシフトしていた。
    すなわち, 咀嚼時の顎口腔系は巧妙に中枢によって制御され, 咀嚼筋力の効率的な咬合力への伝達 (transmission) と片側の顎関節に負荷が集中しないよう左右顎関節部への負荷の分散 (distribution) が図られていること, また, その際の咬合力の方向は咀嚼側臼歯群の耐負荷能力の高い方向に一致するよう調節されていることが推察された。
  • 山口 晃, 西村 恒一, 猪子 光晴, 両角 浩至, 小坂 一彦, 上滝 俊彦, 毛呂 光一, 海野 仁, 榎本 友彦
    1991 年 3 巻 2 号 p. 301-309
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    今回われわれは, 20歳時に某大学病院にて顎関節授動術をうけたが, 再度広範な骨性癒着をきたし全く開口不能であった顎関節強直症の1例を経験した。
    症例は38歳の男性で, 小児期より開口障害があり20歳時に某大学病院にて左側顎関節授動術および顎変形に対する形態修正術 (腸骨移植) を受けたが, その後再発し全く開口不能となるも放置, 最近歯痛のため某歯科受診したが歯科治療不可能なため当科を紹介された。エックス線所見で左側下顎枝および側頭骨は完全に連続し内方は頭蓋底まで骨塊が認められ完全な骨性癒着の像を呈していた。治療としては, 術前にCT積畳法により作製した3次元顎模型で術式の検討と中間挿入物としての鋳造純チタンプレートの設計を行い, 手術は気切全麻下に低位顎関節授動術を施行し, 術後は当科作製の開口練習器による機能訓練を行ったところきわめて良好な結果が得られた。
  • 戸塚 靖則, 対馬 哲郎, 津山 昌嗣, 半澤 元章, 斎藤 徹, 中村 武之, 福田 博, 山口 泰彦, 中村 博行
    1991 年 3 巻 2 号 p. 310-316
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    両側性下顎筋突起過形成の2症例を報告する。1例は17歳の男性で, 14歳時に開口障害を自覚した。他の1例は13歳男児で, 10歳時に異常に気づいた。2例とも顎関節症と診断され, 下顎筋突起過形成と正しく診断されるまでの数年間, 理学療法やスプリント療法を受けていた。口内法による筋突起切除術を行い, 良好な結果がえられた。
    文献的検索では, 本疾患は現在までに49例が報告されているに過ぎず, しかもその大部分は19歳以下の男性に生じたものであった。本疾患の中には正しく診断されるまでに長期間を要しているものが少なくない。開口障害を有する患者を診察する場合には, 顎関節部のみに目を奪われることなく, 筋突起部にも目を配り, X線検査により筋突起腫大の有無を確認することが本疾患を正しく診断する上で極めて大切なことである。
  • 小林 馨, 近藤 寿郎, 沢井 清治, 今中 正浩, 湯浅 雅夫, 堀 克好, 今村 俊彦, 柏原 広美, 深井 智美, 山本 昭
    1991 年 3 巻 2 号 p. 317-326
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    顎関節内障において, 復位を伴わない関節円板前方転位症例の治療にあたって, マニピュレーションの奏功しない症例や円板の復位が得られても再発する症例が少なくないことが臨床的に認められている。この原因の一つとして, 関節腔内線維性癒着が考えられる。しかし, 顎関節内障における線維性癒着の発現頻度については明らかではない。そこで, 顎関節腔二重造影検査を施行した181関節について, 上顎関節腔内線維性癒着を示唆する造影像の発現頻度について検索した。
    181関節中, 復位を伴う関節円板前方転位は38関節, 復位を伴わない関節円板前方転位は116関節で, 復位を伴わない円板前方転位のうち40関節の円板および後部結合組織に穿孔 (以下, 穿孔) を認めた。
    復位を伴う関節円板前方転位では21%に, 復位を伴わない関節円板前方転位では70%に, 穿孔では33%に上関節腔内線維性癒着を認めた。9関節では, 関節円板前方転位を認めず, 線維性癒着のみが存在していた。
    顎関節内障における関節腔内線維癒着の発現頻度はかなり高率であり, 顎関節内障の治療にあたっては十分考慮すべき病態の一つであることが示唆された。
  • 小林 馨, 近藤 寿郎, 今中 正浩, 湯浅 雅夫, 今村 俊彦, 柏原 広美, 山本 昭
    1991 年 3 巻 2 号 p. 327-335
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    上関節腔関節鏡視下剥離授動術を施行した9症例, 9関節に, 術後の顎関節腔二重造影検査を行った。術後の臨床症状の効果判定はSandersらに準じた。術前術後の二重造影断層像と造影前の多層断層像から, 骨, 円板, 上関節腔の変化について検索した。
    1) 術後の症状から著効 (開口度40mm以上, 疼痛なし) と判定された5関節において, 下顎頭の吸収性変化を3関節に, 関節結節の吸収性変化を3関節に認めた。疼痛の残存した有効および無効4関節には, 吸収性骨変化が見られず増生性変化を2関節に認めた。
    2) 著効例の4関節に関節円板の形態変化が見られた。
    3) 著効例は全例とも, 上関節腔内線維性癒着は術後に消失していた。しかし, 無効例では線維性癒着の残存を認めた。
    4) 著効, 有効例では上関節腔の大きさが縮小化する傾向にあった。
    上関節腔関節鏡視下剥離授動術によって, 顎関節部骨構造, 関節円板, 関節腔内病変, 上関節腔の大きさに変化が生じることが明らかとなった。そして, 術後成績が良好な例に吸収性骨変化, 円板形態変化, 線維性癒着の消失, 上関節腔の縮小の生じている傾向にあった。
  • 小林 馨, 沢井 清治, 近藤 寿郎, 今中 正浩, 湯浅 雅夫, 駒橋 武, 山本 昭
    1991 年 3 巻 2 号 p. 336-344
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    顎関節円板は前方に転位するだけではなく, 内外側にも転位が生じ得ることは, これまでにも述べられ, 画像診断上明らかにされてきた。しかし, 顎関節円板側方転位の発現頻度や, 臨床症状については明らかにされているとはいえない。著者らは, 顎関節部MR検査を施行した症例について, 側方転位の発現頻度および画像所見と臨床所見との対比を行った。対象は, 1990年にMR検査を施行した138症例, 276関節で, このうち190関節では顎関節内障を疑う症状を有していた。
    1) 顎関節円板側方転位を, 6症例 (4%), 6関節 (3%) に認めた。
    2) 顎関節円板側方転位は, マルチスライス矢状断MR像からでも推定可能であった。
    3) 前頭断MR撮像は, 矢状断像の撮像において顎関節円板前方転位の認められない症例に施行すれば良く, 顎関節円板側方転位の検出率に差は見られない。
    4) 顎関節円板側方転位6関節に, クリヅクを認めたが, 前方転位例と異なる臨床症状は見られなかった。
  • 第1報 未治療片側性症例の初診時所見について
    湯浅 秀道, 栗田 賢一, 成田 幸憲, 小木 信美, 神野 洋輔, 河合 幹, 外山 正彦, 菊地 厚
    1991 年 3 巻 2 号 p. 345-352
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    1989年2月から1991年3月の期間中に, MRIまたは顎関節造影にてクローズドロックと診断した100例のうち, その臨床所見をより明確にするため, 当科初診まで未治療の片側性症例71例を取り上げ初診時臨床所見を検討した。
    結果は全症例71例において, 性別は男性9例, 女性62例で, 初診時の年齢は10歳代後半より20歳代に最も多く, 最大開口域は14mmから55mmに分布していた。罹患側別では左側40例, 右側31例, ロック発症より初診までの期間は1日から30日間が最も多かった。
    クローズドロックにおける初診時臨床所見はVisual Analog Scaleにより中程度の開閉口時痛, 咀嚼時痛, 日常生活支障度であった。
    平均最大開口域はロック期間1-30日の症例群が31日以上の症例群より有意に小さく, また10歳代の平均最大開口域は20歳以上の症例群より有意に大きかった。
    また71例中初診時最大開口域が40mm以上の症例が7例あったこと, クリックの既往のない症例が19例あったことより, クローズドロックの診断は画像診断にて復位を伴わない関節円板の前方転位を確認する必要のあることが確認された。
  • 角南 次郎, 三好 憲裕
    1991 年 3 巻 2 号 p. 353-358
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    腎性骨異栄養症患者の両側下顎頭に高度な変形を生じた1例を経験したので報告した。患者は44歳, 女性で右側顎関節部疼痛を主訴として当科を受診した。既往歴として慢性腎不全のため本院にて血液透析療法を受けており, 約4年5か月間の透析期間を有していた。現病歴として約3年前より氷を噛んで喉の渇きを癒すことを習慣としていた。全身的には右胸部痛, 右腰部痛, 右膝関節痛があり, 軽度の歩行障害を生じていた。口腔内は下顎が後退し, 閉口時に前歯部の開口を認めた。X線写真では両側下顎頭の著明な吸収像が認められた。臨床検査では腎不全と二次的な副甲状腺機能亢進症の特徴を示した。
    治療として氷を噛む習慣をやめさせ, 硬い食物を咀嚼することを禁止して顎関節の安静を保つよう努めさせた。その結果, 約2週間で右側顎関節部の疼痛は消失した。
    本症例が両側下顎頭に高度な変形を生じた理由として, 氷を噛じる習慣により顎関節に負荷が加わったことが考えられた。
  • 覚道 健治, 東野 陽一, 白数 力也, 柴田 考典
    1991 年 3 巻 2 号 p. 359-364
    発行日: 1991/11/25
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    顎関節症III型のうち, きわめてまれな復位を伴わない関節円板後方転位の1例についての臨床所見ならびに経過, 上下顎関節腔造影エックス線所見, 処置および術後経過について報告した。上下顎関節腔二重造影断層エックス線検査が鑑別診断には有用であった。治療としてはパンピングマニピュレーションが有効であった。
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