日本顎関節学会雑誌
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3 巻, 1 号
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  • 第1報: 顎関節部の応力分布に影響を与える因子について
    前田 芳信, 森 孝雄, 前田 憲昭, 堤 定美, 野首 孝祠, 奥野 善彦
    1991 年 3 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 1991/06/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    生体の形態と機能との間には密接な関係があるが, 本研究は生体力学的な観点から顎関節部の形態と機能との関係について考察し, その形態的特徴ならびに形態変化のメカニズムを探ることを目的としている。
    本報では, 顎関節周囲の応力の変化に影響する因子について, 成人の下顎骨, 側頭骨下顎窩および関節円板を想定した二次元有限要素モデルを用い, 咀嚼筋の活動, 下顎頭ならびに下顎窩の形態変化, 咬合支持部位の影響を検討した。
    その結果, 筋活動の差が関節での応力分布に影響し, 側頭筋, 外側翼突筋の筋力の比率を変化させた場合に応力分布が変動する傾向が得られたが, 咬筋の活動量を変化させた場合ならびに咬合支持位置の違いに伴う筋活動の比率を考慮した場合には応力分布のパターンに大きな変化は認められなかった。また, 下顎頭ならびに下顎窩の形態を変化させた場合にも応力分布は変化した。このように応力分布を変化させる因子に対応して, 個別の形態の維持ならびに変化に対応した分布状態にするメカニズムが存在する可能性が示唆された。
  • 竹中 誠, 竹花 庄治, 丸山 健, 鈴木 直人, 橋本 和佳, 村上 弘, 伊藤 裕
    1991 年 3 巻 1 号 p. 10-22
    発行日: 1991/06/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    本研究は, 術前の顎関節雑音発生時の下顎位と, 下顎前方整位型スプリントによる治療効果との関連を検討することを目的とした。そこで顎関節雑音が発生する患者14名について, 下顎限界運動内の顎関節雑音が発生する立体的下顎位, および雑音振幅を測定し, 3ヵ月間の下顎前方整位型スプリント装着による雑音の変化を検討し, 以下の結果を得た。
    1. 装着前の開口時の雑音発生時期が, 小開口量であった被験者では, 装着3ヵ月後, 雑音が消失するが, または雑音振幅が非常に小さな値となる被験者が多く見られた。又, 雑音が残存した被験者では, 開口時の雑音発生時期, 雑音発生範囲, 雑音振幅は減少した。
    2. 装着前の開口時の雑音発生時期が大開口量であった被験者は, 装着3ヵ月後, 雑音が消失することはなく, また開口時の雑音振幅も非常に小さな値に変化することもなかった。さらに開口時雑音発生時期が, 前述した小開口量の被験者と同程度まで減少することもなかった。
    3. 以上により雑音を発生する下顎位と, 下顎前方整位型スプリント装着による雑音の変化は一定の関連を有し, 雑音を発生する下顎位と治療効果との関連が示唆された。
  • 天野 洋一, 矢谷 博文, 窪木 拓男, 松香 芳三, 山下 敦
    1991 年 3 巻 1 号 p. 23-34
    発行日: 1991/06/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    顎関節内障の発症機序には顎関節構成体の形態が大きく関連していると思われる。そこで献体を用いてヒト顎関節の肉眼解剖学的研究を行い, 円板位置が正常な顎関節と円板が前方に転位した顎関節について下顎頭, 下顎窩の形態の比較を行った。また, 各個体の下顎窩と下顎頭の大きさの相対的指標としてSella-Nasion (SN) 間距離を計測し, 下顎頭, 下顎窩の各計測項目との相関についても検討を加えた。
    SN間距離と下顎頭, 下顎窩の大きさとの間には有意な相関関係は認められなかった。下顎頭前後長は前方転位群が正常群より有意に小さく, 内側でその傾向が顕著であった。下顎頭内外長は正常群と前方転位群との間に有意差を認めなかった。下顎窩の深さ, 前後長はともに正常群より前方転位群が大きい傾向が認められた。特に外側においてその傾向が顕著であった。関節隆起後斜面角は前方転位群が正常群より急俊であった。その傾向は関節の外側で顕著であった。関節の外側と中央において円板転位量と関節隆起後斜面角との間に有意な正の相関関係を認めた。下顎窩に対する下顎頭の相対的な大きさは下顎窩前後長/下顎頭前後長, 下顎窩深さ/下顎頭前後長ともに前方転位群が大きい値を示し, 円板が前方に転位した関節では下顎窩に対する下顎頭の大きさが小さい関節が多いという結果を得た。
  • 咀嚼スピードと下顎頭運動との関連性
    桑原 俊也, 居相 暢之, 相馬 季世子, 東 和生, 高橋 章, 宮内 修平, 丸山 剛郎, 渕端 孟
    1991 年 3 巻 1 号 p. 35-46
    発行日: 1991/06/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    正常者の咀嚼運動中の切歯点運動速度 (咀嚼スピード) のピークは開閉口相ともに一つであるのに対し, 片側性顎関節異常者の開口相における咀嚼スピードのピークは二つであることを前報で報告した。本研究は, この顎関節異常者に特徴的な咀嚼スピード発現機序を知る目的で, 正常者と片側性復位性関節円板前方偏位患者それぞれ5名の咀嚼側指定のガム咀嚼 (正常者では習慣性咀嚼側, 顎関節異常者では非異常側) 時の切歯点運動と下顎頭運動の同時記録を行い, 検討を加えた。その結果, 正常者では, 非作業側下顎頭運動速度は咀嚼スピードのピークに対応して最大になるのに対し, 作業側下顎頭運動速度は開口初期にピークに達する傾向を示した。顎関節異常者では開口相における咀嚼スピードの減少に対応して下顎頭運動速度の減少が非作業側下顎頭では5例中4例に, 作業側下顎頭では5例中2例に認められた。また咀嚼スピードの減少に対応して, 5例中3例に非作業側下顎頭運動経路のくびれが観察された。開口相の咀嚼スピードの減少に続く咀嚼スピードの増加に対応して非作業側下顎頭では5例中3例に, 作業側下顎頭では5例中4例に下顎頭運動速度の増加が認められた。以上より顎関節異常者の非異常側咀嚼時の開口路途中での咀嚼スピードの減少は異常側下顎頭の運動速度の減少と関連が深く、それに続く咀嚼スピードの増加は非異常側顎関節の下顎頭運動速度の増加と関連性が高いことが示唆された。
  • 川村 仁, 鎌倉 慎治, 長坂 浩, 佐藤 修一, 茂木 克俊, 菅原 準二, 曽矢 猛美, 三谷 英夫
    1991 年 3 巻 1 号 p. 47-57
    発行日: 1991/06/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    二重下顎頭を伴った重度の顔面非対称の治療例1例を報告した。
    初診時年齢15歳の女性で, 約30か月間の二重下顎頭にたいする経過観察において, 下顎頭に著変を認めなかった。しかし, 顎運動障害を認めたことから, CT検査等を行うことで付随的下顎頭の切除術を適用した。下顎頭の切除術に先立って, 術後の機能訓練を考慮し, 重度の咬合不全と顔面非対称を改善した。また, 付随的下顎頭を切除するとき, 関節円板はできるだけ正常に保存した。術後経過は良好に安定した。
    二重下顎頭の治療では, 機能障害の有無以外に, CT検査や骨シンチグラフィーが有用と考えられた。また, 二重下顎頭の外科的治療では, 正常側の下顎頭と関節円板の保存に, 術後の機能訓練を考慮し, 良好な咬合状態の確立が重要と考えられた。
  • 三村 博, 大西 正俊, 半田 秀穂, 野村 泰世, 鈴木 博, 三浦 不二夫
    1991 年 3 巻 1 号 p. 58-68
    発行日: 1991/06/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    クローズド・ロック症例の関節円板の整位後には, 咬合状態がポステリオール・オープン・バイトを呈することが知られているが, この咬合の改善を矯正治療で行った報告は極めて少ない。今回は, 左側顎関節の運動制限と開口障害を訴えていた症例に対して, 機能検査を行いクローズド・ロックと診断し, 関節円板を復位させた後, 矯正治療を行った症例を報告する。
    患者は19歳3ケ月の女子である。クローズド・ロックと診断し, 徒手整復を試みたところ, 関節円板は復位し, 咬合はポステリオール・オープン・バイトを呈した。そこで, その整復した顎位を保たせるべく, ダイレクト・ボンディング法をいて矯正治療を開始した。1年後に左右の下顎頭の動きに差異が認められたため, 二重造影CTによる精査を行ったところ, 左側顎関節の滑膜に線維性癒着が認められたため, 鏡視下手術による線維性癒着部の剥離術を施術した。その結果, 円滑な顎運動が可能な状態に改善された。
    1) 本症例を通じて, 関節円板の復位後に生じるポステリオール・オープン・バイトの治療に, 関節円板と下顎頭の位置関係を維持しながら行う矯正治療による歯槽性の補償が, 咬合の改善に対して有効であることが示された。
    2) 発症から経過の長いクローズド・ロック症例である本症例において, 滑膜の線維性癒着が鏡視下で確認され, 関節鏡視下でのNd: YAGレーザーを用いた剥離術が有効であった。
  • 谷本 裕, 盛実 俊也, 波田野 哲也, 吉賀 浩二, 高田 和彰
    1991 年 3 巻 1 号 p. 69-74
    発行日: 1991/06/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    顎関節脱臼は発症後の経過時間により, 新鮮例と陳臼例に分けられる。新鮮例では徒手整復により比較的容易に整復されるのに対し, 陳旧例では関節窩が瘢痕組織により閉鎖されてくるため, 多くの場合観血的整復が行われている。
    最近, 我々は脱臼後6ヵ月を経過した陳旧性顎関節脱臼の一症例に遭遇し, 観血的整復術により良好な結果を得たので報告する。
    患者は65才の男性で, 初診6ケ月前に全身麻酔下に腸閉塞手術を受けていた。その際挿管時の過度の開口により, 両側顎関節前方脱臼を生じたものと思われる。しかし, 患者は軽度の精神薄弱のため, 閉口障害を訴えることもなく放置されていた。
    初診時所見では, 顔貌左右対称であるも閉口不能にてオトガイの軽度突出, 面長の顔貌を呈していた。左右顎関節相当部は軽度陥凹し, その前方に下顎頭を触知した。X線所見では, 左右下顎頭は関節結節を超えて前上方へ逸脱していた。外来にて徒手整復を試みたが整復不可能なため, 入院下に義歯を用いた顎間牽引, 局所麻酔下での徒手整復を行ったが整復し得なかった。そこで更に全身麻酔下での徒手, 及びFink法による観血的整復を試みたが整復し得ず, 最終的に下顎頭切除術を施行した。術後1年1ケ月の現在, 閉口時, 前歯部歯槽頂間で21mm, 開口度が同部で50mmまで回復している。また, 顎運動による機能障害もなく, 咬合状態も良好で, 手術創も極めて良好に治癒している。
  • 都 温彦, 福田 仁一, 佐藤 晴枝, 古賀 勉, 権藤 好弘, 津田 武明, 高橋 省治
    1991 年 3 巻 1 号 p. 75-87
    発行日: 1991/06/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    顎関節症患者には日常生活における行動様式としての過剰適応と全身的な慢性疲労が注目される。今回, 私達は本症患者に対して咀嚼様式や食事時間, 睡眠時間などの生活指導を行い, その結果と顎関節症の症状改善との関係について観察した。あわせて本症発症におけるリスクファクターとしての生活様式について考察を加えたので, その結果を報告する。
    観察対象はLaskin, D. M. が提唱した, MPD syndromeの診断基準に該当した者で, 生活指導と症状との関係が観察できた男性42例, 女性108例の計150例である。観察方法は初診時, 患者に咀嚼については御飯一口を嚥下まで20回以上歯列のいろいろな部位で咀嚼すること, 食事時間は朝・昼食15-20分, 夕食は40分以上かけること, 睡眠時間は8時間とした生活指導を行った。2週間後, 生活指導達成と症状改善についての判定基準に従い, 生活指導と症状改善との関係を観察した。その結果, 生活指導を行った全例における症状改善は男性74%, 女性60%であり, 症状別にみると咀嚼筋群の疼痛性障害を主症状とする者に症状改善者が男女とも79%みられた。咀嚼回数と睡眠時間の目標達成群と非達成群における症状改善率は, 男女とも前者の方が有意に高かった。
    これらのことから顎関節症患者の治療として生活指導は有用であることがわかった。そして, 本症発症には食事における咀嚼様式や睡眠などの生活状況がリスクファクターとして存在していることが示唆された。
  • 鱒見 進一, 有田 正博, 三宅 茂樹, 豊田 静夫
    1991 年 3 巻 1 号 p. 88-97
    発行日: 1991/06/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    Anatomic X-ray Aliner (以下AXAと略す) 所見の診断における有用性について検討するために, 九州歯科大学学生120名を対象に, まず, 現症に関する簡単なアンケート調査, および, 最大開口距離・開口路・側方限界運動距離・関節雑音に関する顎機能診査を行った。これらのデータと咬頭嵌合位・安静位・最大開口位の3顎位におけるAXAによる顎関節X線規格写真とを比較したところ, 以下のことがわかった。
    1. AXA分析より, 関節雑音を主症状とする者は, 咬頭嵌合位における下顎頭の位置異常が多く認められた。
    2. 筋痛あるいは開口障害のみを主症状とする者は, AXA所見からの異常所見が確認できなかった。
    3. 顎関節異常者は, アンケート調査では21名, 顎機能検査では62名, AXA所見では46名であった。
    4. AXAによる異常者の中に顎機能検査の異常者が含まれる割合が非常に高率であった。
    以上のことから, 初診時にAXAによる顎関節X線撮影を行うことは, 非常に有用であり, かなり的確な診断が可能であることが示唆された。一方, 確実なX線診断を行うためには, 顎機能検査および他のX線装置が必要であることが再認識された。
  • マイオモニターとの比較
    荒尾 宗孝, 伊藤 暖果, 吉田 憲司, 高井 克憙, 深谷 昌彦
    1991 年 3 巻 1 号 p. 98-109
    発行日: 1991/06/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    わたくしたちは, 低出力レーザー (Nd: YAG レーザー, 実効出力350mW) を下関に照射し, 症状改善に良好な成績を得るとともに, サーモグラフィを用いて, 臨床症状の改善を客観的に判定できることを報告してきた。
    今回は, 今まで使用してきたサーモグラフィ装置に可視像ミキシング装置を取り付ける事により, 熱画像と可視像の合成画が可能となり, 熱画像の温度分布状況を患者の顔面画像に位置付けることができるので, どの筋群に循環障害が出現しているかを, より客観的に判定できるようになった。
    さらに今回は, MPD症候群を含めた, いわゆる顎関節症I型と診断された患者の中で, マイオモニター群50名と低出力レーザー照射群50名の治療成績を比較, 検討した。
    この結果, 顎関節症I型と診断された患者に対する下関への低出力レーザー照射による治療は, マイオモニターによる治療と比較し, 約10日間治療期間を短縮することができ, 大変有効な治療法の1つであると考えられた。
  • 高橋 庄二郎
    1991 年 3 巻 1 号 p. 111-112
    発行日: 1991/06/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
  • 1991 年 3 巻 1 号 p. 113-166
    発行日: 1991/06/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
  • 1991 年 3 巻 1 号 p. 167-211
    発行日: 1991/06/30
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
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