日本顎関節学会雑誌
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連載解説
  • ―その臨床症状・診断・治療―
    佐々木 啓一
    2020 年 32 巻 3 号 p. 91-95
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2021/06/20
    ジャーナル フリー

    ジストニアとは筋の緊張の障害であり,ジスキネジアとは運動の障害である。2013年に国際的な専門組織が出したコンセンサスレポートでは「ジストニアは症候群であり,反復性であることが多い異常な運動,姿勢,またはその両者を生じさせる持続的あるいは間欠的な筋収縮を特徴とする運動障害である」と定義される。その特徴は「ジストニア運動は,典型的には定型的かつ捻転性であり,ときには振戦であることもある。ジストニアは,随意的な動きをしようとすると始まったり,増悪したりする。そして筋活動のオーバーフローを伴う」とされている。ジスキネジアはこのような定型的なパターンが認められない異常運動とされ,さまざまな疾患などに伴って発症することも多い。

    口腔顔面領域にみられるジストニア・ジスキネジアの代表的なものには,閉口スパズムと開口スパズムなどを示す口顎部ジストニアがある。前者は咬筋の収縮により開口障害をきたし,ときに嚙みしめや歯ぎしりを伴うこともある。後者は外側翼突筋の収縮により閉口障害をきたす。口唇を突出するなどのジストニアもみられる。舌のジストニアでは,多くは舌の不随意な突出を示す。特発性では成人期に発現することが多いが,遺伝性に発現するものもある。眼瞼痙攣を主症状とするメージュ(Meige)症候群では,下顎,舌,喉頭,頸部のジストニアを認める。さらに薬物,特にドーパミン拮抗作用を有する精神神経用薬などの摂取または減量・中止が原因で生じる薬剤性ジストニアでは,口腔顔面の不随意運動の頻度が高く,初発症状として発現することも多い。医薬品の副作用として不随意運動を呈することはまれではなく,臨床上留意しなければならない。

依頼論文
  • 島田 淳
    2020 年 32 巻 3 号 p. 96-102
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2021/06/20
    ジャーナル フリー

    顎関節症は基本的には運動器疾患であり,他の運動器と同様,運動療法が有効である。そして顎関節症における運動療法を行うにあたっては,他の運動器における運動療法の考え方を参考にしながらも,顎関節の特殊性を考えた運動療法を行う必要がある。非復位性顎関節円板障害および変形性顎関節症に対する運動療法についての目的は,顎関節および咀嚼筋の拘縮,関節内部障害により制限された関節可動域の拡大を行い,滑液循環,機能回復とそれに伴う痛みの改善であり,運動療法のなかでも顎関節への静的ストレッチングが重要となる。顎関節へのストレッチングにおいては,下顎頭の滑走運動を意識した最大可動域での10~60秒間の静止,関節円板後部組織の圧迫,圧縮の改善を考えたストレッチ方向への配慮が必要である。また運動療法として「術者の指示で患者自身が行う運動療法(セルフケア)」を患者に十分指導,実践してもらったうえで「徒手療法」を併用して行うことがより効果を高めることになる。そして関節可動域の改善に伴い,下顎頭形態を含めた顎関節の変化が生じ顎位,および咬合が変化する可能性があるため,初診時からの咬合状態の変化を把握しておくことも重要となる。今後,顎関節症の運動療法を確立していくためには,理学療法士,歯科衛生士など多職種間での連携を考えるとともに,用語,手技の統一を行う必要がある。

  • ―術者が行う運動療法の考え方と手技―
    田口 望
    2020 年 32 巻 3 号 p. 103-112
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2021/06/20
    ジャーナル フリー

    顎関節症の初期治療法は,可逆的な保存治療法,特に運動療法が第一選択として注目されている。整形外科領域では,運動療法は重要な保存治療法として確立しているが,顎関節領域では,さらなる検証が必要とされている。

    今回は,関節円板障害と変形性顎関節症症例に対し,その病態に応じて術者の行う運動療法すなわち顎関節可動化療法の考え方とその手技について解説した。さらに,関節機能障害度分類により,中等度以上の障害を認めた症例に対し,初診時と初回再来時に顎関節可動化訓練療法とセルフケアとしての自己牽引療法を一つの運動プログラムとして捉え,それらを施行した場合に,その臨床症状(最大開口域,安静時痛,開閉口時痛,咀嚼時痛,日常生活支障度の5項目)について評価した。

    その結果,無痛最大開口域,開閉口時痛,咀嚼時痛,日常生活支障度において有意な改善を認めた(p<0.05)。

    このことは,これら運動療法が,関節滑液を循環させ,関節腔を拡大し関節可動域を改善したものと考えられる。したがって,これら運動療法が,関節円板障害(とくに非復位性関節円板障害)と変形性顎関節症症例に伴う諸症状を比較的短期間に軽減させる有効な保存的治療法であることが示唆された。

  • 儀武 啓幸
    2020 年 32 巻 3 号 p. 113-120
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2021/06/20
    ジャーナル フリー

    現在,顎関節症に対して運動療法が行われることが広く普及し,一般的な顎関節症治療として定着している。しかし,その適応症となる病態についてはいまだ議論が残るところである。また,開口訓練の統一したプロトコールは存在せず,各施設による独自の基準で行われているのが実情である。開口訓練は診療室で行うものではなく,患者が主体となり日常的に行ってもらうことでその効果を発揮する治療であるため,術者による訓練方法の適切な指導により患者が手技を習得しなければならないという特有の事情も生じる。

    個々の患者の状態に合わせた開口訓練,すなわち顎関節円板の状態や開口障害,痛みの程度に合わせた開口訓練の方法についての検討は重要な事項であり,顎関節症の病態を考慮したうえで,下顎頭滑走の積極的な誘導を行うことは有効であると考えられる。

  • ―安静から運動へ―
    原 節宏
    2020 年 32 巻 3 号 p. 121-130
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2021/06/20
    ジャーナル フリー

    過去において顎関節症における咀嚼筋痛障害は,筋の過負荷に起因する損傷と疲労物質の蓄積により発症する非炎症性筋痛と捉えられていた。しかし2000年前後を境にして,不動や安静による組織の線維化に関する研究が報告されるようになり,筋に隣接する結合組織などの間質の組織変化によって疼痛と機能障害が惹起されるという考え方が説明されるようになった。従来の治療法は,筋の損傷と疲労を癒すための安静を基本としていたが,現在,多くの臨床研究者から支持されている治療法は,安静の対極にある運動が第一選択となっている。本稿はDC/TMD(Diagnostic Criteria for Temporomandibular Disorders)で挙げられている,最も頻繁にみられるTMDにおける咀嚼筋痛障害として局所筋痛と筋・筋膜痛についてその病態生理と治療法に関する知見を紹介する。

  • ―食事指導の有用性と運動療法のこれから―
    島田 明子
    2020 年 32 巻 3 号 p. 131-135
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2021/06/20
    ジャーナル フリー

    顎関節症の診断は2014年にThe Diagnostic Criteria for Temporomandibular Disorders(DC/TMD)が国際的に標準化された診断基準として発表され,現在広く用いられている。2020年2月に日本顎関節学会よりDC/TMDに基づき日本の医療システムにより即した診断基準として顎関節症の診断基準(2019)と診断決定樹が発表され,咀嚼筋痛障害の診断はより明確になった。咀嚼筋痛の治療には,理学療法,薬物療法,そして,アプライアンス療法が基本治療とされている。しかしながら,それらの選択については統一の見解がなく,臨床においてシステマティックに治療オプションを決定するのは難しいのが現状である。本稿では咀嚼筋痛障害の治療について,その現状と運動療法の有用性について解説する。また,咀嚼筋痛障害患者において,生活習慣に関するリスクファクターとして食生活が咀嚼筋痛に与える影響について検証したRCTの結果を供覧する。

  • ―運動療法等first-line治療のポテンシャル―
    松原 貴子
    2020 年 32 巻 3 号 p. 136-143
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2021/06/20
    ジャーナル フリー

    咀嚼筋痛は慢性筋痛の一つであり,筋・筋膜痛を主病態とし,末梢筋内における侵害受容機構,中枢神経系における疼痛感受機構,疼痛情動・認知の関与が示唆されている。咀嚼筋痛は他の慢性筋痛や慢性運動器疼痛と類似の病態を含むことが推察されることから,末梢局所だけでなく末梢・中枢感作への対応が求められる。現在,運動療法は患者教育とともに慢性疼痛治療のfirst-lineに位置付けられ,さまざまな中枢作動性の鎮痛物質による抗侵害受容機構や中枢性疼痛抑制システムを介して,高い鎮痛効果をもたらすことが期待される。運動処方としては,痛みを伴わない低強度で短時間の運動を高頻度で実施することから始める。運動療法は,患者自身の内因性鎮痛能力を高める根本治療としてのポテンシャルを有することから,歯科領域においても積極的に活用・導入できる治療法の一つになりうる。

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