日本顎関節学会雑誌
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連載解説
  • 島田 淳
    2021 年 33 巻 1 号 p. 3-8
    発行日: 2021/04/20
    公開日: 2021/10/20
    ジャーナル フリー

    顎関節(雑)音は,顎関節症の主要症候の一つである。しかし症状が,顎関節(雑)音のみの場合には,日常生活に支障がでることはほとんどなく,自然経過は良好な場合が多いとされ,治療による顎関節(雑)音の改善,消失は困難であり,再発することも少なくない。痛みや開口障害を伴わない顎関節(雑)音を生ずる病態は,主に顎関節円板障害と変形性顎関節症であり,そのほとんどに関節円板転位が関与している。しかし顎関節(雑)音の病態はさまざまであるため,診察・検査により病態を診断する必要がある。「痛みと開口障害を伴わない顎関節(雑)音」の多くは自然経過が良好である。治療を行ってもその効果は不確実で,副作用として咬合が変化する可能性があり,咬合治療や矯正が必要となる場合がある。しかし症状が悪化しないためには,病態に対する理解とセルフケアが必要である。歯科医師は診察・検査で得られた患者の病態を基に経過観察を含めた治療に対する合理的な選択肢とそれらの利益やリスクに関するエビデンス,さらには患者の価値観を共有し,患者にとって最善の治療方針を患者と一緒に決定することを目的とした説明を行うことが求められる。

  • 木野 孔司
    2021 年 33 巻 1 号 p. 9-13
    発行日: 2021/04/20
    公開日: 2021/10/20
    ジャーナル フリー

    関節円板後部組織の組織構造の認識に関して,多くの論文では,1950年代に示された「二層部」の存在がそのまま信じられていると考えられる内容が現在でも見受けられる。この「二層部」の存在に疑問をもったわれわれは,独自に組織切片を作成し関節円板および関節円板後部組織の組織構成を観察し,「二層部」が存在しないことを明らかにした。すなわち,関節円板を構成する密な膠原線維はすべてが下顎頭の内外側極から後面への隅角部に連結し,「二層部の上層」として提案された下顎窩後壁に連結する線維束はないこと,関節円板後部組織は細い線維で構成された疎な構造であり,その内部に多くの静脈叢を包含していることなどである。この構造を認識することで,下顎頭の前後移動量や関節円板前方転位発現の多さ,MRI撮像による関節円板位置判定が可能になっている。

原著
  • 小樋 香織, 伊東 宏和, 五十嵐 千浪, 小林 馨, 大久保 力廣
    2021 年 33 巻 1 号 p. 14-19
    発行日: 2021/04/20
    公開日: 2021/10/20
    ジャーナル フリー

    下顎頭と対である下顎窩の変化を客観的に評価を行うため,本報告では下顎窩面積の定量的評価法の信頼性を明らかにすることとした。そこで,MR画像を用いて30関節の下顎窩面積を測定した。対象として,初診時にMR画像を撮影した顎関節症患者15名,計30関節を用いた。患者の内訳は,男性2名,女性13名,平均年齢29.2歳であった。測定は,Aze Win(AZE,東京)を用いて30関節に対し,1か月以上間隔をあけ,計測者2名が2回ずつ測定を行い,下顎窩の1回目面積値と2回目面積値をSpearmanの順位相関係数を用いて有意水準1%にて,また信頼性・級内相関(ICC)は有意水準5%を用いて統計分析を行った。

    Spearmanの順位相関係数でも相関係数0.9426,0.9146,2名ともp<0.001であり,1回目と2回目の面積値にきわめて高い相関があった。また,計測者内・計測者間の信頼性も検討した結果,計測者内信頼性は,0.9873,0.9647であり,計測者間の信頼性・級内相関係数は0.9318(1回目),0.9749(2回目)であった。したがって,本測定方法は,計測者内・計測者間ともに信頼性の高い方法であることが示された。

症例報告
  • 山﨑 裕太, 安島 久雄, 荒井 良明, 河村 篤志, 高嶋 真樹子, 松﨑 奈々香, 髙木 律男
    2021 年 33 巻 1 号 p. 20-25
    発行日: 2021/04/20
    公開日: 2021/10/20
    ジャーナル フリー

    下顎頭の退行性変化に起因する二次的咬合異常として,前歯部開咬を呈することがある。今回両側変形性顎関節症に起因すると考えられた前歯部開咬に対し,オクルーザルオーバーレイスプリントを用いて咬合機能を回復した1例について報告する。患者は37歳の女性で,顎関節痛と開口障害を主訴に2006年11月に当院を受診した。臨床診査から両側変形性顎関節症と診断された。保存療法を施行中の2007年2月に前歯部開咬を認めた。顎関節の状態および複数の治療法について説明し治療方針に同意を得たうえで,同年7月に開咬による咀嚼障害を改善する目的で下顎オクルーザルオーバーレイスプリントを製作し,食事中および日中装着可能なときに使用させた。就寝中はスタビライゼーションアプライアンスを継続使用させた。2013年10月のCT検査により下顎頭骨吸収は進行していないことが確認できた。長期間にわたり顎関節症の症状の再発はなく,また咀嚼機能の回復は維持されている。オクルーザルオーバーレイスプリントは,両側変形性顎関節症に起因する前歯部開咬に対する有効な治療法の一つであることが示唆された。

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