日本顎関節学会雑誌
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6 巻, 1 号
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  • 山形 圭一郎, 小椋 幹記, 久保田 智至, 伊藤 学而
    1994 年 6 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 1994/05/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    カウンセリング療法を行った顎関節症患者93名の治療成績を調べ, そのうち43名について遠隔成績を調査し以下の結論を得た。
    1. 治療成績は, 完治22.6%, 軽減39.8%であった。なお治療を早期に中断した者が32.3%おり, これを除くと完治ないし軽減した者は92.1%であった。
    2. 遠隔成績では症状のない者が44.2%あり, 障害が大きくて再治療を希望する者は4.7%に過ぎなかった。ただし治療終了時に比べて開口障害が増加し, 雑音からクローズドロックに移行した可能性が考えられた。
    3. 治療経過が不変であった症例が2例あり, いずれもクローズドロック症例で, 治療効果が現れる前に治療を中断していた。
    4. カウンセリング療法は, 関節雑音, 疼痛, 開口障害のすべてに有効であったが, 特に疼痛に対して有効であった。このことから, 顎関節症に対する咬合治療の必要性について再検討すべきことが示唆された。
  • 有症群の解析
    松香 芳三, 矢谷 博文, 山下 敦
    1994 年 6 巻 1 号 p. 13-24
    発行日: 1994/05/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    岡山市選挙人名簿より無作為抽出した672人 (男性304人, 女性368人, 20歳から92歳) を対象に顎関節症の症型別発症頻度を疫学的に調査した。その結果, 正常被検者群とは異なり, 何らかの顎関節症状を有するが, 顎関節症と確定診断不可能である被検者群が存在し, これを有症群と名づけた。本研究の目的は有症群の症状, 発症頻度, 関連要因に関して有症群と顎関節症群との相違を解明することである。
    一般市民では顎関節症群は青年期の女性において発症頻度が高かったのに対し, 有症群は性, 年齢に関係なく約24%の頻度で認められた。有症群の顎関節症状は軽微な顎関節雑音が83%と多数を占めていた。有症群の関連要因を正常群, 顎関節症群と比較するとストレス要因, 外傷要因, 健康状態, 行動要因, 咬合要因の中に有意差を認める項目があり, 特に正常群との比較では咬頭嵌合位の異常につながりやすい静的な咬合異常所見が有症群に多く, 顎関節症群との比較では歯列関係の異常や動的な歯牙接触の異常が顎関節症群に多いという結果であった。有症群, 正常群および顎関節症群間で顎関節周囲の疼痛, 顎関節雑音, 開口障害の既往率を比較すると, 顎関節症群が有症群, 正常群よりいずれの既往率も高かった。また, 顎関節雑音の既往率は有症群と正常群間でも有意差を認め, 有症群の方が既往率が高かった。
  • 下顎の側方運動制限を認めた顎関節円板後方転位の1治験例
    藤田 幸弘, 相馬 邦道
    1994 年 6 巻 1 号 p. 25-37
    発行日: 1994/05/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    顎関節円板の後方転位を伴った不正咬合の1症例を経験したので, 機能検査所見ならびに画像検査所見を併せて, その概要を報告した。
    患者は, 初診時年齢22歳8か月の男性である。左側顎関節部の違和感, 顎が右側にのみ動くので不快感を感じる, 奥歯の咬み合わせが悪い等の複数の訴えを有して当科を受診した。
    口腔内診査では, 上下顎前突が認められ, 正中線は上顎に対して下顎が右側へ偏位し, 左側の第一大臼歯の咬合関係はアングルIII級傾向であった。
    顎関節の症状としては, 下顎運動障害が認められ, 左側への側方運動が他動的にも不能であった。また, 左側顎関節部の違和感も自覚していた。
    機能検査所見ならびに左側顎関節の下関節腔造影エックス線検査所見による精査の結果, 左側の関節円板後方転位と診断した。
    左側への側方運動に際して, 転位した円板が物理的障害となり, 作業側下顎頭の運動制限が生じていると考え, 治療としては, まずマニピュレーションにより下顎の運動制限を解除することを試みた。その結果, 他動的にも不能であった左側への側方運動が可能となったため, 下顎の運動制限の再発を防ぐため, 運動療法を併用し, 上下顎前突ならびに左側臼歯部の咬合関係の改善を含めた咬合の再構成を矯正治療により行った。
    最終的に, 関節腔の拡大を図るため, 臼歯を挺出させる力系を用い, 咬合高径を挙上して治療を終了し, 良好な結果が得られた。
  • 木村 公一, 田中 昌博, 川添 堯彬, 野間 緑, 宮本 満
    1994 年 6 巻 1 号 p. 38-51
    発行日: 1994/05/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    顎機能異常患者の診査に関する報告は多数あるが, 痛みに関する診査法は少なく, その開発は遅れているのが現状である。
    これまでに筋症状に対して客観的評価を得ることを目的とし, 筋圧痛計を開発して咬筋ならびに側頭筋における健常者と顎機能異常患者の差異について検討してきた。その結果, 健常者では左右側の同部位では圧痛閾値に差はないが, 顎機能異常患者では, 特に圧痛を認める部位において圧痛閾値に左右差が認められた。
    この圧痛閾値の左右差がなくなることが治療効果のひとつの指標となると考え, 今回, 健常者10名の筋圧痛閾値を, また顎機能異常患者4名にスタビライセーション型オクルーザルスプリントを装着し, 自覚症状, 触診とともに筋圧痛閾値を, それぞれ経日的に追った。健常者では, 経日的にみても, 左右差は認められなかった。しかし患者では, スプリント装着2週から1か月後にその効果が発現し, 症状の改善とともに, 両側の筋の圧痛閾値の左右差が小さくなり, 健常者での結果に近づくことがわかった。
  • 大月 佳代子, 大西 正俊, 笠井 隆司, 黒川 悦郎
    1994 年 6 巻 1 号 p. 52-61
    発行日: 1994/05/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    我々は, 習慣性顎関節脱臼治療について, 顎関節鏡視下縫合・円板固定術による新たな治療法を検討してきたので, その概要を報告する。その術式は, 上関節腔を対象に, 関節鏡視ののち, 円板後方から上関節腔後壁, さらに下顎窩, 結節, 内側壁滑膜部などの上腔内壁面を, 鏡視下レーザー手術により新鮮創面を形成する。次いで, 我々の開発した鏡視下円板縫合・固定術により円板を後方へ牽引, 縫合により固定し, 同時に外側関節包についても縫合糸を内外に通し, 前後的に牽引, 縫縮した。また円板の下顎窩, 結節面への癒着, 固定は術後の上下顎歯列の顎間牽引固定により下顎頭を円板下より圧接させて行った。この操作により関節円板は後壁に牽引, 固定されるとともに下顎窩, 結節面に癒着し, 上関節腔は消失し, 又関節包の縫縮により下顎頭運動は著明に制限される状態であった。本法による治療法は, 関節円板およびその周囲関節包など弛緩した組織を鏡視下に縫縮・固定し, 顎関節軟組織の拘縮をはかるもので, 機能的には関節制動術のカテゴリーに入るものである。本法は, 習慣性顎関節脱臼に対する新たな治療法として, 関節を開放せずに施行しうるために従来の治療法に比べ, 侵襲が少なく, 所期の目的が果たせる方法として有用であった。適用対象は, 1988年11月より1993年11月までの問に本法を行なった12症例21顎関節で, そのうち1症例1顎関節に再発を認め, 再手術を施行した症例を含め, 現在, 全例に再発なく, 良好に経過している。
  • 第3報: 女性有痛者のカットオフ値の検討
    杉崎 正志, 伊介 昭弘, 田辺 晴康, 江里口 彰
    1994 年 6 巻 1 号 p. 62-69
    発行日: 1994/05/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    顎関節症患者において, 圧痛検査は日常的に行なわれている。特に, 手指を用いた古典的検査は一般的理学的検査として広く用いられているにもかかわらず, 術者間の信頼性が低いことが示されている。一方, 術者間の変動因子を規定した加圧疼痛閾値計を用いた検査は, 再現性や信頼性が高いことが報告されている。しかし, 得られた値が病的であるか, 正常であるかを示すカットオフ値についてはなんら検討されていない。
    そこで, 術者一人が行った手指を用いた古典的圧痛検査結果を至適基準とした場合の加圧疼痛閾値 (以後PPTとする) のカットオフ値について検討した。対象者は自覚的に無症状である女性ボランティア19名 (以後, 無痛者群とする) および, 女性顎関節症患者と診断され, 顔面の計測部位のいずれかに, 手指を用いた古典的2点識別法で圧痛ありとされた45名 (以後, 有痛者群とする) の計64名を用いた。
    その結果, 有痛者群の有痛部は無痛者群よりも加圧疼痛閾値は有意差をもって小さな値であった。側頭筋前部筋束と咬筋中央部のカットオフ値は2kgが適切であったが, 咬筋下部, 下顎頭外側極部, 下顎枝後縁では加圧疼痛閾値のカットオフ値で判定することは危険であると考えられた。
  • 中島 博, 岡田 とし江
    1994 年 6 巻 1 号 p. 70-82
    発行日: 1994/05/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    1990年8月から1992年7月までの間に関東労災病院歯科口腔外科を受診し顎関節症と診断された患者110名を, 1987年の顎関節研究会で統一された症型分類に基づき分類し, 症型別の塩酸エペリゾンの効果を検討した。
    方法は, 塩酸エペリゾン1回50mgを1日3回2週間投与し効果判定を行った。尚, 110例中15例については日本電気三栄社製サーモグラフィー (6T66), 30例については藤栄電気社製簡易筋電計オクルゾマスターを用いて投与前後における変化について検討した。
    〔結果〕
    (1) 塩酸エペリゾンの主薬理作用である筋緊張緩和作用は, I, II, III型での効果が認められたが, IV型では効果は認められなかった。
    (2) 単独投与群と併用薬投与群との間で主要4症状改善度に有意差はなかった。
    (3) I型では高い有効率を示し, 他の症型ではI型に比べ有意に低かった。
    (4) サーモグラフィーにおいては, 投与前後の患側と健側の皮膚表面温度の左右差に有意差は認められなかった。
    (5) 筋電図においては, 投与前後のSP出現率は有意に増加したが, 筋活動量に有意差は認められなかった。
  • 第2報 病悩期間による痛みの表現数について
    木野 孔司, 杉崎 正志, 上野 みゆき, 相良 成美, 天笠 光雄, 田辺 晴康
    1994 年 6 巻 1 号 p. 83-90
    発行日: 1994/05/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    日本人の顎関節症患者が訴える痛みの性質を理解することを目的として, 日本語版マギル疼痛質問表による評価を実施した。対象患者には第1報と同じく, 357名の顎関節症疼痛患者を用いた。
    第1報において, 「おもくるしい」, 「つかれる」, 「わずらわしい」などの表現が多く選択されること, また, 痛みに対する感覚的表現には男女差はないものの, 男性に較べて女性では, 情動的表現を選択する割合が高いこと等を報告した。
    本報告では病悩期間と疼痛表現との間の関連性を知ることを目的として検討した。病悩期間を1か月未満, 1か月以上6か月未満, 6か月以上に分けるとともに, 筋痛群, 関節痛群, 両者併存群の3群に分割し, 感覚, 情動, 評価的表現の平均選択数ならびにその当該群内における個々の表現用語の選択割合を算定し, 検討した。
    その結果, 顎関節症の痛み全体としては, 1か月未満群より, 6か月以上群がいたみの表現を多く選択しており, とくに情動的表現が多く, 「つかれる」が特徴的であった。関節痛群では6か月以上群に感覚的表現が多く選択されており, 「ジーンと感じる」「おもくるしい」が特徴的であった。筋痛群では6か月以上群に情動的表現が多く選択されており, 「ひどく不快な」が特徴的表現であった。
  • 第1報 いわゆる関連症状と神経症との関連性について
    和気 裕之, 木野 孔司, 川瀬 信行, 村上 宜正, 天笠 光雄, 宮岡 等
    1994 年 6 巻 1 号 p. 91-102
    発行日: 1994/05/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    顎関節症患者は, 3大症状以外に頭頸部を中心とする様々な症状を訴えることがあり関連症状と呼ばれている。しかしこれまで両者の関係については, 解剖学的および神経生理学的な研究がなされているが, 心身医学的な報告はほとんどない。今回いわゆる関連症状のうち頭痛, 肩こり, 頸のこり, めまい, 耳の症状 (耳鳴, 耳閉感, 難聴), 舌の症状 (舌のしびれ, 味覚異常) の6症状と神経症傾向との関係について検討した。
    対象は東京医科歯科大学歯学部第1口腔外科を1991-92年に受診し, 心理テストの日本版GHQ健康調査票に協力の得られた顎関節症患者153例 (男性28例, 女性125例, 平均年齢31.9±13.8歳) である。
    その結果, 各症状の有無とGHQ得点との関係をみると, 頭痛, 肩こり, めまい, 耳, 舌の症状では症状を有する患者のGHQ得点が有意に高く, 頸のこりでは差がなかった。また症状数とGHQ得点には相関関係 (P<0.01) が認められ, 3症状以上を有する患者のGHQ得点 (21.6±12.2) は, 2症状以下の得点 (12.4±11.1) より有意に高いことが示された。すなわち関連症状数の多い患者は, 同時に多くの神経症症状をも有する傾向が認められたことから, より心身医学的治療が必要であることが示唆された。以上から, いわゆる関連症状は神経症症状の一部である可能性も考慮されねばならない。
  • 1994 年 6 巻 1 号 p. 103-115
    発行日: 1994/05/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
  • 1994 年 6 巻 1 号 p. 116-134
    発行日: 1994/05/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
  • 1994 年 6 巻 1 号 p. 135-174
    発行日: 1994/05/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
  • 1994 年 6 巻 1 号 p. 175-213
    発行日: 1994/05/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
  • 1994 年 6 巻 1 号 p. 214-236
    発行日: 1994/05/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
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