日本顎関節学会雑誌
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8 巻, 3 号
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  • 関節円板動態と下顎頭形態変化との関連について
    田畑 修, 神田 重信
    1996 年 8 巻 3 号 p. 475-485
    発行日: 1996/12/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    顎関節症において病的骨変化はみられなくても, 左右下顎頭形態が非対称であることは少なくない。
    その原因としては, 関節円板病態の影響, 顎関節動態の影響あるいは下顎頭と下顎窩との不調和などが考えられる。
    そこで, 今回は関節円板の動態変化, 特に各関節円板位置での病的骨変化のない顎関節症患者の下顎頭形態のCT所見について検討した。
    対象は, 全例女性とし, 下顎頭に骨変化のみられない顎関節症患者77名154顎関節をCT像により測定分析した。顎関節造影断層像より関節円板位置によって, 正常位置群 (NP群), 復位を伴う関節円板前方転位群 (W群) および復位を伴わない関節円板前方転位群 (WO群) の3群に分類し, 各群の下顎頭形態について分析した。
    その結果, WO群のように関節円板位置の変化が大きくなると, 下顎頭最大横断面積や下顎頭長径および短径は小さくなる傾向にあった。また, 下顎頭長軸角は大きくなった。しかし, 長径/短径比には変化が認められなかった。
    また, W群と異なり, WO群では発症からの経過が長くても, 下顎頭最大横断面積や, 下顎頭長軸角の変化は認められなかった。
    したがって, 下顎頭形態の変化は, 顎関節症によっても引き起こされるが, どこまでも進行するわけではない。また, 下顎頭形態の特異性によって, 逆に関節円板の位置異常がおこる可能性も考えられた。
  • 依田 哲也, 秋元 規子, 塚原 宏泰, 阿部 正人, 荒 昌晴, 小林 弘幸, 桜井 仁亨, 平 健人, 大仲 潤子, 依田 泰, 小幡 ...
    1996 年 8 巻 3 号 p. 486-494
    発行日: 1996/12/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    復位を伴う円板前方転位の患者のうち未治療または, 薬物療法のみで終了した108人に対し, アンケートにより, 2年後および5年後の自然経過を検討した。その結果, クローズド・ロックへの移行率は, 2年経過群は17.4%で, 5年経過群では19.4%であり, その中でクリック単独群では6.6%であったに対し, 疼痛併発群では27.0%と高い移行率を示していた (p=0.0016)。また, 受診前のクリック罹病期間による移行率の差はみられなかった。次にクリックの自然消失率については, 2年経過群は34.8%で, 5年経過群は25.8%であり, その内, クリック単独群では24.4%に対し, 疼痛併発群では33.3%と若干高い移行率であった (p=0.04655)。また, クリック単独群の疼痛出現率は, 2年経過群で17.6%, 5年経過群で6.9%であった。
    以上の結果より, 関節痛または筋痛を伴うクリックはクローズド・ロックに移行する可能性が高いことが示唆された。
  • 門脇 繁, 中嶋 頼俊, 土井上 輝夫, 渡辺 政明, 小林 隆, 由良 晋也, 樋田 京子, 上田 倫弘, 村上 有二, 井上 農夫男, ...
    1996 年 8 巻 3 号 p. 495-506
    発行日: 1996/12/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    顎関節腔造影にて非復位性の関節円板前方転位と診断された75例86関節を対象とし, その臨床経過と顎関節の形態的変化との関係について検討した。対象症例を, 持続的な開口障害を呈する以前の関節雑音の既往をもとに, クリック継続群 (35例38関節), クリック間欠群 (17例21関節), クレピタス群 (14例17関節), 無雑音群 (9例10関節) の4群に分類した。
    (1) クリック継続群の臨床経過は, 無痛性のクリックに次いで関節のロッキングが生じるという共通性がみられたが, クリック間欠群とクレピタス群の臨床経過は実に多様であった。無雑音の臨床経過は, 関節痛や筋肉痛に引き続き持続的な開口障害に陥っていた。
    (2) クリック継続群における下顎頭形態は扁平型 (52.6%) が多く, 陥凹型 (23.7%) や粗造型 (23.7%) は少なかった。また, 関節円板の癒着の程度は癒着なし (57.8%) が多く, 軽度癒着 (21.1%) や重度癒着 (21.1%) は少なかった。他の3群における下顎頭形態は粗造型 (50-64.7%) が多く, 扁平型 (19.0-29.4%) や陥凹型 (5.9-19.0%) は少なかった。また, 関節円板の癒着の程度は重度癒着 (42.8-70%) が多く, 癒着なし (20-29.4%) や軽度癒着 (5.9-28.6%) は少なかった。
  • 湯浅 秀道, 栗田 賢一, 外山 正彦, 牧 泉, 小木 信美, 有地 榮一郎, 河合 幹
    1996 年 8 巻 3 号 p. 507-514
    発行日: 1996/12/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    近年, 顎関節における下顎頭の骨変化と下関節腔内病変の関係が注目されている。そのため, 下関節腔鏡視所見の診査が行われるようになった。しかしこれまでの顎関節鏡では, 上関節腔と違い, 下関節腔における鏡視検査は困難である。そこで当科では細径関節鏡を開発し, 下関節腔検査を行っている。
    今回, 当施設での下関節腔における顎関節鏡視検査の概要を報告するとともに, 代表症例につきMR画像, 上下顎関節腔二重造影断層撮影所見とともに供覧する。
    対象: MR撮影後, 各種保存的治療に奏効しなかった非復位性円板転位症例のうち, 上下顎関節腔二重造影断層撮影にて癒着・骨変化などが診断され, さらに詳細な検査を要する症例。
    手技: X線透視下において下関節腔穿刺と造影剤注入を行い, 下関節腔を確認するとともにパンピングした。画素数15000, 直径1.06mm (外套管外径1.48mm) の細径ファイバースコープ内視鏡を穿刺した。十分なアウトフローを確認しながら鏡視した。
    結論
    今回開発した高画質細径関節境によって臨床上問題となる合併症を認めずに, 下関節腔鏡視所見が得られた。今後本関節鏡が下関節腔の病態の解明に役立つことが示唆された。
  • 二宮 史浩, 竹之下 康治, 窪田 泰孝, 中村 誠司, 白砂 兼光
    1996 年 8 巻 3 号 p. 515-525
    発行日: 1996/12/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    1988年1月から1993年12月までに当科で治療を行った13-19歳の関節突起骨折25例について評価を行った。
    その特徴は以下の通りであった。
    (1) 男性15例, 女性10例であった。骨折時の年齢は14歳から19歳で, 平均17.4歳であった。
    (2) 18例 (72.0%) は片側性, 7例 (28.0%) は両側性であった。19例 (76.0%) は下顎骨他部位骨折を合併していた。
    (3) 32側中14側 (43.8%) に観血的療法が施されていた。骨接合にはキルシュナー鋼線が6側 (42.8%), 骨縫合が4側 (28.6%), ミニプレートが4側 (28.6%) に用いられていた。
    (4) 顎間固定は24例 (96.0%) に施され, 平均18.7日間であった (10日から37日)。
    (5) 治療半年後の評価では経過良好で, 観血的療法と非観血的療法とでは臨床症状に大差はみられなかった。
    (6) 治療前と治療半年後の軸位X線規格写真で関節突起の位置を比較したところ, 非観血的療法よりも観血的療法の方が, その関節突起の大半が本来の解剖学的位置に復元されていた。
  • クリック単独症例を中心に
    渋谷 智明, 木野 孔司, 鈴木 和彦, 大村 欣章, 和気 裕之, 小林 明子, 天笠 光雄
    1996 年 8 巻 3 号 p. 526-533
    発行日: 1996/12/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    近年顎関節症の来院患者数が増加しているが, その中には疼痛や開口障害を経験したことのない, クリック単独の患者も少なくない。
    1992年4月から12月までの問に当科に来院した顎関節症患者761名のうち初診時までに疼痛や, 開口障害を経験したことのないIII型レシプロカルクリック単独の34症例の中, リコールに応じた22症例の臨床的検討を行った。また, クリックを初発症状とし, 初診時に疼痛や開口障害を伴ったIII型55症例 (有痛性クリック36例, クローズド・ロック19例) との比較検討を行った。
    その結果, クリック消失, 軽減, 不変群間に治療法の違いによる差は認められなかった。また平均病悩期間においては消失群と不変群間に有意差が認められたが, 平均通院期間, 平均経過観察期間, クリックの発現ないし経過への関連要因には有意差は認められなかった。同様の項目による疼痛を伴うクリック群, クローズド・ロック群との多群間比較においては, 側方運動障害の有無でクリック単独群とクローズド・ロック群問に有意差がみられたほか, 特に有意差は認められなかった。また, 疼痛を伴うクリック群とクローズド・ロック群において, その外傷的な増悪契機の有無を検討したが, 明確な関係はみられなかった。
    以上より, クリック単独の場合, 治療による差はほとんどみられず, 放置していても必ずしも病態が悪化するとはかぎらないことを示唆するものと思われた。
  • 慢性関節リウマチの1症例
    大西 正俊, 大月 佳代子, 福田 敏博
    1996 年 8 巻 3 号 p. 534-541
    発行日: 1996/12/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    慢性関節リウマチに後遺した変形性顎関節症の開咬に対する顎間牽引と鏡視下手術での新たな治療法について報告する。
    症例は, 60歳, 女性, 主訴は咀嚼障害で, 上下有歯顎の最後臼歯のみ咬合する前歯切端間8mmの開咬であった。X線像で, 両側の下顎頭の著明な吸収性変形と関節円板の変形, 線維性癒着, 関節腔の狭窄を認めた。処置は, 最後臼歯部ピボット付スプリントの装用下に前歯部を顎間牽引し, 開咬を消失させた。次いで, 鏡視下手術により, 円板と周囲組織を縫縮して厚みを増加させ, 牽引で拡大された関節隙に補填し, 下顎頭, 下顎窩の適合を図った。術後2年現在, 開咬の再発もなく経過良好で, 画像より両側下顎頭, 下顎窩の部分的リモデリングが観察された。
  • 羽田 勝, 布袋屋 啓子, 石川 正俊, 斎賀 明彦
    1996 年 8 巻 3 号 p. 542-553
    発行日: 1996/12/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    顎関節内障の発生機序についてはさまざまな意見があるが, 一因として顎関節あるいは関節周囲組織の弛緩が考えられる。また, 全身の関節弛緩度 (systemic joint laxity) は, 顎関節内障の発生や保存的療法の予後に影響するとも言われているので, 顎関節内障患者の診断や治療に際しては関節の弛緩度が考慮されなければならない。
    そこで, 本研究では顎関節内障の女性患者を対象として全身の関節弛緩度と関節円板の転位度や形態変形との関係についてMRIの画像情報をもとに検討を加えた。なお, 全身の関節弛緩度については整形外科領域で用いられるBeightonらの判定基準を改変した方法を用いて評価した。
    その結果, 以下のような知見が得られた。
    (1) 関節弛緩度は, 正常者や復位性関節円板前方転位患者 (以下, 復位性群) と比較して非復位性関節円板前方転位患者 (以下, 非復位性群) で有意に高く, また弛緩度が特に高いhypermobilityの頻度も非復位性群で有意に高かった。
    (2) 関節円板の前方転位度は, 関節弛緩度の低い復位性群よりも関節弛緩度の高い非復位性群で有意に高かった。
    (3) 前方転位した関節円板の形態は, 復位性群では正常な形態を保つものが多く, 高度な変形をきたしているものは少なかったが, 非復位性群では高度な変形をきたしているものが多く, 正常な形態は少なかった。
  • 円板整位下顎位の得られない関節雑音について
    依田 哲也, 塚原 宏泰, 坂本 一郎, 谷口 亘, 阿部 正人, 依田 泰, 森田 伸, 三井 妹美, 小野 富昭, 榎本 昭二
    1996 年 8 巻 3 号 p. 554-565
    発行日: 1996/12/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    円板整位下顎位を有さない関節雑音の診断法および治療法を確立する目的で, これらの関節雑音に対して, その病態ならびに臨床的特徴を, 臨床症状および単一上下関節腔断層撮影 (矢状断方向, 前頭断方向) 等で検討した。
    対象は1994年1月から12月まで当科を受診した顎関節症患者1254名のうち, 円板整位下顎位のない関節雑音を認め, 関節腔造影検査の施行に同意を得られた25名 (男性8名, 女性17名) である。
    結果; 下顎頭に対する関節円板の位置から, 正常なもの, 内方転位, 開口時の後方転位, 咬合位のみの前方転位 (復位性円板前方転位), 咬合位開口時の前方転位 (非復位性円板前方転位), およびその複合型がみられた。円板位が正常の症例は, 関節結節と関節円板上面との間で雑音が発生する結節性雑音であり, 全例に関節腔内の帯状線維性癒着がみられた。開口時の後方転位症例では, 関節円板の変形, 関節腔内の帯状線維性癒着がみられた。復位性関節円板前方転位症例は, 典型的に円板整位下顎位を有しているはずであるが, それを有さない症例では, 腔内の線維性癒着, 関節円板のたわみ, 変形がみられた。非復位性円板前方転位症例では, 典型的には雑音は伴わないが, 雑音を伴う場合は, 40mm以上の開口が可能で, 音はクレピタス, 円板変形, 穿孔, 癒着, 下顎頭骨棘形成がみられた。
  • 佐々木 昇, 覚道 健治, 森本 伊智郎, 白数 力也, 田中 昭男, 水野 祥二
    1996 年 8 巻 3 号 p. 566-574
    発行日: 1996/12/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    関節拘縮や関節痛を主症状とする顎関節症患者に対してヒアルロン酸ナトリウム (以下HAとする) の上関節腔内投与が行われているが, 投与後の同薬剤の関節内動態については解明されていない。そこで蛍光標識HA (以下FAHAとする) をサル顎関節上関節腔内に投与し, 上関節腔ならびに下関節腔の滑液の蛍光強度を経時的に測定するとともに, 組織内蛍光分布を観察した。実験動物としてカニクイザル成獣を用いた。全身麻酔下にて上関節腔を穿刺し, 1%FAHA溶液0.1mlを同腔内に投与した。投与直後, 投与6時間後, 投与24時間後および投与72時間後に断頭し顎関節を摘出後, 上関節腔ならびに下関節腔を順次開放して滑液を採取し, 蛍光強度を測定した。次いで顎関節を固定後, 脱灰を施し, 凍結切片を作製し, 共焦点レーザー走査型顕微鏡にて組織内蛍光分布を観察した。その結果, 上関節腔滑液の蛍光強度は経時的に減弱し, 下関節腔滑液には蛍光をほとんど認めなかった。組織内蛍光分布の所見では, 投与直後の関節円板上関節腔面, 上関節腔滑膜ならびに下顎窩軟骨の表面に蛍光を認め, 経時的に蛍光は減弱していた。下顎頭, 関節円板下関節腔面ならびに下関節腔滑膜には蛍光を認めなかった。以上のことから, 顎関節上関節腔内に投与されたHAは下関節腔には移行せず, 下顎頭軟骨の器質的変化が疑われる症例には下関節腔にもHAを投与するのが望ましいと考えられた。
  • 別部 智司, 小林 馨, 森田 武, 関谷 秀樹, 小川 匠, 荒木 次朗, 亀井 秀, 伊藤 孝介, 細田 裕, 山中 悟史, 鈴木 聡, ...
    1996 年 8 巻 3 号 p. 575-585
    発行日: 1996/12/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    本研究は鶴見大学附属病院の臨床各科が集まって行っている顎関節症診断会の症例の中で, 初診時に圧痛を有した症例について検討を行った。
    本会で診断を受けた症例数は1995年2月までに120例であった。圧痛を有した症例は67例 (55.8%), 年齢: 41±18歳, 男性: 10例, 女性: 57例であった。圧痛部位は14箇所に定めて手指により圧迫した。疾患側は右側が24例 (35.8%), 両側が22例 (32.8%), 左側が21例 (31.4%) であった。圧痛は罹患側に多く発現し, 2箇所に圧痛部位を有した症例が最も多かった。圧痛部位と顎関節学会の症型分類との関係ではI型は顎二腹筋を含む下顎枝後部, 咬筋浅部, 側頭筋前部, 胸鎖乳突筋に, II型は下顎頭後方部に, III型復位を伴う場合は顎二腹筋を含む下顎枝後部, 咬筋浅部, 側頭筋前部, 胸鎖乳突筋に, III型復位を伴わない場合は下顎頭後方部, 咬筋浅部に, IV型は顎二腹筋を含む下顎枝後部, 咬筋浅部, 側頭筋前部の部分が多くの症例で圧痛を有した。
    今回の結果から症型分類と圧痛部位とは明瞭な関係はなかったものの, 圧痛の出現部位に一つの傾向が認められた。
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