日本顎関節学会雑誌
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9 巻, 3 号
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  • 橋本 和佳, 山本 一道, 鈴木 直人, 山内 貴司, 横山 隆, 鈴木 清剛, 伊藤 裕
    1997 年 9 巻 3 号 p. 469-481
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    スプリント療法は, 顎関節症治療の選択肢の一つとして広く行われている。このスプリントには, 目的に応じて種々な形態があげられる。
    これらのスプリントには, それぞれのスプリントに要求される作用が効果的に発揮される形態や咬合接触関係を付与されているが, どのスプリントを用いるにせよ, スプリント装着時には顎関節部へ過剰な負担を及ぼさないものでなければならない。
    また, これらのスプリント装着時に咬合力が下顎頭へおよぼす負荷を検討することは, 顎関節症の原因の一つとなる顎関節部に加わる負荷を制御し, 正常で安定な咬合関係を構築するためにも, 重要であると考えられる。
    そこで著者らは, スプリント装着時の下顎頭位を簡便に測定する装置としてパントグラフを改造した装置を試作し, 各種スプリント装着時の咬みしめ力が下顎頭位に及ぼす影響について検討した。
    その結果, 特殊な装置を用いることなくスプリント装着時の下顎頭位を簡便に測定することが可能であった。
    また, 今回測定した2例の被験者ではスプリントを装着し, 咬みしめを行った場合, スプリントの種類や付与する咬合接触の違いにより下顎頭の変位量, 変位方向に差異がみられた。
  • I級叢生患者と正常咬合者との比較
    宇賀 茂, 武藤 寿孝, 川上 譲治, 松本 賢二, 金澤 正昭, 横山 一徳, 小林 宏樹, 武内 真利, 石井 英司
    1997 年 9 巻 3 号 p. 482-490
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    われわれは骨格性下顎前突症患者における下顎頭の滑走運動制限の頻度を調査し, この滑走運動制限と顎態および下顎窩形態との関連性を検討した。検索にあたり開閉口時の顎関節X線規格写真および側面頭部X線規格写真を撮影した。骨格性下顎前突症患者48人中20人, 96関節中30関節に最大開口時の下顎頭の滑走運動制限を認めた。しかしアングルI級叢生患者には一例認められたのみであった。骨格性下顎前突症患者において, 下顎頭の滑走運動制限をもつ患者はGonial angle, ∠SN-Mp, ∠Pp-FOCの計測項目で有意に大きな値を示した。しかし下顎窩形態とは関連性を認めなかった。
  • 湯浅 秀道, 栗田 賢一, 小木 信美, 牧 泉, 外山 正彦, 加藤 勇, 荒木 章純, 佐久間 重光, 河合 幹, 有地 榮一郎
    1997 年 9 巻 3 号 p. 491-499
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    顎関節症の中で骨変形のある非復位性顎関節円板転位症例に対する保存的治療として, 各種保存的治療を比較検討した報告はほとんどない。そこで我々は, 効果的な初期治療方法を求めるという観点に立ち, 4種の治療法 (第1群: 消炎鎮痛剤投与, 第2群: 消炎鎮痛剤投与+開口練習, 第3群: 関節腔内洗浄, 第4群: 関節腔内洗浄+ステロイド注入) のうち, どの治療法が初期治療として開始後3か月以内で最も有効であるかを比較検討した。
    対象・方法: MR画像にて骨変形のある非復位性顎関節円板転位症例と診断された患者の内, 当治療班で設定している顎関節機能障害度分類で中等度および重度の顎関節症状を片側性に有するものを対象とし, 上記の4群に無作為割付けを行った。解析対象は39名であった。群別では第1群 (消炎鎮痛剤投与): 11例, 第2群 (消炎鎮痛剤投与+開口練習): 10例, 第3群 (関節腔内洗浄): 9例, 第4群 (関節腔内洗浄+ステロイド注入): 9例であった。
    結果: 最も良好であった治療法 (改善率) は, 4群 (関節腔内洗浄+ステロイド注入): 55.6%と, 第2群 (消炎鎮痛剤投与+開口練習): 50.0%であり, 続いて第1群 (消炎鎮痛剤投与): 36.4%, 第3群 (関節腔内洗浄): 33.3%であった。
    結論: 初期治療として4群の各種治療法に統計学的有意差は認めなかった。しかし, 「関節腔内洗浄+ステロイド注入」並びに「消炎鎮痛剤投与+開口練習」が高い改善率を示した事より, 今後は骨変形のある非復位性顎関節円板転位に対する各種初期治療法の比較には, 本法基準として検討する必要性が示唆された。
  • 井手 隆, 永井 格, 村田 あゆみ, 宮崎 晃亘, 一戸 崇, 小浜 源郁
    1997 年 9 巻 3 号 p. 500-505
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    顎関節症において閉口障害を認める症例がある。今回, stuck diskに伴い閉口障害を認めた症例を経験したので報告する。患者は25歳女性で右顎関節雑音および閉口障害を主訴に平成7年6月8日当科初診となった。病脳期間は6か月間であった。現症は開口時切歯端間距離30mmで右側顎関節にクリックを認め, 最大開口切歯端間距離49mmであった。閉口時切歯端間距離25mmで閉口障害を認め, 下顎を右側に偏位させて強く約1秒間閉口努力すると可聴性クリックを発して閉口可能となるが, 偏位させずに閉口することは右側顎角部に疹痛を認め不可能であった。MR撮像において, 閉口時の右側関節円板の前方転位および最大開口時での関節円板の復位を確認したが, 開閉口位での位置の移動を認めず, stuck diskの状態であった。閉口障害の状態でのMR撮像所見では, 関節円板は復位した状態であった。以上の所見より, 閉口障害は下顎頭がstuck diskの後方肥厚部を乗り越えることができないために生じると推測された。治療は, 閉口時のひっかかりの軽減を目的に平成7年9月4日静脈内鎮静法を併用し, 右側上関節腔パンピング下での開閉口練習を施行した。これにより閉口障害は術中に消失した。術後のMR撮像所見では, 閉口位の関節円板の位置および形態は変化していないが, 開口位での関節円板の位置の移動がありstuck diskは認めなかった。術後1年7か月経過した現在まで症状の再発を認めず経過良好である。
  • 洗浄療法, ヒアルロン酸注入療法の併用
    澤 裕一郎, 竹本 隆, 伊藤 正樹, 宮本 謙, 高木 宣雄, 宮城島 俊雄
    1997 年 9 巻 3 号 p. 506-514
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    パンピングマニピュレーション療法は, クローズドロック症例に対し関節円板の復位を目的として行われてきた治療法である。当科においても41例の顎関節症, 非復位性前方転位症例に対しパンピングマニピュレーション療法を施行し良好な治療効果が得られてきた。しかし, 術中に関節円板が復位した症例は少なく, 多くは関節円板の復位が得られなかった。そこでパンピングマニピュレーション療法の効果を開口量の増加と疼痛消失について関節円板の復位と併せて検討した。その結果,
    A) 臨床症状の改善について
    1) 40mm以上の開口量が得られた症例は32例 (78.0%)
    2) 疼痛消失が得られた症例は35例 (85.4%)
    3) 両者とも改善した症例は30例 (73.2%)
    B) 関節円板の復位について
    1) 復位し開口した症例は3例 (9.4%)
    2) 復位後, 再ロックし, しばらく後に開口した症例は6例 (18.8%)
    3) 復位なしに術直後より開口した症例は8例 (25.0%)
    4) 復位せず, しばらく後に開口した症例は15例 (46.8%)
    以上より, パンピングマニピュレーション療法の効果は関節円板の復位によるものだけではないと判断した。
  • 奥村 晃, 今村 英夫, 久保田 英朗, 角田 隆規, 後藤 昌昭, 香月 武
    1997 年 9 巻 3 号 p. 515-519
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    われわれは, 顎関節滑膜に生じた骨腫の1例を報告する。症例は55歳の女性で, 開口時の右側顎関節の疼痛, 雑音を主訴に当科を受診した。単純X線写真およびCTにおいて, 右側顎関節隙に楕円形の石灰化物を認め, 下顎窩, 下顎頭との連続性がみられないことから, 関節遊離体と診断した。関節鏡視検査では関節遊離体は存在せず, 関節円板後部組織の骨様硬の隆起を認めた。全麻下に関節開放後, 関節円板後部組織の石灰化物を切除し, 骨腫の病理診断を得た。術後4年経過した現在, 関節の疼痛, 雑音はなく経過良好である。
  • 米津 博文, 野沢 健司, 須賀 賢一郎, 木住野 義信, 齊藤 力, 松坂 賢一
    1997 年 9 巻 3 号 p. 520-525
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    片側性下顎頭骨軟骨腫が下顎非対称や不正咬合などを伴うことは比較的多くみられるが, 開口障害が発現することは比較的少なく, さらに骨性強直をきたしたとの報告は, あまりみられないようである。
    私たちは顎関節授動術後に発症した骨性強直をきたした片側性下顎頭骨軟骨腫の1例を報告した。症例は71歳の女性で, 強度の開口障害と左側顎関節部の骨様膨隆を主訴としていた。エックス線所見では左側下顎頭の変形は著明であった。本例に対して下顎頭切除術を施行し1年が経過したが, 比較的満足すべき結果が得られた。
  • システムの特徴と運動記録解析条件の検討
    永田 和裕, 旗手 敏
    1997 年 9 巻 3 号 p. 526-540
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    顎関節症患者の顎関節音と下顎頭運動の総合的な評価を目的として, 顎関節音と下顎頭運動の同時記録・解析システムの開発を行った。
    本報告では, システムの特徴を述べるとともに, 下顎頭運動速度の定量的な評価を行う際に必要とされる, 適切な記録解析条件に関する検討を行った。以下はその概要である。
    ・本システムは診断的な目的で利用できるように, 微小な下顎頭運動の解析が行えることに重点をおいて開発を行った。また, 解析プログラムでは, 顎関節音と下顎頭運動の定量的な評価と同時に, 両者の時間的な関連の評価が行えるよう配慮した。
    ・周波数の異なる音の発生位置を明らかにするため, また, 小さな関節音を正確に評価するために, デジタル・フィルタリング法を採用した。
    ・下顎頭運動の記録解析条件の評価結果では, 下顎頭運動経路の形態は記録解析条件の影響を受けにくいのに対し, 速度の解析値は記録解析条件の影響を強く受けることが明らかとなった。
    ・速度の解析値は, サンプリング周波数が高く, スムージングが少ないほど被験者群間の差が顕著であった。また, 健常者群と患者群の下顎頭運動速度の差を明らかにするためには, 最低でもサンプリング周波数を100z以上とし, スムージングを7ポイント以下とする必要があった。
  • 京面 伺吾, 小澤 奏, 野々山 大介, 小田 義仁, 末井 良和, 田口 明, 谷本 啓二, 丹根 一夫
    1997 年 9 巻 3 号 p. 541-553
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    本研究では, 変形性顎関節症 (以下OA) 患者に対する歯科矯正治療後の下顎頭と顎顔面骨格の形態変化を明らかにすることを目的とした。
    歯科矯正治療開始前に, 磁気共鳴映像法ならびに軸位補正側面X線断層撮影法検査によってOA (Wilkes分類のStage IV) と診断された女性6名 (平均年齢17歳2ヵ月) の10関節を対象とし, 下顎頭および顎顔面骨格の形態変化を比較検討した。その結果, 以下の所見が明らかとなった。
    1. 初診時に見られた骨形態異常 (osteophyte; 5関節, flattening; 3関節, erosion; 2関節) のうち, erosionを呈した1関節がosteophyteへ変化していた。
    2. Condylar ratioは10関節中8関節で減少を認め, 下顎頭の吸収による下顎枝の短小化が示唆された。
    3. 顎顔面形態の比較では, 下顎下縁平面の開大, 下顎骨・オトガイ部の後退が認められたが, いずれもわずかな変化であった。また, 多くの症例で臼歯歯槽部高径のコントロールは良好になされていた。
    以上のことから, OA患者に対する歯科矯正治療中においても, 下顎頭の吸収が進行する場合があることが示された。したがって, 歯科矯正治療にあたっては, これに起因する顎顔面骨格形態の変化に十分配慮した治療を行う必要のあることが強く示唆された。
  • 川上 哲司, 都築 正史, 藤田 宏人, 高山 賢一, 大河内 則昌, 馬場 雅渡, 杉村 正仁
    1997 年 9 巻 3 号 p. 554-561
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    上関節腔への顎関節鏡視下剥離授動術の臨床的評価を行った。手術に際して, 生体に侵襲性の少ないホルミウム・ヤグ (Holmium: YAG) レーザーを応用した。対象症例は, 保存療法に抵抗性の慢性クローズドロック症例または有痛性間欠的クローズドロック症例32症例・37関節に施行した。剥離授動・前外側関節包靱帯および関節形成に際して, ホルミウム・ヤグ (Holmium: YAG) レーザー (コヒーレント社製バーサパルス・セレクト22) およびパワーシェーバー (ストライカー社製マイクロデブリッダー・スモールジョイント・アースロプラスティーシステム) を使用した。これらに加え, われわれが考案した顎関節洗浄システムを併用し, より効果的で, 洗浄効果が増強された。すべての症例において, 最大開口度は, 40mm以上, 前方・側方運動量は, 10mm以上となり, 外科療法後の奏功率は, 96.9%であった。咀噛感も改善され, 術後の合併症もなかった。
  • 橋本 光二, 本田 和也, 新井 嘉則, 桑島 永治, 上野 正博, 島田 英治, 篠田 宏司
    1997 年 9 巻 3 号 p. 562-570
    発行日: 1997/12/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    各種のX線撮影法における下顎頭および下顎窩の骨変化検出率の違いについては, 未だ不明な点がある。本研究では顎関節側方リニア断層像の有用性を検討した。資料は, 顎関節症の疑いで日本大学歯科病院に来院し, 放射線科で各種撮影検査を施行した25例50関節のX線写真である。側面規格断層像を実態を現すもの, すなわちGold standardとして, 回転パノラマ像, 側斜位経頭蓋撮影 (シュラー) 像, 顎関節側方リニア断層像の骨変化検出率を比較し以下の結論を得た。
    1) 側面規格断層像で50関節中, 下顎頭では24関節に, 下顎窩では8関節に骨形態変化が認められた。
    2) 顎関節側方リニア断層像での下顎頭骨形態変化の検出率は, Accuracy 76%, Sensitivity 79%, Specificity 80%, 同じく下顎窩骨形態変化の検出率は, Accuracy 72%, Sensitivity 63%, Specificity 85%であり, 他の撮影法よりもやや高い検出率であった。
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