日本顎関節学会雑誌
Online ISSN : 1884-4308
Print ISSN : 0915-3004
最新号
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総説
  • 杉崎 正志
    2018 年 30 巻 2 号 p. 127-167
    発行日: 2018/08/20
    公開日: 2018/10/15
    ジャーナル フリー

    中国では古くに葛洪著《肘后救卒方》に顎関節脱臼整復法が記載されているが,その原本では脱臼整復に関する文書は不明のままであり,しかもこの論文は丹波康頼の醫心方に「治張口不合方(葛氏方)」と紹介されたものである。本邦最古の医学書である醫心方は中国書を編纂したものであり,9世紀までに中国から渡来した醫學・本草関係書をまとめたものである。このようにわが国の顎関節脱臼徒手整復法は中国にその起源をもつものである。本稿では顎関節脱臼徒手整復法に関する日本と中国の文献を渉猟し,一応の整理ができたので,その概要を報告する。なお,歯科・口腔外科の教科書はまとめて最後に記した。

連載解説
  • 石垣 尚一
    2018 年 30 巻 2 号 p. 168-176
    発行日: 2018/08/20
    公開日: 2018/10/15
    ジャーナル フリー

    The Diagnostic Criteria for Temporomandibular Disorders(DC/TMD)のAxis Ⅱについて概説する。国際疼痛学会によれば,「痛みは,実質的または潜在的な組織損傷に結びつく,あるいはこのような損傷を表す言葉を使って述べられる不快な感覚・情動体験である」と定義されている。このことからもわかるように,「痛み」を単に身体的な側面からのみ評価することはできない。DC/TMD Axis Ⅱでは,痛みの部位,痛みの強さ,顎機能制限,痛みによる障害,精神的苦痛,異常機能行動,不安,抑うつ,および併存する痛みの状態を,さまざまな評価インストゥルメンツを用いて評価することにより,痛みの多面的な評価,および痛みの強さや慢性化に影響する要因の特定に役立てるために考案された。評価インストゥルメンツは,その組み合わせにより,スクリーニング検査用と包括的評価用のセットが構成されており,臨床や研究上の必要性や目的に応じて選択できるようになっている。本稿を通してこれらの概念および評価インストゥルメンツの利用法についての理解を深めていただきたい。

依頼論文
  • 牧山 康秀
    2018 年 30 巻 2 号 p. 177-186
    発行日: 2018/08/20
    公開日: 2018/10/15
    ジャーナル フリー

    習慣性の頭痛を主訴とする患者では,緊張型頭痛と片頭痛が多い。緊張型頭痛は一次性頭痛のうち最多の疾患であるが,頻発すると受診し,痛みは中等症(つらいが日常動作はできる)以下が多く,周辺筋群に圧痛をもつ例が多い。片頭痛では,中等度以上の頭痛に加え,多臓器にわたる過敏症状を伴い日常生活の中断を余儀なくされる。片頭痛では鎮痛薬ではなく片頭痛発作の頓挫薬であるトリプタン製剤を用いて生活の中断を最小化させることができる。

    顎関節症に起因する頭痛は,耳介前方,咬筋,側頭部に多くみられ,頭痛を眼窩外耳孔線より頭頂側の痛みと定義する以上,多くの例で一物の二面を見ているにすぎない。また近年,口腔顔面と頭部の慢性疼痛性疾患における痛覚系の感作が明らかになり,顎関節症と一次性頭痛の共存を強調する報告が散見される。今後の病態解明,治療アプローチの進展が期待される。

    頭痛を訴える患者に遭遇する診療科では臨床的緊急度の高い頭痛患者を確実に捕捉する重要性が繰り返し指摘されている。診断治療の緊急性が高い頭痛は,突然発症のもの,緩徐でも確実に増悪するもの,発熱などの全身症状を伴うものなどがたびたび強調されている。これらに加えて,歯科領域に原因をもち顔面頭部の知覚障害を伴う頭痛の重要性も指摘した。

原著
  • 林 直樹, 依田 哲也, 塘田 健人, 湯本 愛実, 北村 智久, 大久保 正彦, 岩崎 良恵, 榎木 祐一郎, 佐藤 毅
    2018 年 30 巻 2 号 p. 187-194
    発行日: 2018/08/20
    公開日: 2018/10/15
    ジャーナル フリー

    咀嚼筋腱・腱膜過形成症は,先天的要因が関与し,若年者から徐々に進行すると考えられている。そこで今回,同地域の小・中学校で縦断的に調査を行い,本疾患の発症頻度,最大開口の経年変化について検討した。

    調査期間は2009年から2016年で,2013年から2016年に埼玉県北部E中学校に3年生として在籍した生徒334名(男;162名,女;172名)を小学5年生から中学3年生まで,毎年調査した。

    調査項目は,最大開口距離,オーバーバイト,顎関節痛の有無,咀嚼筋痛の有無,関節雑音の有無,咬筋張り出しの有無,square mandibleの有無である。われわれは,口腔内から下顎枝前縁を触診し頰側に移動させた際に咬筋が触れる場合を咬筋張り出し有りとし,乳様突起に指を添えて眼耳平面に垂直下方に移動させた際に下顎角後縁の外側面が触れる場合をsquare mandible有りとした。咬筋張り出し有りの生徒を咀嚼筋腱・腱膜過形成症の疑いとした。

    結果として,咀嚼筋腱・腱膜過形成症疑いの生徒は6名(男:3,女:3)で,全体の1.8%であり,3名は,5年間で3~5 mmの増加,1名は変化がなく,2名は減少が認められた。それらの中学3年生時の最大開口距離は男子で45 mm以下,女子で43 mm以下であり,全体よりも2 SD近く開口が制限されていた。この結果により,受診患者だけではなく多数の潜在患者の存在の可能性が示された。また今回の簡易診査法は,患者負担が少ない早期治療に結び付く可能性も示唆された。

  • 山口 賀大, 佐久間 重光, 田口 慧, 小木 信美, 小林 里奈, 栗田 賢一, 田口 望
    2018 年 30 巻 2 号 p. 195-201
    発行日: 2018/08/20
    公開日: 2018/10/15
    ジャーナル フリー

    顎関節症の初期治療法については可逆的な保存的治療法が推奨されており,なかでも運動療法は近年その注目度が増している。運動療法は他部位の関節障害において標準的な治療のなかに含まれ,その有用性も確立されている。しかし,顎関節については報告数が少ないため,エビデンスを確立するまでにはいたっていない。早期から疼痛軽減対策を行うことは,病悩期間の短縮,慢性痛への移行を防ぐための一助になると考える。本研究では,非復位性顎関節円板障害症例に対して顎関節可動化療法を施術した際の即時効果ついて検討したので報告する。パノラマエックス線診断および臨床診断により非復位性顎関節円板障害を伴う顎関節症と診断された患者のうち,顎関節機能障害度分類により中等度以上の障害を認めた28名に対して,初診時に顎関節可動化療法を施術した。臨床症状として,施術前後の無痛最大開口域,開閉口時痛のVASを測定し,Wilcoxsonの符号付き順位検定により効果の有無を判定した(p<0.05)。その結果,無痛最大開口域は28.8±4.8 mmから39.0±6.0 mmに増加した。開閉口時痛VASは48.3±24.1から31.6±23.2に減少し,無痛最大開口域および開閉口時痛は,統計学的に有意差を認める結果となった。したがって,顎関節可動化療法は,非復位性関節円板転位に伴う諸症状を即時的に軽減する有効な保存的治療法の一つであることが示唆された。

症例報告
  • 柏木 美樹, 安部 貴大, 藤原 夕子, 小笠原 徹, 西條 英人, 星 和人
    2018 年 30 巻 2 号 p. 202-207
    発行日: 2018/08/20
    公開日: 2018/10/15
    ジャーナル フリー

    成人Still病は,39℃以上の発熱や関節炎などの強い炎症を引き起こす全身性の自己炎症性疾患である。患者は38歳の日本人女性で,この既往があり,開口制限を主訴に当科を受診した。初診時,両側顎関節部の開口時痛に伴う開口障害を認め,自力最大開口量は23 mmであり,前・側方の下顎滑走運動は不良であった。パノラマエックス線およびMRI所見にて,両側性に下顎頭吸収と非復位性顎関節円板前方転位を認め,前歯部から側方歯にかけて一部開咬を呈していた。患者は,成人Still病を18歳時に発症し,主に両側肩関節圧痛や手指関節拘縮などの関節症状を繰り返していたが,受診時点では全身的な活動性は低下しており,寛解状態にあったと考える。以上より,成人Still病を病態基盤とする非復位性顎関節円板障害および変形性顎関節症と診断した。疼痛には,原疾患に対して服用中であったトラマドール/アセトアミノフェンを用いながら,母親の支援下で開口訓練を実施することで,当初の開口制限は自力最大開口量42 mmまで改善した。初診より5か月後にはクリックが出現し,顎関節円板の開口時復位が示唆されたため,前方転位した円板の整位を目的とした運動療法に切り換え,疼痛も軽減し開口域も維持できた。観察期間中,全身状態が悪化したため訓練が中断となり,3年後の再診時には開口制限が再燃していた。成人Still病を背景とする顎関節症の治療を経験するとともに,開口訓練の有用性が示唆された。

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