熱水溶液中でタングステソがどのような化学種として輸送されるのかを調べるために,熱水中のフッ素と塩素の濃度を見積もり,熱力学的計算によってフッ素や塩素を含むタングステン種とタングステソ酸塩との安定関係を求めた。
日本の主要なタングステソ鉱床(鐘打・大谷・高取・藤ケ谷・嘉和田・玖珂)の鉱化溶液中の, HF/K
2OとHC1/H
2Oのフュガシティーの比はそれぞれ10
-3.15~10
-5.91,10
-3.33以下であり,タングステンの鉱化作用は600°Cから400°C, 1 kbから2 kbの温度・圧力で始まった。考えられうる最も還元的な条件は,C-CO-CO
2バッファーで決まる酸素フュガシティーである。これらの温度・圧力・f(O
2)・f(HF)/f(H
2O)・f(HC1)/f(H
2O)の条件下で種々の化学種について安定関係を計算した結果,H
2WO
4が最も安定であると求まった。
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