角閃石,黒雲母,白雲母,石英安山岩中の火山ガラスを真空中で段階的に加熱し,各温度で得られた水について,その量と水素同位体比を測定した。角閃石や雲母の水の多くは700°C以上で脱水するが(それぞれFeの量によって違いがある),火山ガラス中の水は80%以上が600°C以下で脱水する。 D/Hの分配係数αは, Feの少ない角閃石 (XFe=0.50) では0.8182 (高温部のみをとる), Feの多い角閃石 (XFe=0.85) では0.8398, Feの少ない黒雲母 (X
Fe=0.44) では0.8680, Feの多い黒雲母 (X
Fe=0.86) では0.8910, 白雲母では0.9565となっている。つまり,いずれも脱水すると次第重い水が残ることになるが,その程度はFeの少ない角閃石がもっとも顕著である。火山ガラスは低温部でも高温部でもαが1に近い(変化が少ない)。しかし,高温では逆に1より大きい場合もある。つまり軽い水が残ることもある。
このよう実験はすぐ火山岩の鉱物やガラスの含水量やD/Hを比較検討するときに使用できないかも知れないが,ある程度の示唆を与えるものと思われる。
抄録全体を表示