サンガン鉄スカルン鉱床地域は,中性代の頁岩,シルト岩,砂岩,炭酸塩岩,および始新世の火山岩類,火山砕屑岩類が,後期始新世の花崗岩類:および関連する酸性岩脈により貫入されている。花崗岩類に伴う熱水活動の結果,炭酸塩岩中に石灰質および苦灰質の2種類のスカルンが形成された。鉄アクチノ閃石∼高カリウム鉄ヘースティングス閃石の組成を有する含塩素角閃石は石灰質スカルンに限られ,サーラ輝石,ザクロ石,磁鉄鉱,方解石,そして稀には柱石とともに産する。角閃石中の塩素含有量はFe
2+/(Fe
2++Mg)およびK/(K+Na)と正の相関を,また, Si/(Si+Al
IV)とは負の相関を示す。一方,含フッ素金雲母は苦灰質スカルンの主要な鉱物であり,そのフッ素含有量はSiO
2,およびMgO wt%と正の相関を示す。金雲母と平衡にある流体のlog(
fH2O/
fHF)は400°Cで4.6∼5.5と見積もられる。また,塩素に富む柱石は石灰質スカルン,苦灰質スカルンの両方に広く分布する。柱石中の塩素含有量は正のNa/(Na+Ca+K)の相関を示す。
柱石は23∼40 mol%のメイオナイト成分を有し,X
C1値はほとんどの試料であり,0.75を越え,世界中でこれまで報告されたどのX
C1値よりも高い0.98を示すものである。このX
C1値から,柱石と平衡な流体は,55 wt%もしくはそれ以上のNaCl相当塩濃度を有すると算出される。
花崗岩類やスカルン中に産する塩素に富むヘースティング閃石,塩素に富む柱石およびフツ素に富む金雲母,さらに高塩濃度の流体包有物は,花崗岩質マグマからもたらされ,鉱化に関連した金属は塩素錯体で運ばれたと考えられる。流体中に取り込まれた大量のアルミニウム,珪素,カルシウム等は,母岩や初期のスカルン鉱物の分解によりもたらされたであろう。
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