岩鉱
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94 巻, 5 号
May
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論説
  • 島津 光夫, 川野 良信
    1999 年 94 巻 5 号 p. 145-161
    発行日: 1999年
    公開日: 2006/08/07
    ジャーナル フリー
    シホテアリン北部には後期始新世・前期漸新世のアルカリ玄武岩・ソレアイト玄武岩,前期中新世のカルクアルカリ安山岩・ショショナイトが分布し,後期始新世・前期漸新世の玄武岩はカルクアルカリ安山岩・デイサイトを伴う。後期始新世玄武岩はプレート内玄武岩(WPB)の特徴を示すが,前期漸新世の玄武岩・前期中新世のショショナイトは島弧性玄武岩(IAB)の特徴を示す。後期始新世の玄武岩は他の時代の岩石に比して,高いSr同位体比・低いNd同位体比を示す。また,Sr同位体比は30Ma頃に0.704以下へと変化する。同位体比と岩石化学的特徴から前期漸新世玄武岩と前期中新世ショショナイトは比較的枯渇したマントルからもたらされ,後期始新世の玄武岩はよりエンリッチしたマントルから導かれたものと考えられる。
       後期始新世のアルカリ玄武岩の活動は日本海拡大前のアジア大陸縁辺部における未成熟リフト帯で生じ,前期漸新世玄武岩と前期中新世ショショナイトの活動は日本海拡大が完了する前にそれぞれ北アメリカプレートと太平洋プレートの沈み込みに関連して発生したものと考えられる。
  • 内田 悦生, 前田 則行, 中川 武
    1999 年 94 巻 5 号 p. 162-175
    発行日: 1999年
    公開日: 2006/08/07
    ジャーナル フリー
    アンコール遺跡に使用されている主要石材の一つであるラテライトの研究を行った。調査はアンコール遺跡の主要25遺跡において行った。
       アンコール遺跡に使用されているラテライトはその組織によりピソライト質ラテライトと多孔質ラテライトとに分けられる。その主要構成鉱物はどちらも同じであり,針鉄鉱,赤鉄鉱,カオリナイトおよび石英である。
       調査した25遺跡は,使用されているラテライトの孔隙サイズと帯磁率に基づき5つのグループに分けられる。ただし,プノム・クロムとバンテアイ・スレイは例外である。この分類は微量元素であるAs, Sb, SrおよびVの含有量からも裏付けされる。このことはラテライトの石切り場が時代とともに変化したことを示している。
       ラテライト材の層理面方向を調査した結果,層理面が縦になっている石材の割合はアンコール・ワットより前の建造物では高いが,アンコール・ワット以降の建造物ではその値が低くなっている。このことは,アンコール・ワット以降では層理面方向を意識して建造が行われたことを示している。
       プラサート・スープラとクレアンに隣接する池は,その護岸に使用されているラテライトの孔隙サイズ,帯磁率,層理面方向および微量元素の含有量からクレアンと同じ時代に建造されたと推定される。
  • 伊藤 俊彦, 松原 聰, 宮脇 律郎
    1999 年 94 巻 5 号 p. 176-182
    発行日: 1999年
    公開日: 2006/08/07
    ジャーナル フリー
    北海道,シオワッカの石灰華ドームにおいて,冬に生じたイカアイトは春先の気温の上昇によって複数の炭酸塩鉱物の集合に変わる。それからファテライトがカルサイト,モノヒドロカルサイトと共に産することを初めて認めた。野外の産状からはファテライトの生成がイカアイトの分解に密接に関係していることが考えられた。
       偏光顕微鏡とSEMによる観察結果からは,イカアイトの急激な分解がファテライトの核形成の引き金となったと考えられる。結晶成長はイカアイトの溶解に伴ってその後も続くが,ファテライト球晶集合に見られる平面的な配列は初期の生成がイカアイト結晶に沿う形で進行したことを示す。SEM像で確かめられたファテライトとカルサイトとの共生は,イカアイトの分解の際の不均一な核成長での生成を示唆する。他方,モノヒドロカルサイトの生成とイカアイトの分解の間には直接の成因関係は認められない。水質,産状,顕微鏡下の性質等を合わせ考えると,イカアイトの分解に伴う炭酸カルシウムに過飽和な条件下で起きた急激な晶出が,シオワッカにおけるファテライトの生成をもたらしたと言える。
       Ashoro-cho足寄町,Rawan螺湾,Shiowakkaシオワッカ
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