礦床に伴ふ後成礦物の研究の一つとしてモリブデン華に微量定性分析を試みた結果,常に第二鐵,モリブデン.水分の三者を檢し,この礦物が既に知られてゐろ如く含水モリブデン酸第二鐵であることと抵觸しないことを知つた。次に二三の純粹な試料に就て定量分析を試みた結果ではMoO
3/Fe
2O
3,及び水分の量が相互に完全に一致せず,産地に依つて相違することを認めたが,從來の外國に於て發表された分析値を併せて再吟味してもこの分析値上の變動が認められる。しかもこれ等の全分析値を通じてMoO
3/Fe
2O
3とH
2O(+)(又は大體100°-110°C以上の加熱減量)との間にほゞ直線的の關係があることを認めたので斯の如き分析上値の變動は不純物その他に基因する場合の如き不規則なものでないことを知り,從つてその化學式としてG. Carobbiの與へた如き一義的な式は不適當であつてFe
2O
3・3~4 MoO
3・aqとするのが適當であることを認めた。
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