以上要約すれば次の如くになる。
1) 和賀地帯横黒線附近の花崗岩類は緑色凝灰岩層を貫く。
2) 緑色凝灰岩層に対する花崗岩類の接触変質は一般に極めて軽微で,時に認められない位のことがあるが,花崗岩類附近の緑色凝灰岩層は一般には広範囲に亘り珪化作用を受けて淡緑色に変り頗る堅硬となつて居る。
3) 花崗岩類め産出状態は岩脈状,網状又は塊状で,其の岩質は花崗閃緑岩,石英閃緑岩,微花崗閃緑岩等である。塊状のものには周縁相が花崗斑岩に移過する個所が見られる。
4) 岩脈状及び網状の花嵩岩類は一般にその周縁部及び捕獲岩の周囲に砕屑組織を持ち,周壁及び捕獲岩には之が認められない。故にこの事は之の組織が原生のものである事を示す。
5) 脊梁中心部の和賀仙入附近に於ける花崗岩類の大きな塊状岩体は同一岩相を示し其岩体中には不連続関係を有する様な2種類以上の花崗岩は見られない。
6) 脊梁中心部の花崗岩体及び岩脈状,網状の花崗岩類中には明に緑色凝灰岩層に由来する捕獲岩を含んでいて肉眼的に殆ど未変質のものも存在する。
7) 大荒沢附近に於ては花崗岩類を不整合に蔽う緑色凝灰岩層と,花崗岩類によつて貫かれる緑色凝灰岩層とが存在するが,此の花崗岩間には本質的な差は認められない。之の附近の緑色凝灰岩層には花崗岩礫を有する凝灰質礫岩層を挾み,之の礫岩層は岩質的にも又層位的にも花崗岩を蔽う不整合面の凝灰質礫層岩と一致する。
8) 石英脈は花崗岩及び不整合上部の緑色岩層を共に貫き,又之の両者に著しい鉱化作用が見られる。
9) 化学分析及び分光分析の結果は各産地の試料とも極めて類似性を有する。
仙人鉱山坑内のものは他のものに比べて基往であるが,之は所謂古生層に属する石灰岩によつて脱珪作用を受けたものと推定される。
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