本鉱物は,静岡県磐田郡出馬の中央構造線の南方1km,三波川帯の蛇紋岩の変質による石英マグネサイト岩より発見された。本鉱物には,微細な石英粒子間に介在するもの(Variety A)と,岩体の周辺部の割れ目を満たすもの(Variety B)とがある。 EPMA分析によると, Variety AのNiOは, 3.28~27.9wt.%で,同一薄片内で著るしく変化し, Al
2O
3と相補的関係にある。また, Cr
2O
3は, 4.18~7.40wt.%で,大きい変化を示さない。Variety Bは,ほぼ均質な化学組成をもち,そのNiOは, 0.05~0.21wt.%である。
両Varietyとも特異なX線的性質を示すが,化学組成を考慮すると, Variety Aは,層間イオンとしてKをもつスメクタイト,また, Variety Bは,層間イオンとしてKおよびAlをもつスメクタイトもしくは不規則混合層鉱物と考えられる。
Variety Aにみられる化学組成の大きなばらつきは,平衡のdomainが非常にせまいことを意味する。
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