本稿では,途上国におけるインフラ投資評価の手法について,JICA及び世界銀行における費用便益分析の実施状況の分析を通じて,その現状と課題について明らかにした.費用便益分析は貨幣価値によって投資の効率性を明示しプロジェクトの選定に合理性を与える. しかしながら, 途上国内の絶対的貧困を撲滅するためのインフラプロジェクトを選定する場合, 費用便益分析に必要なデータの収集の限界に加え, 貨幣価値に変換することが難しい効果を考慮する必要性が高いために, 実務では多基準分析によってプロジェクトの選定が行われている. こうしたインフラプロジェクトにおける多基準分析の適用については,包括的な指針がなく, 適切な評価基準の選定や信頼性の高いウェイトの決定手法等に関して課題がある.
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