本研究は,国家試験に合格したEPA介護福祉士のライフストーリーに見られるナラティブ・アイデンティティを通して「自己構成」としてのキャリアを理解するものである。自己構成としてのキャリアについては「キャリア構築理論」を援用した。研究協力者のライフストーリーからは【親の期待どおりのわたし】,【新しい関係性の中で生きるわたし】,【日本で働くわたし】,【同期の支えの中でがんばるわたし】,【やすらぎ苑で働くわたし】,【自分が決めた介護士としてのわたし】,【越境を経験したメンターのわたし】,【インドネシアと日本どちらでも自由に暮らせるわたし】が読み取れた。一方で,研究協力者はEPA候補者・介護福祉士をめぐるモデル・ストーリーとは距離をとり,独自のストーリーを筆者との間で構築していた。「外国人材」と呼ばれる人々が増える中,受入れ社会は,そうした人々一人ひとりを「その人」として見つめていくことが求められる。
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