言語文化教育研究
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論文
  • 『実践研究の手引き』作成の意義と課題
    三代 純平, 佐藤 正則
    原稿種別: 論文
    2021 年 19 巻 p. 32-51
    発行日: 2021/12/24
    公開日: 2022/02/14
    ジャーナル フリー

    本稿は,2001年に財団法人日本語教育振興協会が刊行した『実践研究の手引き』の意義と課題を再評価したものである。本研究では,『実践研究の手引き』が提起する「実践研究」の日本語教育における意味を,プロジェクトメンバー5名および,座長を務めた丸山敬介氏,プロジェクト立ち上げを支えた日本語教育振興協会の佐藤次郎理事長に対するインタビューから考察する。考察により,まず『実践研究の手引き』作成の問題意識として日本語学校の教師が直面する日々の実践と日本語教育研究の成果に乖離があると感じられていたことを指摘する。さらに,日本語学校の教師が,自分たちの手で自分たちの実践の課題を解決する研究に従事することで,日本語学校における日本語教育の社会的価値を証明することが必要だと考えていたことを述べる。最後に,この『実践研究の手引き』作成のプロセス自体を日本語学校による実践研究として捉え直すことで,日本語教育に資する実践研究のあり方とは何かを改めて検討する。

  • 中国出身のコーダとの対話的自己エスノグラフィー
    中井 好男
    原稿種別: 論文
    2021 年 19 巻 p. 52-73
    発行日: 2021/12/24
    公開日: 2022/02/14
    ジャーナル フリー

    本研究は,ろうの両親を持つ聴者(コーダ:Children of Deaf Adults)である筆者が,中国出身のコーダとの対話を通して,自身の経験の内省と異なる社会での経験の比較を行うことによって,日本手話の継承に関する問題について考察する当事者研究である。分析方法として,当事者同士の対話的自己エスノグラフィを用い,継承語という視点から日本手話を捉え,その課題の外在化を目指した。分析の結果,筆者らは両親から継承するろう文化と音声言語を基軸とする生活圏の文化との間に第三の文化を有しているが,周囲からの蔑視や社会から押し付けられる障害者家族の一員という社会的アイデンティティによって障害者家族の文化として形成されているため,それを拒絶してきたことがわかった。また,この第三の文化を受容可能なものにするためには,コーダとしての能動的な社会的アイデンティティの構築に加え,第三の文化の基盤をなす日本手話の継承も必要となることが指摘できた。

  • 小学校英語教育に関する語りの批判的ナラティブ分析
    大石 海
    原稿種別: 論文
    2021 年 19 巻 p. 74-94
    発行日: 2021/12/24
    公開日: 2022/02/14
    ジャーナル フリー

    本研究は,「制度としての母語話者志向」が表出している小学校英語教育において,音声指導のポリティクスという現実を教師がどのように生き,そのポリティクスにどう対応したりそれをずらしたりしているのかを明らかにするため,2名の小学校教師にインタビューを行い,音声指導に関する語りを質的に分析・検討するものである。分析方法としてダレン・ラングドリッジ(Darren Langdridge)の批判的ナラティブ分析(Critical Narrative Analysis: CNA)を採用した。分析の結果,自身の英語力に不安を抱えながらも英語の授業を肯定的に受け止めている2名の教師は,「制度としての母語話者志向」に追従的な立場とそれに懐疑的な立場に立っていることが分かった。児童に英語を聞かせる場面では差異(「ネイティブの英語を聞かせるべき」「ネイティブ以外の音声も聞かせるべき」)が見られた一方で,児童に英語を話させることについては共通した実践(「児童の話す英語には流暢さを求めない」)が見出された。

  • PAC(個人別態度構造)分析による当事者評価
    野々口 ちとせ
    原稿種別: 論文
    2021 年 19 巻 p. 95-111
    発行日: 2021/12/24
    公開日: 2022/02/14
    ジャーナル フリー

    近年,大学の国際化により,人文・社会科学系においても英語による学位取得プログラム(English Medium Program:EMP)が増加している。日本の人文・社会科学系EMPで学ぶ学生の多くは英語と日本語(と他言語)の複言語話者である。本研究では,PAC(個人別態度構造)分析を用いて,社会科学系大学院EMPの留学生と人文科学系大学院EMPの帰国学生各1名を対象に,言語生活に対する当事者評価を調査した。結果,両者とも英語での研究生活には満足しているが,日本人学生との交流やアルバイト,就活などでの言語生活に,程度の差こそあれ,不満や抑圧的な態度構造を持っていることが示された。日本社会に閉鎖性・階層性・学歴重視などの風土を感じ取り,2名とも高い複言語能力を持ちながら自分の能力を十全に発揮しているとは言えない現状が描き出された。また,両者とも家族が比較的高い重要度を占めており,母語機能の重要性が確認された。

  • ある科目の受講経験と教育実践のつながりから
    村田 竜樹, 水野 瑛子, 梶原 彩子, 衣川 隆生, 内山 喜代成
    原稿種別: 論文
    2021 年 19 巻 p. 112-130
    発行日: 2021/12/24
    公開日: 2022/02/14
    ジャーナル フリー

    養成,初任を経て中堅に至った日本語教師の成長の過程や,学び直しの場としての中堅研修についてはこれまで十分な議論がなされていない。そこで本稿では,複線径路等至性アプローチを用いて,国内外で日本語教師経験を積み大学院に進学した中堅日本語教師に焦点を当て,主に中堅教師が大学院で学び直す意味について分析,考察した。その結果,中堅教師は,大学院で他者のことばを通して自身の教育観を相対化・客観視する対話活動を経験したことから,教育観を変容させ,自身の実践にその経験を反映させるようになった。そして中堅教師が大学院で学び直す意味とは,養成から初任の段階での問題意識や自らの実践を多様な背景を持つ他者との対話を通して内省し,自身の教育観をメタ的に捉え,更新し続けるということであった。そのため,大学院における中堅教師の学び直しには,成功・失敗体験を含めた経験をふりかえり,経験に基づいて形成された自身の教育観や実践を認識する場や時間のデザインが重要であることが示唆された。

  • センシティブなテーマを扱ったコミュニケーション教育の実践研究
    山本 冴里
    原稿種別: 論文
    2021 年 19 巻 p. 131-153
    発行日: 2021/12/24
    公開日: 2022/02/14
    ジャーナル フリー

    本稿は,留学生と一般学生がともに参加し,英語で実施されるクラスを対象とした実践研究である。そこでは,「ゼノフォビア」「安楽死」「表現の自由」「複言語のコミュニケーション」「性」「難民」「LGBTQ」「ミソジニー」など,センシティブな(センシティブになり得る)トピックについての議論が行われていた。本稿はまた,このクラスの中でも特定の年に実施された特定の実践(以下「あの実践」と呼称)に注目したうえで,実践研究の目的を,「自分自身と読者が『次の実践研究』を考えるにあたっての『リソース』となり得るだけの『ストーリー』を,『あの実践』から掴みだし描ききること」に設定した。そして,それを通して,センシティブなトピックについて,トピックそのものではなく第二言語・外語教育を専門とする教師が扱う際に教師が果たすべき役割について,4点にまとめた。

  • 学校に対するまなざしの変容に関する語りを中心に
    岡田 茉弓
    原稿種別: 論文
    2021 年 19 巻 p. 154-174
    発行日: 2021/12/24
    公開日: 2022/02/14
    ジャーナル フリー

    日本語学校の経営者たちは日本語学校の運営で重要な役割を担っており,彼らの他者や事象をどのように見ているのかというまなざしが教育現場に影響を与えていることは予想されるにもかかわらず,実際に彼らが日本語学校や日本語教育をどのようにまなざしているのかについては,日本語教育研究においては現在まで言及されてこなかった。そこで本研究においては,ライフストーリーから,経営者が日本語学校をどのようにまなざしているのか,その影響はどのようなものなのかを理解しようと試みた。そして,本研究においてはある日本語学校の経営者であるBさんの語りから,Bさんの学校に対するまなざしの形成や周囲の教員との対話による変容,それに伴う事業承継の決定,また,Bさんの保持している役割に関する自認について記述した。最終的に,それらの記述をもとにBさん自身のまなざしが,一連の経営行動にどのように影響を与えたのかを解釈した。

  • 社会文化理論から見た自発的発話の分析
    加藤 伸彦
    原稿種別: 論文
    2021 年 19 巻 p. 175-196
    発行日: 2021/12/24
    公開日: 2022/02/14
    ジャーナル フリー

    本稿では社会文化理論の視座の下,学習者の自発的発話を主体性に基づくものと捉え,教室談話の分析により,その発話が生起する要因を論じた。具体的には,主体性を媒介手段を用いて他者と協働的・共構築的に行動する能力と見なした上で,自発的発話を1. 参加的な自発的発話,2. 詮索的な自発的発話,3. 自律的な自発的発話,4. 専心的な自発的発話の4種に分類し,それぞれの発話が産出される過程を微視的に分析した。その結果,学習者はその過程において,自身の発話,教師の発話,自身の発話ターン,教師が取る「待ち時間」,教師によるリヴォイシング,ジェスチャー等の非言語情報,他の学習者のフィラーや発話時の誤用等の文脈上の手がかりを利用して,主体性に基づく自発的発話を行っていることが明らかとなった。

  • フル・オンデマンド講座,その10年後の意味
    福村 真紀子
    原稿種別: 論文
    2021 年 19 巻 p. 197-219
    発行日: 2021/12/24
    公開日: 2022/02/14
    ジャーナル フリー

    本稿は,2010年に開講されたフル・オンデマンド講座「書くこと・考えること」について,メンターとして参加した筆者がその実践のありようを観察・分析したものである。本講座では,受講生自身がテーマを選びレポートを段階的に完成させる。担当教師は直接的な指導をせず,受講生は他の受講生やメンターとオンライン上で意見交換をした。本稿の調査協力者である受講生2名の成果物とインタビュー記録からは,メンターのスキャフォールディングとフル・オンデマンドによる思考と表現の循環をもとにして,学習者が自律的に思考と表現を更新していたことが観察された。このことから,ことばの学びを深化させるには,「正しさ」を目標にせず,他者との対話を通して思考と表現の循環を活性化していくことが,10年の時を経ても,またオンラインでも対面でも,ことばの学びの意味を考える上で重要であることが指摘できる。

  • 「座の文学」の系譜をめぐって
    白石 佳和
    原稿種別: 論文
    2021 年 19 巻 p. 220-238
    発行日: 2021/12/24
    公開日: 2022/02/14
    ジャーナル フリー

    現在,俳句や連句を用いた言語教育実践が国内外でおこなわれているが,その実践を支える文学理論の検討が十分になされていない。本論文では,和歌に始まる座の文学の歴史を整理しつつ,座の文学とは西洋の「文学」概念と異なり文学「する」こと,文学活動そのものであるという理論・日本独自の文学のあり様を検討する。まず,座の文学の性格を,対話性,当座性,帰属性,民衆性の4点にまとめた。それを踏まえて座の文学の教育的側面に注目し,俳句・連句教育における最も重要な活動が対話の場である句会であることを示す。その上で,文学活動と教育活動を合わせ,越境して拡がる座の文学を「活動型文学」と呼ぶことを提案する。活動型文学は人と対話しことばでつながる文学活動である。特に,座の文学の典型である「連句」は,ダイナミック・アセスメントや協働学習,多文化共生を志向した活動として期待できる。本論文により,文学作品を対象とした言語文化教育ではなく,文学活動それ自体を言語文化教育とする「活動型文学」という新たな視点を提案する。

  • 即興L2パフォーマンスの会話分析
    三野宮 春子
    原稿種別: 論文
    2021 年 19 巻 p. 239-254
    発行日: 2021/12/24
    公開日: 2022/02/14
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,form - meaning - useの力動的関係をめぐる議論に「文脈に埋め込まれた身体」という視点を加えることにより,L2教育研究における「文脈における言語の意味」の射程を拡張することである。そのために,身体移動がタスク設定の鍵となる即興的L2スピーキング活動の会話分析(特にマルチモーダル分析)を行い,相互行為における言語表現と身体表現の調和や齟齬に焦点を当てた考察を行う。実際の相互行為におけるL2スピーキングは,抽象的な言語記号の操作に留まらない,身体感覚やイメージを含む全体的な活動である。分析の結果,身体や文脈と調和しない言葉の非真正性は学習者たち自身にも即座に察知されることが分かった。対照的に,身体化された言葉とそれが埋め込まれた架空の文脈が同時に立ち現れるとき,パフォーマンスは演者と観客の双方に高揚感を与え,練習というより遊びの感覚が共有された。このような結果に基づき,本研究は,身体感覚と想像力という全ての学習者が豊富に持つ資源のより積極的な活用を提案する。

フォーラム
  • Zineを使う英語の授業を例として
    鈴木 栄
    原稿種別: フォーラム
    2021 年 19 巻 p. 255-263
    発行日: 2021/12/24
    公開日: 2022/02/14
    ジャーナル フリー

    学習者のモチベーションを上げるために外国語学習に動画や音楽などを導入する試みは多いが学習者自身が作成した絵やコラージュを外国語の授業において学びを促進するために使う例は少ない。作成した絵画表現を媒介として外国語を書く,あるいは発話することを促すために短いストーリーを絵の中に表現する方法として,Zineを使う試みについて,いくつかの例をあげ,外国語学習に活用する可能性について議論する。

  • 往復書簡と実践の跡づけによる長期重層的協働省察記述の試み
    佐野 香織, 兵藤 智佳, 小泉 香織
    原稿種別: フォーラム
    2021 年 19 巻 p. 264-280
    発行日: 2021/12/24
    公開日: 2022/02/14
    ジャーナル フリー

    私たちは,言語文化教育研究学会第5回年次大会のフォーラムにおいて,早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンターが提唱する「体験の言語化」実践の問い直しを行った。本稿は,このフォーラム開催後,フォーラム発表者である私たちがどのように「体験の言語化」を考え,その後の実践の展開をしていったのか,電子メールを用いた往復書簡のやりとりにおけるあらたな「問い直し」と,このやりとり後,約2年間のそれぞれの跡づけを記述するものである。私たち教員の「個人」の学びを社会に拓く試みとして,(1)メールのやりとり(往復書簡),(2)このメールのやりとりを基にした,フォーラム発表後の「体験の言語化」にかかわるそれぞれの展開についての記述,の2つの方法で重層的に省察を行った。

  • 大学の公開講座での実践から
    瀬尾 匡輝
    原稿種別: フォーラム
    2021 年 19 巻 p. 281-284
    発行日: 2021/12/24
    公開日: 2022/02/14
    ジャーナル フリー

    本稿では,茨城県内で在留外国人への支援や交流活動をする団体の代表者および参加者に対して行ったインタビューを90分の動画にまとめ,その動画を公開講座として配信した実践を報告する。本実践を読者と共有するにあたり,108分の動画を作成した。本稿で読者に見ていただく動画では,まず公開講座でインタビューを動画にして配信するに至った経緯や動画作成のプロセスについて述べる。その後,読者には公開講座で使用した実際の動画の一部を視聴してもらう。そして,公開講座の参加者へのアンケート,公開講座を所管する社会連携課の担当者,公開講座の動画に登場した人々へのインタビューをもとに本実践をふりかえり,情報収集のために行ったインタビューを動画にまとめて公開講座で配信することの可能性と難しさ,そしてその難しさをどう克服するかを議論する。

  • 三代純平,米徳信一(編)『産学連携でつくる多文化共生―カシオとムサビがデザインする日本語教育』
    本間 祥子
    原稿種別: フォーラム
    2021 年 19 巻 p. 285-290
    発行日: 2021/12/24
    公開日: 2022/02/14
    ジャーナル フリー

    本稿は,三代純平,米徳信一(編)『産学連携でつくる多文化共生―カシオとムサビがデザインする日本語教育』(2021年,くろしお出版)の書評である。本書は,カシオ計算機株式会社(カシオ)と武蔵野美術大学(ムサビ)による3年間の産学共同プロジェクトの歩みをまとめたものである。本稿では,日本語教育を専門とし,これまで国内外の教育現場で実践研究をおこなってきた評者の立場から本書の概要を紹介し,その成果と課題について述べる。本書で描かれる一連のプロジェクトをとおして,産学連携の新しいかたち,そして,日本語教育実践の新たな可能性が提示されている。

編集委員会より
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