主膵管狭窄像を示した膵癌8例,慢性膵炎6例を対象に,(I)膵癌像所見からみた膵癌と慢性膵炎の鑑別点,(豆)病理学的所見からみた膵癌と慢性膵炎について検討し,両者の鑑別点と今後の問題点に関して見解をまとめたので報告した.(1)膵癌と慢性膵炎の鑑別に際し,最も重要なことは膵管像における狭窄性病変がmonocentricなものか,multicentriCなものか,判別することにあり,膵癌例では全例monoentricな病変であると診断できた.慢性膵炎でも6例中3例にmonoentcicな狭窄像を認めたが,慢性膵炎では膵癌とは異なる膵管像の特徴を認めた.(II)膵癌にともなう尾側のいわゆる随伴性膵炎は,主膵管に強い腫瘍性変化を認めたものほど高度であり,病理学的には慢性膵炎による病理学的変化とは区別しがたい.しかし,慢性膵炎の病理学的変化としては,狭窄部尾側に非連続性の,多発性膵炎病変を認め,膵管像全体にmulticentricな病変をつくる傾向を認めた.また,proteinplugや膵石,のう胞,膿瘍など,膵管狭窄による副次的産物は慢性膵炎に比較的多い. 膵管像にmonocentriCな狭窄像をもった.慢性膵炎と膵管の臨床経過は比較的よく似ており,臨床的にも,膵管像の上からも両者の鑑別は容易ではないが,(I),(II)で検討した両者のちがいを考慮にいれ,今後は膵実質造影法を併用した新しい鑑別法を積極的にとりいれ,診断能の向上を期することができるものと考えた.
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