日本消化器内視鏡学会雑誌
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22 巻, 8 号
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  • 大和田 恒夫, 秋山 隆司, 杉山 雅, 関口 利和
    1980 年 22 巻 8 号 p. 1035-1053
    発行日: 1980/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     幽門が括約機能を有しているか否かは,いまだに議論されている.そこで今回は,正常17例,胃潰瘍12例,十二指腸潰瘍11例,PSS21例について内視鏡直視下に幽門輪を観察しながら幽門圧と胃十二指腸運動の測定を試み,以下の結論を得た.(1)正常群において,セクレチン負荷により,内視鏡的には胃の運動は抑制されるにもかかわらず幽門輪が収縮してくるのが観察され,この時期に一致して幽門圧が上昇した.すなわち,幽門輪がセクレチンに反応して周囲と独立した緊張性収縮をおこすことを,内視鏡的と同時に内圧の面とから明らかにした.(2)正常群と十二指腸潰瘍群ではセクレチンに反応して明らかな幽門圧の上昇がみられたが,胃潰瘍群とPSS群では有意の上昇はみられなかった.このことは胃潰瘍群およびPSS群における幽門機能の障害を示唆するものである.(3)正常群とPSS群の胃十二指腸運動には,今回は明らかな差は見いだせなかった.
  • 前谷 昇, 岡崎 幸紀, 富士 匡, 飯田 洋三, 清水 道彦, 有山 重美, 東 光生, 播磨 一雄, 永富 裕二, 川嶋 正男, 相部 ...
    1980 年 22 巻 8 号 p. 1055-1059_1
    発行日: 1980/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     細径panendoscope(GIF-P2)を用いて,十二指腸球部内反転観察とメチレンブルー着色法を併用して,胃十二指腸粘膜境界の検討を46例に行った.粘膜境界を識別できた36例(78.3%)のうち,粘膜境界が十二指腸側にあるものは83.8%,ほぼ幽門輪上にあるものが16。7%であった.幽門輪上にある例では,胃の萎縮境界はopen typeが多く,5例中2例に隆起型腸上皮化生を認めた.一部の症例では,胃粘膜と十二指腸粘膜との移行部に染色不良部位位があり,中間帯,炎症,腸上皮化生が想定されたが,その本質を明らかにするには至らなかった.なお,胃,十二指腸粘膜境界部の十二指腸側に島状に存在する胃底腺粘膜についても内視鏡的に検討した. しかし,球部内反転観察可能例は78.3%であり,生検困難例もあり,今後の機種の改良が強く望まれる.
  • ―臨床病期,肝組織像との比較研究―
    草地 省藏, 島田 宜浩, 戸部 和夫, 芳野 健
    1980 年 22 巻 8 号 p. 1060-1071
    発行日: 1980/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     Wilson病の各病期における肝表面像の変遷について検討する目的で,兄弟例を含む3症例を対象とし,腹腔鏡所見と臨床および肝組織像を比較した.臨床病期はDeiss et al.,組織像はAnderson & Popperの病期分類に従った. 臨床病期がI期・hepatic copper accumulation,肝組織像はprecirrhotic stageの8歳(弟),男性の腹腔鏡所見は,肝表面平滑で黄色調を帯び,脂肪肝の所見に一致した.肝生検所見においても脂肪変性が著明であった. 臨床病期がIIB~III 期・hepatic failure~cerebral copper accumulation,肝組織像はpartially arrested stageである13歳(兄),男性では,大結節性の壊死後性肝硬変の所見であった. 臨床病期がIIA~IIB期・hemolytic anemia~hepatic failure,肝組織像はactive stageの18歳,女性では,暗青色の結節が散在する特異な肝表面像であった. 以上の3症例では,病期の進展に従い,肝組織像を反映した腹腔鏡所見を示した.
  • ―食道ルゴール法の基礎的検討を加えて―
    宮崎 誠司, 河原 清博, 渡辺 精四郎, 永富 裕二, 平田 牧三, 飯田 洋三, 岡崎 幸紀, 河村 奨, 竹本 忠良, 荻野 和彦
    1980 年 22 巻 8 号 p. 1072-1077_1
    発行日: 1980/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     われわれは,びらん型病巣をともなったポリープ状早期食道癌症例を経験し,さらに臨床的に有用とされている食道ルゴール法の基礎的検討をおこなったので報告する.患者は63歳の女性で,嚥下時の胸骨後部のつかえ感を主訴として来院した.上部消化管検査で胸部中部食道後壁にポリープ状腫瘤が指摘され,食道内視鏡検査では白色調,凹凸不整を示すポリープ状隆起を認めた.3%ルゴール液を撤布することによってあらわれた不染部(癌部),染色部(健常食道上皮)の生検切片を用い,組織化学的,電顕的,さらにアンスロン法により組織内グリコーゲン量を測定し,ルゴール染色性と組織内グリコーゲン量に関して若干の検討をおこなった.組織化学的に,PAS染色では非癌部である表層健常食道上皮の細胞質内に多量のPAS陽性物質が見られたのに反し,癌部の細胞質内では不明瞭であった.電顕的に癌部では細胞質内のグリコーゲン顆粒は確認できなかったが,非癌部では明らかにグリコーゲン顆粒が認められた.アンスロン法による癌部の組織内グリコーゲン量は組織1009中0.16g,非癌部のそれは1.71gであり,癌部が非癌部の約10分の1で明らかな低値を示した.
  • 小森 英司, 富田 周介, 藤堂 彰男, 北浦 保智, 内田 博也
    1980 年 22 巻 8 号 p. 1078-1083
    発行日: 1980/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     線維増生の乏しい,いわゆる柔かいビマン性胃癌の一例を報告した.上部消化管透視では胃前庭部の狭窄硬化を,また内視鏡検査では前庭部の不規則なビランと体部を中心として粗大浮腫状の粘膜上に粟粒大円形白色斑が無数に認められた.胃癌の診断の下に化学療法実施したが両側乳び胸水,四肢の不対称な浮腫を来し第72病日死亡した.剖検所見では胃は肉眼的には隆起あるいは潰瘍性病変を認めず,癌巣は主として未分化腺癌よりなり,粘膜下の浸潤は胃全体,食道下部,十二指腸球部に及んでいた.粘膜下の線維増生は乏しく一方粘膜下のリンパ管,血管内での腫瘍発育が著明で,前庭部ではそのための筋層肥厚を伴ない,また粘膜上の粟粒大結節部では組織上,粘膜固有層のリンパ腔内腫瘍発育の所見を認めた.
  • 多田 正弘, 岡崎 幸紀, 東 光生, 前谷 昇, 斉藤 満, 小田原 満, 藤田 潔, 針間 喬, 有山 重美, 宮崎 誠司, 原田 元, ...
    1980 年 22 巻 8 号 p. 1085-1090_1
    発行日: 1980/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     急性胃病変の詳細は内視鏡検査の診断能の向一ヒ,および緊急内視鏡検査の普及によって最近急速に明らかになったが,内視鏡的に診断された急性胃病変の誘因は必ずしも個々の症例において明確にむすびつけられるわけではない.また,特異な形態を示す急性胃病変も指摘されている. 今回,われわれはサバの刺身を食べた後,急性の腹部症状を呈した48歳男の患者において,体下部大轡前壁に巨大な山田II 型の粘膜下腫瘍様の隆起性病変を認め,手術を予定されていたが,その後10日の経過で消失したVanishing tumorの興味ある1症例を経験したので報告した.
  • 林 繁和, 市川 和男, 江間 幸雄, 小池 光正, 安座間 聡, 芳野 純治
    1980 年 22 巻 8 号 p. 1091-1096_1
    発行日: 1980/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     患者は77歳の女性で,右下腹部痛を主訴として来院,注腸造影でS状結腸に小指頭大の境界鮮明,表面平滑な腫瘤陰影を認めた.内視鏡検査では肛門輪より約10cmの部位に楕円形で表面平滑な淡黄色光沢ある腫瘤を認め,短い茎を有していた.腫瘤表面の生検は正常大腸粘膜の所見で粘膜下腫瘍が疑われたが,大きさ,形態から内視鏡的に摘除可能と判断し,高周波電気焼灼をした.摘除標本の大きさは1.3×0.8×0.7cmで弾力性に富み,表面平滑であった.組織学的には正常粘膜下に成熟した脂肪組織の増生がみられ,粘膜下脂肪腫と診断した.大腸脂肪腫は本邦では胃や小腸に比し稀であるとされてきたが,近年その報告例は増加し,自験例を含めて77例を数える.そのうち内視鏡観察例は19例で,内視鏡的に摘除されたのは6例にすぎない.本症は良性腫瘍であるので腫瘍摘出術のみでよく,確定診断上および治療上からも内視鏡的摘除が最も侵襲の少ない有用な手段である.
  • 布出 泰紀, 正宗 研, 渡部 重則, 松本 恒司, 大柴 三郎
    1980 年 22 巻 8 号 p. 1097-1100_1
    発行日: 1980/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     腸リンパ管拡張症を合併した陳旧性腸リンパ節結核の1例を報告する.患者は33歳女性,主訴は全身倦怠感と両下肢の浮腫.既往歴:12歳頸部リンパ節結核,29歳急性肝炎,入院時は理学的に心肺異常なく,肝脾を触知せず,両下肢に浮腫を認める.主な検査成績は赤血球354万/mm3,Hb9.89/dl,白血球2500/mm3,血清総蛋白量5.09/dl,alb.2.29/dl,131I-PVP5.4%,腹部単純X線写真で,腰椎に沿い多数の石灰化陰影,小腸X線検査でkerckring皺襞の肥厚と分泌過多像,小腸内視鏡検査で十_.指腸に多数の白斑を認める.小腸生検標本で絨毛は軽度棍棒状で,その中に著明に拡張した乳麋管を認め,その内容物が脂肪滴であることをsudan IIIで確認した.この所見は腸リンパ管拡張症の組織所見と一致する.なおリンパ管造影では異常を認めない,腸リンパ管拡張症を示した陳旧性腸リンパ節結核は,わが国では内山の報告(1970年)のみであり,極めて稀な疾患である.
  • 佐野 正俊, 何 汝朝, 木村 明, 笹川 力
    1980 年 22 巻 8 号 p. 1103-1109_1
    発行日: 1980/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     近年内視鏡は診断の時代から一歩進んで,消化管の病態生理を解明する手段として応用されてきている.私たちは,脂肪の消化吸収の内視鏡的研究を進める中で,細胞内転送過程に注目し,種々の病態について発表してきた.コルヒチンもその1つであり,吸収上皮細胞内の微細小管を障害してカイロミクロンの放出を阻害し,内視鏡的には十二指腸白点として観察される.私たちは,葡萄膜炎の治療のためにコルヒチンの使用を受け,持続性下痢を来たした症例を経験し,色素散布および脂肪負荷による拡大内視鏡検査と共に,十二指腸粘膜生検材料について実体顕微鏡ならびに電子顕微鏡にて絨毛形態と脂肪の細胞内転送過程について検討したので,動物実験の成績を加えて報告する.
  • 1980 年 22 巻 8 号 p. 1110-1156
    発行日: 1980/08/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
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