日本消化器内視鏡学会雑誌
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23 巻, 3 号
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  • ―シモフリ病変について―
    白川 和夫
    1981 年 23 巻 3 号 p. 371-385
    発行日: 1981/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    十二指腸のシモフリ病変について,内視鏡で診断された1,556例の十二指腸球部潰瘍症例と,その中でシモフリがみられた233症例を対象に検討した. シモフリは,球部潰瘍症例の15%にみられ,多くは潰瘍の周囲に広範囲に観察された. 1)内視鏡像は小白苔と発赤が基本で,その程度は症例によって異なっていた. 2)病理組織学的には組織欠損の程度に差こそあれ,びらん性の変化に伴う非特異性の炎症反応であった. 3)シモフリの臨床的意義として,シモフリは,潰瘍と深い関係がある病変で,潰瘍の経過の中でも比較的初期にみられる変化であろうと推察した.また,シモフリ非観察潰瘍群との間に治癒,再発に関する差は認められなかったが,シモフリを随伴した症例の経過が長くなる傾向がみられた.
  • 中島 俊雄, 坪井 正夫, 和田 潤一, 上野 恒太郎, 石川 誠
    1981 年 23 巻 3 号 p. 386-392_1
    発行日: 1981/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    antibiotic-associated colitisの治癒経過を色素散布法を用いて拡大内視鏡下に観察し,通常の観察では識別し難い粘膜の微細変化を検討した.著者らの診断したantibiotic-associated colitisはアフター様大腸炎3例と偽膜性大腸炎1例とからなる.アフター様大腸炎は,急性期にはたこいぼ様の隆起性変化を示すが次第に平低化し,治癒期には粘膜に散在性の小陥凹が認められる.拡大内視鏡像では,全経過を通じて腺窩の大小不同性は認められなかった.一方,偽膜性大腸炎の治癒期には,散在性の小隆起が認められ,隆起表面の腺窩の大小不同性と明らかな配列の乱れなどの再生性粘膜の所見が認められた.antibiotic-associated colitisの治癒後にみられたこのような粘膜の微細変化は,潰瘍性大腸炎等他の炎症性腸疾患の寛解期にもみられることがあり・更に検討する必要があると考えられた.
  • 斉藤 満, 飯田 洋三, 竹内 憲, 原田 元, 多田 正弘, 後藤 一紀, 榊 信広, 岡崎 幸紀, 竹本 忠良
    1981 年 23 巻 3 号 p. 395-399
    発行日: 1981/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    腺境界と胃潰瘍の関係については,すでに多くの報告がなされているが,今回われわれは正常および慢性胃炎症例455例と,胃潰瘍症例287例に内視鏡的コンゴーレッド法を施行し,萎縮パターンを観察するとともに,初発潰瘍131例について腺境界との位置関係を検討し,再発潰瘍156例との比較検討を行ったので報告する. 初発潰瘍では近接潰瘍74.8%,遠隔潰瘍20.6%,胃底腺内潰瘍4.6%,再発潰瘍では近接潰瘍55.8%,遠隔潰瘍39.1%,胃底腺内潰瘍5.1%であった.
  • -とくに噴門腺との関連において-
    後藤 一紀, 飯田 洋三, 佐高 真理雄, 天野 秀雄, 東 光生, 斉藤 満, 永富 裕二, 多田 正弘, 原田 元, 榊 信広, 小田原 ...
    1981 年 23 巻 3 号 p. 400-407
    発行日: 1981/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    内視鏡的コンゴーレッド法を用い,鈴木らの分類に準じた噴門部コンゴーレッドパターン閉鎖型IおよびII型の38症例を対象とし,食湖接合部近傍小彎線上の生検組織学的解析を行ない,噴門部胃炎の拡がりにともなう噴門腺の動態を検討した. 組織学的所見とコンゴーレッド法は良き相関を示し,酸分泌のみられないコンゴーレッド不変域は,主として萎縮した胃底腺で構成され,年齢の増加にともないこの不変域は拡大し,I型からII型へ移行してゆくことが認められた.このことは,噴門部萎縮性胃炎が下方へ拡大してゆくというこれまでの説を支持するものであった. 生検組織中の噴門腺出現頻度は,食道胃接合部直下で,亜型50%,I型13・3%と明らかに五型の方が高かった.さらに興味深い点は,噴門腺がII型のコンゴーレッド変色境界で22.2%認められたことであった. 以上の事実は,噴門部胃底腺萎縮進行過程で,噴門腺領域の拡大がおこることを暗示するものであろう.
  • 前田 淳, 三輪 洋子, 赤上 晃, 上地 六男, 勝 健一, 山下 克子, 市岡 四象, 横山 泉, 飯田 龍一, 御子柴 幸男
    1981 年 23 巻 3 号 p. 408-414_1
    発行日: 1981/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    Indomethacin坐薬が関与したと思われる胃潰瘍について報告する.症例は男性4例・女性2例の計6例であり平均年齢は68歳で高齢者に多かった。基礎疾患は関節リウマチ,腰痛症,感冒による発熱であり主訴は全例とも吐血であった.投与日数は早いものでは挿入後10時間後に発生したが平均して2~3日後に発生するものが多かった.本坐薬による胃潰瘍の内視鏡的特徴は形態は類円形,不整形・帯状を呈し発生部位は胃角部と胃体部であった.いずれも1ヵ月から3ヵ月間で内科的に治癒しており急性胃潰瘍の特徴を有していた.近年,胃粘膜関門におけるProstaglandinの役割が注目されている.また非ステロイド系消炎剤はProstaglandinの生成を抑制し胃粘膜障害をおこすといわれている.Indomethacin坐薬による胃潰瘍の発生にもProstaglandinが関与しているものと思われる.今後,薬剤性胃潰瘍の発生要因解明においてProstaglandinとのかかわり合いが注目されると思われる.
  • 高橋 篤, 関谷 千尋, 矢崎 康幸, 沼崎 彰, 富永 吉春, 梶 巌, 美馬 聡昭, 並木 正義
    1981 年 23 巻 3 号 p. 415-425_1
    発行日: 1981/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    肝シンチグラムで欠損像を認めた60例の腹腔鏡所見について検討した.60例のうち,17例(28.3%)に肝シンチグラム上の欠損像に相当する限局性病変を認めたが,37例(61.7%)では,それに相当する病変を認めず,false positiveであることが判明した.残り6例(10.0%)は欠損の原因を明らかにし得なかった.限局性肝疾患を認めなかった37例のうち,胆嚢床および肝門部に原因のあったものが15例と最も多く,ついで肝の萎縮7例,肝硬変6例,肝下面の癒着3例,肝外腫瘤による圧迫と肝内胆管拡張が各2例,肝形成不全および放射線肝障害が各1例あった.これらの中から興味ある6症例を紹介した.肝シンチグラムにはfalsepositiveな所見はっきものなので,欠損像を認めた場合には他の検査で診断を確定することが必要であるが,その際腹腔鏡検査は有力な検査手段となり得ることを報告した。
  • 多田 正弘, 飯田 洋三, 小田原 満, 竹内 憲, 原田 元, 斉藤 満, 佐高 真理雄, 榊 信広, 後藤 一紀, 青沼 久美子, 岡崎 ...
    1981 年 23 巻 3 号 p. 426-432_1
    発行日: 1981/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    ヒト胃粘膜の腸上皮化生の初期像を,萎縮性変化の範囲がせまい木村・竹本分類のC-1型胃粘膜について検討した。すなわち,腸上皮化生の分布,および生検組織における組織像,酵素活性,3H-Thymidineによるautoradiographyによる細胞動態の面より観察した. 腸上皮化生の発生部位は,大部分が前幽門部のみに限局するものであって,C-1の25例中22例(88%)であった.幽門前庭部に散在性に認められる場合は25例中3例(12%)と少なかった. バネート細胞は全例において認められず,Goblet cell metaplasiaであった.酵素学的にはALP(-),LAP(+)の不完全型腸上皮化生を多く認めた.また3H-thymidineによるautoradiographyにおいて増殖帯の延長を認めたが,labellingindes(L.I)において,通常の萎縮性胃炎との比較において大きな差異を認めなかった.また,高齢者に認める初期腸上皮化生と若年者のそれとの間には,大きな違いは認められなかった.
  • 金子 栄蔵, 熊谷 純一, 縄野 光正, 花井 洋行, 本田 西男, 中村 真一, 喜納 勇
    1981 年 23 巻 3 号 p. 435-440_1
    発行日: 1981/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    内視鏡的に除去し得た食道脂肪腫の1例を報告する.患者は62歳の男性で,右上腹部痛を主訴に来院した.疼痛は胆石を伴った急性胆のう炎によるものと判明したが,上部消化管検査で噴門上3cmの下部食道に4×3cmの卵円形の腫瘤が発見された.GIF-Q型を用い高周波スネアーで除去し得た.病理学的に4×3×2cmの腫瘤でごく短い,径1cmの茎を有する脂肪腫であった.食道脂肪腫の内視鏡的ポリペクトミー例は本例が初めてで,かつ大きさも従来の食道内視鏡的ポリペクトミー報告中最大のものである.
  • 矢崎 康幸, 林 英樹, 富永 吉春, 高橋 篤, 長谷部 千登美, 大原 和明, 関谷 千尋, 並木 正義
    1981 年 23 巻 3 号 p. 441-448_1
    発行日: 1981/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    生来健康で何ら自覚症状はないが胃集検でたまたま胃静脈瘤が発見され,その精査の過程でカロリー病(混合型)と診断された36歳男性の1例にっき報告した.著明な胃静脈瘤と食道静脈の軽度怒張を認め,ERCPにて肝内胆管に多発性嚢胞状拡張をみるが肝外胆道に異常なく膵管胆管合流異常もない.腹腔鏡検査では肝は非常に硬く白褐色調で,なだらかな凹凸を有し,肝生検組織には典型的な先天性肝線維症の所見がみられた.腎エコーグラム,腎シンチグラム,逆行性腎孟尿管造影にて多発性嚢胞腎,海綿腎の所見を得た.肝機能検査上,胆道系酵素の中等度上昇をみ,赤沈値の軽度亢進,血清BUN,クレアチニン値,PSP検査値に軽度異常を認めた.無症状のうちに発見されたカロリー病は今まで報告例がなく,本症の自然経過をみる上にも貴重な症例と思われ,本邦例13例の検討と若干の文献的考察を加えて報告した.
  • ―異時性多発癌症例―
    三原 修, 室久 敏三郎, 新村 日出夫, 北川 陸生, 津金 綏俊, 丸尾 国造, 山田 秀雄, 大久保 春雄, 狩谷 淳, 片場 嘉明
    1981 年 23 巻 3 号 p. 451-455_1
    発行日: 1981/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    残胃癌で,初回胃切除が癌に対するものであった場合にはこれを2大別し,初回の癌に関連して残胃に癌のみとめられたものを断端部遺残癌,残胃再発,断端再発とし,初回の癌と別個に認められたものを多発癌とし,更に同時性と異時性に分類している.残胃早期癌の報告例はいまだ少ない.とくに胃癌切除後の残胃早期癌の報告は,著者らの調べたところでは,高木らの報告をみるのみである.著者らは残胃に1型早期胃癌を発見,再切除を行ない,10年目の今日なお,生存中である予後良好な症例を経験したので報告した.本症例は,61歳の男性で,初回の手術はBorrmann豆型の進行癌で,8年後に無症状で,胃集検により発見されており,胃切除後とはいえ,定期的検査が重要であることが痛感された.
  • 佐野 宏一, 山本 昌弘, 黄 八成, 津丸 周三, 福島 泰治, 田丸 隆二, 国田 俊郎, 隅井 浩治, 日高 徹, 井上 正規, 岸本 ...
    1981 年 23 巻 3 号 p. 456-458_1
    発行日: 1981/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    若年性大腸ポリープは大部分有茎性で良性の疾患であり下血や腹痛の持続する患者においては内視鏡的tリペクトミーは有用な方法と考えられる.最近著者らは3例の乳幼児(1歳1ヵ月,1歳6ヵ月,3歳)若年性大腸ポリーフ。に対し,CF-MB3(オリンパス)及び高周波電気焼灼装置PSD-3を用い:rリペクトミーを施行したので報告する.3例ともS状結腸に有茎性,表面凹凸不整なポリープを認めポリペクトミー後も出血,穿孔等の合併症もなく経過良好であった.
  • 野村 幸治, 渡辺 正俊, 小田原 満, 藤田 潔, 針間 喬, 内田 善仁, 河野 裕, 藤川 佳範, 竹本 忠良
    1981 年 23 巻 3 号 p. 461-465_1
    発行日: 1981/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
    最近6ヵ月間に,旭光学製,細径Sigmoidofiberscope modelFS-34Aにて,77症例,94回の検査を施行したので,その挿人性,記録性などにっいて報告する.挿入部径は11.5mmとこれまでの大腸内視鏡とくらべると細くなっており,挿入が容易となり,被検者の苦痛も少ない.先端硬性部長を13mmと短く,視野角は95°と広くし,直腸,S状結腸内の反転を可能としたので観察盲点が少なくなった,細径であるが,鉗子孔は3.5mmと太く,生検組織の採取量吸引能力は充分であり,記録性も良い.本機種は,下部大腸の検査を般化させ,今後,増加すると思われる緊急大腸内視鏡検査,集団険診に有用と思われる.しかし,細部については,いろいろと問題点を残しており,記録用カメラの改良などの検討が望まれる.
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