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平山 洋二
1982 年 24 巻 3 号 p.
405-421
発行日: 1982/03/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
全身性エリテマトーデス(SLE)83例につき経過中発現した消化器症状を検索し,さらに54例については消化管病変をX線的・内視鏡的に検索し検討した.83例中50例(60.2%)に腹痛をはじめとする不定の腹部症状を認めた.また,54例中42.6%に器質的病変を認めた.胃潰瘍あるいは十二指腸潰瘍は治癒傾向も良好で,内視鏡的な特徴はなく組織生検でも血管炎所見を認めなかった.胃潰瘍の発生とステロイドの間に明瞭な関係を見出し得なかった.小腸穿孔死亡2例,大腸多発潰瘍1例があり,小腸穿孔1例に血管病変を認めた.大腸潰瘍はBehget病にみられるものと共通の性質を有していた.食道および小腸に関してX線的に進行性全身性硬化症(PSS)に類似した緊張の低下を認めた.SLEでは強度の血管病変,重篤な消化管病変を示す例もあるが,多くはその消化器症状も軽く,小症状の多くは腸管の緊張の低下など機能異常に由来するものと考えられる.
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原沢 茂, 柴田 晴通, 牧野 孝史, 菊地 一博, 瀬上 一誠, 野見山 哲, 三輪 正彦, 鈴木 荘太郎, 谷 礼夫, 三輪 剛
1982 年 24 巻 3 号 p.
422-430_1
発行日: 1982/03/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
フリー
逆流性食道炎を対象として,食道内視鏡所見の食道胃接合部の形状(Z-line pattern)を中心とした形態と下部食道括約部圧(lower esophageal sphincter pressure:LESP),酸排出試験(acid clearing test)などの食道機能とを比較検討した.Z-line patternは正常対照群をZo-typeとし,Z-lineの位置と形状からZ
1-からZ
4-typeとした.Z
1-typeの軽度変化からZ
3-typeの高度変化群の3段階に分類した.またZ-lineは直線的であるにもかかわらず裂孔から離れて存在するものをZ
4-typeとした.LESPはopen-tip infusion methodで測定し,acid clearing testは0.1N HCl 15mlを食道内注入をおこない,食道内pHが5.0になるまでの時間で測定した.また嚥下運動によるLESの弛緩現象,LESPの外因性ガストリンに対する反応性についても検討した.LESPは正常対照群Z
0-typeでは15.5±5.6cmH
2O,Z
1-typeでは10.3±2.9cmH
2O,Z
2-typeでは9.5±4.9cmH
2O,Z
3-typeでは9.4±4.1cmH
2O,Z
4-typeでは7.6±3.4cmH
2Oであり,Z
1-typeからZ
4-typeまで有意にLESPの低下が認められた.Acid clearing testではZ
0-typeは11.4±3.0分,Z
1-typeは18.3±7.0分,Z
2-typeは20.3±5.6分,Z
3-typeは24.1±5.7分,Z
4-typeは24.5±7.4分と段階的延長が認められた.嚥下運動に伴うLESの弛緩の持続時間と外因性ガストリンに対するLESPの反応性とZ-line patternとの相関性はそれぞれにおいて認められなかった.以上の成績より逆流性食道炎にみられる食道胃接合部の形態を5つに分類し,その形態の変化と食道機能としてのLESP,acid clearingとの間につよい相関関係が認められた。
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吉田 隆亮, 坂本 惇夫, 東 秀一, 神戸 光, 原口 靖昭, 岩下 徹, 田仲 謙次郎, 鶴 敬雄, 香月 武人
1982 年 24 巻 3 号 p.
431-439
発行日: 1982/03/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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高周波凝固生検法により病理組織診断がえられた良性胃粘膜下腫瘍(BGST)9例―Leiomyoma(LM)3例,Leiomyoblastoma(LMB)2例,Lipoma(LP)3例,Aberrant Pancreas(AP)1例―について,経過観察中における腫瘤の発育速度及び表面変化を検討した.腫瘤の年間増大率はLPO/年,LMO.17-0.44/年,LMBO.73及び0.6/年となり筋原性腫瘍,特にLMBでの増大傾向が顕著であった.APでは腫瘤の大きさにほとんど変化がみられなかった.腫瘤の発育曲線より各腫瘤のDoubling Timeを推定すると,LM3年1カ月~5年10カ月,LMBはそれぞれ1年6カ月,2年3カ月となった. 腫瘤表面の変化として9例中3例に潰瘍性変化が認められたが,かかる変化は比較的速やかに治癒する傾向を示した.無症状,小腫瘤のBGSTの経過観察には少なくとも2年に1度の検査が必要である.病理組織学的にLMB,あるいはAPで潰瘍を形成する場合には診断確定後速やかな外科的処置が望ましい.
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竹下 公矢, 中嶋 昭, 森 重夫, 山内 英樹, 羽生 丕, 川崎 恒雄, 八重樫 寛治, 平山 廉三, 宮永 忠彦, 星 和夫, 毛受 ...
1982 年 24 巻 3 号 p.
440-447
発行日: 1982/03/20
公開日: 2011/05/09
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過去12年間に教室で切除した早期胃癌243例,252病変を対象に,術前の内視鏡および切除胃肉眼所見と組織型との関連性について検討を加えた.隆起を示した病変については,I型もしくはIIa型病巣の多くは分化型管状腺癌で占められていたが,基部にIIc様陥凹を認めた症例はすべて低分化腺癌であり,診断・治療上注意を要すると思われた.また環状を呈するIIa+IIc型病巣では組織型および深達度により,IIa部分の内視鏡像に特徴が認められた.一方,陥凹を示した病変についても病巣の陥凹面,陥凹境界,粘膜ヒダの性状などについて,組織型別に特徴ある内視鏡像を示した。これらの事実は胃癌の診断能を向上させるためにも,発育・進展過程を考えるうえでも重要な所見であると考えられたが,表面平坦型では組織型別に内視鏡像に著明な差異は認められず,粘膜面の胃小区の性状,色調などについてさらに詳細な検討を加えることの必要性が示唆された.
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上地 六男, 横山 泉, 中井 呈子, 栗原 毅, 三輪 洋子, 前田 淳, 赤上 晃, 勝 健一, 山内 大三, 山下 克子, 市岡 四象 ...
1982 年 24 巻 3 号 p.
449-454
発行日: 1982/03/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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胃潰瘍の各stageにおける粘膜内ムコ多糖物質を中心とする,粘膜防御機構について検討したので報告する. 1.
35SO
4Autoradiography所見をみると,粘膜上皮細胞を中心に活動期後半(A
22)から
35SO
4の取り込み増加がみられ,治癒期前半(H
1)でピークを示した. 2.粘膜内hoxosamine量を測定すると,
35SO
4Autoradiography所見と同じ動きを示し,A
2からH
1にかけてピークを示した. 以上,胃潰瘍各stageにおけるムコ多糖物質代謝の動きより,潰瘍発生後かなり早くmucus barrierの形成が開始されていることが推測され,胃潰瘍の治癒過程において防御因子の重要性が示唆された.
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沼 義則, 児玉 隆浩, 小田 正隆, 江崎 隆朗, 安藤 啓次郎, 坪田 若子, 松田 彰史, 渡辺 精四郎, 福本 陽平, 沖田 極, ...
1982 年 24 巻 3 号 p.
455-459_1
発行日: 1982/03/20
公開日: 2011/05/09
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腹腔鏡検査上認められる肝被膜癒着を腹部非手術例について検討を行なった.癒着を示す症例の頻度は,腹腔鏡検査総数584例中43例(7.4%)に認められた.癒着例の内訳は,慢性活動性肝炎14例(32.6%),肝硬変症10例(23.3%),慢性非活動性肝炎,肝内胆汁うっ滞症,肝細胞癌各々4例(9.3%),転移性肝癌2例(4.7%),その他5例であった.癒着を認める症例では,飲酒歴を有するものが34.9%と有意差(P<0.01)をもって頻度が高かった.既往歴としては,肝炎を有するもの15例(34.9%),虫垂切除術11例(25.6%),肺結核症9例(20.9%)と,肝炎以外では,虫垂切除術,肺結核症の既往を有するものが多かった.各疾患別の頻度をみると,転移性肝癌19例中2例(11.0%),肝細胞癌50例中8例(8.0%),慢性活動性肝炎218例中14例(6.4%),慢性非活動性肝炎74例中4例(5.4%),肝硬変症196例中10例(5.1%)であり,中等度以上の癒着の程度を示すものは慢性肝疾患に多かった.
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多田 正大, 田中 義憲, 山本 実, 原田 稔, 赤坂 裕三, 川井 啓市
1982 年 24 巻 3 号 p.
460-464_1
発行日: 1982/03/20
公開日: 2011/05/09
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Peutz-Jeghers症候群の合併症として,消化管ポリープの悪性化と腸重積があげられる.その診断と治療のために,上部消化管と大腸のポリープに対して,内視鏡的ポリベクトミーが行われてきたが,小腸に発生したポリープに対しては,外科的開腹術にまたねばならなかった.そこで新たに開発されたtwo-channel式小腸ファイバースコープ(SIF-2C)を用いて,22歳の本症患者の小腸ポリープ4個を安全に切除しえたので報告した.本器種によって小腸内視鏡検査法の適応がさらに拡がると共に,ロープウェイ式小腸内視鏡検査法がより完成度の高い検査法になるものと強調される.
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矢崎 康幸, 関谷 千尋, 北川 隆, 富永 吉春, 高橋 篤, 小野 稔, 大原 和明, 並木 正義
1982 年 24 巻 3 号 p.
467-472_1
発行日: 1982/03/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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近年,内視鏡的逆行性膵胆管造影(以下ERCP)の普及に伴い背・腹側膵管非癒合例(以下,膵管非癒合例)がしぼしば発見されるようになった.これらの症例はERCP上,主乳頭からの膵管造影により短小な腹側膵管を造影するのは容易であるが開口部の狭小な副乳頭から背側膵管を造影するのは高度の技術を要するうえにその成功率は極めて低いのが現状である.一方,近年通常のERCPカニューレの先端部を細くしたいわゆる先細カニューレが副乳頭への挿管に有用であることが注目されているが,膵管非癒合例について通常のERCPカニューレとの比較で副乳頭からの背側膵管造影成功率について述べた報告はない.筆者らは,通常のERCPカニューレにて副乳頭への挿管が不可能であった膵管非癒合例6例につき筆者らの試作した先端の直径0.1~0.2mmの先細カニューレを用い,全例極めて容易に副乳頭よりの背側膵管の造影に成功した.筆者らの先細カニューレは,既報告のカニューレと比べると先端部がより細く柔らかくなっており,その作製法,使用法の実際について述べた.先細カニューレは副乳頭からの膵管造影には極めて有用と思われ,今後膵管非癒合例における背側膵管造影率は飛躍的に向上することが期待される.
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藤川 佳範, 渡辺 正俊, 藤田 潔, 針間 喬, 内田 善仁, 河野 裕, 野村 幸治, 宮原 妙子, 竹本 忠良
1982 年 24 巻 3 号 p.
473-481
発行日: 1982/03/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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下血あるいは急性下痢発症後7日以内に,前処置なしかグリセリン浣腸のみで大腸内視鏡検査を行った.これを仮に早期大腸内視鏡検査と定義し,下部消化管出血に対する有用性を検討したところ以下の結論を得た.早期大腸内視鏡検査による大腸病変発見率は74%(68例中)で,発見された病変は虚血性大腸炎,薬剤性大腸炎などの急性炎症性疾患が過半数を占めた.病変の好発部位は直腸,S状結腸であったが,急性の炎症性大腸疾患では右側結腸病変が少なくなかった.挿入部位はS状結腸までが多く,深部大腸挿入例は10%であった.しかし,大多数の症例において深部大腸挿入を試みれば,可能であると思われた.急性の炎症性大腸疾患では発症7日以後になると病変部が不明となる傾向が認められた.原因不明例は肛門病変,急性の炎症性大腸疾患が疑われた.なお,本検査に伴う偶発症は1例も発生しなかった.以上のことより早期大腸内視鏡検査は下部消化管出血,特に急性炎症性大腸疾患の診断に有用かつ安全であると結論する.
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鈴木 孝, 重松 忠, 湯浅 友代, 舗野 文美雄, 倉下 隆, 加藤 修, 服部 和彦
1982 年 24 巻 3 号 p.
482-487_1
発行日: 1982/03/20
公開日: 2011/05/09
ジャーナル
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2,744例の初回内視鏡検査受診中,食道癌10例,胃癌144例を経験した.早期癌の占める割合は,食道癌5例で50%,胃癌37例で25.6%であった。5例の早期食道癌のうち2例に胃癌の併発(早期癌1例,進行癌1例),および1例に早期胃癌の既往が認められた.X線的に病変の指摘し得た早期食道癌は2例のみであった.食道癌の早期診断には,上部消化管検査に際して,前方直視型ファイバースコープを使用しての内視鏡検査のルーチン化が必要であると考えられる.
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瀬上 一誠, 鈴木 荘太郎, 原 雅文, 牧野 孝史, 柴田 晴通, 菊地 一博, 野見山 哲, 三輪 正彦, 原沢 茂, 谷 礼夫, 三輪 ...
1982 年 24 巻 3 号 p.
488-493_1
発行日: 1982/03/20
公開日: 2011/05/09
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気管支喘息発作の治療中に発症した,潰瘍性大腸炎の症例を報告する. 17歳,男子,気管支喘息発作治療後のステロイド漸減中,便潜血が徐々に陽性化し,腹部自覚症状はなかったが,下部消化管造影検査でthumbprinting signを認めた.その1週間後に腹痛と粘血便があらわれ,さらにその1週間後には注腸造影で棘状の多発潰瘍像と高度の粘膜腫脹が,上~下行結腸にみられた.大腸ファイバースコープではS状結腸より口側の粘膜に易出血性の粘膜と多数の潰瘍を認め,生検にて陰窩膿瘍が発見された. 以上の経過から,気管支喘息発作またはステロイド漸減が発症の誘因となった可能性がつよい潰瘍性大腸炎の1例の発症過程を報告する.
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岩越 一彦, 平田 一郎, 正宗 研, 大柴 三郎, 木村 文治, 桜木 邦男, 荒木 京二郎, 岡島 邦男
1982 年 24 巻 3 号 p.
494-498_1
発行日: 1982/03/20
公開日: 2011/05/09
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大腸結核と大腸癌が合併することは極めて稀で,本邦において8例の報告があるにすぎない.自験例は69歳女性で左頸部リンパ節腫大を認め,生検の結果は腺癌であった.原発巣の検索のために消化管検査を行った結果,注腸検査にて右半結腸に腸結核の瘢痕像がみられ,また肝彎曲部には不整形の陥凹を伴う狭窄を認めた.大腸内視鏡検査にて同部位に易出血性の潰瘍病変があり,生検結果は腺癌であった.切除標本,組織学的所見は2型の大腸癌であった.周辺粘膜は潰瘍瘢痕に伴う粘膜萎縮帯がみられ,活動性の潰瘍や結核結節はみられなかったが大腸結核の瘢痕と診断した.なお瘢痕萎縮帯内に癌が合併していたがその因果関係は不明である.
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