日本消化器内視鏡学会雑誌
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25 巻, 3 号
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  • 古田 雄一
    1983 年 25 巻 3 号 p. 359-371
    発行日: 1983/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     新鮮切除胃71症例91病変および対照9症例に,cresyl violet染色を施行し実体顕微鏡下で拡大観察を行った結果,粘膜表面細胞の細胞核が選択的に染色され,所謂胃粘膜微細模様が観察できた. 健常な胃固有粘膜では,胃小窩・胃小溝模様(幽門腺領域)と,胃小窩模様(胃底腺領域)とが観察された.腸上皮化生粘膜は細胞質も染色され,十二指腸絨毛に似たV3型(Villiform pattem),胃固有粘膜に似たG型(Gastric pattern)およびその中間型であるV2,V1型の4型に分類でき,V3型には完全型腸上皮化生が,G型には不完全型が多かった.早期胃癌の表面微細模様は4型に分類でき,乳頭腺癌には1型が多くみられ(91%),高分化型および中分化型管状腺癌には2型が多かった(88%,78%).しかし印環細胞癌には3型が48%と多いもののその他の形態も少くなかった. 実験犬を用いたcresyl violet染色・拡大内視鏡検査でも胃粘膜微細模様が充分観察でき,早期胃癌さらには微小胃癌の診断へのcresyl violet染色の臨床応用が示唆された.
  • 大岩 俊夫, 杉町 圭蔵, 桑野 博行, 岩下 明徳
    1983 年 25 巻 3 号 p. 373-381_1
    発行日: 1983/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     急性胃炎の病理学的所見については,まとまった研究が見られない様に思われる.そこで本論文では,急激に発症する上腹部疼痛,悪心,嘔吐,胃部膨満感などの急性胃症状を訴えて来院した患者に対し,発症後できるだけ速かに胃X線検査,内視鏡検査を施行し,急性胃炎の所見を呈した27例について,内視鏡検査施行時に生検を行い,その材料について病理組織学的検討を行った. その際,急性胃炎を内視鏡所見及び胃X線所見から形態学的に6型に分類し,その各々の型について組織学的検討を行った. この様に分類してみると,各型により,よく整理された組織所見を呈し,この事は,この分類法の妥当性を示唆するものと考えられる.
  • 斉藤 光則, 房本 英之, 佐々木 裕, 福田 益樹, 笠原 彰紀, 目連 晴哉, 林 紀夫, 川野 淳, 佐藤 信紘, 鎌田 武信, 阿部 ...
    1983 年 25 巻 3 号 p. 382-391
    発行日: 1983/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     種々の重篤な疾患患者にみられた急性十二指腸潰瘍62例の臨床的特徴を検討するため,慢性十二指腸潰瘍94例と比較した・急性十二指腸潰瘍では51例(82 .3%)が消化管出血を初発症状とし,しかも30例は2 ,000ml以上の大量輸血を要する大量出血例で,止血困難な例が多く著しく予後不良であった.一方慢性十二指腸潰瘍は腹痛を主訴とする例が多く,消化管出血が確認できたのは12例(12 .8%)で,一例に手術を施行したにすぎなかった.内視鏡的には急性十二指腸潰瘍は多発性で不整形潰瘍が多く,18例(19.8%)が球後部に発生し,慢性十二指腸潰瘍の1例(1.1%)と比べ球後部潰瘍の発生頻度が高率であるのが特徴的であった.また,急性十二指腸潰瘍では食道炎・食道潰瘍,出血性胃ビラン・胃潰瘍など他の上部消化管にも急性病変が多発してみられ,十二指腸潰瘍のみは26例(41.9%)にすぎなかった.
  • 吉田 友彦, 福田 定男, 岩崎 至利, 児島 辰也, 星 治, 山川 隆, 斉藤 利彦, 芦沢 真六
    1983 年 25 巻 3 号 p. 392-399
    発行日: 1983/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     〈経皮経肝的胆管内視鏡検査(PTCS)および生検(PTCB)の有用性について〉 閉塞性黄疸症例の診断上,閉塞部胆管の内視鏡所見および病理組織学的所見が極めて有意義な情報になるとの考えに基き,経皮経肝的胆管ドレナージ(PTCD)により形成される外胆汁瘻孔を利用して,PTCSとPTCBをそれぞれ23症例に試みた.癌症例の閉塞部胆管内視鏡像としては,潰瘍形成・隆起・凹凸不整・発赤・出血・褪色等が得られているが,現時点では症例数も少なく,これらの所見が癌に特徴的であるとは断じ難い.またPTCBでは胆汁細胞診に比し,はるかに高い癌陽性率が得られたが,症例によっては,細胞診が有力なこともあり,両者を併せて行うことが肝要との結論を得た.今後,PTCS像と各種の画像診断法による所見との対比はもとより,生検所見・摘出標本肉眼所見・病理組織学的所見との詳細な対比を重ねること,また機種および手技にも改良を加えること等により,PTCS・PTCBは共に極めて有用で,安全且つ確実な胆道精査法になると考える.
  • 沢口 潔, 磨伊 正義, 秋本 龍一, 荻野 知己, 上田 博, 北川 一雄, 高橋 豊, 北村 徳治, 中西 功夫
    1983 年 25 巻 3 号 p. 400-407_1
    発行日: 1983/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     過去6年7カ月間に,本院にて行なわれた大腸内視鏡的ポリペクトミーは,58症例86病変であった.これらのポリペクトミーにより得られたadenoma78病変を武藤のGrade分類を用い,病理組織学的検討を加えた.78病変のadenomaの内,11病変にGrade4を,2病変に早期浸潤癌を認めた。大きさと組織分類では,5mm以下のすべてが良性であり,6~10mmの34病変の内1病変のみが腺腫内癌であったのに対し,10mm以上の19病変の内12病変(63.2%)は癌を共なうadenomaであった.このことより10mm以上のadenomaは悪性化しやすいと考えられる.肉眼形態と組織異型度では,形態による大差を見ないが,浸潤癌2例は共に表面ビランを有した平担隆起型に見られた.部位分布では,腺腫内癌の多くは,S字状結腸,直腸に見られ,この部のadenomaは右結腸にくらべ高いmalignant potentialを有すると考えられるが結論として,大きさのいかんにかかわらずすべてのポリープは,ポリペクトミーの適応とされるべきである
  • 柏谷 充克, 岡本 英三, 桑田 圭司, 飛田 忠之, 京 明雄, 朱 明義, 田中 信孝, 岡空 達夫, 山中 若樹
    1983 年 25 巻 3 号 p. 408-412
    発行日: 1983/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     術後ストレス潰瘍に対するcimetidineの治療効果,及びcimetidine,迷走神経切断術の予防効果を検討し以下の結果を得た. 1) cimetidine治療群では33例中19例(58%),一方制酸剤を主とした従来の治療群では28例中8例(29%)に有効止血例を認めた.止血率はcimetidine治療により有意に向上したと言えるが,死亡率については有意差を認めなかった.特に,発症頻度の高かった硬変合併肝癌術後症例においてcimetidineの治療成績は不良であった. 2) 硬変合併肝癌手術例を対象に術後ストレス潰瘍の予防について検討した.術前胃液検査で高酸であった症例に対して,術直後から予防的cimetidine投与,及び術中迷切術付加を行なった.これら予防的処置を施行した症例では術後ストレス潰瘍の発生を認めず,有効な手段であると考えられた.
  • 多田 正大, 陶山 芳一, 田中 義憲, 西谷 定一, 渡辺 能行, 川本 一祚, 梶原 譲, 傍島 淳子, 川井 啓市
    1983 年 25 巻 3 号 p. 413-420
    発行日: 1983/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     大腸fiberscopeを挿入するにあたって,手技的に難しい点はS状結腸に大きなループを形成しないようにしながらスコープの挿入を図る点である.そこで硬度可変式大腸fiberscope(CF-VS)を試作し臨床に用いた.CF-VSは先端40cmより手元操作部側の硬度を,グリップ操作によって任意に変換して硬くすることができるよう開発した器種である.75例の深部挿入に用いた結果,92%はスコープの硬度を変換するまでもなく盲腸までの挿入に成功した.8%はスコープを硬くすることによって,slidingtube等の補助用具を用いることなく,S状結腸を直線化してループを形成することなく挿入することができた.盲腸までの挿入所要時間は平均12.2分間であり,同時期のCF-IBによる成績とほぼ同等であった. CF-VSは補助用具を用いることなく,確実に深部大腸への挿入が行えるという点で優れており,大腸fiberscopeの開発の歴史の中にあって,ユニークな器種であると評価できる.本器種をべースにして,さらに改良を加え, より優れた大腸fiberscopeが開発されることが期待される.
  • 三輪 洋子, 前田 淳, 赤上 晃, 伊藤 弥生, 川村 雅枝, 上地 六男, 勝 健一, 山内 大三, 山下 克子, 横山 泉
    1983 年 25 巻 3 号 p. 421-427
    発行日: 1983/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     水素ガスクリアランス法により,大腸粘膜の局所血流量を測定した.糖尿病,心疾患,大腸炎の有無(いずれも軽~ 中等症)及び年齢と,大腸粘膜血流の間に相関を認めなかった.大腸の部位別には,左結腸曲は65.1±17.9ml/min/100g(n=7),S状結腸45.5±15.4ml/min/100g(n=17)に比べて有意に高値を示した.便通異常と粘膜血流を対比すると,痙攣性便秘30.1±7.5ml/min/1009,下痢62.36±22.97ml/min/1009となり,正常対照例と便秘,便秘と下痢の間に有意差があった.喫煙,燐酸コデイン負荷によって,S状結腸の粘膜血流は有意に低下を示した.ニトログリセリン舌下により,粘膜血流はS状結腸において投与前の71%に減少,左結腸曲で130%の増加を示し,部位による反応の差がみられた.食事負荷により,ラットで粘膜血流の低下がみられた.以上の負荷の結果により,大腸粘膜血流は,腸管壁の緊張が高まっている状態においては末梢血管の状態よりもむしろ腸管壁の緊張に規制されると考えられた.大腸の生理的機能の解明のために,従来の筋電図,内圧等固有筋層の面からの検討とともに,粘膜血流等粘膜面からの検討も更に必要と考え報告した.
  • 黒坂 判造, 大原 毅, 竹添 和英, 青野 義一
    1983 年 25 巻 3 号 p. 428-434
    発行日: 1983/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     消化管疾患における内視鏡診断の特色の一つは粘膜の色調の変化を識別することであるが,従来その診断は内視鏡医の主観に依存していた.一方,内視鏡医の色覚の疲労については全く研究が行われていなかった.このためわれわれは内視鏡診断の客観化を考える時,まずヒトの色覚の疲労の実態を客観的な方法で調べる必要がある.今回われわれは,色覚の退色を定量的に測定して,観察終了後よりもその後の回復期の1 ,2分値の色覚の退色が増大すること,この色覚の退色を少なくするのには,補色のフィルターを使用すると有効であること,また1回3分間内視鏡観察をした後1分間休憩というパターンで10回内視鏡観察をした後の色覚の退色は,非疲労時よりも22%進んでいること,また回復に先立って補色を見せても,回復過程は対象群の回復とほとんど変らないこと,また異なる照度条件(100, 500, 1 , 000Lux)での色覚の退色を調べ,ほぼ同じ傾向の退色を示すこと等の成績を得た
  • 黒坂 判造, 大原 毅
    1983 年 25 巻 3 号 p. 435-441
    発行日: 1983/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     胃内視鏡診断の1つの診断根拠として,粘膜の色調変化をあげることができる.従来は視感比色による主観的な色調評価であったが,ヒトの眼では色覚の疲労のあること,色覚の記憶があまり正確でないこと,色調評価に個人差のあることなどから,客観的な色調評価の方法の開発が望まれていた.一方,物体色の測定については,C.I.E.とJISの規定があって現在の胃内視鏡では胃粘膜の絶対値を得ることは不可能である.われわれの知りたいのは,胃粘膜のある2つの領域の色差であるので相対値で充分である.そこで胃疾患のない成人60名について光電子増倍管を使用した光電色彩計を利用し,前庭部小彎を基準として胃粘膜の各部位を測定した.胃体部の前壁・大彎と基準部位との色差は△E10以上であり,また胃内視鏡を通してのヒトの色調識別は色差5以上でないと不可能であることが分った.色彩計による色差判定は,胃粘膜病変診断にあたり有益な情報をもたらすし,またわれわれの色彩計の色識別能は,ヒトの眼を凌駕していることがわかった.
  • 幸田 弘信, 石川 裕司, 佐藤 仁志, 柴田 好, 武藤 英二, 武田 章三, 原田 一道, 水島 和雄, 上田 則行, 並木 正義
    1983 年 25 巻 3 号 p. 442-447_1
    発行日: 1983/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     肺癌・特に未分化癌は,時として特異な進展を示すことがある.今回,われわれは,嚥下障害を初発症状として来院し,あたかも後縦隔腫瘍の食道への圧迫,浸潤を思わせた縦隔型肺癌の1例を経験したので報告する.症例は,72歳の男.嚥下困難を主訴として来院,食道のX線検査で中部食道に壁外性の圧迫像を認めた.食道内視鏡検査では,狭窄が主な所見で,一部に癌の浸潤を思わす粗造な粘膜所見がみられたのでbiopsyを行った.その組織像で明らかな腫瘍細胞を認めたが,確定診断は困難であった.CT scanで後縦隔にsoft tissue density mass を認め,食道は圧排されていた.以上より悪性縦隔腫瘍を考えたが,剖検では,右肺S6末梢,縦隔側原発のoat Cell Carcinomaであった.本症例のように嚥下障害を初発症状とし,他に肺癌といえる所見がないものは,非常 にまれである.さらに,食道内視鏡検査が確定診断に近づくために有用であったことは ,重要なことと思われた.
  • 奥田 順一, 今岡 渉, 武知 桂史, 井田 和徳
    1983 年 25 巻 3 号 p. 448-452_1
    発行日: 1983/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     YAGレーザーは消化管腫瘍に対する内視鏡下治療として盛んに試みられるようになってきた.私達はIIc+III 様類似進行癌(組織型poorly differentiated adenocarcinoma,深達度pm)の手術後,残胃に再発をきたした81歳男性の再手術不能な残胃癌(レ線計測70×45×35mm)に対して,内視鏡下にYAGレーザーを照射して著明な自覚症状の改善とともに延命効果のみられた1症例を呈示した.レーザー照射は1回につき出力70~90W,照射時間1~3秒, 3,000~10,000 Jouleを1年8カ月の間に計29回延べ約110,000 Joule照射し,現在も続行中である.何らかの理由で外科手術不能な胃癌に対してレーザー治療は有効な方法である.
  • 星加 和徳, 宮島 宣夫, 藤村 宜憲, 寿満 文彦, 伏見 章, 内田 純一, 石原 健二, 木原 彊
    1983 年 25 巻 3 号 p. 453-457_1
    発行日: 1983/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     Blue rubber bleb nevus syndromeの1例を経験した.症例は66歳女性で,昭和45年頃より左肩甲部に腫瘤あり.昭和51年には貧血を指摘されて鉄剤投与を受けている.昭和56年2月頃より頸部不快感出現し,嚥下時異物感あり.実地医家より当科紹介となる.左肩甲部には表面顆粒状,青色の柔らかい血管腫(3.0×3.5cm)を認め,前胸部にも同様の小血管腫が認められた.また,消化管造影にては,食道上部に隆起性病変があり,内視鏡検査にて表面顆粒状紫色の柔らかい血管腫と診断された.食道,左肩甲部の血管腫は手術にて摘出され,組織像は両者とも海綿状血管腫であった.本邦においては,自験例を含め15例の報告がある.
  • 楠原 敏幸, 森田 俊一, 杜若 陽祐, 小玉 隆男, 小野 誠治, 木原 康, 荒川 敬子, 竹内 緑
    1983 年 25 巻 3 号 p. 458-461_1
    発行日: 1983/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     症例は43歳女子と39歳男子で,主訴は上腹部痛であった.2症例とも上部消化管X線検査で,胃前庭部に異常所見があった.内視鏡検査で,胃前庭部小彎に刺入する異物が証明された.前症例は楊子,後症例は竹串であり,ともに出血や他の合併症をみることなく生検鉗子で抜去,摘出することに成功した. 胃壁内刺入異物症例においても,内視鏡的に摘出することは,安全でかつ有用な方法であると考えられる.
  • 前田 淳, 井口 孝伯, 飯田 龍一, 山下 由起子, 上田 哲哉, 奥島 憲彦, 野口 友義, 小沢 俊総, 草野 佐, 小俣 好作, 川 ...
    1983 年 25 巻 3 号 p. 462-468_1
    発行日: 1983/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     スクリーニング上部消化管内視鏡検査で発見された早期十二指腸癌の1例について報告する.症例は72歳の男性であり検診の上部消化管内視鏡検査で十二指腸下行脚に隆起性病変を認めた.生検にて高分化型の腺癌と診断し手術を施行した.切除標本ではVater乳頭の肛門側0.5cmの部位に1 .8×1.3×0.9cmの表面凹凸を呈する隆起性病変を認めた.深達度はSmであり組織像は乳頭状腺癌であった.また周辺のリンパ節転移は認められなかった.本邦における早期十二指腸癌は現在まで20例が報告されており,本邦報告例を中心に診断,発生母地,治療法について文献的考察を加えて報告した.
  • 上西 紀夫, 山本 修, 渡辺 千春, 金子 幸二, 大原 毅, 近藤 芳夫, 庄司 文久
    1983 年 25 巻 3 号 p. 471-476_1
    発行日: 1983/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     最近,十二指腸潰瘍に対する選近迷切術の立場から,胃底腺領域の拡大,幽門腺領域の縮小を示し,不完全迷切の原因となるsmall pyloric areaの存在が注目されて来ている. われわれは,典型的な十二指腸球後部潰瘍で,small pyloric areaであった症例を経験した. 症例は54歳男性で,心窩部痛・下血を主訴に当科に入院した.上部消化管透視,内視鏡検査にて,球部潰瘍瘢痕と十二指腸下行脚の球後部潰瘍を認めた.胃内外分泌機能検査にて,胃液酸度高値と,血中ガストリン値底値を認めた.手術術式としては,十二指腸下行脚の狭窄著明なため,選迷切兼幽切術を施行した.切除胃の組織学的検索にて,よく発達した胃底腺領域が幽門洞部の中ほどまで拡大しており,一方,幽門腺領域は縮小し,幽門輪より3cm以内の範囲に限局し,small pyloric areaの症例と判明した. そして,small pyloric area=壁細胞の数の増加→ 胃液酸度高値→ 球後部潰瘍発症の可能性が示唆された.このような症例に対する手術術式としては,選迷切兼幽切術をすべきであり,選近迷切術は不適当と考える.
  • 副島 靖雄, 伝法 陽子, 福士 玄, 松川 昌勝, 相沢 中, 吉田 豊
    1983 年 25 巻 3 号 p. 477-481_1
    発行日: 1983/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     心窩部痛を主訴とし来院,胃X線・十二指腸内視鏡検査でIntraluminal duodenal diverticulumと診断した1例を経験した.症例は16歳の男性で,昭和55年9月下旬頃から心窩部痛を訴え,同年10月20日当科を受診した.胃X線,低緊張性十二指腸造影でIntraluminal duodenal diverticulumに特徴的とされる,周囲を薄いhaloで囲まれた西洋梨状陰影を認めた.十二指腸内視鏡検査では,十二指腸乳頭の前壁に憩室の開口部が存在し,憩室は蠕動で附着部を中心に上下に移動した.ERP・DICは共に正常で,胆膵系との関連はみられなかった.症状の改善を目的として,外科に転科し憩室を切除した.切除標本の組織学的検索では,憩室の両面は十二指腸粘膜からなり,不完全な筋組織が粘膜下に認められた.以上の所見は,本症の発生要因として不完全十二指腸隔膜説を支持する所見であった.
  • 門 祐二, 沖田 極, 安藤 啓次郎, 坪田 若子, 沼 義則, 福本 陽平, 児玉 隆浩, 五嶋 武, 竹本 忠良
    1983 年 25 巻 3 号 p. 482-489
    発行日: 1983/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     家族歴を有するウィルソン病の1例を報告する.症例は11歳女性.急性肝炎様の症状で発病し入院となった.血清銅代謝異常,Kayser-Fleischer角膜輪の存在等から本症と診断した.D-ペニシラミンの内服開始とともに尿中への銅排泄は著増し,1年間にわたる治療後には,臨床的にも,肝機能上もほとんど正常化した. 治療前と1年後の2回の腹腔鏡検査では,形態的にも肝表面像の改善が認められた. ウィルソン病では,治療効果の判定の手段として,腹腔鏡検査を行ない肝表面像の改善を確認することが有意義であると考える.
  • 樋口 次男, 小内 正幸, 元山 誠, 星野林 次郎, 五十嵐 健, 今 陽一, 木村 徹, 長又 則之, 萩原 広明, 青木 隆, 山田 ...
    1983 年 25 巻 3 号 p. 490-497
    発行日: 1983/03/20
    公開日: 2011/05/09
    ジャーナル フリー
     2例の十二指腸乳頭部癌に対して,手術前の減黄疸を目的として,内視鏡的非手術的胆道ドレナ_ジを行なった・1例には内瘻形成術(Endoprosthesis)を,他の1例には外瘻設置を試みたがいずれも良好な減黄効果が得られ,膵頭・十二指腸切除術が施行された.加えて,本法の手技およびその利点についても言及した.
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