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2-受容体拮抗剤が,最近本邦でも一般臨床に用いられる様になったが,このニトロソ化合物に変異原性があることが知られている. 従来,十二指腸潰瘍患者に胃癌が合併することは極めて稀という報告が多かった.そのため,同薬使用以前の状況を把握する必要があると考え検討を行った.当院での十二指腸潰瘍患者1,263名を内視鏡的に検討し,7名(0.55%)に胃癌の合併を認めた.そこで,越谷市における15年間の内視鏡による住民検診での年齢,性別胃癌発見率を基準として,当院の十二指腸潰瘍患者での胃癌発見期待数を算出し,実際の発見数と比較した.その結果,十二指腸潰瘍患者に胃癌が合併する率は,一般の胃癌発見率とほぼ同程度であるとの結論を得た. 更に,関連施設の症例を加え,十二指腸潰瘍に合併した胃癌患者11例について検討し,(1)合併胃癌は,早期癌が53.6%を占めたが,高齢者(65歳以上)では,80%が進行癌であった.(2)胃癌はすべて陥凹型で,組織型では低分化型が46%であった.(3)背景胃粘膜に高度の腸上皮化生,萎縮が認められたものが62.5%であった.などの結果を得た.
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